ねこだまし!   作:絡操武者

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20 ネコの特殊相対性恋愛感情理論

 クリスマスだなんだという時期が目前にまで近付いていた。街中の装飾やテレビで伝えられる情報や音楽もクリスマスカラーに染まっていく。勝手な憶測でものを言うならば、幼い子供ならサンタクロースやプレゼントに希望を持ち、大人に近付けば恋愛に夢を見る期間だろう。

 俺はといえばサンタクロースの真実というか大人の事情ってやつを知っているし、恋愛に興味を深く持てないお年頃だ。興味はあっても好きな人がいないという感じだろうか? まぁ何はともあれ今はあまり興味が湧かない。

 そんな俺は夕方にスーパーに出掛けておでんの材料を買う。だって寒いもん。ちくわ、つみれ、白滝等々をカゴに入れ、ジャガイモも入れてやろうと冷蔵庫に入っていない材料を選んでいく。一緒にお菓子なども買って俺は家に帰る。今日はとりまるお休みデーだった。そんな、か~え~り~み~ち~クマさんに~でぇあ~った~♪

 

「ん? ネコじゃん」

「クマちゃん先輩、家こっちの方なんですか?」

 

「いや、これから玲のとこに……ネコは帰って一人鍋とか?」

「さ、寂しくないっすよ!? これが俺の当たり前だし! そ、それに鍋じゃなくておでんですし!」

 

 袋から覗き見える食材から一人鍋を指摘されるが、当然の事だし、俺は冷静に慌てて答えた。……慌てたよ! 図星だよ! でも残念! おでんでした! まぁおでんだろうが一人には変わりないのだが。

 

「別にそんな事はツッこんでないでしょ、こっちは玲の家でミーティングだよ。最近は小夜子も出てくるんだよ」

 

 華やかだね~。まぁ俺は一人が嫌いじゃないし良いんだけどね。

 

「確か、玲の家の隣って言ってたっけ?」

「アパートですけどね~」

 

「じゃあ一緒に行こうか」

「……は~い」

 

「何よその間は」

「ん~何となく?」

 

 クマちゃん先輩にチョップをもらいつつ、俺は自分で言った『何となく』ってのを考えてみる。ん~……正直なところ困る感じだ。同じ人間であっても男と女は違う。顔つき、身体つき、声、考え方、性格、笑いのツボ、全て違う。

 俺は異性に対して恋愛感情があるわけでもないのに距離を取ってしまう感覚がある。異性と一緒に遊ぶのは違う気がする。でも、学校では彼氏彼女の関係になってる奴もいたりして、それを見ても羨ましいではなく、何でだろうって疑問が先に出てくる。

 大人になれば分かるのだろうか? 付き合いたいって、結婚したいって、子供が欲しいって思うのだろうか? 考えても今の俺には答えは出せないし、やはり女の人と一定の距離を取る事を考えてしまう。

 言うなれば、友達の一歩手前のような感じだ。友達の距離まで詰めたいから、友達と言って欲しいから優しく接する計算していない打算的な行動。矛盾しているようで本能的な行動だ。

 よく『男と女の間に友情はあるのか?』みたいな事を耳にするが、俺はあると思う。でもそれは男同士や女同士の友情と男女の友情は質が違うと思う。その質が良いとか悪いとかの話ではなく、ベクトルが違うだけで友情は友情なのだ。その先に恋愛があるのかどうかまでは分からないが、今の俺にはそこまでしか興味がない。

 でも、今のクマちゃん先輩みたいにアッチから寄ってくると自然と距離を取ろうと考える自分がいる。俺って変なのだろうか? 女の人を見れば綺麗だとか可愛いとか思う感情はある。あるけど恋愛感情にはならない。知り合い以上に仲良く慣れれば良いとは思うが、深い関係は求めていない。これは駄目なのだろうか? 変なのだろうか?

