ねこだまし!   作:絡操武者

19 / 47
お気に入り件数300件突破しました。本当にありがとうございます。



19 見つめ直すネコ

 模擬戦で貸切になったホール。C級の訓練などで使用する事の多いこの場所だが、今は決まった人間しか入れない状態だった。例えば俺とかね。何故ならそう、俺は選ばれし者! 自称エリートから! A級のトップグループから! 上層部の人達から興味を持たれた存在!! ……目を付けられたと言ってもいい。俺にはそうとしか思えないんだけどね。

 

 ―――初日には迅さんと太刀川さんが来た。初日という事もあり沢村さんが管制をしに来てくれた。迅さんを睨むが迅さんは飄々としている。やっぱ何かしてるなこのエリート……。

 

「迅さんとも戦うんですか?」

「いや、俺はただの観客だよ。ちょっと気になってね」

「今日はよろしくな少年」

 

「あのー、つかぬ事をお伺いしますが、出水先輩は?」

「出水はウチの不出来な奴を昨日夜遅くまで扱いててな、今日は休みだ」

 

 騙された! シューター教えて貰えないじゃん! 不出来な奴って誰だよ! ……ん? 何かおかしいぞ。太刀川隊の人ってことだよな? 冬島さん以外にもあの日の夜に夜戦に参加してこなかった隊員がいるって事か。などと考えていると弧月を抜こうと、いや抜いた男がいた。

 

「―――早速で悪いが試させて貰おうか」

「模擬戦の室外で孤月抜かないで!!?」

 

 模擬戦室内に入り、俺は何気なく相手に合わせてスコーピオンを使ったが即落ちさせられた。迅さんの助言もありつつ、遠慮せずにその他のトリガーも自由に使っていいという事で俺は全力で胸を借りるつもりだったのだが……。

 

『―――た、太刀川ダウン』

「あらら、本当に太刀川さんが手も足も出ないとは……」

「今日は調子が良いみたいです! (……本当に?)」

「掠っただけで……? これがお前のサイドエフェクトか、面白い」

 

 その後は、一進一退を続けたが、距離を取っても弧月のオプションの旋空で斬られまくった。それでも迅さん曰く上出来らしい。太刀川さんも今度は個人戦でやろうと言って去って行った。これから防衛任務らしいが、今度は出水先輩も連れて来て欲しいものだ。つか、アタッカーはしばらくいりません。

 沢村さんも仕事が多いらしく去っていく。お疲れ様でっす。

 

 しかし、迅さんには何が視えていたんだろうか? 結局迅さんと戦うことは無かった。太刀川さんと一緒に来たことを考えると太刀川さんの未来を視て付いて来たのだろう。

『あらら、本当に太刀川さんが手も足も出ないとは……』って言葉は、結果が視えてたんだろうな。……あ、そうか。俺の事が直接視れないけど、俺と戦う人を視れば俺の未来も間接的に視えるって事か。視れる情報が少ない気もするが視れないよりは良いかもしれないな。

 

「迅さん」

「お、ぼんち揚食う?」

 

「いらないです。サイドエフェクトの事なんですけど、上の人に言った方が良いんですかね? というよりも報告しなきゃいけないんですかね?」

「ネコ君のサイドエフェクトが『何のサイドエフェクトか』って事か。それなら対処済みだよ」

 

 迅さんが言うにはボーダーという組織として活用できるサイドエフェクトなら申告するべきだが、『トリオンを騙すサイドエフェクト』というのは活用も出来るが、悪用もされかねないとのことだ。それに現在のところ不完全ということもある。迅さんなりにまだまともに視えてた時の俺の未来や、今回の太刀川さんを通して視た俺の未来から考えて答えてくれたのは報告の必要は今のところ無いということだった。

 迅さんから忍田さんなどの上層部には今日ここに来る前に話をしたらしく、『音無ネコはサイドエフェクトは持っているが少し様子を見させて欲しい』と伝えてるとの事。暗躍してくれてありがたい。

 

「―――初めて俺と会った時、何が視えたんですか?」

「んー……良い方と悪い方、どっちから聞きたい?」

 

