ねこだまし!   作:絡操武者

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毎度お待たせしております。

FGOの第2部が4月4日からということでね。ほったらかしにしてたフリクエやらないと、と言うタイミングでAP消費が半分だと? 見てるな運営! がんばります!


で、だ。
この小説を無理矢理終わらせるか、停止するか考え中です。
理由としては、ワールドトリガーの新しいネタが思いついたが、この作品には活かせず、書いた場合は新作としてやっていくだろうから、両立は難しいよね。と言うこと。
後は単純に原作が止まってしまっていることでネタを膨らませるのが思考回路はショート寸前、今すぐ(原作の続きに)会いたいよ状態。
長く停滞することで、どんな風に書いていたかも忘れてしまうのが痛いですね。
 まだ考え中なので、また変化があれば改めて報告します。

 とりあえず、43話です。どうぞ。




43 ネコ、女子と手を繋ぐ

 

 

 

 ―――誰かの夢を自分の作文用紙に書き写した事がある。

 

 ある日、学校の先生が言った。

「来週の国語の授業は作文です。テーマは『将来の夢』です。みんなが将来何になりたいかを書いてもらいます」

 次の週の国語の授業を待つまでもなく答えは出ていた。

 

 あぁ、それは無理だ。僕に夢はないのだから。

 

 学校の授業よりも前に、親や友達との間で、将来何になりたいかと言う話は何度か出たことがあった。ある人は『こーむいん』ある人は『せいぎのみかた』ある人は『ピアニスト』と、漠然としていたり憧れだったり、習い事の延長線上だったり。今でもその人達が同じ気持ちでいるのかは分からないが、俺には分からなかった。何故、夢が言えるのかが不思議でしょうがなかった。

 

 感情がないわけじゃなかった。かけっこで負ければ悔しかったし、人気者がいれば少し眩しく思えて羨ましかった。でも、じゃあ悔しかったから『かけっこで負けないように将来はオリンピックに出れるようになろう』とか、『テレビに出れば有名人だ! 将来は有名人になろう!』なんて絵に描いた夢にすら繋がることもなかった。

 

 

 

 ―――2年3組 おとなし ねこ

 

 ぼくのしょうらいのゆめはこーむいんです。あんていしたおきゅうりょうをもらって……。

 

 あぁ、あれは間違いなく自分の夢ではなかった。

 

 夢を持っていないあの頃の俺は、絶対に自分のではない誰かから聞いた夢を作文用紙に書き写した。

 

 

 

 自分と同じ様なクラスメートは何人いただろう。

 

 本当の夢を描いた人は何人いただろう。

 

 夢を現実に叶えられる人は何人いるのだろう。

 

 自分の、俺の、僕の

 

 本当の夢は何なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の検査がまもなく終わるだろうという頃、何気なく部屋の上の方にある機器を見上げる。トリオンの測定器である。

 

「今日もトリオン測定してるんですか?」

「ん? あぁ、しばらくの間は毎日でもやるぞ、お前がここに来れなくともトリオン計測できる環境であれば計ってもらう」

 

 モニターを確認している鬼怒田さんに声を掛ければ、いつも通りの目元にクマの出来た顔から返事が返ってくる。サイドエフェクトを使わない様にして、トリオンを計測される。特性蛍光色栄養ドリンクを美味しくいただく。今日も開発室で行われる俺への処置だった。

 

「やはり間違いないか。音無、お前のトリオン能力が向上しとるぞ」

 

 俺の本来のトリオン能力は高くない。それは聞いていたが、それが増えるとは考えてなかった。確かにトリオン能力は成長すると言うか、トリオン量が増えるとは聞いたことがある。成長期とかとは関係ないと思う。だって身長は変わってないもん。ちくしょぅ……。

 でもそっかトリオン量が増えてるのか。ってことはだよ? その内サイドエフェクトで誤魔化してトリオンを増やす必要がなくなるのではないか? こうやって美味しい蛍光色ドリンクを飲まなくても大丈夫になるのではないだろうか。美味しいからいいけど、倒れたりするのは個人的にも御免である。

 

「……言っておくが、無理しようなどと考えるなよ? 倍になったとか急激に増えたわけでもなく多少増えたぐらいだからな」

「わ、分かってますよぉ」

 

 何で俺の周りの人は考えを先読みできるのだろうか。怖いわ。

 

