ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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 ここでトンでもない展開を入れます。そして、久々(?)にあの人が登場!


第150話~ちびっこ紅夜君、その6です!~

 昼食を終え、公園でのミカとの交流を経て宴会場へと戻ってきた、レッド・フラッグ男子陣。

 そんな彼等を待ち受けていたのは、紅夜争奪戦を繰り広げていた女子陣だった。

 表面上は笑みを浮かべているものの、その背後からおぞましいオーラを纏っている女性陣に、たじたじになる男子陣。果たして彼等の運命は………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~てアンタ等、アレは一体何の真似なのか説明してもらおうかしら?」

『『『………………』』』

 

 女性陣を代表するかのように前に出た静馬の前では、紅夜を除いた6人の男子が正座させられている。

 全員顔面蒼白の状態で冷や汗を流しており、この宴会場に戻ってくる前までの楽しげな雰囲気は、すっかり引っ込んでいた。

 

 因みに紅夜はと言うと、彼等から少し離れた所でクラーラの膝の上に座っており、そのまま背後から抱き締められていた。

 幸せそうな表情で彼を抱き締めるクラーラを見る限り、どうやら今回の紅夜争奪戦では、彼女が勝利したようだ。

 

「ねぇ、クラーラお姉ちゃん」

「なぁに?」

 

 不意に話し掛けてきた紅夜に、クラーラは猫なで声で答える。

 

「静馬お姉ちゃん達、達哉お兄ちゃん達の前で何してるの?」

「それは………」

 

 その質問に、クラーラは答えかねていた。

 『自分達が紅夜を取り合っている内にかっ拐っていったので、それについての尋問をしている』と正直に答えてしまうのは簡単だ。だが、そうすると紅夜がどんな反応をするのか、想像もつかない。

 みほやノンナのように怯えられるのは、何としても避けたかった。

 

「その………ちょっとお話ししてるだけよ」

 

 クラーラは一先ず、それでお茶を濁す事にした。

 

「ふーん………」

 

 そう言ったきり、紅夜は黙ってしまう。

 

「と、ところで紅夜君。達哉お兄さん達とは、何をしていたの?」

 

 沈黙した雰囲気を変えようとしたのか、取り敢えず別の話題を持ち掛けるクラーラ。

 

「えっとね。お昼ご飯食べて~、その後公園に寄って~、ミカお姉ちゃんに会って~……」

 

 当時の事を楽しそうに話す紅夜。彼の話を聞きながら、クラーラは彼と時間を共にした達哉達男子陣や、ミカに嫉妬した。

 

「お姉ちゃん、どうしたの?何処か痛いの?」

「え?な、何でもないわよ?」

 

 達哉達への嫉妬が表情に出ていたからか、クラーラは顔をしかめていたらしく、その表情からクラーラの体調が良くないと思ったのか、心配そうな表情を浮かべた紅夜に話し掛けられ、クラーラは即座に否定し、安心させようと笑みを浮かべた。

 

「そっかぁ~、良かった~♪」

「ッ!」

 

 そう言ってニパッと笑みを浮かべる紅夜に、クラーラは赤面しつつ、より愛しげに、紅夜を抱き締めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「それで………紅夜とのお昼ご飯は楽しかったかしらぁ?」

『『『………(こ、恐ぇ~)』』』

 

 その頃、達哉達は静馬からの尋問を受けている最中だった。

 

「(おい達哉、お前レストランに入った時、『紅夜そっちのけにしてた奴等が悪い』的な事言ってたろ?あの台詞の出番だ、言え!)」

「(いやいや、ふざけんなよ翔!それ言った途端に俺の処刑確定するっつーの!)」

「(じゃあ他にどうしようってんだよ?)」

「(いや勘助よ、どうしようって言ったって、この状況じゃどうしようも…………って、ちょい待て。そもそもだがお前等、俺に全責任負わすつもりか?)」

「(そりゃまあ、な)」

「(だって言い出したの達哉だし)」

「(テメェ等マジふざけてんじゃねぇぞゴルァ!)」

 

 阿修羅とも呼ぶべきオーラを放つ静馬の前では、男子陣の中で誰を生け贄にするかの討論が行われていた。

 全員俯いていたため、多少視線を動かしても大丈夫だと高を括っていたのだが…………

 