「じゃあ悪い方からお願いします」

「悪い方は、最悪の状況だとネコ君がネイバーに攫われる未来があった。でもコレはC級からB級に上げる事と色々な隊にレンタルされ自力を上げることで回避できた。枝分かれの未来の中で今も継続中だと思う未来が今の状況だ」

 

「今の状況?」

「そう、今はまだ問題があるように見えないけど、隊員のレンタルって言うのは基本的にはありえない。本当ならユルい玉狛(ウチ)に入れておきたかったけど、厳しい隊もあるだろう。あの時は精神的に限界が来た時にネコ君が暴走してる未来が視えた。今思えばアレはネコ君が暴走するって言うよりもサイドエフェクトの制御が出来て無い状況だったかもしれないな」

 

 そういえばストレスがどーのとか言ってた気がする。確かに出来れば呼ばれたくない隊はある。例えば三輪隊。城戸司令派閥という事もあるが、隊長の三輪先輩がネイバーを憎みすぎてて怖い。この前の戦いで三輪先輩の考えもあやふやになったかもしれないけど、強烈な憎しみや負の感情のところにレンタルされるのはストレスを感じそうだ。

 女子だけの那須隊も周囲からの視線が怖いので出来れば避けたいが、コレは贅沢なストレスだろう。

 

「悪い未来はこれぐらいだな。限界を超えるようなストレスを感じたりしないなら問題は無いと思うよ」

「正直言って行きたくない隊もあるんですけど、レンタルを辞める事って出来るんですかね?」

 

「さっき鬼怒田さんを視たんだけど近い内に出来ると思うよ。とは言ってもレンタル活動が全てなくなるわけじゃなさそうだけどね。今より少し楽になる感じかな」

 

 つまり、俺のレンタル活動の忙しさは鬼怒田さんに懸かってるって事か。なんだろうか? 研究は打ち切りだろ? 他に鬼怒田さん絡みで俺の問題ってあるのかな? レンタルされたい場所を指定すればそこへレンタルしてくれるのだろうか? もしそうなるならコタツだ。コタツのある隊を所望する。

 

「良い方の未来聞く?」

「玉狛への移籍ですか? 何度か言ってましたもんね」

 

「それもあるよ。でも絶対じゃない。ウチに来たほうがストレスは感じにくいって事がメリットだな。今のまま忍田さんのところでいいなら……桜子(さくらこ)ちゃんを知ってるよね?」

「いえ、誰ですか?」

 

「あれ、会って無いのか。あの時にはもう正確に視えてなかったのかもな想定外だ。えーと、武富桜子(たけとみさくらこ)ちゃん。B級の海老名隊のオペレーターなんだけどね」

「その人は俺にどんな影響が?」

 

「会えば分かるとしか言えないかなー……でも、視えたのは結構前の事だし、今会っても意味が無いかもしれない。今でも意味があるなら確実にステップアップに繋がるはずだよ」

 

 武富桜子。オペレーターさんと会って何が変わるんだろうか? ……恋? 恋とか愛の力が芽生えてハート型のアステロイドの弾丸でも打ち出せる様になるのだろうか? 一目惚れとか? いやいや、何も恋愛絡みに持っていく必要は無い。例えば俺がその海老名隊に入る事になる可能性だってあるわけだ。確定してない上にもう視えない未来だから迅さんも教えてくれないし、今度時間が出来たら探してみよう。

 

 

 

 ―――2日目、風間隊が来た。全員アタッカーだった。ふぁっく。いらないって思ってたのに……。

 事前情報として、うさみん先輩とのメールのやり取りの中で歌川と菊地原のことは多少分かっていた。あだ名も教えてもらった。同年代とは仲良くしたいものだ。

 しかし、やってきたと思ったら菊地原が開口一番こう言った「何で僕達がこんなの相手にしなきゃいけないんですかー」俺も本来なら相手にしたくねーよ。歌川は良い奴だけど菊地原は口が悪い。率先してボコボコにした。何度かやられもしたが、何倍もボコボコにしてやった。

