ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第6話~遂に動き出したようです!~

紅夜達一行が戦車の大行進を始めている頃、山林に入ってきたみほ達一行は、戦車の捜索を始めていた。

 

「やっぱ草だらけだね~」

「何かを隠すには、ちょうど良い所かもしれませんね。逆に、もし此処で落とし物をしたら…………後は考えたくないですね」

 

先頭に立って茂みを掻き分けながら、沙織と華が言う。

 

みほと優花里は、後ろで2人に続く形で歩いていた。

 

「へぇ~、じゃあ、この学校には、私以外の戦車道経験者が居るってこと?」

「まあ、あくまでも雑誌に載ってる人達と顔がほぼ同じなので、まあそっくりさんと言うのも考えられますがね………………でも、もし居たとすれば、このレッド・フラッグの人達が戦車道を選んでくれたらなぁ……………戦車も非常に強力ですから、活躍出来ると思うのですが……………」

 

みほと優花里は、優花里の持ってきていた雑誌に載っている、レッド・フラッグの項目を見ながら話していた。

レッド・フラッグが男女混合チームである事に驚きつつも、2人は項目を読み進めていく。

 

「レッド・フラッグって、凄く強かったんだね?」

「ええ、それはもう!なんせ彼等は、戦車道同好会での試合から姿を消すまでの、全戦46戦中、戦歴は『42勝3敗1分け』で、しかも負けと引き分けは最初だけ。つまり、この42勝と言うのは、正確に言えば42連勝だったんですからね!」

「それは強いね。でも、レッド・フラッグのチームの人に似た人なんて…………あ、そう言えばクラスに2人居たかも」

「私のクラスには5人居ますよ」

 

そうして話していると突然、華が立ち止まった。

 

「どうしたの?」

「いえ、彼方から、何やら匂いがするので」

「え、匂いで分かるんですか?」

 

驚きながらも、優花里が訊ねる。

 

「花や草木に混じって、ほんのりと鉄と油の匂いが…………」

「華道やってると、そんなに鼻って敏感になるものなの!?」

「私だけかもしれませんが………………」

 

鼻の嗅覚に驚いた沙織が声を上げた。

 

「では、その匂いのする方向へ、パンツァー フォー!」

「え!?パンツのアホー!?」

 

聞き間違えた沙織が声を張り上げると、みほが苦笑いしながら言った。

 

「『パンツァー フォー』、『戦車前進』って意味なの」

「へ、へぇー……………」

 

初めての単語に戸惑いながらも、どうにか納得した沙織と共に、みほと優花里は華の後を追う。

すると、土手に乗り上げるような形で放置されている、1輌の戦車の元に辿り着いた。

 

「これ、38t…………」

「何かコレ、さっきのよりちっさいじゃん。いすだらけぽつぽつしてるし……………何か脆そう」

「何を言うのですか武部殿!この戦車はですね、ドイツのロンメル将軍の第7走行師団の主力を務め、初期の電撃戦を支えてきた、重要な戦車なんですよ!」

 

沙織の言ったことに反論しながら、優花里は38tに頬擦りしていた。

 

「あ!因みにですけど、38tの『t』というのは、『チェコスロバキア製』という意味であって、重さの意味ではないんですよ!」

 

そう言い終えると、優花里は自分がハイテンションで喋っていたことを思い出し、赤面する。

 

「い、今……………スッゴく生き生きしてたよ」

「す、すみません」

 

沙織にツッコミを入れられ、しょんぼりとした時だった。

 

「何か、音が聞こえませんか?」

「え、何?」

 

周囲を歩きながら見回していた華が、突然そんな事を言い出したのだ。

そして、他の3人も耳を傾ける。

 

「……………あ、確かに聞こえる」

「何かのエンジン音みたい………」

 

沙織とみほは、音の正体が何か分からずとも、音だけは聞き取れたようだ。

 

「こ、これって…………もしかして……………ッ!?」

「ゆ、優花里さん!?」

 

優花里は突然走り出し、みほ達は突拍子もない優花里の行動に戸惑いながらも後を追う。

 

そして追い付いた時、優花里は茂みでしゃがんで震えながら、ある場所を凝視していた。

 

「ゆ、優香里さん!一体どうしたの………………ッ!?」

「な、何々?何があった…………………え?」

「なッ!?」

 

追い付いた3人も、優花里が見ている方向にあるものを見て驚く。

その先に見えたものは……………

 

「せ、戦車!?」

「し、しかも3輌も…………!?」

「そ、それにアレ、動いてる………」

 

木と木の間を進んでいく、3輌の戦車--IS-2、パンターA型、シャーマン・イージーエイト--だった。

 

「こ、これは大変です!早く知らせないと!」

 

そう優花里が言うと、それに押されたかのようにみほがスマホを取り出し、学校で待機している生徒会メンバーの1人、杏に連絡を入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