「ところで皆さん、先程から目が小刻みに動いているようですが…………」

『『『(コイツなんで分かったし!?)』』』

 

 それがノンナにあっさりと見破られ、男子陣はビクリと体を強張らせる。

 

「フフフッ……これは、ボコの人形が一気に6つも手に入りそうな予感だなぁ………やっぱり包帯や絆創膏準備しといて良かった~………アハ、アハハハハ♪」

『『『(西住さんメッチャ恐ぇぇぇええええっ!!)』』』

 

 光の籠っていない目で笑みを浮かべながら言うみほに、男子陣の額から流れ出る汗は一気に増す。

 

「(おい、マジでどうすんだよこの状況!?何か良い方法ねぇのか!?)」

「んな事言われたって俺が知る訳ねぇだろ!」

 

 完全に窮地に追い込まれた男子陣は、この状況の打開案を必死に考えていたのだが、自分にばかり打開策を求められる事に対して遂に堪忍袋の緒が切れたのか、達哉が怒鳴った。

 

「つーかテメェ等、自分で考える事も出来ねぇのか!?俺にばっか言っても意味ねぇのは火を見るより明らかだろうがボケ!その黄緑の髪の毛刈り上げんぞ!」

「んだとゴルァ!やれるモンならやってみやがれ!ぶち殺して海に沈めてやらァ!!」

「まぁまぁ、達哉も翔も落ち着k……「「うっせぇよ蛇の目野郎!」」………テメェ等死にてぇのか?あ”あ”!?」

「大河までぶちギレてどうすんだよ!?」

 

 精神的に極限まで追い込まれていたからか、達哉と翔と大河は女性陣そっちのけで暴走状態に陥る。

 

「アンタ等何仲間割れしてるのよ!?そもそも今は私達が話してるんでしょうが!」

「五月蝿ェ!そもそもこうなったのはテメェ等のせいだろうが暴力女!」

「そうだそうだ!」

「俺等を責める前に、紅夜そっちのけで争奪戦してた自分等を責めろやアホ共!」

『『『『『『『何ですってぇ!?』』』』』』』

 

 注意を向けようとした静馬に、達哉達から反撃とばかりに罵声が浴びせられ、それが他の女性陣にも飛び火して女性陣が激怒し、この宴会場は、男子陣VS女性陣での戦場になろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あわわわ、何か大変な事になってるよぉ~」

 

 その光景を見ていた紅夜は、アワアワとした表情で、顔を達哉達男子陣と、静馬達女性陣の交互に向けながら言った。

 これが本来の紅夜なら、上手く打開案を考えられるかもしれないが、子供になっている今の状態では、ロクな考えが浮かばない。

 

「クラーラお姉ちゃん、どうしよう~」

 

 自分ではどうしようもないと悟った紅夜は、クラーラに助けを求めた。

 目尻に涙を浮かべ、縋るような視線を向けられたクラーラは、内心身悶えつつ、一先ず落ち着かせようと、彼を抱き寄せようとした。

 そんな時だった。

 

「なら、良い方法があるぜ?坊主」

「「え?」」

 

 横から突然声を掛けられ、紅夜とクラーラの声が重なる。

 その声の主へと顔を向けると、其所にはジュース入りのペットボトル(1リットルサイズ)を片手に、黒髪の青年、八雲蓮斗が座っていた。どうやら、瞬間移動で勝手に入ってきたらしい。

 彼の傍らには、此処に来る前に履いていたのであろう靴が、靴底を合わせて置かれてある。

 

「だ、誰ですかあなt……ヒッ!?」

 

 大声を出そうとしたクラーラだが、蓮斗に睨まれて怯む。

 

「悪いな嬢ちゃん、俺は其所の坊主と話してんだよ。それに、今此処で叫ばれたら困るんだわ。ちょっとばかり黙ってな」

 

 そう言うと、蓮斗は紅夜の方に顔を近づけた。

 

「んで、改めて問うが…………坊主、向こうで争ってる連中を止めたいか?」

「う、うん」

 

 クラーラを視線だけで黙らせた蓮斗に怯みながら、紅夜は頷いた。

 

「そうか………なら坊主、お前の出番だ」

「え?」

 

 蓮斗の言葉に、紅夜は首を傾げる。

 

「お前が、彼奴等を止めるのさ」

「そ、そんなの出来ないよぉ~」

 

