ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第144話~状況説明です!~

 隠し芸大会で盛り上がりを見せた、大洗女子学園戦車道チームとレッド・フラッグによる祝賀会。

 突如として出し物を披露する事になったレッド・フラッグだが、意見が纏まらなかった事もあり、結局出し物は、杏や他のメンバーで予め用意していたと言う、栗饅頭でのロシアンルーレットとなった。

 そのロシアンルーレットにてハズレを引いた紅夜と達哉だが、達哉が激辛の栗饅頭を食べ、あまりの辛さにのたうち回る傍らで、紅夜は何の反応も見せなかった。

 

 結局、そのまま紅夜に変化が訪れる事無く迎えた結果発表。

 3位は、1年生達ウサギチーム、2位は、みほ達あんこうチーム。そして、1位は生徒会、カメチームとなった。

 

 

 その後、杏がこの宴会場を翌日の午後5時まで使用出来るように話をつけていたのもあり、夜通しでの祝賀会が決まった訳だが、その時、紅夜の体に異変が訪れる。

 何と、紅夜は突然倒れ、もがき苦しみ始めたのだ。

 突然苦しみ始める紅夜を見てパニックになる面々だが、静馬は、紅夜が苦しんでいる原因が、ロシアンルーレットでの栗饅頭にあると見抜き、杏を問い詰める。

 だが、その時に達哉が話に割り込んできて、紅夜の体が縮んだと言い出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅夜の体が、縮んだ………?」

「そうなんだよ。それも、何処ぞの探偵アニメみてぇな小学生ぐらいじゃなくて、5歳とかその辺りだ」

 

 達哉から衝撃の事実を知らされた静馬は、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべて聞き返し、それに達哉は頷いた。

 その後、静馬は紅夜の元へと走り出した達哉についていった。

 

 先程紅夜が苦しんでいたのもあってか、既に紅夜の周りには、みほ達大洗チームやレッド・フラッグの面々が居た。

 そんな人だかりを掻き分け掻き分け、静馬は紅夜の元へと辿り着いた。

 

 体が縮んだ紅夜は、今は眠っており、黒姫に膝枕をされていた。

 

「黒姫、紅夜の状態は?」

 

 静馬は紅夜を起こさないよう、小声で黒姫に訊ねる。

 

「今のところは問題無いよ。体が縮んでからは、大分落ち着いたみたい」

 

 黒姫がそう言うと、静馬は安堵の溜め息をついた。

 

「それじゃあ、最初に紅夜が苦しんでいたのは…………」

「栗饅頭と一緒に飲み込んだ薬か何かが効いてきたんだろうな」

 

 達哉はそう言うと、杏達の元へと近づいた。

 

「なぁ、角谷さんよ。お前、紅夜が食った栗饅頭には何入れたんだ?……いや、まぁ紅夜の様子からして、大体の想像はつくんだが……………」

「あー、その…………」

 

 達哉が訊ねると、杏は言いにくそうにしながら目を泳がせる。

 

「ねぇ、達哉」

「ん?」

 

 だが、そんな時、眠っている紅夜を抱き抱えた黒姫が達哉に声を掛けた。

 

「ご主人様が起きちゃうかもしれないから、少し離れた場所で寝させてから話の続きをしてくれる?」

「え?……あ、そうだな。良いぜ」

 

 達哉が頷くと、黒姫は紅夜を抱いて、アリクイチームが座っていた場所に寝かせると、そのまま戻ってきた。

 因みに、黒姫が戻ってくるまでの数秒の間に、杏達生徒会メンバーの3人は、横1列に並んで正座させられていた。

 

「さぁて、会長?紅夜が何故あんなに小さくなったのか、洗いざらい全部話してもらおうかしら?」

「う、うん………それがね………………」

 

 静馬の気迫に圧されながら、杏は紅夜が子供になった理由を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『子供になる薬?』』』』』』』

「ああ、そうなんだ」

 

 メンバーが聞き返すと、桃が頷く。

 

「これは、紅夜君がバイクの免許を取ろうとしている間の事なんだけどね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

――数日前――

 

『――成る程、では、夏休みの――――では別の学校とチームを組む…………と言う事ですね?』

「そっ!」

 

 その日、杏は聖グロリアーナのダージリンと、夏休み中に行われる“ある行事”について連絡を取っていた。

 

『分かりました。では、私達もペアを組んでくださる学校を探すとしましょう』

「いやぁ、悪いねぇ」

『いえいえ、お気になさらず』

 

 受話器の向こうでは、何時ものように落ち着き払ったダージリンの声が聞こえてきた。

 

『ところで、角谷さん?』

「ん?どったの?」

 

 突然話題を変えてきたダージリンに、杏は聞き返す。

 

『貴女達、紅夜さんのお見舞いには行ったのですか?』

「……いや、残念ながら行けてないなぁ。まぁ、入院初日と2日目には須藤ちゃん……あ、レッド・フラッグの副隊長でパンターA型の車長やってる娘なんだけど、あの娘が行ってくれたよ………でも、なんでいきなり?」