 

「ねーねー、クマちゃん先輩って好きな人います?」

「い、いないけど? いきなり何よ? 答えちゃったじゃない」

 

「俺もいないんですけど、これっておかしいんですかね?」

「は? 普通でしょ。まだ若いんだから自分が出来上がっていけば勝手に好きな人が出来るって……はぁ」

 

 何で私がフォローしてるんだと言う様な顔をしてるが、そんなものか。自分が出来上がっていけば……なるほど、自分を育てていけば答えは出るのか。俺はご教授いただいたお礼に商店街の肉屋でコロッケを買って差し上げる事にした。ここのコロッケは肉が違うらしく美味しいのだ。あ、揚げたてだラッキー。

 

 

 

 那須先輩の家へ行くクマちゃん先輩。自分のアパートに入る俺。「じゃあまた」というだけで別れた。そうだな。レンタル活動でまた那須隊に行くことや、本部に通うときに会うかもしれない。だから「また」というのは正しい。でもさ―――。食材を切っていた時に家のチャイムが鳴った。親からの宅配便でも着たのかと思いつつドアを開けると那須隊の面々がいた。

 

「来たよ」

「え? はい?」

 

「お邪魔しま~す」

「私、男の人の家に入るの初めてですよ」

「ネコ君の家は2度目だけど綺麗に片付いてるわね」

「お、お邪魔します」

 

 ―――「また」って、なう? 「また今度」って意味じゃないの? 那須隊の面々は何かしら荷物を持っており、部屋へ押し入った。お、おまわりさんこいつらです!?

 

「ほら、やっぱり玲の家から大きめの鍋持ってきて正解だったでしょ」

「人数分の食器も必要ですしね」

「あの、私、料理は自信がなくて……」

 

 俺はキッチンを占領され「切って鍋に入れるだけだよ」等という会話を聞いていることしか出来ない。狭い台所によく3人でいられるものだ。ん? 3人? ……あ、那須先輩だけリビングで座ってこっち見てる。呼吸も軽く荒いし本当に体力ねーなあの人。……ってそうじゃないだろ。

 

「えと……何をしてるんでしょうか?火事とかで那須先輩の家なくなりました? それならまずは食事よりも消防や警察に連絡を……」

「失礼な事言わないの」

「この前、皆で行くって言ったでしょ?」

 

 た、確かに個人戦のときに言ってた気がするけど本当に来るなんて思わないじゃん。社交辞令を覚えなさいよ。

 

「ネコはおでんにジャガイモ入れる派なんだ。ウィンナーも入れるの?」

「え、駄目ですかね? 美味しいですよ? コンビニのおでんとかも入ってますし」

「美味しいですよねー」

 

 ねー。……ってだーかーらー。日浦ちゃんと和んでる場合じゃない。

 はー……もういいか。諦めよう。仕方ないんだ。追い出す事も出来ないのだから。これはもう食べて行ってもらうしかないようだ。作ってくれるわけだし、少し楽が出来たと考えよう。でも、甘えるのもこの家の主として申し訳ないし、出来る事はやろう。

 冷凍庫から枝豆を出して枝豆入りの茶飯を炊こう。前に作った事もあるし、調味料は覚えてる。あ、パックの漬物が買ってあったはずだ。おでん・茶飯・漬物。これで最低限の見栄えもするだろう。

 俺がお茶やみりんや酒を炊飯釜に入れていると後ろから覗かれていたようで那須先輩が声をかけてきた。

 

「手が込んでるのね。レシピも見ないで分かるの?」

「たまたま作り方覚えてるだけですよ。お客さんが来たんだから少しは良くしようと思うじゃないですか。見栄ですよ」

「そういうところが良いんじゃない? ねー小夜子」

「んぇ!? あ、はい。そ、そうですね……」

 

 慌てる小夜をニヤニヤと見ていた日浦ちゃんが小夜に怒られたりと賑やかな中、調理は進んでいった。

 

 

 

 ご飯が炊けて、おでんが煮えて、最近の俺の行動について質問があがりながらの晩御飯となる。俺は漬物をお皿に用意して座った。

 

「―――『最近はどこの隊に行ったか』でしたっけ? 最後にレンタルで行ったのは諏訪隊だったと思いますけど、その後はちょっと色々あってレンタル中断になってるんですよ」

「え、それってもう2週間ぐらいレンタルされてないってこと?」

 

 何でそこまで知ってるか分からないけど、小夜は緊張がほぐれたのか、自然と会話が出来ていた。

 そういえば、俺がスナイパートリガーを使い始めたのを那須先輩が知ってたのは小夜から聞いたからだったっけか。オペレーターさんって色んな情報が仕入れられるんだな。ボーダーの情報ページで仕入れられる情報なのだろうか。

 

「隊には所属してないんでしょ?」

「はい。あ、ジャガイモ美味しいー」

「美味しいですねーホクホクで味もしみてて」

 

