ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第142話~盛り上がる隠し芸大会、中編です!~

 祝賀会にて開催された、各チーム対抗の隠し芸大会。

 最初にカモチームから始まって、レオポン、アリクイ、ウサギと続いてきた。

 無反応、高揚からの落胆、ブーイングなど、かなり散々な評価を下されたチームもある中で、隠し芸大会も折り返し地点。

 5番手となるのはどのチームなのか………………!?

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、5番手の登場です!」

「次は誰だろうな~。カバチームかな?それともカメチーム?」

「それもそうだが、俺等一向に呼ばれねぇけど、何時やるんだろうな?そもそも出番あるのか?」

 

 翔が次のチームが誰なのかと予想を立てる隣で、勘助は、自分達が全く呼ばれない事に首を傾げていた。

 

「復活掲げて幾悽愴!どんな苦労もレシーブし、野次や嘲りブロックし、アタック道を切り開く!バレー部、アヒルさんチームです!」

 

 垂れ幕が上がると、アリクイチームのように横1列に並んだアヒルチームの面々が立っていた。

 

「それでは、物真似やりま~す!分かった人は手を上げて答えてくださ~い!」

 

 典子が元気良く言うと、レッド・フラッグの面々は意外そうな表情を浮かべた。

 

「ほぉ、物真似か」

「アヒルさんチームにしては、随分と可愛らしい芸だな」

 

 ジュースのコップを持った勘助が言うと、翔が付け加えた。

 

「確かにな。磯部さんって、よく『根性』とか言ってるから、此処で根性系の出し物してくれと思った」

「根性系か…………紅夜に喧嘩売るとか?」

 

 翔の言葉に達哉が相槌を打つと、話を聞いていた七花がトンでもない例えを出してきた。

 

「そんな事してみろ。アヒルさんチームはこの舞台からではなく、この世から退場させられる」

「失礼な奴だな。お前は俺をどんな風に見てるんだ?」

「泣く子がさらに泣く、ライオンや虎や鮫もビビって逃げ出すような化け物」

「………お前が俺の事をどう思ってるのか、1度じっくり話し合う必要がありそうだな」

 

 ジト目で睨む紅夜に、達哉がおちゃらけて返すと、紅夜は手をボキボキ鳴らし始めた。

 

「そ、それもそうだが紅夜!アヒルチームの物真似見ようぜ!」

「「(あ、コイツ逃げたな)」」

 

 話題を逸らそうとした達哉を見て、翔と勘助は同じ事を思ったと言う。

 

「わぁ~!面白そうです!」

 

 そんな中で、華は人一倍盛り上がっていた。

 

「五十鈴殿、何故そんなにもワクワクしてるのでありますか?」

 

 人一倍盛り上がっている華に、優花里が訊ねる。

 

「私、当てるの大好きなんです!」

「砲手だけに」

「あ~……」

 

 麻子が言うと、沙織は何処と無く納得したような声を発した。

 

「それでは、第1問です!」

 

 典子が言うと、ティーカップを持った妙子と忍が何かを飲む真似をする。

 

「分かりました!」

「いや、未だ物真似やってませんから!」

 

 直ぐ様手を上げて答えようとする華だが、典子がそれを押さえた。

 

「ねぇ、知ってる?」

 

 突然、妙子が普段の彼女とは思えない程に落ち着き払った声色で話を始めた。

 

「優秀な将とは芽のようなもので、其処から勇敢な兵士が枝のように現れるのよ」

「はい?」

「ダージリンさんとオレンジペコさんです!当たってますよね!?」

 

 妙子と忍のやり取りを見た華は改めて答え、正解を周囲に確認しようとする。

 

「当たってるけど、これ、逆に当てられない方がどうかしてるよ…………」

 

 そんな華に、沙織は白けたような視線を向けながら言った。

 

「では、次いってみよう!」

 

 典子がそう言うと、今度はあけびが片眼鏡を掛けた。

 

「分かりました!」

「すみまんが五十鈴さん、物真似の後にしてください!」

 

 またしても一番乗りで答えようとする華だが、典子にそう言われて大人しく引き下がった。

 

「良いか!?下手な芸をした奴は絶対に許さん!厳罰に処す!」

 

 あけびがしたのは、桃の真似だった。

 