 蓮斗が言葉を続けると、紅夜は無茶を言うなとばかりにブンブンと首を横に振る。

 そうなるのも当然だ。何せ蓮斗は、一触即発な雰囲気になっている男子陣と女性陣の間に入れと言っているようなもの。それを子供になっている紅夜にやらせようとしているのだから、紅夜がこんな反応を見せるもの、無理はない。

 それでも尚、蓮斗は言葉を続ける。

 

「そうは言うがな、彼処で争ってる連中を止めれるのは、お前しか居ねぇんだぜ?」

 

 蓮斗がそう言うと、紅夜はブンブンと振っていた首の動きを止め、蓮斗を見上げる。

 

「彼奴等は今、お前の事で争ってる。それに女性陣の方は、お前の争奪戦をする程お前を好いている。なら、そんなお前が一言、『止めろ』と言えば、彼奴等も鎮まるだろうよ」

「でも、恐いよぉ………」

 

 そう言って、紅夜は俯いて渋る。ならばとばかりに、蓮斗はズイッと、紅夜に顔を近づけた。

「坊主。そんなに不安なら、とっておきの方法を教えてやろう」

「え?」

 

 蓮斗の言葉に、紅夜は顔を上げる。先程まで蚊帳の外にされていたクラーラも蓮斗、の方に顔を向ける。

 

「“とっておきの方法”………そんなのあるの?本当に?」

「ああ、本当だ。それも、ただ一言言うだけで良い。これは、向こうで嵐の如く怒り狂ってる彼奴等を、手品のようにピタッと鎮める、一撃必殺とも言うべき魔法の言葉だ」

 

 そう言うと、蓮斗は紅夜に耳打ちする。

 

「………本当に、そう言えば皆、喧嘩を止めてくれるの?」

「ああ、勿論だ。賭けても良いぜ?」

 

 不安げに聞く紅夜にそう言って、蓮斗は不適な笑みを浮かべる。

 

「………………」

 

 そうして、暫く沈黙していた紅夜だが、やがて意を決したように頷いた。

 

「うん、分かったよ。お兄ちゃんを信じる」

「おう、まぁ頑張ってこいや」

 

 そんな蓮斗のエールを背に受け、紅夜は今にも取っ組み合いを始めそうになっている達哉達の方へと歩いていった。

 

 

「あ、あの………」

「ん?」

 

 そんな紅夜を見ていた蓮斗に、クラーラはおずおず話し掛けた。

 

「ああ、さっきは怖がらせて悪かったな嬢ちゃん…………んで、俺に何か用か?」

「紅夜さんに、何を言ったんですか………?」

 

 単刀直入に、紅夜に耳打ちした内容を問うクラーラ。

 

「何を言ったのかって?簡単な事さ」

 

 そう言って、蓮斗はペットボトルの蓋を開けて中身をラッパ飲みする。

 そして蓋を閉めて言った。

 

「『“今直ぐ喧嘩を止めて仲直りしなかったら、争ってる連中全員嫌いになる”と言え』って言ったのさ」

「……………」

 

 何と言えば良いのやら、クラーラは唖然とした。

 そんなクラーラなどお構い無しに、蓮斗は言った。

 

「変な事を餓鬼に言わせても、場をさらにややこしくするだけだ。なら、そんなに難しい事を言わせず、もっと簡単且つ、彼奴等がされたら困る事をすると言わせれば良い」

「その“困る事”と言うのが………」

「そう、あの坊主に“嫌われる事”だ。きっと彼奴等、喧嘩なんて速効で止めて坊主の機嫌を取ろうとするさ」

 

 そう答え、蓮斗は紅夜の方を見た。

 

「さぁ、面白い光景が見れるぜ」

 

 そう言う蓮斗の蒼い瞳が、キラリと光った。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、蓮斗に置いてきぼりにされた雪姫は、自販機で買ったコーンスープの缶を片手に建物1階のソファーに腰掛け、蓮斗が戻ってくるのを一人寂しく待っていたとか…………




 どうも、弐式水戦です。

 久し振りの投稿ですが、如何でしたか?

 まさか、こんな展開にするとは予想だにしなかったでしょう。


 さてさて、蓮斗から『魔法の言葉』を授かった紅夜君。彼の言葉に、争ってる達哉達はどんな反応を見せるのか、次回をお楽しみに。


………………さて、課題するか

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