ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第12話~試合後のお話です!~

「お疲れ様、紅夜。思い切ったやり方だったわね。まさか私達がⅣ号の気を引いている間に離れて、それからあんな突撃するなんて思わなかったわ。ある意味アレは、自殺行為でしかないわね」

「うへぇー、静馬様のコメントは厳しいねぇ……………」

 

静馬からのコメントに、紅夜は笑いながら返す。

 

「まあ、仇討ちアザッスな、ライトニング」

「おうよ!」

「オイコラ紅夜、何自分だけの手柄にしてやがんだ?ええ?」

「ハッハッハッ!ワリィワリィ、だが、お前等にも感謝してるんだぜ?」

「どうだかね」

 

仇討ちの礼を言ってきた大河に紅夜が返すと、達哉が口を挟み、それに紅夜が笑いながら返す。

 

 

 

大洗女子学園戦車道チームVSレッド・フラッグでの親善試合は、レッド・フラッグの勝利に終わった。

 

亜美から、『回収班を派遣するので、行動不能になった戦車はその場に置いて、戻ってくるように』との通信が入り、紅夜率いるライトニングは、スモーキーの男子陣を、静馬率いるレイガンは、女子陣を拾って戦車の外に乗せ、格納庫の前へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、お疲れ様。かなりのブランクがあったとは言え、あのレッド・フラッグ相手にこれだけ戦えれば上出来よ!良く頑張ったわね」

 

そう言い終えると、亜美は一呼吸置いてから、レッド・フラッグの方を見て言った。

 

「レッド・フラッグの皆も、今日はありがとう。中々良い試合をさせてもらったわ」

「いえいえ、此方こそ」

 

礼を言う亜美に、紅夜は微笑みながら返す。

 

それから亜美に、撃破されたシャーマン・イージーエイトについては、学園の自動車部が無償で修理すると言う事を聞いて喜び、そのままの勢いで亜美に礼を述べたところ、亜美は顔を赤くしており、紅夜の頭には疑問符が浮かんでいた。

 

そうしつつ、大洗戦車道チームのメンバーは、其々の戦車のチームのメンバー同士で労い合っている。

そんな中で杏がふと、声を上げた。

 

「さてと………………んじゃあ、ある程度休憩は終わったことだし、そろそろ罰ゲーム始めよっか」

『『『『『『『『『『……………』』』』』』』』』

 

その瞬間、その場の空気が一瞬にして凍りついた。

生徒も亜美も、余程罰ゲームが嫌らしく、顔を真っ青にしていた。

 

「まあ、皆も頑張ったけど、約束は約束だもんね~」

 

その言葉に、メンバーから放たれる空気が重さを増す。

 

「あの、角谷さん。別に罰ゲームはしなくて良いと思いますよ?」

「え?」

 

誰も杏を止められないのかと諦めていると、その光景を見ていられなくなったのか、紅夜が待ったをかけた。

 

「休憩したとは言え、そう簡単に疲労が消える訳ではないですし、そもそも、大洗チームの人達には、休日なのに態々来てもらったんですから、試合に負けたぐらいで罰ゲームとしてアンコウ踊りさせるのは、流石に話が酷ですよ」

「ほ~、結構優しいんだねぇ」

「別にそうでもありませんけどね」

 

杏にそう答えると、杏は頷いて言った。

 

「まあ、紅夜君の言う事も一理あるから、罰ゲームの話はナシって事になりました~」

 

そう言う杏に、生徒達や亜美は安堵の溜め息をつくと同時に、杏を止めた紅夜に、心の中で礼を言った。

 

「それじゃあ解散!」

『『『『『お疲れ様でした!!』』』』』

 

その号令と共に、生徒達はワラワラと、校門へと向かっていく。

 

「紅夜、俺達は先に乗り込んどくぜ」

「ん?俺も行くんだが?」

 

そう紅夜が言うと、達哉は紅夜と話したそうにしている女子生徒、みほを見て言った。

 

「あの子、お前と話がしたいみたいだぜ?行ってきてやんな」

 

そうして、達哉は紅夜の背中を軽く押すと、そそくさと操縦手用のハッチを開けて戦車に乗り込んでいった。

そしてその場には、みほと紅夜が残された。

みほは顔を赤くしながらも、紅夜に近づいてきた。

 

「えっと………………お、お久し振り………………ですね」

「え?お前さんと俺って、どっかで会ったっけ?」

 

みほに話しかけられ、紅夜は淡々とした口調で聞き返す。

「こ、この前、車に轢かれそうになった私を助けてくれたんですよ。覚えていませんか?」

「………………ああ!やっぱそうか!お前さん、あの時の女の子か!」

「そうです!覚えてくれてたんですね!」

 

思い出し、思わず声を張り上げた紅夜に、みほは嬉しそうにする。

 

「いやあ、何かどっかで見たことあるような気がしてたんだが、まさかあの時、車に轢かれそうになってた女の子だったとはなぁ。驚いたぜ」

「私もビックリです。まさか、貴方がレッド・フラッグの隊長だったなんて………」

「まあな。それよりも、お前さんの学校にレッド・フラッグのメンバーが居たって事の方が、ビックリなんじゃねえのか?」

「確かにそうですけど」

 

そんな話をしていると、紅夜はみほの横で、話したそうにしている優花里が見えた。

 

「ところで、その子はお前さんの友人か?」

「え?………う、うん。私達のチームの、秋山優花里さん」

「ど、どうも…………Aチーム装填手の、秋山優花里です………」

 

恥ずかしそうにしながら優花里が名乗ると、紅夜は軽く微笑みながら言った。

 

「レッド・フラッグ隊長の長門紅夜だ、よろしくな」

「は、はい!」

 

余程返事を返されたのが嬉しかったのか、優花里は花が咲いたような笑みを浮かべる。

 

それから話しているうちに、もう暗くなりかけていた。

 

「おい紅夜、そろそろ行こうぜ~。でねえと静馬が苛つき始めるぞ~」

「ああ!直ぐ行くよ!」

 

IS-2の操縦手用のハッチを開けて身を乗り出した達哉が呼び掛けると、紅夜は返事を返してみほと優花里に向き直る。

 

「悪いな、そろそろ行かねえとチームメイトに怒られちまう」

「い、いえそんな!私は長門殿と話せただけでも光栄です!」

「そりゃどうもな。んじゃあ、明日辺りに取りに来るよ。じゃあな」

 

そう言って、紅夜はIS-2の方へと駆け出していった。

 

「戦車道の事、前向きにお願いしますね~!!」

 

その背中に、優花里からの声を受けながら、紅夜はIS-2のフェンダー部分に足を置き、そのまま砲塔上面にあるキューボラハッチの上に飛び乗る。

 

そしてハッチを開けて車長の座る椅子へと腰掛け、チーム全員にピストルで出発の合図を送り、山林へと戻る。

 

それから格納庫に戦車を置いた一行は、今日の試合について互いに労いながら、其々の家路につくのであった。


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