「音無、今日は狙撃の訓練をしてこい」

「え、もう治ったんですか俺?」

 

「バカを言うな。完治まではまだかかるわい。お前の抱えているトラブルの大元は保有量以上のトリオンを使うことだ。ならば、嵩増しせずに持ってる分だけ使うのならばリハビリにもなる、復帰も多少は早まるかもしれん。と言っても使い切るまで撃つなよ? 元も子もないからな」

「了解でっす」

 

 

 

 

 

 以前に壁に穴が開いたことにより呼び出されたことのある狙撃手の訓練場。犯人は俺じゃないのに疑われたやつね。実際に訓練しに来たのは初めてである。やっぱC級隊員が多いなー。キョロキョロしてると後ろから声を掛けられた。

 

「こんにちは! ネコ先輩がここに来るのって初めてじゃないですか?」

「あ、日浦ちゃん。千佳ちゃんも、と、お友達?」

「ども、夏目出穂す」

 

 夏目ちゃんだけC級隊員というのは見た目で分かるが、それ以上に目を引くのがその頭に乗っている猫だ。あらやだ、この子ったらこっちに飛び移ろうとしてるわ。察知した俺はジリジリと後ろに下がる。猫はそれにも拘らずタメを作るように姿勢を変えてタイミングを計っているようだ。

 

「猫苦手なんですか?」

「違う、『ネコが猫と遊んでる』と言われるのが嫌なんだ」

「「「あぁ~……」」」

 

 3人揃ってその状況をイメージしたのだろう声を揃えて苦笑を浮かべた。そこに更なる訓練参加者がやってきた。

 

「おう、そのネコ耳はネコだな? ネコ助は今日はネコの頭狙ってんのか?」

「その声は当真先輩っすか、今コイツと真剣勝負してるんで後ろ向きで失礼します」

「昨日は当真先輩が来たらすぐ乗ったのに、今日は当真先輩の方に行かないねにゃんこ」

「他の乗り心地を確かめたいのかもね」

 

 数分後、勝負の行方は俺の負けとなる。

 隣のレーンに当真先輩が座り、猫は当真先輩の頭に乗った。

 (ふ、勝った)

 イーグレットを出し、俺は狙撃体勢に入った。引き金に指を掛け様とした時、猫は俺の頭に飛び移った。こ、コイツ俺を踏み台にィ……したままだとぉぉぉぉ!?

 あぁ、油断した。猫に対してサイドエフェクトが発動してくれるのかは疑問ではあるが、どっちにしても俺は負けたのだ。

 

「っと、そういや忘れてたぜ。お前さ、大丈夫なわけ?」

「何がですか?」

 

「俺んとこの隊長からも聞いたし、さっきからお前を遠目から気にしてる佐鳥や奈良坂からも聞いてるぜ? しばらくランク戦も出れないってよぉ。それは前に入院してたことも関係あるんだろ?」

「大丈夫とは言えませんけど、鬼怒田さんからも狙撃訓練(ココ)でリハビリして来いって言われてるんで。それに、この通常射撃訓練だけで帰りますし」

 

 当真先輩は狙撃をしながら会話をするが、俺は初参加の訓練だし状況を飲み込むのにワンテンポ遅れる。動かない的だし真ん中に当てるだけだから余裕でど真ん中ではあったが、5発毎に的が遠ざかるとは知らなかった。それでも何とか俺がど真ん中周辺への着弾を増やし続けていると当真さんが大きく外しまくってることに気がついた。

 

「あれ、狙撃手1位じゃなかったでしたっけ?」

「んー。別に真ん中に当てなきゃいけないわけじゃねーだろ?」

 

 あ、そうか。遊んでるんだ。上下左右とランダムに着弾させてるけど……。

 

「何描いてるんですか?」

「今日はトリオンキューブ」

 

 あー、C級とか無所属のエンブレムか。奥にいる夏目ちゃんの腕のそれを見ると立方体に『BORDER』と描かれているエンブレムがある。今日は(・・・)っていつも遊んで撃ってんのか。そっか、俺も別にポイントとかどうでもいいから遊んでもいいわけか。あ、ど真ん中ゾーンから少し外れちった。……はぁ、もういっかテキトーで。今はリハビリなわけだし、治ればどーせ全部サイドエフェクトでど真ん中に―――。うん、違うな。

