ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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此処で、白虎と虎狩りの逆鱗です!

勢いで書いた!後悔はしていない!反省もしていない!(←どっちかはしろよ!)


第79話~バイトで大混乱!武装グループを殲滅せよ!なのです!~

暇をもて余していたところに、突如として押し掛けてきた蓮斗に連れ出され、本土のアウトレットモールへとやって来た紅夜。

訳の分からないままに蓮斗と遊び回り、昼食を摂っていると、突如として、ある女性が話し掛けてくる。

その女性は、紅夜達をアルバイトに誘うのであった。

 

 

 

 

 

 

「アルバイト………………ですか?」

「うん!君達って、見た感じ高校生辺りでしょ?アルバイトに興味無いかな~って思ったの。それで、どうかな?」

 

おずおずと聞き返した紅夜に、その女性は明るい声で答えると、紅夜に顔を近づける。

紅夜は突然の事に驚くものの、一先ず女性から顔を離した。

その表情には、かなりの警戒心が含まれていた。

 

「まぁ、アルバイト云々についてはちょっと置いといて………………貴女誰ですか?」

 

その質問に、女性は目を丸くした。どうやら自己紹介を忘れていたようだ。

 

「ゴメンゴメン!いきなり訳分からない女に話し掛けられても、困るわよね~」

 

そう言うと、女性は胸元のポケットから名刺を取り出すと、紅夜と蓮斗其々に差し出して言った。

 

「改めまして、私は小日向 華琳(こひなた かりん)。カフェ《ロイヤル・タイムズ》の店長よ。よろしくね」

 

そう言って、華琳は2人に微笑みかける。相手が何者なのかを知ったからか警戒心を解いた紅夜は蓮斗と顔を見合わせると、華琳へと向き直った。

 

「えっと、俺は長門紅夜です」

 

紅夜がそう言うと、華琳はまたしても目を丸くした。

 

「長門紅夜君?それってあの、《RED FLAG》の隊長さんだよね?」

「?俺のチームを知ってるんですか?」

「勿論!」

 

紅夜の問いに、華琳は大声で言った。

 

「去年ぐらいまで結構有名だったし、いきなり理由も無しに消えちゃうし、それで今になって復活したかと思ったら、何か大洗女子学園の子達と一緒に全国大会に出てるし!あ、それもそうだけど決勝戦進出おめでとう!あの時見に行けたら良かったんだけど、生憎見に行けなかったのよね~。でも、最後の最後でプラウダの戦車7輌相手に単独で挑んで壊滅させたって聞いたわよ?」

「アハハハ。まぁ3輌ぐらい撃ち残しちゃいましたけどね………………」

 

紅夜は苦笑を浮かべながらもそう言うが、華琳はどんどん聞き込んでくる。

 

「それでも十分凄いよ!だって君の戦車、あんな無謀なやり方したのにやられなかったんでしょ?と言うか、無傷だったって聞いてるわよ?大洗の子も凄かったって聞いてるけど、やっぱり君のチームのが一番だね!」

「はぁ、どうも………………」

 

捲し立てるように言う華琳に、紅夜はたじたじになる。

流石に見かねた蓮斗は、今更ながらの助け船を出す事にした。

 

「えっと、小日向さん………………で良いですよね?此処レストランですから声を抑えめに」

「えっ?………………あ」

蓮斗の指摘で我に返った華琳は、自分が紅夜に詰め寄りすぎたせいで、店の客殆んどからの視線を浴びている事に気づいた。

 

「す、すみませんでした!」

 

我に返った華琳は、物凄い勢いで頭を下げて平謝りに謝り、何とか店員からの注意だけで済んだらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………………ゴメンね、巻き込んじゃって」

 

レストランから出てきた一行は、1階の広場で休んでいた。

すまなさそうに言う華琳に、紅夜は微笑んで言った。

 

「いえいえ、お気になさらず」

「にしても意外でしたよ。まさか、小日向さんがレッド・フラッグのファンだったなんてねぇ………………」

「ふぁ、ファンなんてモンじゃないわ!私は、その………………」

 

からかう蓮斗に、華琳は顔を真っ赤にして違うと言い張る。

だが、口ではそうやって否定するものの、顔が赤い時点で説得力など皆無に等しいものである。

 

「それよか、ホントに良かったんですか?俺等の代金まで払ってくれるなんて………………金払いますよ、俺」

 

そう言って、紅夜は財布を取り出そうとするが、それは華琳の手によって阻まれた。

 