「この前、出水君と歩いてるのみたけど、師匠になってくれそう?」

「いえ、軽く教えてはくれるんですけど、師匠は受けてもらえませんでした。根に持ってるんですかね?」

「何かしたんですか?」

 

「模擬戦でボコボコにしたりされたりなんだけど勝てるときは徹底的にやり返すんだよねー」

「え……あんた、出水に勝てたことあるの!?」

 

 出水先輩に勝てるのはたま(・・)にです。弾バカだけに。米屋先輩が弾バカって言ってた。米屋先輩も出水先輩に槍バカって言われてたな。

 それはさておき、俺は最近の行動を話そうとして気付いた。喋って良い内容なのだろうか? 模擬戦ルームも貸し切りだし、太刀川さんや米屋先輩とは最近だと個人戦をする様になってきている。その個人戦ですらモニター表示させなかったり、戦績ログを残さないような徹底振りで行っているのだ。ポイントだけが移動している結果だけが残るので、常に俺の記録を見ている人がいたとすれば、異常に見えるかもしれない。

 個人戦にする理由としてはMAP選びが出来て行動範囲を気にしなくて良い点や、仮想の街中を疾走したり破壊できる爽快感もあったりする点、それにポイントが懸かっていると本気になれるからということらしい。俺がスコーピオンをメインで使ってたとしたらC級落ちするほどにポイントが激減したのが5日前ぐらいだ。昨日で結構盛り返したし、いろんな人からポイントを貰っている。それが気にしなくて良いぐらいに他のトリガーのポイントも増えたので個人戦でも構わないのだが、これらを喋って良いのかどうかは判断できない。

 

「最近、個人戦をやっていないのにポイントの変動が大きいのは何で?」

「あーそうだった。小夜子が言ってた奴だ。訓練でも上がったり下がったりしないほどのポイントが動いてるのは何なの? ライトニングは6000超えてたんだよね?」

 

 どこまで調べてる志岐小夜子!! 当たり障りのないレベルで話せるとしたら……。

 

「うーん……喋って良いのか分からないですけど、模擬戦とかばかりで防衛任務は休業中なんですよ。そろそろ終わりそうなんですけどね」

「上層部絡みですか」

「ネコってサイドエフェクト持ってるの?」

 

「え、何でそう思うんですか?」

「だって色々不自然じゃん。玲との個人戦のログも見たけど何も異常ないのに、玲が違和感ばかり感じててさー、『トリオン体で体調が良いのも限界が近いのかも……』とか言い出すからびっくりしたわよ」

「でも、あれから問題はないんですよね?」

「うん、考えすぎだったみたい」

 

 俺がサイドエフェクト持ってることは言っても良いのか? いや、迅さんが上層部を止めてくれてるのだから、現在進行形で同じ釜の飯を食べている仲間でも言わない方が良いだろう。……結局隠し事だらけだな。申し訳ない。

 

「あ、そうだ。俺も聞きたいことあるんだった。武富桜子って子知ってます?」

「海老名隊のオペレーターですね」

 

「そうそう、その子って何か特殊能力でもあるんですか?」

「特殊能力? そんなの聞いたことないけど?」

「有名なのは実況に力入れてるぐらいですよ」

 

 ふむぅ、やっぱそうか。まだ会ってないけど何があるんだろう? 模擬戦に関しても冬島隊は当真さんしか来ないし、冬島さんってどんな人だろうか? 開発室でたまに見かける冬島さんと兄弟だったりしないだろうか? 明日本部に行った時に開発室にいれば聞いてみるか。ついでに武富桜子も探してみよう。どうせ明日も米屋先輩が待ち構えてるだろうし……太刀川さんは大学のレポートがどうのとか言ってたから忙しいだろうし、人探しを頑張ろう。

 

 

 

「はー美味しかったです!」

「茶飯って美味しいんだね。おでんともよく合うね」

「ご馳走様でした」

「お邪魔しちゃってごめんねネコ君」

「いえいえ~。ま……」

 

「ま?」

「……ま、まいねーむいずネコ」

「知ってるよ?」

 

 あっぶね~。「また来て下さい」とか余計な社交辞令を言いそうになってしまった。言ったら来るかもしれないし、これは言わないほうが良い。

 

「また来るね」

「oh……」

 

 マジかー。違和感がないからマジなんだろうなー。社交辞令を使ってよー。

 

 

 

 日は変わり個人戦。6-4で米屋先輩を穴だらけにする。この模擬戦期間が終われば強い人を紹介してくれるそうだ。戦闘バカは困るが、まぁ中距離タイプの人とか教えてくれるとありがたい。

 

「しっかし、何でシールドを簡単に割るかねー……何のサイドエフェクトだよ」

「教えると後が怖いから言いませんよー」

 

 俺達は個人戦部屋を後にする。先ずは開発室だ。しかし、何故に米屋先輩も付いて来るのか? もう今日はやらないよ?