 

「はぁー……ふぅ……ふぅ……すぅ……」

 

 意識を切り替える。『治ったら』を考える自分を馬鹿と言い聞かせ、深呼吸から浅い呼吸に、浅い呼吸は更に浅く……。

 

「へぇ、ネコは奈良坂とかと同じ(タイプ)か。こっち側かと思ったぜ」

 

 当真先輩の声が聞き取り辛い。いや聞かなくて大丈夫だ。スコープ、その先の的、的に空いた穴、ど真ん中の穴だけ、集中……集中……ok……。

 

 

 

 最終的に真ん中ゾーンから外したのは5発。集中を最後まで切らさずに撃ち続けるのは難しく、俺はこの訓練の参加者の中で3位と言う結果に終わった。

 

「いやー今日もリーゼント先輩やばいっすわ」

「おうイズホ、今日も居残り連やるか?」

 

 夏目ちゃんは訓練が終わると当真先輩の結果を見て、居残り練習に入るようだ。

 

「おいネコ、訓練終わってからだけど、大丈夫なのか?」

「よっす佐鳥。訓練だけなら大丈夫。1日1回の狙撃訓練程度だけどね」

 

「お疲れ、復帰は近いのか?」

「へぇノーマルの狙撃も上手いな。サイドエフェクト無しなんだろ?」

「感覚派だと思ってたけど、集中もするんだな」

 

 奈良坂先輩や荒船先輩も声を掛けてくれる。そして言われて気づいた事がある。サイドエフェクトがない俺は理論派というか、感覚派から離れた戦いになるようだ。サイドエフェクトに頼り切りだったとも言える。別にサイドエフェクトに頼り切ってもいいのだろう。自分の力なわけだし、ただ、それは他人の場合であって、俺の場合は頼り切ると今の状況に陥るわけだ。

 

「サイドエフェクトに頼らない戦い方かぁ……」

 

 勝てる未来が視えない。迅さんがオペレーターについてれば視えるのだろうか。そんなわけないか、迅さんだって万能超人ではない。いや、十分凄い人なんだけど、オペレーター席に座らせておくだけだなんて宝の持ち腐れだ。それが分かっててオペレーターやるとか言い出したのかな。

 

 

 

 

 

 さて、俺は本部を後にして駅に向かっていた。昨日の迅さんの話だと、今日は駅近くをブラつくとのことだ。迅散歩である。ならばこっちもそこら辺をネコ散歩すれば見つけられるだろう。

 

 

 30分後。

 

 いねーわー……電話するにもバッテリーが切れそうなんだよなぁ。

 

 

 更に1時間後。

 

 こんなとこにカレー屋さん出来てたんだー。美味そうだなー。

 

 

 更に更に1時間後。

 

 トリオン体だと満腹にならず食べ過ぎちゃうなー。栄養あるもの食べたほうがいいのかなー。

 

 

 更に更に更に2時間後。

 

 もう真っ暗だわー。もう帰ってるかもなー……お?

 

「 へい、こちら音無」

『あ、応答ありました。えっとネコ君。長い事駅近くでぐるぐるしてるけど、もしかして何か事件とか迷子とかだったりするの?』

 

 いきなりの本部からの通信である。てか迷子って……あ、俺ってば観察対象だったっけ? それだけで連絡してくるのか。ちなみにオペレーターさんは沢村さんである。

 

「迅さんに話があったんですけど、スマホの充電切れそうだし、あ、切れてた……。ま、まぁ駅周辺にいるらしいから探してたんですけど」

『迅くんは……はい、分かりました。あ、ごめんね。迅くんはさっきまで本部にいたみたいなんだけど、林藤支部長と玉狛支部に帰ったみたい』

 

「あーそうなんですかー。じゃあ明日でいいや。っていうか観察対象ってこういう連絡も来るんですね。びっくりしました」

『観察対象? あぁ、これはネコ君だからだよ』

 

 なんだとぉ? 我がプライバシーを侵害するとはいかがなものか!