「お~、河嶋の真似か~………似てるよな、小山?」

「そうですね」

「全然似とらん!」

 

 杏と柚子は笑っているが、まさか自分の物真似をされるとは思わなかったのか、桃は顔を真っ赤にしながら断固として否定した。

 

「桃ちゃん、そんなに怒らなくてもぉ………」

「“桃ちゃん”と呼ぶなぁ!」

 

 あけびに“桃ちゃん”と呼ばれ、桃は、普段柚子に言っている台詞をあけびにぶつけるが、当のあけびはそのままスルーしていた。

 

「もう駄目だよぉ~、柚子ちゃ~ん!」

『『『『『『『『あはははははは!!』』』』』』』』

「わ、笑うな!何故笑う!?」

 

 余程似ていたらしい。メンバー全員が大笑いしていた。

 

「や、止めてください!皆チームメイトなんですから!戦うのは味方とではなく、戦車なんです!」

「みほさん!」

「え、私!?」

 

「に、西住殿の言う通りであります!」

「秋山さん!」

 

「ぐー………」

「麻子さん!」

 

「女子はねぇ、下手にスペック高いのよりも、低い方がモテたりするの!ちょっとポンコツな方が可愛いでしょ?」

「沙織さん!」

 

 典子が続けざまに物真似をすると、華は的確に当てていく。

 このまま次も当てるのかと思いきや…………

 

「弾は1発で十分です。必ず当ててみせます!」

「これは、何方でしょう?」

「「「「ええっ!?」」」」

 

 最後のは当てられなかった。どうやら、自分の物真似だとは分からないようだ。

 

「「「「以上で~す!!!」」」」

 

 そして、アヒルさんチームの出し物が終わり、垂れ幕が下がった。

 

「もう終わりですか…………」

「残念そうにしてるの華だけだよ」

 

 物足りなさそうに呟く華に、沙織はやれやれと言わんばかりの表情で言った。

 

 

 

「次、6番手!未来は見ない、過去を見る!ロマン求めてなりきって、カバさんチーム!」

 

 その声と共に垂れ幕が上がると、ピアノを弾いているエルヴィンと、その隣の椅子に腰掛けるおりょう。鼻に洗濯バサミをつけている左衣紋佐、そして、その隣に並び立つカエサルが現れた。

 

「そんな事したって、鼻は高くならないわよ。エイミー」

「そんな事ないわ、ジョー」

 

 カエサルが言った事に、洗濯バサミを挟んでいるからか、鼻声で左衛門佐が返す。

 

「フフッ………」

「エイミーは今のままでも可愛いわ」

 

 おりょうがその光景を見ながら微笑んでいると、エルヴィンはピアノを弾きながらそう言った。

 

「ベスは優しいのね」

「メグお姉様の方がお優しいわ」

 

「…………何だこの劇?」

 

 それを見ていた紅夜が、小声で達哉に訊ねた。

 

「さぁ?俺にもよく分からん」

 

 だが、達哉でも分からないらしく、聞かれた達哉も首を傾げるばかりだ。

 

「見たところ、カエサルさんがジョー、左衛門佐さんがエイミー、エルヴィンさんがベスでおりょうさんがメグを演じてるようだが…マジで何だろうな………勘助、お前は何か知ってるか?」

「いや、全然」

 

 どうやら、ライトニングのメンバー全員が、この劇を知らないようだ。

 

「あー!私知ってるよ、この劇!“若草物語”だ!」

「何それ?」

 

 梓は知っているらしく、劇のタイトルを思わず口にするが、どうやらウサギさんチームの中で、知っているのは彼女だけのようだ。

 

「ぐあっ!?」

 

 突然、エルヴィンが演じるベスが吹っ飛び、地面に倒れた。

 

「ッ!?ベス!」

「どうしたの、ベス!?しっかりして!」

「は、早くベッドへ!」

 

 それを見た3人はパニックに陥り、ベスをベッドへと運ぼうとする。

 すると、一旦垂れ幕が下がり、数秒後には上がる。

 何時の間にか、舞台のセットも変わっており、ベッドにベスが寝て、他の3人が看病している場面から、誰かの寝室である事が分かる。

 

「お願い、ベス。助かって……!」

「私、良い子になるから!」

 

