ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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お気に入りが300以上になって喜ぶのも束の間、評価下がってしまった……………やはり小説って難しい……………

それと今日からテスト週間。イヤだよ~、テストしたくないよォ~・゜・(つД`)・゜・



第70話~その場凌ぎの説得です!~

大洗チームが有利に試合を進めているように見えた準決勝。だが、それはプラウダの罠だった。

制止を呼び掛けるレッド・フラッグのメンバーを無視して廃村へとやって来た大洗チームは、フラッグ車の撃破に集中するあまりに周囲の警戒が疎かになり、建物の影に隠れていたプラウダの本隊に取り囲まれ、集中砲火を浴びせられる結果となってしまう。

その集中砲火によってM3の主砲が破壊され、Ⅲ突は履帯を吹き飛ばされ、Ⅳ号も砲塔が故障すると言う痛手を負う。

そんな中で、やっと思いで廃教会へと逃げ込んだ一行は、プラウダチームの生徒から、カチューシャからの降伏命令を告げられ、さらに錯乱した桃によって、自分達の学校が廃校の危機に見舞われている事を知らされる。

おまけに、杏達がレッド・フラッグをチームに引き込んだのが、廃校を免れるための条件--『今年度の戦車道全国大会で優勝する事』-を達成するために引き込んだと言う事すらも露見してしまう。

 

その事実に、先ずは雅が憤慨し、桃を掴み上げて怒鳴り散らす。その後、チームの雰囲気が一気に悪くなるが、それを何とかして良くしようと、みほがチームメンバーを励まそうとするが、その言葉に、今度は亜子が怒って怒鳴る。

そのまま、みほに掴み掛かろうとする事態にまで発展し、チーム崩壊が間近に迫った時、紅夜が廃教会の壁を素手で破壊して大穴を開け、メンバーに怒鳴り付けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「こ……………紅夜……………?」

 

見る者全てを威圧するような、紅蓮のオーラを纏いながら自分達を睨み付ける紅夜に、静馬は戸惑いを見せていた。

大洗のメンバーや亜子達も、姿が変わった自分達のリーダーへと視線を移す。

大洗のメンバーは紅夜の姿に言葉を失い、亜子達に至っては、先程の怒り狂っていた様子が嘘のように静まり返っていた。

紅夜から放たれる威圧感にメンバーは怯み、建物内を沈黙が支配する。

その後、紅夜の口がゆっくりと動き出した。

 

『お前等、少しは冷静になれ……………今此処で騒いだところで、何も変わらねえ……………』

『『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』』

その言葉に、メンバーは驚愕に目を見開いた。

紅夜は杏達が利用していた、レッド・フラッグの隊長。本来であれば、桃を掴み上げて怒鳴り付けたり、みほに掴み掛かろうとするのは彼がやる事だろう。

だが、彼はそれをしなかった上に、『冷静になれ』とまで言う始末。そんな紅夜に、レッド・フラッグのメンバーは戸惑いを見せ、杏達も、彼の反応に唖然としていた。

紅夜のチームは、少なくとも大洗戦車道チームよりかは遥かに強い。恐らく同好会チームとしての編成での試合なら、プラウダはおろか、黒森峰でも相手取れるだろうが、それが彼等を利用して良い理由にならないと言うのは明確な事。それに、紅夜や他のメンバーだって、ただ『自分達のチームが強いから』と言う理由でのスカウトは嫌いな筈。それで雅や亜子が怒るのも、無理もない事である。これで『落ち着け』と言われてすんなり落ち着く事が出来る者は、余程の御人好しか何かだろう。

だが、だからと言って、紅夜の意見も真っ向から否定出来るものではない。

杏達がレッド・フラッグを利用していたのは事実だが、今それについての言い争いをしたところで、何かが変わる訳でもないのだ。

先程まで殺気すら感じさせるオーラを纏っていた紅夜の低い声に、メンバーが押し黙る。

 

「どうして……………どうしてそんな事が言えるの?紅夜!」

『『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』』

 