「別に良いのよ。私が暴走しちゃったせいで、君達にも迷惑かけちゃったんだから。そのお詫びのようなもの、だから気にしないで」

「すみませんねぇ」

微笑んで言う華琳に、紅夜も微笑み返して言った。

すると華琳は、蓮斗の方を向いて言った。

 

「そう言えば、未だ君の名前聞いてなかったけど………………もしかして、紅夜君の兄弟か何か?」

 

その質問に、蓮斗は首を横に振った。

 

「いや、単に容姿が瓜二つなだけですよ」

「そうなんだ………………それで、名前聞いても良いかな?」

「ええ………………八雲蓮斗です」

「へぇ~、蓮斗君か~………………って、ん?八雲蓮斗?」

 

何か思い当たる節でもあったのか、華琳は表情を歪める。

 

「いや、まさか………………お父さんが昔やってたって言う戦車道チームの………………気のせいね」

 

何やら呟くと、華琳は2人へと視線を戻した。

 

「ごめんなさい、やっぱり何でもないわ……それで話を戻すけど………………バイトの件、どうかな?」

「あ~っと、そうですねぇ………………オイ蓮斗、どうする?」

 

言葉を濁しつつ、紅夜は蓮斗の方を向いた。

 

「其処で俺に聞くのかよ………………まぁ、俺は良いぜ?何時でも来れるし」

「そっか………………んじゃ、今日1日お世話になります、小日向さん」

 

蓮斗との話し合いを終えた紅夜は、華琳へと向き直ってそう言った。

 

「うん、よろしくね!それじゃあ早速、ウチの店に行こうか!」

そう言って立ち上がった華琳は、上機嫌で歩き出した。

 

「「(そんなに新人バイトが欲しかったのか?)」」

 

2人揃って同じ事を考えながらも、2人は華琳の後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が案内されたのは、とある7階建てビルの3階だった。

 

「此処が、私が店長をして居る店--カフェ『ロイヤル・タイムズ』--よ。ホラ、入って入って!」

 

そう言って、華琳は2人を店内に引き入れた。

その店は未だ開店していないのか、従業員が忙しなく動いて準備をしていた。

 

「ウチの店は2時30分から開店だから、未だ時間はあるわね………………取り敢えず、2人は此方に」

 

そう言われ、2人は男性更衣室へと連れていかれた。

中に入ると、室内の所々に潰された段ボール箱が紐で縛った状態で置かれていた。

 

「この店、昔は男性従業員が多く居たんだけど、今は居なくなっちゃったのよね~。お蔭で重い荷物を運ぶ時は大変よ。この部屋だって、今では半ば物置部屋になっちゃってるし」

 

そう言いながら、華琳は奥のロッカー2つのドアを開けると、クリーニングに出して以来そのままになっているのか、ビニール袋に入ったままの制服を取り出して持ってくると、2人の前に置かれていた長椅子に置いて一旦出ていくとハサミを持って戻ってきて、そのビニール袋の上部分を切って中身を取り出し、2人に渡した。

 

「じゃあ、2人には早速だけど、接客とかをしてもらうから、その辺よろしくね。制服着る時に分からない事があったら、何時でも呼んでね?あ、今着てる服は、そのハンガーにかけてロッカーに入れといてくれたら良いから。それじゃ!」

 

そう言い終えると、華琳は更衣室から出ていった。

 

「「………………」」

 

説明を一方的に話されただけの2人は暫くボーッとしていたが、やがて我に返って着替え始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着替え終わったは良いものの、コレはコレは………………」

「少なくとも、俺に似合うようなモンじゃねえな」

 

制服に着替えた2人は、互いの服装を確認しながらコメントしていたのだが、その内容は良いものとは言えなかった。

2人が着ている制服は、黒のボタンが7個付いた白のポロシャツに黒のベルト付きズボン、それから黒の蝶ネクタイとなっており、陽気で自由気ままな2人からすれば着慣れない服装なのだ。

 

「こう言う着慣れねぇ服着て考えたんだが、俺って後2年もすりゃネクタイとか付いた服着なきゃならねぇんだよな。成人式とかで」

「そりゃ羨ましい。俺なんて18でお陀仏しちまったからな」

「その割には、結構元気そうだよな」

 

そんな会話を交わしながら、2人は更衣室から出る。

其所には華琳が立っていた。

 