 ベッドに寝かされたベスに、ジョーとエイミーは言う。

 

「ああ、こんな時にお父様が居てくださったら………」

「お父様は、1861年から始まった南北戦争で、立派に戦っていらっしゃるのよ」

 

 どうやら父親も居るらしく、彼が居たらと願うメグに、ベスはそう言った。

 

「南民がサムスター要塞を攻撃したのがきっかけだったのよね?」

 

「おい、お前等!歴史ネタ禁止と言った筈だぞ!」

「分かってます、分かってます」

 

 歴史上の出来事を口にするメンバーに、桃の言葉が飛ぶが、カエサルはヒラヒラと手を振りながら答えた。

 そして、劇は再開される。

 

 

「ああ、お父様が居てくださったら!」

「お父様は立派に戦っていらっしゃるのよ!」

「戦争が長引くからいけないんだわ!」

 

 エイミーは涙声で言う。

 

「第一次ブルマンの戦いで南軍が激しく抵抗するから!」

「ロバート・エドワード・リーが、アメリカ史上屈指の名将だから!」

 

「お~ま~え~た~ち~!」

「分かってます、分かってますって」

 

 手をボキボキ鳴らしながら言う桃に、カエサルはまたしても、手をヒラヒラと振りながら言った。

 

 

「く、苦しい………」

「しっかりしなさい、ベス!」

「死なないで!私、良い子になるから!」

 

 苦しむベスに寄り添い、尚も言葉を投げ掛ける3人。

 

「リンカーンが大統領に就任したら戦争は終わる!」

「そうしたら、お父様も絶対に帰ってくる!」

 

「でもリンカーンは、ロバート・エドワード・リーが降伏した6日後に暗殺されるのよ」

「フォード劇場でね」

「ボックス席に座っていたところをデリンジャーピストルで撃たれたのよ!」

「1865年の事よ。その時は日本でも色々あったわ!雷門が焼けたり、長崎で蒸気機関車が走ったり…………」

 

「お前等、歴史ネタ禁止と言ったろ!強制終了だ!退場、退場!」

 

 遂に耐えかねたのか、舞台に乱入してきた桃によって、カバチームの劇は強制終了となった。

 

 

 

「それでは皆さんお待ちかね!まさかの戦い繰り広げ、戦車道史に新たなページを刻んだ、優勝の立役者!」

 

 そして垂れ幕が上がり、戦隊もののスーツに身を包んだみほ達あんこうチームの面々が現れる。

 

「野行き森行く、オリーブドラブ!」

「海は任せろ、ネイビーブルー」

「黒い森行く、ジャーマングレー!」

「砂漠に咲く花!デザートピンク!」

「錆から守る、オキサイドレッド!」

 

「戦隊ものか~。ガキの頃はよく見てたなぁ~」

 

 其々ポーズを取りながら名乗るあんこうチームの面々を見ながら、紅夜は呟いた。

 

「5人の力で戦車が動く!」

「「「「「我等、パンツァー5!!」」」」」

 

 5人が同時にポーズを決めると、彼女等の背景に、あんこうチームのエンブレムと『P5』と言う文字が現れた。

 

「「わぁ~っはっはっは~~!」」

 

 すると、何とも棒読み感満載の笑い声を上げながら、カジキの着ぐるみに身を包んだ桃と、貝の着ぐるみに身を包んだ柚子が、リフトの上に現れる。

 

「あーっ!彼処に敵が!」

「悪の組織、“生徒会”だ!」

 

「大洗は我々が支配した~!」

「此処は悪の本拠地になるのよ~!」

 

 指を指して声を上げる華と優花里に、桃と柚子はそう言った。

 すると、パンツァー5のメンバーは揃ってポーズを決める。

 

「そうはさせない!」

「私達が、お前達を倒す!」

「行くわよ、生徒会!」

「正義の拳を受けてみよ!」

「行くぞ……ッ」

 

 その声と共に、ヒーローショーでもよく見かけるようなバトルが繰り広げられる。

 因みに、それを見ていたウサギさんチームの面々は、かなり楽しんでいた。

 

「うぅ~、やられた~!」

「くそぉー!」

 

 柚子は倒れた際に、横幅の広い着ぐるみのせいで立てなくなり、桃はカジキの角が床に刺さり、抜けなくなっていた。

 