『それがですね………』

 

 そう言うと、ダージリンは紅夜の見舞いに行った時の事を語った。

 紅夜の病室に向かう最中にサンダースのケイと遭遇し、そのまま2人で紅夜の病室を訪れた事や、ケイと共に、昼食を紅夜に食べさせた時の事を、楽しそうに語っていた。

 

『――それで、その時の紅夜さんときたら、本当に可愛くて……………』

「ほぉ~」

 

 相槌を打ちながら、杏は最早のろけ話になりつつあるダージリンの話を聞いていた。

 すると、受話器の向こうからダージリン以外の女子生徒の声が聞こえてくる。

 

『ごめんなさい、少し呼ばれたので、この辺りで』

「あいよ、じゃね~」

 

 そう言って電話を切ると、杏は元々座っていたリクライニングチェアに深々と凭れ掛かる。

 

「会長、やけに長く電話していましたね」

「そうなんだよ、ちょっとのろけ話聞かされてね………ダージリンがケイと一緒に、紅夜君のお見舞いに行ったんだってさ」

「それで、長門の様子は………?」

「良好だってさ。本人も元気そうだって言ってたよ」

 

 桃の質問に杏が答えると、桃と柚子は安堵の溜め息をついた。

 

 

 その後、3人は生徒会室を出て校内を歩き回っていたのだが、その間、杏の機嫌は良いものとは言えなかった。

 

 

「それにしても紅夜君、入院してる間に随分と良い思いしてるそうじゃん。私等が心配してる影でダージリン達に『あ~ん』とかしてもらったらしいし………」

 

 不機嫌そうに言いながら、杏は紅夜が帰ってきた後、彼に何かしらの悪戯を仕掛けようと画策したのだが、紅夜に対して有効な悪戯が思い浮かばずにいた。

 一応、紅夜は妖艶な雰囲気での誘惑を苦手としているが、少なくとも、杏の知り合いの中でそれが出来る者は居ない。

 レッド・フラッグの静馬などに頼んだとしても、スルーされるのが関の山である。

 

「う~ん、何か良さそうな悪戯は無いのかねぇ~?」

「落とし穴とかはどうですか?」

「それではスケールが小さすぎるだろ。第一、建物内に落とし穴など掘れんからな」

 

 そう言いながら歩いていた、その時だった。 

 

「遂に………遂に完成したぞ!」

「ん?」

 

 通り掛かった教室のドアの向こうから、何かの完成を喜ぶ声が聞こえてくる。

 教室のプレートを見ると、其処には“科学実験室”と書かれていた。

 

「科学部か~、こんな部活もあったんだねぇ……面白そうだし、ちょっと見ていこっか!」

 

 そう言うと、杏は2人を連れて科学実験室へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――んで、其所でちょうど子供になる薬作ってて、それが完成したらしいから、1錠貰ってきたって事なのさ」

 

 正座させられながら、杏はそう言った。

 

「そう言う事なのね…………それで?その薬の効果は何時まで?」

「24時間だ」

 

 静馬の問いに、桃は即答で答える。

 

「つまり、明日の夜11時頃まで、祖父さんはこのままって訳か」

「そうなるだろうな………まぁ、でも大丈夫だろ」

 

 大河の呟きに、何故か楽観したような返事をする達哉。そんな達哉に、他のメンバーは怪訝そうな視線を向けた。

 

「大丈夫って、何が大丈夫なんだよ?」

 

 そのメンバーを代表するかのように、大河が訊ねる。

 

「いや、だって明日になれば、俺等は此処を出て学園艦に戻る訳だし、そもそも明日は休日だからな。その辺は黒姫や静馬辺りが何とかするだろうよ。なんなら俺も手伝いに行けば良いし」

『『『『『『『『あ~~!』』』』』』』』

 

 達哉の尤もな意見に、一同は納得したように頷いた。

 『これで全てが解決する』と、誰もが思っていたのだが………………

 

「あ~、いや。その事なんだけどね……?」

『『『『『『『『?』』』』』』』』

 

 突然話を切り出してきた杏に、メンバーは視線を向ける。

 

「実は、紅夜君が薬飲んだ直後に、あちこちの学校にメッセージ回しちゃったから……」

「へぇ~…………だから?」

 

 静馬は黒い笑みを浮かべながら、杏の頭を鷲掴みにして続きを促す。

 

「少なくとも、サンダースや聖グロ、プラウダから“お客さん”が来るよ」

『『『『『『『『………………はぁ!?』』』』』』』』

 

 杏のトンでもない発言に、メンバーは驚愕のあまりに目を見開く。

 

 

 そんなメンバーを置いて、大洗の港に、ヘリや飛行機、そして船が全速力で向かってきているのであった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ミカ。なんで大洗に行こうなんて言い出したの?」

「…それはね、アキ。風が私に言ったのさ……『明日、大洗で面白いものが見えるよ』ってね」

「面白いもの、ねぇ~。そりゃ楽しみだな!」

 

 

 

 

 明日の紅夜の運命や如何に?


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