「おっ、2人共似合ってるわね!この制服も、未だ捨てたモンじゃないわ!」

「そうですか?俺としては、パンツァージャケット的なモンの方が良いと思いますが………………」

 

紅夜が言うと、華琳は苦笑を浮かべながら言った。

 

「ウチって、ルクレールとかみたいな戦車の要素は取り入れていないのよねぇ……呼び出しベルも普通の音しか出ないし、店員が敬礼するとかも無いわね」

「それはそれは」

 

そうしていると、他の従業員がやって来て開店を知らせてくる。

 

「良し!それじゃあ早速、頑張ってね!」

「「Yes,ma'am!」」

 

そうして3人は入り口へと向かい、入ってきた客を出迎えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、蓮斗よ」

「おー?」

「男性客、殆んど居なくね?」

「『殆んど』と言うより、『全く』居ねえよ」

 

開店から約1時間後、かなりの客が入ってきて空席が無くなりつつあるこの時間、店内を見渡していた2人はそんな事を言い合っている。

何故なら彼等の言い合う通り、このカフェには今、女性客しか居なかったからだ。

 

客からの注文を受けに行ったり、注文されたものを持っていったりする最中に新しい客が入ってくるのだが、皆して若い女性客なのだ。

おまけに従業員すらも女性だけと言う始末で、どう考えても肩身の狭い状態だった。

 

「蓮斗~、今からでも瞬間移動で帰ろうぜ」

「馬鹿こけ、ンな事したらバイト代のへったくれも入ってこなくなっちまう」

 

そう言い合う2人は、店に居る客全員からの視線を集めていた。

容姿がほぼ瓜二つだからと言うのもあるが、整った顔つきに、2人の瞳の色、そして紅夜に至っては紅蓮に染まった髪が目立つ事この上無かった。

 

「昔は居たと言う男性従業員が辞めた理由が、もし人間関係だとしたら………………」

「言うな、それ以上は禁句だ」

 

そう言い合いながらも、2人は仕事を全うしていく。

物覚えが良かったのか、はたまた仕事が2人からすれば簡単だったからか、問題が起こるような事は何一つとして無く、このまま2人の出番終了として話をつけた6時まで続く………………筈だった。

 

 

 

 

 

 

………………そう、『筈』だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮斗、今何時だ?」

「そろそろ4時になる頃だな」

 

擦れ違い様に時間の確認や状況報告をし合っていた2人は、開店からそこそこ時間が経っている事に喜んでいた。

 

「後2時間か………………コレを乗り切りゃ、後は帰るだけだな」

「おう!………………おっ、8卓様がお呼びだ、ちょっくら行ってくるぜ」

 

そう言って、蓮斗が8卓の客の元へと向かおうとした、その時だった。

 

裏口らしきドアが勢い良く開け放たれ、大きな音が響く。

そして次に聞こえたのは、何と銃声だった!

 

『『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』』

 

本来なら、聞こえる筈の無い銃声に驚いた全員が振り向くと、其所には黒いマスクで目と口以外を覆い隠し、拳銃や軽機関銃で武装した男7人が乗り込んできていた!

 

「全員動くんじゃねえ!」

「騒ぐなぁ!」

 

拳銃を持った男がそう言い放つと、当然ながら、店はパニックに陥る。

それを喧しく思ったのか、マスクからはみ出している部分から、金髪である事が窺える男が、持っていた軽機関銃を向けて怒鳴り付ける。

 

「こりゃヤベエ」

 

少なくとも、彼等は今のところ、店の客や従業員を殺すつもりが無い事を悟った紅夜と蓮斗は、カウンターを飛び越えて隠れた。

その次の瞬間には、甲高いサイレンとスキール音が響き、スピーカー越しに、警察と思わしき男の声が聞こえた。

 

『君達は、完全に包囲されている!大人しく投降しなさい!』

「………………オイ紅夜、警察の小物台詞がハンパ無くて笑えるんだけど」

「うん、取り敢えず今は緊急事態である事を理解しような、蓮斗」

 

小声でそんな事を言い合っていると、窓ガラスが割られる音が響き渡った。

拳銃を持った男が発砲し、窓ガラスを撃ち割ったのだ。

 

「人質を無事に解放してほしいなら、逃走用の車を用意しろ!」

「ただし!追跡車や発信器とか付けんじゃねぇぞッ!」

 

そう言い放つと、男の1人が警察のパトカー目掛けて軽機関銃を乱射する。

 

