ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第18話~羞恥の公開処刑です~

大洗女子学園VS聖グロリアーナ女学院の親善試合は、みほ達Ⅳ号Aチームの健闘もあったものの、聖グロリアーナ女学院の勝利に終わった。

 

それを見届けた紅夜と達哉は、彼女等を労うべく、近くにあった自販機でスポーツドリンクを5本買うと、Aチームに渡すべく、彼女等の待機している、荷揚げした荷物を運搬するためのトラックが並んでいる、大洗の港の駐車場へとやって来た。

 

「やっぱ、皆落ち込んでるなぁ……」

「そりゃそうさ。大洗女子学園からすりゃ、初めての他校との試合なんだ。初陣だからこそ、負けたら悔しいってモンさ。俺等だってそうだったじゃねえかよ。最初は負けるか引き分けるかのどちらかしかなかったし」

「ああ、確かにそうだな」

 

歩いている最中に擦れ違った、SLT50エレファント戦車運搬車によって運ばれていく、大洗女子学園の戦車を見た後、コンテナの近くで立ち尽くすみほ達を視界に捉えた紅夜と達哉が言う。

 

「まあ取り敢えず、これ渡そうぜ」

「だな」

 

2人はそう言って頷き合うと、みほ達に近づいた。

 

「よお、お疲れさん」

 

紅夜が声をかけると、みほ達が振り向いた。その表情は、何処と無く残念そうにしていた。

 

「ゴメンね、長門君。負けちゃった…………」

 

みほが残念そうに言うが、紅夜は首を横に振って言った。

「謝る事はねえよ。寧ろ、強豪相手に良く戦えた方だと思うぜ?なあ、達哉?」

「其所で俺に振るのかよ…………まあ確かに、紅夜の言う通りだ。初陣で4輌相手に3輌撃破して、それに親玉さんと良いトコまで張り合えてたんだ。もっと誇って良いと思う」

 

達也はそう言うと、紅夜に飲み物を渡すように視線で促す。

 

「これ、差し入れだ。お前等で飲めよ」

 

そう言って紅夜は、5本のスポーツドリンクを入れた袋を差し出した。

みほはそれを受け取り、中身を見た。

 

「……………………良いの?」

「ああ。良い試合を見せてもらったんだ、これぐらいはしねえとバチが当たる」

 

そう言って、紅夜は微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

みほはそう言って、沙織や華、麻子と優香里に渡していく。

 

それを見て、紅夜と達哉は互いを見やって軽く笑った後、携帯を取り出すとアプリのゲームで遊び始める。

 

其所へ、聖グロリアーナのダージリンと、橙色の髪の毛が特徴のオレンジペコ、そして、金髪をロール状にしたアッサムが近づいてきた。

 

「失礼、少し宜しいですか?」

 

ダージリンに声をかけられ、みほが振り向く。

 

「貴女が、大洗の隊長さんで、宜しいですか?」

「は、はい…………」

「お名前を伺っても?」

 

みほに向かって、ダージリンはそう訊ねる。

 

「に…………西住みほです」

 

そう答えると、ダージリンは軽く驚いたような表情を浮かべた。

 

「もしかして、西住流の…………?」

 

ダージリンはそう呟き、少しみほを見ると、納得したように頷いた。

 

「成る程、確かに似ていますね…………まほさんとは、1度戦ったことがあるのですが…………貴女はお姉さんとは、違うのですね」

 

そう言ってダージリンは、自分に気づく気配もなく通信対戦で遊んでいる紅夜に声をかけた。

 

「もし、其所の方…………すみませんが、少しお時間いただけるかしら?」

 

そう言って、ダージリンは紅夜の肩を軽く叩いて注意を引いた。

 

「…………?自分にご用で?」

紅夜はゲームを中止すると、ダージリンへと向き直った。

 

「貴方が、特別チームの隊長さんで宜しいですか?」

「ええ」

 

そう言って紅夜は、携帯をポケットにしまって言った。

 

「大洗女子学園所属戦車道特別チーム、《RED FLAG》総隊長、長門紅夜です」

「そう、貴方があの…………」

 

そう言うとダージリンは、紅夜を暫く見つめる。

紅夜はダージリンの行動を疑問に思いながらも、ダージリンを見続けていた。

 

「殿方が戦車道をしていたと言うのは、昔から伺っていたので、野蛮な方なのかと思っていましたが…………それは、此方の杞憂だったそうですわね」

「それは、一応第一印象は良いという受け取り方をしても良いのですか?」

「ええ」

 

ダージリンは頷いて、隣に居る達哉の方も見た。

 

「出来れば、今回の試合に貴殿方も参加していただきたかったのですが…………まあ、仕方ありませんわね」

「それはそれは、ご期待に添えなかったようで…………」

 

残念そうに言うダージリンに、紅夜は苦笑いしながら言った。

そうしていると、オレンジペコがダージリンに言った。

 

「隊長、そろそろお時間です」

「あら、それは残念」

 

そう言って、ダージリンは一旦、みほの方を向いて言った。

 