 管制に着いてる三上歌歩は同い年らしいが身長は俺より小さい珍しい存在だ。俺より小さいのは双葉ちゃん、千佳ちゃん、日浦ちゃん、遊真、緑川……もかな? そして今回初めて会った三上。ぐらいだろうか? 年下以外で初めての俺より低身長の人物に俺はココアを奢るのだった。うまいぞ~飲むがよい。

 

「昨日のデータ見たけど、太刀川さんから勝率5割近くってヤバいな」

「でもぼっちなんでしょ? 一人で出来る事なんて高が知れますよ。現にチームで当たれば焦って自滅するところありますし」

「確かに今回は音無を含め、迅、嵐山隊を同時に相手した場合の検討を含めた模擬戦だから複数で当たる事もあるが、個人戦では勝てないという事だぞ?」

 

 まだ言うかこのロン毛ポニーテールが。俺の内心に滾る怒りを知ってか風間さんが菊地原を軽く注意した。菊地原は口を尖らせていたが、アレは堪えてないな……。

 

「悪いなネコ。こいつ口悪いから……」

「いいや許さん! もっかい模擬戦部屋に入れきくっちー!」

「何度やっても同じだよ、僕が勝てると思ってるの? ただの時間の無駄だね」

 

「諦めんなよ! その根性『ネコぱんち』で叩き治してやるぜ!」

「それは当たらないから」

 

 いつの間にかあだ名で呼ぶ仲になり、イラつきも消えていた。脱力系の口悪い奴だけど根が悪い奴というわけじゃないと分かったからだろうか。確かにネコ拳8000は溜めが有りすぎて当たらず簡単に避けられてしまう。元のキューブをもっと小さくして作成スピードを上げても良いかもしれない。8000発である必要もないだろう。

 しかし、それを除いて考えれば風間隊との相性は抜群だった。カメレオンで消えても何となく居場所が感覚的に分かるし、その場所めがけてアステロイドを放てば7割ぐらいの確率で決着となる。避けられても距離を保っていれば時間の問題で蜂の巣に出来た。那須先輩のアステロイド合成弾のイメージで放ってるけど、合成弾を作った事が無い。今後の課題だろう。

 

 休憩時間。俺はココアを片手にベンチに座り歌川こと『うってぃー』と、菊地原こと『きくっちー』と談笑していた。そこで俺は昨日の迅さんとの会話を思い出す。昨日迅さんが言ってた武富桜子ってもしかして元シューターとかだったりして師匠になってくれるとか? だとしたら『確実にステップアップ』というのも頷ける。怪我とかで戦闘は出来なくなりオペレーターに転向したかもしれない。と思ったが2人に否定された。

 

「武富桜子? よく実況担当してる子だろ?」

「実況?動画でもネットにアップしてんの?」

「違うよ。チームランク戦で空いてる時は実況を率先してやりたがるんだよ」

 

 ランク戦は戦ってる間ログが残る様になっている。個人戦の場合は知ってたが、モニターで観戦したりできる。これがチームランク戦の場合は実況と解説が付くようになっているらしい。隊員の解説が付く事により、ボーダー隊員はランクに関わらず戦い方の勉強が出来ると言う事だ。中でも人気なのは(あずま) 春秋(はるあき)さんという人の解説らしい。知らんけど。

 この実況解説のシステムは武富桜子が考案したもので、C級の頃から上層部にプレゼンし続けて出来上がったものらしい。実際に実況解説を聞いているボーダー隊員のレベルは飛躍的に上がっているとは風間さんの言。

 しかし、ログを見たとしても実況解説の音声情報は会場で流れるだけで、試合の行われている転送先には届かず、記録には残らないらしい。そんな実況オペレーターと会って俺に何が有るのだろうか?