そんな沈黙が続くと思われたところで、雅が声を上げた。

突然の声に驚いたメンバーが雅に目を向けると、其所には血が出んばかりに両手を握り締め、俯いて震えている雅の姿があった。

そして雅は紅夜の元へと歩みを進めると、その胸倉を掴み、勢い良く顔を上げる。紅夜を見上げたその両目には、大粒の涙が滝を作っていた。

 

「『冷静になれ』ですって?なれる訳無いじゃない!だって彼奴等、アンタを利用してたのよ!?あの時のアンタの心情に付け込んでチームに引き込んで!それで今になってコレなのよ!?」

 

悲痛に叫びながら、雅は紅夜の胸板に拳をぶつける。

 

「あんなの、許しておけないじゃない!人の心を利用するなんて卑怯な事して!アンタを引き込むために尤もらしい言葉並べ立てて騙してたのよ!?ただ『戦力が欲しい』ってだけの理由で!!」

『……………』

 

マシンガンの如く捲し立てる雅を前に、紅夜はただ、黙って聞いていた。

 

「何よりも許せないのは……………アンタの心情に付け込んだ事よ!知ってたのよ!?あの連盟のアホ眼鏡野郎からチームを除名するって言われた時、一番ショック受けてたのも!口では表には出ないって言っておきながら、本当は出たがってたのも!大洗に加わって、また試合出来るって知った日、凄く嬉しそうだったのも!」

 

雅はそう叫ぶと、紅夜の胸倉を掴んで肩を震わせる。

何時もの陽気な彼女は何処へやら……………今では陽気な雅の面影など、全く残っていない。

 

「なのに……………ッ!それに付け込まれてたって知っても……………なんで、平気でいられるのよ……………ッ!」

 

マシンガンの如く捲し立てる雅の勢いも徐々に弱まっていき、言いたい事を全て言い終えたのか、それからはただ、顔を紅夜の胸板に埋め、肩を震わせて嗚咽を漏らすだけだ。

そんな様子の雅に、チームのメンバーは目を伏せている。

 

そんな中、静馬が紅夜の方へと目を向けると、彼の全身から溢れ出ていたオーラはすっかり引っ込んでおり、先程までの強烈な威圧感等は消え失せていた。

静馬からの視線に気づいた紅夜は、何かを伝えようとしているかのように視線を送り返す。

それで紅夜の意図を悟ったかのように、静馬はゆっくりと雅の背後へと歩み寄り、紅夜から引き剥がすと、振り向き様に叫ぼうとした雅の口を封じんとばかりに、自分の胸元へと顔を埋めさせる。

 

「もう良いのよ、雅……………もう止めなさい。これ以上やっても、紅夜が困るだけよ」

「ッ!」

 

静馬がそう言うと、雅がピクリと反応した。まさか、静馬もが紅夜の意見に賛同するとは思わなかったのだろう。

 

「でも……でも………ッ!」

 

尚も難色を示す雅だが、それは静馬が彼女の頭に手を置いた事で止められる。

そして静馬は、諭すような優しげな声色で言った。

 

「貴女がこのチームの事をどれだけ思っているのかは、良く分かったわ。《RED FLAG》は私が作ったチームじゃないけど、素直に嬉しいと思う。それに、貴女や亜子の意見も、真っ向から否定出来るものではないわ。でもね、だからと言って、河嶋さんや西住さんを一方的に責め立てるのは御門違いよ。それに、さっき河嶋さんや会長さんは言ったわよね?『利用なんてしたくなかった、一緒に戦車道をする仲間として迎え入れたかった』って……………まぁ、私達に話さなくても、せめて紅夜ぐらいには言っておけとは思うけど、その辺りについては、分かってくれるわよね?」

 

静馬がそう言うと、雅は反論しなくなり、やがて、ゆっくりと頷いた。静馬の言う事も一応は正論であるため、反論のしようが無くなっただろう。

 

「うっ……………うぁぁ……………」

 