 

「陽太郎任されてんだよ。多分開発室で鬼怒田さんを弄ってんだろ」

「あー、よねやん先輩って玉狛のうさみん先輩と親戚なんでしたっけ?」

 

「従姉弟だな。ネコは何しに開発室に行くんだよ?」

「開発室に冬島さんいないかなーって思いまして。失礼しまーす。あ、いた冬島さーん」

「ん? ネコじゃないか」

 

「冬島さんに兄弟とかいます? A級の冬島隊長って人を探してるんですけど、家族とかですかね?」

「え、冬島隊なら俺が隊長だけど?」

 

 ……あんたかよ!!

 

「あ、あのー模擬戦の話とかは?」

「模擬戦?」

 

 おやー? 話が通じてないぞー?

 冬島さん曰く、模擬戦の提案は戦闘バカの太刀川さんと、三輪隊の槍バカこと米屋先輩、真面目にあの日の夜を検討した風間さんの考えらしく、冬島さんは関与してないらしい。それにトラッパーだし、模擬戦というよりもどんな連携を取るかぐらいしか考えず、直接の戦闘はないようだ。

 

「―――あ、そうだったんですね。冬島さんだけ何も連絡なく来ないからビクビクしてたんですよ」

「ランク戦とか遠征以外だと開発室で忙しいからね。何をビビッてたか知らんけど……」

 

 俺はそれだけ分かればってことで開発室を後にした。来ないなら良いんだ。いきなり襲い掛かってこなければ良いのだ。トラッパーって話だから意地悪なことしてくると思ってたんだけど、考えすぎだったようだ。開発室の冬島さんと冬島隊長が同一人物ならいいんだ。良い人でよかった。

 

 

 

(あーびっくりした。いきなり来るんだもん)

(音無は帰ったか?)

 

(あ、室長。たった今帰って行きましたけど、これには気付かなかったみたいです)

(鬼怒田さんそれ何?)

(ぽんきち、何だそれは)

(米屋もいたのか……絶対に言うなよ? まだ、上層部と迅しか知らん事だからな)

 

(俺も興味本位で見てただけのデータなんだけどね。これはネコのエンブレムと隊服デザインを元に作ってるデータ。こっちは専用装備。専用とは言っても普通の装備のデザインを変えただけで、性能自体は何も変わってないみたいだけどね)

(へー……ん? エンブレム?)

(ほぅ! ではネコは―――!!)

(声がでかい!! 全く、絶対に言うなよ?)

 

 

 

 武富桜子は基地内にある自室にいるらしい。迅さんは倉庫の様にぼんち揚の保管場所として活用しているらしい。俺は開発室に通っていた頃のC級の時はそこを自由に使えと言われたけど、通うのが苦痛になるほど家が遠いわけでもないために使わなかった部屋だ。隊員全員が使えるわけではないらしいが、よく知らん部屋だ。

 さて、武富桜子が居るという情報の部屋をノックをするが、返事が無く居ないのかと思えば部屋のドアは開いていた。

 

「ぶふふ……」

 

 一発目に思ったのは酷い笑い声だという事だった。俺に背を向ける様な形でモニター画面の明かりが見える真っ暗な室内。モニターの光を遮るのはヘッドホンをしてこちらに気付いてない女の子らしき人影だった。

 

「もしもーし、入りますよー? てか既にお邪魔してますよー?」

「ぬふふ……」

 

 危ない子なのだろうか? でも、周りの評価は普通だったよな……。俺はとりあえず部屋の明かりを点ける事にした。

 

「のわぁっ!? 太刀川さん!? じゃない!? だ、誰ですか!?」

「あ、どうも音無ネコです。ノックしたんですけど返事が無くて、どうしようか考えていたところドアが開いてたんで電気点けてみました」

 

 自己紹介をすると、桜子ちゃんも自己紹介をしてくれた。立ち姿は俺よりも小さく、中学生らしい。正直、驚きである。そんな小さい子が実況解説システム導入に尽力したとは思ってもみなかった。小さい子は優秀な子が多いなー。……ここで言う『小さい子』って言うのは年齢だから。身長じゃないから。

 桜子ちゃんは俺の事を知ってたらしい。やはりオペレーターという人達は独自の情報網を持っているのだろうか?

