ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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ちょっとばかりふざけてみました!


第54話~紅夜君のキャラ崩壊です!~

試合開始を告げるアナウンスと共に、打ち出されるかの如く走り出した、大洗女子学園戦車道チームは、開けた高原地帯を進んでいた。

 

「さてさて、西さんとは久々に試合する訳だが、今回の知波単学園は、どのような戦法を用いてくるのやら」

 

パンツァーカイルで進む、9輌の戦車の隊列の先頭を走る、今回のフラッグ車である、みほ達のⅣ号あんこうチームの直ぐ横を走るIS-2のキューボラから上半身を覗かせた紅夜が、長い緑髪を風に靡かせながら呟く。

 

「良く良く思い返してみれば、俺等が西さんのチームと試合したのって、現役時代の試合1回だけしかなかったからなぁ。今思えば、あれから約4年も経ったんだな」

 

砲手の席に凭れながら、翔はそう言った。

 

「俺は何度か、また西さんのチームと試合しようぜって言ったんだが、紅夜が頑なに拒否りまくるんだからなぁ……………つーか、窮地救ったら惚れられてキスされるなんて、どっかのアニメでありそうな展開だしなぁ~、羨ましいぞ、ハーレム野郎」

「あのなぁ達哉、あの時の西さんの様子はお前も見てたろ?まるで猛獣が近づいてくるような感じで、生きた心地がしなかったぜ。つか、誰がハーレム野郎だ、誰が」

「お前だよ紅夜。それに、あの程度で生きた心地がしないとか言いやがる奴に、チャラ男数人相手に除雪用の大型シャベルで大立ち回り出来るかっつーの」

 

達哉の呟きに紅夜が言い返すと、弾薬庫の砲弾に肘をついている勘助が口を挟む。

 

「おいちょっと待ちやがれ勘助。その話は誰から聞いた?少なくともお前等には話した覚えが無いんだが?」

「ああ、工場のオヤジさんに聞いた。おまけに紅夜、お前その時にまァ~たフラグ建てたらしいじゃねえか」

「あのオッサン、喋りがったな……………ッ!つか、フラグって何のフラグだよ?」

 

紅夜が言うと、3人はやはりと言わんばかりに溜め息をつく。

 

そうしている内に、一行は所々に大きな岩が転がっている地帯へと踏み込んでいた。

すると突然、Ⅳ号の直ぐ近くに砲弾が撃ち込まれ、激しい砂埃が巻き上げられる。

 

「とうとう来やがったか……………」

 

紅夜はそう呟きながら、双眼鏡を取り出して辺りを見回す。すると、一際大きな岩の影から車体の一部を覗かせた、三式戦車と四式戦車の2輌が居た。

 

「The first enemy.Let us beat them(最初の敵だ。俺等にやらせろ)」

 

戦闘モードになった紅夜は、何時もより低い声でみほに通信を入れた。

 

『分かりました。三式と四式はライトニングチームに任せます。ただし、単独では行かないでください』

「Yes,ma'am」

 

そう返事を返し、紅夜はシャーマン・イージーエイトの方を向いて、大河に通信を入れた。

 

「Smokey,come with us(スモーキー、一緒に来い)」

『Yes,sir』

 

そうして、IS-2とシャーマン・イージーエイトは、爆撃機を護衛する戦闘機が隊列から離れるかのような機動で列を離れ、岩場に隠れている三式と四式に襲い掛かった。

 

「て、敵来襲!レッド・フラッグの戦車2輌、此方に突っ込んできます!」

 

砂埃を上げて向かってくる2輌の気迫に当てられたか、操縦手用の窓から外を見ていた三式の操縦手が声を震わせる。

 

「相手はIS-2にシャーマン・イージーエイト。相手にするには分が悪いが、それでも背中を見せないのが、我が知波単魂!突貫!」

 

三式の車長がそう言うと、操縦手はギアを入れてアクセルを踏み込み、三式を急発進させてIS-2へと向かわせる。

 

『祖父さん、敵の三式が此方に向かってきてっけど、どうする?』

 

その様子を見ていた大河が言う。

紅夜は双眼鏡で、向かってくる三式を見ていた。

 