「では、私達はこれで。それと…………」

 

ダージリンはそう言いかけ、紅夜に耳打ちした。

 

「貴殿方と試合が出来る日を、心待ちにしておりますわ」

 

そうダージリンが言うと、紅夜は少し目を瞑った後、それを不敵な笑みに変えた。

 

「ああ、俺も楽しみにしてるぜ……………その時をな」

「…………ッ!その笑みは、如何にも殿方らしい笑みですわね……………嫌いではありませんわ」

 

そう言って、ダージリン達は去っていった。紅夜には、心なしかダージリンの顔が、少しばかり赤くなっているように見えたが、気のせいだろうと思うことにした。

 

 

「お!紅夜君達も来てたんだね~」

 

その声に振り向くと、杏達生徒会チームが居た。

 

「ああ、角谷さん。お疲れ様です。生徒会の方々も」

「ああ」

「まぁ、負けちゃいましたけどね…………」

 

桃が淡々と返事を返し、柚子が残念そうに答えると、みほ達が気まずそうな表情を浮かべる。

 

「いやあ、負けちゃったね、ドンマ~イ」

「健闘もあったが、約束は約束なのでな……………では、約束通りにやってもらおうか?アンコウ踊り」

 

桃がそう言うと、杏がそれに待ったをかけた。

 

「まあまあ、こう言うのは連帯責任だから」

「うえっ!?」

「会長、まさか!?」

「うん!」

 

驚きながら言う桃と柚子に、杏は頷いた。

 

「「(ああ、この人もやるつもりだな、あの躍りを…………よくやるぜ…………)」」

 

杏のやろうとしている事を察した紅夜と達哉は、苦笑いしながら思った。

 

「ああそうそう、2人に頼みたい事があるんだよねぇ」

「何でしょう?」

 

紅夜がそう訊ねると、杏は言った。

 

「いやあ、実は太鼓叩いてくれる人が居ないんだよねえ~、2人共手伝ってよ」

「つまり、俺等に太鼓叩けと?」

「そっ!」

紅夜と達哉は、互いに顔を見合わせると答えた。

 

「別に構いませんよ?どうせ俺等、この後暇だし」

「あんがとね~」

 

そう言っていたのだが…………

 

「あの、レッド・フラッグの方ですか?」

「?」

 

振り向くと、其所には大洗女子学園の制服を着た、おかっぱ頭の女子生徒が立っていた。

 

「戦車が邪魔になっていると苦情があったので、私が指定する場所に移動してもらえますか?」

「あ、すいません。直ぐやります…………すいません角谷さん、太鼓は他の人にやってもらってください」

「あらら……………まぁ良いよ。りょーかい」

 

そう言って、2人はその女子生徒と共に走っていき、彼女が指定する場所へとIS-2を移動させた。

 

そして移動を終えて町へ戻ると、大通りからアンコウ踊りの曲が聞こえ、人だかりが出来ている場所へとやって来ると……………………

 

 

大層な曲が大音量で流れる中、Cチームのカエサルとおりょうが太鼓を叩く横で、桃色の全身タイツかと疑うようなアンコウスーツを着て、大型輸送車のトレーラー部分の上で踊らされている、みほ達5人と生徒会メンバーが居た。

 

「ふぇぇぇぇぇ~っ!!?」

 

みほは顔を真っ赤に染めながらも必死に踊り…………

 

「もうお嫁に行けない~!」

「仕方ありません!」

 

沙織もみほと同じく顔を真っ赤にして、ボヤきながら踊り、優香里は覚悟を決めたような表情で踊る。

 

「恥ずかしいと思えば、余計に恥ずかしくなります!」

 

華はそう言いながらも踊っているが、どの道彼女の顔も赤くなっていた。

麻子は何時も通りの無表情で踊っており、生徒会メンバーに至っては、特に杏が楽しそうに踊っていたのだが、見ていた紅夜と達哉は……………………

 

「「(ウッワ~…………こりゃ、動画よりもヒッデェ~……………………西住さん達、マジで御愁傷様…………)」」

 

同じ事を考えながら、心の中でみほ達に合掌していた。

 

因にだが、紅夜達はみほ達の横で楽しそうに踊っている杏を見て、アンコウ踊りやりたさに罰ゲームをアンコウ踊りに決めたのでは?とも思っていたらしい。

 

因みに、踊りながらも気の毒そうな目で見ている紅夜と達哉を見つけた、みほ、沙織、華、優香里の4人は、元から赤かった顔をさらに真っ赤に染め上げ、それを見た紅夜と達哉が何とも言えないような顔をしていたのは余談である。

 

「達哉、後で何か、食い物でも奢ってやるか?」

「そうしてやれ……………それと、この件はレイガンやスモーキーの連中には言わない方が良さそうだな……………………」

「だな…………」

 

自分達を見て顔を真っ赤に染め上げた彼女等を見た紅夜と達哉は、そんな会話を交わした後、この羞恥の公開処刑の最終地点へと向かった。


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