「グヘヘッ!彼奴等ビビってやがるぜ!」

「日本の警察も腰抜けしか居ねぇのな!ギャハハハハハッ!!」

 

自分達が優位に立っていると思い込んでいるのか、その武装グループは下卑た笑いを浮かべる。

 

「せっかくなんだ、もっと怖がらせてやろうぜ」

「おー……ちょうどこの店には、弱ぇ女共が沢山居やがるからなぁ…………」

 

そう言うと、男の1人はゆっくりと歩き出し、目に留まった1人の女性客の胸倉を掴んで立たせる。

 

「ぐあっ!?」

「ッ!?ミカをどうするの!?離して!」

「五月蝿ェ!」

 

ミカと呼ばれた少女の友人と思われる少女が叫ぶと、男はドスの効いた声で怒鳴り付け、黙らせる。

そして、男はミカの頭部に機関銃を突き付けたままゆっくりと歩き、紅夜と蓮斗が隠れているカウンターに近づいてきた。

 

「オイ、お前等」

 

不意に声をかけられた2人が振り向くと、ミカの頭部に機関銃を突き付けた男が、小指で自分達を指していた。

そして、黒いバッグをカウンターに置いて言った。

 

「先ずは赤いの、其所のレジスターから現金あるだけ取り出して、このバッグに入れろ。それからもう片方の黒いの、喉が乾いた。何でも良いから飲み物持ってこい!逆らえばどうなるか………………分かるよな?」

 

そう言うと、男は心底下卑た笑みを浮かべながら、ミカに機関銃を強く押し付ける。

 

「(心底腹立つクソ野郎だなァ………………どうする?)」

「(………………任せろ)」

 

視線で話を成立させた2人は立ち上がり、蓮斗は厨房へコップ等を用意しに向かい、紅夜は、客を背にして守るように立っている華琳に目配せすると、レジスターの引き出しを開けて金を取り出し、不自然に思われない程度に注意しつつ、遅めにバッグに入れ始める。

肝心の男は完全に油断しており、他の男と顔を合わせてニヤニヤ笑っている。

紅夜はその隙に、ミカへと顔を合わせて微笑みかけた。

 

「(大丈夫だ、絶対助けてやる)」

 

視線でそう伝えると、カラカラと音が聞こえてきた。蓮斗からの合図だった。

「………………やっと来たか、チンタラやりやがって、あのガキ」

「(何がガキだよデブ。彼奴見た目は俺とタメだが、実際は70歳ぐらいはいってやがるぞ)」

 

内心で口汚く罵りながら、紅夜はバッグに金を入れ続ける。

硬貨を入れる際には、態と残して時間稼ぎをしていた。

 

男の前にやって来た蓮斗は、氷しか入っていないコップ7個を乗せたトレイを差し出した。

 

「ああん?何だコレは?」

「見て分からねえのか?水だよ」

「ああ?ナメてんのかこのガキ?」

 

近づいてきたもう1人の男が言うと、蓮斗は大袈裟に舌打ちをして睨み付けた。

ナイフのように鋭く光ったその目には、海のような蒼い瞳からは考えられない程の怒気が含まれていた。

 

「さっきから黙って聞いてりゃガキガキほざきやがってよォ………………『余程俺に殺されてェんだなテメェはァ!!!!』」

「がッ!?」

 

蓮斗ドスの効いた声で怒鳴り付けると、トレイを上に放り投げ、男の頭部に強烈な右ストレートを喰らわせた。

殴り飛ばされた男は壁に叩きつけられ、失神する。

投げられたトレイは失神した男に当たり、割れたコップの破片などがその男に命中する。

そうして、蓮斗は紅夜へと向き直って怒鳴った。

 

『紅夜ァ!もうコイツ等には何の加減も要らねェ!全員墓行きにしてやれェッ!!』

「言われなくても………………『そのつもりだぜクソがァ!』」

 

その言葉を受け、バッグに金を入れる手を突如として止めた紅夜は、再び紅蓮のオーラを纏ってカウンターを飛び越え、ミカに機関銃を突き付けていた男から機関銃を奪い、突然の事に驚いて見開かれた目を殴り付けた。

 

「グアアアアアッ!!?目が!俺の目がァ!」

『喧しい!黙ってろ!』

 

目を殴られ、阿鼻叫喚の叫び声を上げる男の頭に踵落としを喰らわせる。

 

『…………オイ、怪我はねぇか?』

「え?あ、はい………………」

 