 

 

 

 ―――3日目。俺は流れを読んだ。はいはい冬島隊でしょ? とね。太刀川さんだけとは言え初日に太刀川隊、次の日には風間隊。そしたら冬島隊しかないだろうと思ったわけだ。

 

「お、いたいた。この前は来れなくて悪かったな」

「こんちわっす出水先輩」

 

 念願のシューターさんの来訪に喜ぶべきなのか、冬島隊が来ない事を嘆くべきなのか分からないが、とりあえずこの日は出水先輩と米屋先輩が来た。奈良坂先輩と、俺と同い年の古寺はスナイパー訓練らしく今日は来ないらしい。三輪先輩は参加する気が無いらしい。その内容に少しほっとする俺。

 

「―――揃ってるようね」

 

 最後に来たお姉さんは三輪隊のオペレーター月見(つきみ) (れん)さん。今日の保護者的な存在らしい。管制をしてくれるそうで、模擬戦ルームの設定をしたり、『音無ダウン』とか言ってくれるそうな。でもボコボコにやられている時に『早く立ちなさい』とか『あなたの敵は待ってくれるのかしら?』とかキツめに言われたくはない。言わないだろうけど、言いそうな目してるんだもん。怖いよー。

 

「は、初めまして音無ネコです」

「初めまして月見蓮よ。三輪隊のオペレーターをしているわ」

 

 クールビューティーな人だが流石は三輪隊の人だ。……やっぱ少し怖いよー。

 

 さて、基本的には一対一で模擬戦をし、この前の夜を考えて複数戦も検討しながら相手をする。でもさ、アタッカーにシューター陣形はずるいだろう。そら負けるわ。二人ともアタッカーとかならやりやすいのに、距離の違う連携をやられると動きが制限されてすぐに狩られてしまう。アタッカーオンリーかアタッカーなしの構成が良い。

 

『―――音無ダウン。一旦休憩にしましょう』

 

 二対一の戦闘で5度目のダウンをした段階で蓮さんによる休憩タイムが発動した。これではシューターを教わる時間もない。俺がココアを補給していると蓮さんがやって来た。

 

「ネコ君、少しいいかしら?」

「え? あ、はい」

 

「昨日までのデータは確認したけど、慶を相手に凄いじゃない」

「ケイ?」

 

「そう、太刀川慶。幼馴染なの」

「へー似てないですね」

 

「幼馴染は似ないわよ?」

「あ、そうか」

 

 正直言って負け続けのイラつきでまともに話を聞いてなかった。いかんいかん。これでは相手に失礼だし、蓮さんが怒るかもしれない。怒られるの嫌い。怖いの嫌い。

 

「集団戦は苦手かしら?」

「複数相手するのは初めてじゃないんですけど、こっちにも味方がいたり、戦いやすい相手だったりの経験しかないので、どう動けばいいのか分かりません」

 

「一対一になる様に動いてみなさい。例えば―――」

 

 蓮さんはタブレット端末でマップを3D表示にして、建物の高低差も表示させて教えてくれた。今回は居ないが、スナイパーの対処方法は射線を通らなくする事。狙いが分かるなら一点集中のシールドも良いらしい。スナイパーの射線を封じてる間にアタッカーかシューターを落とすのだが、アタッカーを優先した方が圧力も一気に減るらしい。今回のシューターは出水先輩という事もありトリオン能力が優れているのでシューターの距離で戦うのはお勧めではないらしい。距離を取ってスナイパートリガーで落とせればいいが、すぐさまスナイパーに狙撃し返される可能性があるという点がある。

 

「―――今回はそのスナイパーも居ないから気にしないで良い点が多いけど、実戦で同じ様な状況になったらベイルアウトするのは自分だから少しは気にした方が良いわね。複数人を一人で相手するのも、この間の夜の対策としての模擬戦だから仕方ないけれど頑張って」

「了解です。色々教えてくれてありがとうございます……でも何とかなると思います」

 

 今思えば蓮さんが教えてくれた事は嵐山隊の皆や、今までのレンタル活動による防衛任務でも学んでいた事だ。それでも上手く動けなかったのはトリオン兵以外では複数人を相手にする機会がなかったからだ。

 焦るな。一人一人確実にやれば問題ない。そう思いつつ俺は再び模擬戦ルームに入るのだった。

 

 

 

 

 

 ―――レーダーに赤い点が高速接近していた。

 