「38tね、オッケーオッケー。ご苦労様………え、38tではない他の戦車が動いてる?ホント?………………ふんふん、IS-2にパンターA型、それにシャーマン・イージーエイトか……………これは是非ともウチに欲しいねぇ…………って、ちょっと待てよ?その編成ってもしかして……………あ、いや!此方の話。それじゃあ、回収は自動車部の部員達にお願いしてあるから、引き続き捜索ヨロー」

そうして、杏は通話を切った。

 

「38tが見つかったってさ。それに強力な戦車が3輌、しかも動いているのを目撃したらしいよ?確かIS-2にパンターA型、それにシャーマン・イージーエイトだってさ。そんな感じの編成のチームが、確かあったよね?えっと、何だっけ?」

「恐らく、《RED FLAG》の事ではないかと」

そう言って、桃は1冊の雑誌を取り出して杏に見せた。

 

「へぇー、男もやってるなんて、これは珍しいねぇ~…………………ん?この子達って…………ふーん、成る程ねぇ~」

 

そう呟きながら、杏は校舎の方を見やると、ニヤリと笑った。

そして何処からともなく1枚の紙と鉛筆を取り出すと、其所に7人分の名前とクラスを書いていった。

 

「これで良しっと…………河嶋、明日の放課後、放送でこの子達を呼んで」

「はい、了解しました」

 

杏から紙を受け取った桃は、それを一通り眺めた後、メモ用紙程の大きさに折り畳み、胸のポケットにしまった。

 

それからと言うもの、続々と、戦車発見を知らせる連絡が入った。

 

バレーボール部の部員達のチームが、崖で八九式中戦車甲型を、1年生チームが、廃工場付近でM3中戦車リーを、歴女チームが、川底でⅢ号突撃砲F型を見つけ、全チームが乗れる戦車が揃った。

 

そして其々の戦車にどのチームが乗るかの振り分けがあったのだが、『見つけたチームが見つけた戦車に乗れば良い』という杏の意見もあり、Ⅳ号に、西住達Aチームが、八九式にバレーボール部部員で構成されたBチーム、Ⅲ突には歴女達のCチーム、M3には1年生のDチーム、そして38tには、生徒会メンバーはEチームが乗ることになった。

 

「お前達、捜索ご苦労であった。明日は、今日見つけた戦車の洗車を行う。体操着と着替えを、忘れずに持ってくるように。では、今日は解散!」

『『『『『お疲れ様でしたー!!!』』』』』

 

そうして、生徒達は続々と、其々の家路についていく。

生徒会メンバーの3人も家路についた。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

学生寮に帰ってきた杏は、荷物を置いて普段着に着替えると、本棚から1冊の雑誌を取り出してソファーに腰かけると、とあるページを開いて見る。

 

「やっぱり、君達はこの学園艦に、そして女子の皆は、この学園に居たんだね……………伝説のチーム、《RED FLAG》の皆」

 

そうして、杏はその日、夕食や入浴時以外は、この雑誌をずっと見ていたと言う。

 

「今、私達の学園に危機が迫っている。この大洗女子学園の危機に、君達は、私達と一緒に立ち向かって……………くれるかな?」

 

ベッドの中で、杏はそう呟いていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくし!………………何か明日、若しくは数日後辺り、何かスゲー事が起こりそうな気がする…………………それが変な事じゃなけりゃ良いんだがな……………」

 

戦車で走り終え、格納庫に入れた後、ライトニングのメンバー全員で夜まで遊んでいたため帰宅が遅くなった紅夜は、まるで杏が考えている事を、知らぬ間に察知していたかのように、体を震わせた。

 

「まあ取り敢えず、そうなったらそうなったらって事にしとくか………………まあ、あの戦車の行進を誰かに見られてなければ良いんだがなァ……………ま、あんな所に態々入ってくる暇人は、俺等ぐらいしか居ねえだろ……………」

 

それを見られていたとも知らず、紅夜はベッドに入り、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、何時ものように学校へ向かい、また何時ものように授業を終え、帰ろうとしていた静馬達たったが………………

 

『普通Ⅰ科2年A組、六条深雪、竹村千早。普通Ⅱ科2年C組、須藤静馬、如月亜子、武内和美、水島紀子、草薙雅は、至急生徒会室まで来ること。繰り返す。普通Ⅰ科2年A組、六条深雪、竹村千早。普通Ⅱ科2年C組、須藤静馬、如月亜子、武内和美、水島紀子、草薙雅は、至急生徒会室まで来ること。以上』

 

厳格そうな声色で、彼女等を生徒会室へと呼び出す放送が、校内中に鳴り響き、教室に居た生徒達の視線が彼女等に突き刺さる。

 

「静馬、私達って生徒会に呼ばれるような事ってしたっけ?」

「さあ?私に聞かれても困るわ」

 

 

だが、何も知らない静馬達は、呼び出される覚えもないまま、取り敢えずは生徒会室へと向かうのであった。


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