そして、静馬の胸元から雅の啜り泣く声が聞こえ始める。

紅夜に取り付いていた時よりも肩の振動が大きくなった雅の頭を撫でながら、静馬は最後の一言を放った。

 

「これは亜子にも言える事だけど……………ありがとう。このチームや紅夜のために怒ってくれて」

「~~~~ッ!」

 

その言葉が引き金となり、雅は静馬の胸の中で泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……………これで良かったの?紅夜」

 

あれから20分程経ち、泣き叫んだ雅が少し落ち着いたのを見て、後を達哉に任せた静馬は、紅夜の隣に歩み寄り、そう言った。

 

「ああ、十分な程にな……………」

 

そう言って、紅夜は1つ溜め息をついてから言葉を続けた。

 

「すまねぇな、あんな事やらせちまって……本来なら、隊長の俺がやるべき事なんだろうが……………」

「良いのよ。それに、隊長のカバーをするのが副隊長の役目だもの」

 

静馬はそう言って、紅夜に微笑みかけた。

 

「そう言ってくれると、此方としても助かるぜ……………まぁ、それもそうだが…………」

 

そう言いかけ、紅夜は先ず、先程の自分の拳で人2人程通れそうな程の大穴が開いた壁に目を向け、次に、自分に視線を向ける大洗チームのメンバーの方へと目を向けた。彼女等は、話しかけようにも話しかけづらいと言わんばかりの複雑な表情を向けていた。

まあ無理もない。先程と比べると、紅夜の状態も落ち着きを取り戻しているのは一目瞭然な訳だが、それでも紅夜は、試合開始前の騒ぎでは衝撃波で自分達を吹っ飛ばし、おまけに戦車すらも吹っ飛ばしかけ、この廃教会では煉瓦の壁すらも拳で破壊したのだ。

それに殺気立ったオーラを纏いながら睨まれでもすれば、話し掛けにくくもなるものだ。

 

「思いっきりやらかしちまったな……………何か怖がられてるような気がする」

「『怖がられてるような気がする』じゃなくて、『怖がられてる』わよ。何せ貴方、試合前に暴力騒ぎは起こすわ、この教会の煉瓦の壁を壊して大穴開けるわ、殺気立ったオーラを纏いながら睨むとかをしたのよ?付き合いの長い私達なら未だしも、大洗の子達じゃねぇ………………」

 

そう言って、静馬は苦笑を浮かべる。

 

「まぁ、普通そうなるわな……………」

 

そう言って紅夜も苦笑を浮かべると、そのまま穴から外へと出ていった。

 

「ん?おい紅夜、何処行くんだ?」

 

突然の紅夜の行動を疑問に思った勘助が訊ねる。

 

「ああ、その……なんだ………今寒いから、そろそろ《アレ》を持ってこようと思ってな。それと……………怖がらせちまった詫びも兼ねて」

 

罰の悪そうな表情を浮かべながら紅夜が言うと、勘助は何かを思い出したような声を上げた。

 

「まぁ、あの時のお前、大洗の連中は滅茶苦茶怖がってたからなぁ~、詫びも兼ねるのも納得だな……………にしても、とうとう《アレ》の登場か……………そういやお前、何日か前にスーパー行きまくって、矢鱈と買い込んでたもんな」

「だが、あれって今此処に居る人数分数買ったんだろ?それじゃあ数多いから段ボール何個も使っただろうし、それ以外に器具とかもあるから、お前1人じゃ何往復もしなけりゃならんだろ?俺も行ってやるよ。人数も多い方が効率良いし、向こうさんも、まさか今になって廃村から《アレ》取りに行って戻ってくるなんて事しようとしてるとは到底思わねえだろうしさ」

 

そう言って、紅夜の後に翔と勘助が続く。

 

「あ、じゃあ私も行くわ。段ボールや他の器具の数的に、後1人要るわね……………紀子、悪いけどお願い」

「はいはーい、任せなさ~い」

 

そうして、また新たに和美と紀子をメンバーに加え、5人は穴から出ていき、レッド・フラッグのメンバーの戦車が置かれてある稜線地帯へと向かうのであった。


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