「どうでも良いが、穴空いたなら修理しとけよ~?」

「紅夜、その台詞は雰囲気ぶち壊しになるから言うな」

 

 紅夜がふと呟いた事に達哉がツッコミを入れると、別のリフトからあんこうの着ぐるみに身を包んだ杏が現れた。

 

「パンツァー5!この“あんこう怪人”が相手だー!」

 

 杏が言うと、それと連動するかのようにあんこうの着ぐるみの口も動く。

 

「今度はお前等が鍋になる番d……「とうっ!」……あ~れ~!」

 

 杏が言い終わるのも聞かず、みほがワイヤーアクションでの蹴りを喰らわせ、杏が演じるあんこう怪人を蹴飛ばす。

 

「お~、良いぞ良いぞ~!」

「やれやれ~!」

『『『『『『あんこうを倒せ!』』』』』』

『『『『『『あんこうを倒せ!』』』』』』

 

 それを見ていたメンバー全員、最早ノリノリである。

 そして止めを差す場面になるのだが………………

 

「むぅ~!」

 

 余程あんこうが好きなのか、自分が倒されると言う展開に納得がいかない様子の杏。

 

「そうはさせない!おらぁ!」

 

 すると起き上がり、あろうことかパンツァー5のメンバー全員を飛び蹴り1発で吹っ飛ばしたのだ!

 

「えええ~~~~~ッ!?其処までして勝ちてぇのかよあんこう怪人!?」

 

 それを見た紅夜が、堪らずツッコミを入れる。

 

「会長!」

「段取りが違います!」

「やられる筈だろ!」

 

 蹴り飛ばされた5人は文句を言うが、杏は聞く耳を持たない。

 

「五月蝿い!大洗は、あんこうが守る!」

『『『『『『『『オオーーーッ!』』』』』』』』

「いやいや!それで良いのかよお前等!?つーか劇滅茶苦茶になっちまったじゃねぇか!」

 

 観客達からの拍手の中に盛大なツッコミを混ぜながら、あんこうチームの出し物は終了した。

 

「………俺、この祝賀会終わったら角谷をシバき倒しとくわ」

「今のお前がやったら確実に角谷さんが死ぬから止めろ!」

 

 ハイライトを失い、最早ルビーのような赤い瞳にドス黒い雰囲気を含ませた目で言う紅夜を、達哉は思わず羽交い締めにした。

 

 

 

「さて次は、悪知恵猿知恵働かし、花も嵐も踏み越えて、どんな苦境も乗り切った、ご存じ生徒会、カメさんチーム!」

「ちょっと待て!今言ったの五十鈴さんだろ!?何時の間に移動してたんだ!?」

「紅夜、その辺りは気にしたら負けだ」

 

 達哉がそう言って宥めるのを他所に、垂れ幕が上がる。

 其所には湖の絵を背景に、白いレオタードを着た柚子が居た。

 

「生徒会の出し物は、“白鳥の湖”ですね。此処で、バレエに詳しいバレー部の佐々木さん、解説をお願いします」

 

 実況するような口振りで、典子があけびに言った。

 台詞の一部に駄洒落が含まれているが、気にしたら負けである。

 

「あれは、オデットが小山さんで、王子が会長と言った配役ですね」

 

 あけびがそう言う前で、杏がポーズを取った柚子を両手で持ち上げた。

 

「見事なリフトが決まりました!」

 

 あけびが言うと、今度は黒いレオタードを着た桃が現れる。

 

「恋敵役の黒鳥が河嶋さんですが、この次が見せ場です!」

 

 あけびがそう言うと、桃は高速で回り始める。

 

「うわっ、速っ!」

 

 あまりの回転速度に、紅夜は驚きのあまり、目を丸くする。

 

「これは素晴らしい!32回転フェッテ!軸足もブレる事無く、見事に成功しました!」

 

 あけびがそう言うと、垂れ幕もゆっくり下ろされた。

 これで、大洗の8チームの出し物が全て終了した。

 このまま結果発表に移る……と、思いきや………………

 

 

 

 

「んじゃ、次はレッド・フラッグの皆に出し物やってもらうよ~♪」

『『『『『『『……………はい!?』』』』』』』

 

 

 はてさて、この先どうなる事やら。


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