 

「様々なボーダーの訓練記録を更新し、数々の異名を持ち、最近ではA級のトップチームとの交流がある様ですね」

「お、おう……」

 

 異名ってNeko2とネズミ狩り以外にあるのか知らんけど、まぁ嘘は言われていないようだ。面と向かって言われると困惑してしまう。

 ふと、気付いた。桜子ちゃんが見ていたモニターに視線をやると、ランク戦らしき戦闘行動が映っていた。ログを見ていたのか? あの奇妙な笑い声は個人的に好きになっている隊員さんでも見ていたのだろうか?

 ログを見ることは俺もある。あるけど、自分の動作とかがメインだ。その時の逃げ方や判断が間違ってないかを確認する程度で、駄目だと分かっても修正方法は分からず仕舞いのままにしているのが現状だ。

 迅さんが言う桜子ちゃんと出会う事で俺にプラスになることとはこれの事だろうか?

 

「―――音無先輩は、隊に所属する気が無いと噂されています。チームランク戦には興味ありませんか?」

「ん? あぁ、ネコで良いよ。確かに俺はチームに所属する気は今のところないけど、チームランク戦は面白そうだなって思ってるよ」

 

「なるほど……興味があるか分かりませんけど、取引しませんか?」

「取引?」

 

「まだ仮のお話ですが、ネコ先輩が解説に呼ばれた時に、音声データを記録してほしいんです。それを頂けるのであれば、ここで保管してあるデータを視聴する権利をあげます」

「……どういうこと?」

 

 ―――以前、風間さんが教えてくれた内容によるとチームランク戦のログには実況解説は含まれないとの事だった。

 しかし、その解説のデータがここにはあるらしい。武富桜子という人物は実況解説のデータを収集し視聴する趣味があるらしく、自分が実況したデータがここにはあるらしい。解説者にも試合内容にもよるが、これらのデータは大変価値のあるモノらしく、一部の人間だけが桜子ちゃんと取引をしてデータを提供し、ここの記録を視聴しているらしい。それにより、桜子ちゃんが実況を担当していない日のデータも少しはあるらしい。

 

 もし……もしもだ。俺と同じ様な動きをしている人のシーンを解説してくれている人がいたとしたら、誰かに聞いて回ることなく、答えが出るかもしれない。誰かに聞くというのは大事な事だとは理解しているが、相手にも悪いし、聞く側の俺としても面倒なものである。

 つまり、ここって人を成長させるデータ保管所なのではないだろうか?

 

「でも、俺って解説に呼ばれる事あるの? 公式戦だと個人戦しかやってないんだけど? チームに所属しないとチームランク戦も出られないでしょう」

「その時々のオペレーターの依頼が入るようになってますから、B級以上なら呼ばれることがあると思います。それに、ネコ先輩はオペレーターの中でも結構人気高いですから間違いなく呼ばれますよ」

 

 いつの間にか菓子折りパワーの効果と、その人伝の評価が発揮されていたようだ。俺はこの取引を受け入れた。前借としてオススメのデータや、シューター系統のデータを視聴させてもらった。……おぉ、これはすげぇ。

 

 




感想、質問、誤字脱字の報告や評価など随時受け付けております。
また、設定上のミスなどもあれば優しく教えてくれるとありがたいです。


◆恋愛感情にピンと来ないネコ
まだ目覚めてませんから。
でも、興味がないわけではありませんから。
今のところは愛でるより、愛でられるネコです。

◇まいねーむいずネコ
那須隊また来るってさ。

◆さらっと槍バカに勝ち越すネコ。
アタッカーとの相性は割と良いです。太刀川さんの様に旋空弧月などで距離を潰されるとネコは弱いです。

◇何かを企んでいる鬼怒田ぽんきちさん
何が出来るのかねー?
言うなよ!? 絶対に言うなよ!?

◆武富桜子と出会うネコ
取引に応じたのでネコは桜子の部屋から実況解説付きのランク戦ログデータを借りられる事になりました。二人並んで一つのモニターを見ながらヘッドホンを支えるように耳にあて、「「ぬふふ……」」と笑っているかもしれません。

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