紅夜に訊ねられたミカは、唖然としながらも頷いた。

 

『そりゃ良かった………………取り敢えずは店の外に逃げろ。コイツ等は俺が片付ける』

「え?でも、此処には友人が………………」

 

ミカはそう言うが、紅夜が遮った。

 

『大丈夫だ。お前さんの友人も、ちゃんと助けてやる。此処に居る奴誰一人として撃たせはしねえよ……………良いから逃げろ』

 

そう言い終えると、紅夜は殺気立った目で残りの5人を睨み付けた。

 

『さァて……テメェ等、せっかくのバイト台無しにしてくれやがったんだ…………遺書は書いたんだろうなァ!!容赦しねえから覚悟しとけやゴラァ!』

 

先程の男以上にドスの効いた声を上げ、紅夜は残りの5人に向かっていった。

 

「た、たかがガキに何が出来るってンだ!ぶっ殺せ!」

 

1人が叫ぶと、他の4人も紅夜に向かっていくが、其所へ突然、厨房から銀色の何かが飛んできて壁に突き刺さった。

ケーキを切り分けるためのナイフだった。

突然横槍を入れられた事で4人が怯んだ隙を狙い、紅夜は1人に向かって機関銃を投げつける。

多少の重さがあったからか、機関銃は男が持っていた拳銃を弾き飛ばし、先程の発砲で空けられた穴から下へと落ちていった。

 

「ッ!?こ、このクソガキ!」

 

自分の武器を使用不能にされた怒りからか、男は紅夜を殴り付けようとするが、紅夜は他の男に襲い掛かり、代わりに蓮斗が右腕を構えて現れた。

 

『テメェの相手は紅夜じゃねぇんだよなァ!!残念ながら!!』

「ゴバァッ!?」

 

蓮斗のアッパーが決まって殴り飛ばされた男は、そのまま天井に頭をぶつけ、そのまま床に落ちて気絶した。

 

『これで3人目か………………紅夜、ソッチはどうだ?』

『4人目と5人目の始末が終わる頃だ…………ぜ!』

 

蓮斗が目を向けると、ちょうど紅夜が胴回し回転蹴りを喰らわせて、2人纏めて壁に叩きつけ、さらに後頭部に纏めて蹴りを喰らわせていた。

 

その様子を見ていた残りの2人は、恐怖のあまりに腰が引けていた。

武装した自分達を、圧倒的且つ暴力的な力で容易く葬り去ると言う蹂躙劇を前にして、流石に勢いも無くなりつつあった。

 

「クソッ………ふざけんな…………こんなガキに!」

『ほぉ~う?未だ生意気な口訊くだけの余力はあるんだなァ?アア!?』

「がッ!?」

 

悪態をついた男に容赦無い蹴りを喰らわせると、蓮斗は紅夜の方を向いた。

その視線を受けた紅夜は頷くと、足元に転がっていた2挺の拳銃を手に持って構え、残された1人に突き付けた。

 

「うわぁ!?ちょ、ちょっと待て!」

 

銃口を向けられた男は機関銃を投げ捨て、両手を上げて叫んだ。

 

「マジ参った!マジ参ったから勘弁してくれ!ギブ!ギブ!ギブギブギブ!」

『Give? Give me what?(くれる?何をくれるってンだ?)』

 

突然、紅夜は流暢な英語を話し出し、紅蓮に染まった髪を揺らして近づいた。

 

「あ、アイキャンノットスピーク―――」

『You're gonna give me something,right? Well,come on! What the fuck are you trying to say,huh?(何かくれるんだろ?なら、さっさとしやがれや!何口ごもってンだよ、ああ?)』

 

怯えながらに叫ぶ男の命乞いを遮り、紅夜は銃口を突き付けた。

 

「いや待って!ギブだってばマジで!ギブ!ギブ!ギブ!ギ―――」

『Quit yapping,you goofball. You wanna give it to me,or not? Come on!(五月蝿ェんだよ間抜け面。くれるのかくれねェのかどっちなんだ?ホラ!)』

 

紅夜はそのまま引き金を引く………………と思いきや、流石に撃つのは憚られたのか、拳銃を投げ捨てて後ろに回り込み、首筋を殴り付けて失神させた。

 

『全制圧完了(チェックメイト)だ』

 

失神しているため、ピクリとも動かない武装グループ全員を見渡し、蓮斗からも頷かれた紅夜は、淡々と言うのであった。


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