 

『まだ完全に治ってないんだから出来るだけまっすぐ帰って安静にしてくれると私達も嬉しいな』

「仰るとおりです。申し訳ない。トリオン体だとどうも調子よくて忘れちゃって」

 

『で、そっちにネコ君家の方向の帰り道の人がいるから一緒に帰ってもらうね』

「いや、もう帰りますしそこまでしてもらう必要は……」

 

『一緒に帰ってもらうね?』

「あ、はい」

 

 今までずっとブラブラしてたし心配かけたしで信用されてないというか、沢村さんも言ったとおり完治してない上に、2回も倒れてる人間が「だいじょぶだいじょぶ~♪」何て言っても何の根拠もない戯言みたいな事だと捉えられたのだろう。はぁ、2回目の『一緒に帰ってもらうからね?』は少し怖かったなぁ……。

 つか、初めてC級の訓練受けたときみたいだなー。嵐山隊が護衛みたいな事してくれて大事になってたのが懐かしい思い出である。そして、一緒に帰ってくれるという監視役と言うかお目付け役さんは数分で来るらしい。通信を終わらせ俺は肉屋で買ったコロッケを食べて待ち人を待っていた。知ってる人ならいいんだけど……。

 

「お、美味そうなの食ってんな!」

「あ、こんばんは、えっと?」

 

 ……誰? カツアゲ? 俺の目の前に現れたのは少し目付きが鋭く見えた女の人だった。つか、同じ高校の女子制服だ。

 

「私は仁礼(にれ)(ひかり)。影浦隊のオペレーターだぞ」

「あー、どうも音無ネコです。た、食べますか? まだ温かいです」

 

「お! いーのか! 皆が言ってる通りいいやつだな!」

「仁礼さんが―――」

 

「ヒカリさんでいいぞ。あ、美味い!」

 

 元気な人だなー。

 

「ヒカリさんが一緒に帰るって言うお目付け役ですか?」

「おめつけ? が何かわかんねーけど、一緒に帰るんだろ? ほれ」

 

 ん? 手を出されても……あぁ、はいはい。

 

「コロッケじゃねーよ! ほら、手出せって」

「え?」

 

 おぉ? 手を繋いで引っ張られるぞ。

 

「あー背が低いと手も繋いで歩き辛いなー。早く大きくなれよぉ?」

「な、何で手を繋ぐんでしょう?」

 

「私が寒いからだ! なんだー照れてるのかー? さみしい男めー」

「寒いならトリオン体になれば……」

 

「あんな格好で帰れるかよー。見ての通り私は女子高生だぞ? OLみたいじゃないか、あの格好。本部限定だ」

「格好いいと思うんだけどなー」

 

「あーコロッケ食べてたら白いご飯も食べたくなってき……」

「ヒカリさん?」

 

 いきなり止まる隣を見上げると、ヒカリさんは定食屋さんに目を奪われていた。ディスプレイにはから揚げ定食やカキフライ定食、しょうが焼き定食と、様々なメニューが並んでいた。

 

「よし! 一緒に帰ってやる報酬として奢れ!」

「えぇぇぇ……あのまっすぐ帰らなくて良いんですか?」

 

「白いご飯が今食べたい! 私はカキフライがいいなー! ネコはしょうが焼き頼め! そんで少しくれ! あ、単品でから揚げ(小)も頼めるぞ!」

「あぁ、自分の事しか考えてない……」

 

 この後、めちゃくちゃご飯食べた。

 

 そんでもって、その後、まっすぐ帰ってないことがバレて、めちゃくちゃ沢村さんから怒られた。

 

 そんで、めちゃくちゃ笑って帰った。

 

 

 

 

 




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◆夢なきネコ
何度か作品の中でも触れてたことではありますが、このネコ。
夢がありません!!!

◇リハビリに狙撃を始めるネコ
サイドエフェクトなしでも淡々とこなせる様なことは得意な模様。でも戦闘とかになるとまだ怪しいです。鬼怒田ドリンク(蛍光色)がとても効いています。

◆ネコが猫と遊んでる
遊ばれてるだけ。やっと出穂ちゃんと出会えた。

◇ネコとカツアゲ?
やっとヒカリちゃんと出会えた。可愛いけど、難しい。

◆ネコの食事。
カレー・カレー・コロッケ・コロッケ・しょうが焼き定食(+からあげ(小))
なお、トリオン体のため、このままでは太る未来が待っている模様。

◇ネコとヒカリ
お姉さんと弟みたいな組み合わせばっかだな! でもしょうがないね! ネコが小さいのがいけない!



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