「……………Just watch(まぁ見てろ)」

 

淡々と言うと、紅夜は通信を切る。それだけで紅夜の意図を悟った達哉は、IS-2の速度をさらに上げて三式に向かっていく。

 

『おい祖父さん!何する気だ!?体当たりとかバカな真似は止めろよ!?現役時代の試合じゃねえんだ、万が一これで撃破されるとか相討ちになるとかふざけた結果になったら、静馬に殺されるぞ!』

「Relax,Smokey.Worrying too much will kill you(落ち着け、スモーキー。心配性がお前を殺すぜ)」

 

焦ったような声で言う大河に流暢な英語で答えると、紅夜は自車の乗員達に言った。

 

「達哉、敵が撃ってきた瞬間に左へ避けろ。翔、相手が次弾を撃つ前に仕留めろ。勘助は万が一に備えて徹甲弾を装填する用意をしておけ」

「「「了解!」」」

「それからスモーキー、お前等は四式の相手をしてくれ」

『あいよ』

 

すると、IS-2を追い掛けていたイージーエイトは向きを変え、恐らく三式の援護をしようとしているのであろう四式戦車へと襲い掛かった。

 

「あらよっ」

 

その時、三式がIS-2目掛けて発砲するが、達哉はその砲弾を避ける。

それによる振動の中でも、翔がスコープを覗きながら砲塔を回転させ、照準を三式へと合わせる。

 

「照準良し、何時でも撃てる!」

「良し……………Feuer!」

 

紅夜が言うと、翔は引き金を引く。122mm徹甲弾が三式の右の履帯に命中し、履帯や走行車輪、案内輪を粉々に吹き飛ばす。

 

「撃破にはならず……………ッ!?」

 

紅夜がそう言いかけるのも束の間、イージーエイトから逃げていた四式が、偶然進行方向に居たIS-2に砲撃を仕掛けてきたのだ。

砲弾はIS-2の砲塔側面に命中し、車体が揺れる。

だが、IS-2の砲塔側面の装甲厚は90mmで、おまけに若干カーブを描いているため、四式の75mm砲でも撃破に至らない。

 

「悪いが、ウチのチームは簡単にはやられないぜ!」

 

其所へ、後ろから追ってきたイージーエイトの76,2mm砲が火を噴き、放たれた砲弾は四式の車体後部に叩き込まれ、撃破を示す白旗が飛び出した。

 

「四式、撃破……………祖父さん、そっちは?」

 

エンジン部分から黒煙を上げ、動きを止めている四式を見ながら大河は言うと、紅夜の方を向いて言った。

 

「問題ねぇよ。ちょうど此方も撃破したところだ。そんじゃ、急いで本隊と合流……………って、居ねえし!?俺等だけ置いてきぼりかよオイ!?」

 

先程まで隊列で走っていた方を見ると、本隊が既に居なくなっているのを見て、紅夜は声を上げる。

 

「いや、そもそも俺等って、走ってる中を抜けてきたんだから、置いてかれるのは当たり前だろうが」

 

そんな紅夜を見ながら、大河は呆れたような声を出す。

 

「まぁ、本隊から抜けてきて敵の戦車を撃破したは良いものの、気づいたら置いてきぼりを喰らってるとか言うのは、よくある事よ。此処は落ち着くべきだわ」

 

副操縦手用のスコープから見ていた深雪は、落ち着き払った声色で言う。

 

「相変わらず落ち着いてるなぁ、深雪は」

「勝負で頭に血が昇る事ってよくあるけど、そんな一時の感情の高ぶりに任せっぱなしにするのは良くないわ。大事なのは『《興奮》と《落ち着き》のメリハリをつける事』よ」

 

深雪が言うと、一同は深雪を見る。

 

「な、何よ?」

 

一斉に見られているからか、深雪は若干、顔を赤くしながら言った。

 

「いや、お前が『メリハリつけろ』とか言ったら、最早学校の先生みてーだなって思っただけさ……………千早、取り敢えずIS-2の後ろにコイツをつけてくれ」

「はいはーい」

大河が言うと、千早はイージーエイトを発進させてIS-2の後ろにつける。

 

「おーい祖父さん、取り敢えずは本隊に合流しようぜ~。三式と四式以外には敵は居ねえっぽいし」

「……………そうすっか」

 

大河に声を掛けられた紅夜は、1度大河の方を向き、それから空を見上げてそう言うと、直ぐに沈んでいた調子から何時もの状態に戻った。

 

「そんじゃ、行くぞ!本隊に合流だ!Panzer vor!」

 

すっかり調子を取り戻した紅夜がそう言うと、達哉はアクセルを踏み込んでIS-2を発進させ、千早もアクセルを踏み込み、IS-2に続く。

 

「さて、先ずは戦果を報告するか……………」

 

そう呟きながら、紅夜はみほに通信を入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

『此方、ライトニングチーム。あんこうチーム、応答願う』

 

一方その頃、森林地帯に入った本隊一行は、草木や花が生い茂る森林を注意深く進んでいた。

そんな中、あんこうチームに紅夜からの通信が入る。

 

「此方、あんこうチームです」

『戦果報告。三式と四式の2輌を撃破、此方に損傷は無し。周囲に他の敵戦車が居る気配も無し。今から合流する』

「了解しました。現在、我々本隊は森林地帯を東へ進んでいます。森を抜けた085F地点で合流しましょう」

『森林地帯の東、085F地点で合流……………了解、交信終了』

 

そうして、通信が切れる。

 

「何だか長門殿、何時もと違っていましたね。まるで兵隊か何かのような感じでした」

「確かに……………何時ものような陽気さを感じませんでした。三式と四式を撃破しに行くって言った際も、かなり真面目そうな声色でしたし」

 

普段は陽気に話し掛けてくる紅夜が、まるで軍隊の隊長のような話し方をした事に、優花里と華は不思議そうに言う。

 

「うん……………そう言えば、紅夜君の過去を聞いた日だって、西さんの事を聞くや否や、柄にもなく発狂してたから、今だってそんな調子なのかな……………感情が昂ったり、逆に落ち着いたり……………」

「所謂、情緒不安定ってヤツ?」

「そうかもしれない………」

 

沙織が言うと、みほは自信無さげに答える。

 

「それにしても、長門殿があんなにも発狂するなんて、余程怖かったのでしょうか」

「ゆかりん、それは違うよ」

 

優花里の呟きを沙織は真っ向から否定する。

すると、優花里と華の視線が沙織の方を向く。その視線は、『違うなら、沙織はどう思うのだ』と無言のまま訴えているようだった。

 

「長門君は恋愛初心者(ウブ)なんだよ!だって長門君って結構顔つき整ってるんだし、そんな子に危ないところを助けられたら、普通の女の子なら一発で惚れちゃうじゃん?漫画とか小説とかでもよくある展開だし!」

沙織はそう断言すると、さらにと言葉を続ける。

 

「達哉君から聞いたんだけど、長門君って、恋愛よりも戦車道に打ち込んでばかりいたから、恋愛面には凄く疎いんだって。でも達哉君曰く、『恋愛面には疎いけど、彼女が欲しいとは言ってた』………だってさ」

「つまり、どう言う事ですか?」

 

華が言うと、沙織は声を上げた。

 

「鈍感な長門君相手でも、チャンスはあるって事だよ!」

 

沙織が言うと、みほ、優花里、華の3人はハッとした表情を浮かべる。

 

「(ヤレヤレ、これじゃあ長門も後々苦労するだろうな。まあ女を惚れさせたんだ、最後まで責任は取れよ……………)」

 

Ⅳ号を運転しながら話を聞いていた麻子は、そんな事を考えていたとか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、その頃の紅夜は……………

 

「うわぁ~~~ッ!普通に話そうとしたら、何かスッゲー中二病みてぇな話し方しちまった~~~ッ!なんであんな話し方したんだよ俺って奴はぁぁぁぁああっ!!ぜってー気持ち悪がれてるよコレ!一生消えねえ黒歴史だよチキショー!」

「「「五月蝿ェよ紅夜!」」」

 

IS-2の砲塔上面に拳を何度も打ち付けて悶え、メンバーからツッコミを入れられていたと言う……………


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