「見つかった!?」

 

 隠れていた橋の下から飛び出す。

 

 雨の中、トリオン体で駆け抜ける。

 

 追ってくるのはボーダー屈指の精鋭達。

 

 逃げるのは何故か。追われるのは何故か。

 

 俺はそんな事も考えなしに逃げ続けた。

 

 建物の隙間を縫う様に身体を滑り込ませたその時、ロープの様なもので首を引っ掛けて俺は倒れた。

 

「そこまでです」

「ぐぅ……何で……」

 

 トリオン体だから痛みはないが、倒れた俺に銃を向けてくる少女を目にして俺は苛立ちが溢れてきた。

 

「何で木虎まで敵に回ってるの!?」

「知りませんよ! 私も迷惑してるんですから!」

 

 チームランク戦で使う戦場(フィールド)に転送されたかと思えば、設定は雨の街。俺は嵐山隊の木虎、太刀川さん、米屋先輩、奈良坂先輩の集団に襲われていた。4人相手って酷すぎるだろ!! しかも攻撃のバランスが良い組み合わせだし!!

 事の発端は太刀川さんだ。「掠るだけでベイルアウトするなら集団にも対応できるはず」とか言い出して、今回の模擬戦の関係者で来れる人に連絡を入れて呼んだらしい。

 木虎もこっちの味方かと思えば敵に回ってスパイダーと銃型トリガーで襲ってきた。迷惑してるとか言いながらも……ストレス発散とか考えてんじゃないだろうな。

 

「―――でも残念でしたー!! くらえぃ!」

「しまっ……!!」

 

 スコーピオンを足の裏から伸ばし木虎を突き刺す。一発ベイルアウトさせ俺は再び駆け出す。スナイパーは後回しだ。レーダーに映るのは米屋先輩かな? 俺は即席トラップになるか分からないが、シューターのアステロイドを作り出す。それを(メッテオラ! メッテオラ! ぶっちかませーメッテオリャー!)と念じながら設置して離れた場所からライトニングで狙撃してみる。

 

「おぉーメテオラになってる! ふむ、コレで誘き寄せたところを……」

「……と、思うじゃん?」

 

 マジかー……俺は咄嗟に身を捩り米屋先輩の弧月の槍を避けるが、オプションの幻踊で変形した槍先に片足を切られる。それに構わずアステロイドを放つのだが、いとも容易く回避され切り払われた。俺はその瞬間にバックステップで距離を取り、再びアステロイドを放つが、放つと同時に後ろ手にアステロイドに念じる。

 

(君は誘導弾(ハウンド)だ! 喰い破れ!)

 

 真上に打ち上げられたアステロイドは一直線に上がらず、曲線を描いて米屋先輩の上から襲い掛かった。

 

「かぁーマジか。ハウンド持ってたのかよ……」

 

 それをまともに受けた米屋先輩はベイルアウトでフィールドから消えた。残りはスナイパー1にアタッカー1か。スナイパーは邪魔だけど、ここは建物の多いエリアだから射線を通らないようにしてアタッカー優先か? それともスナイパーを探すのが先か? と、ここでまた俺は倒れた。

 

「何だ? あ、木虎のスパイダーか! へー木虎がベイルアウトしても残るんだなー……コレも便利だな」

 

 今後のトリガーの設定を考えつつ俺は騙しのメテオラを作り、アステロイド待機状態にして配置。赤い点が近付いているのを確認して建物の2階に移動した。ライトニングよーし。

 

 レーダーには高度計はないので俺が2階にいるのは一発で分かる事はないだろう。赤い点が太刀川さんだったが、メテオラを打ち抜いて先ずは目くらましをする。同時起動した待機状態のアステロイドは太刀川さんに向かうが……。

 

「上かぁ!!」

「うぉぉぉっ!?」

 

 旋空弧月でランダムで切られまくる。一歩だけのバックステップで視野を広くしてアステロイドも切り落とされた。俺は斬撃をテレポーターで回避して、背後から太刀川さんをライトニングで撃ち抜いたのだが、慌てた状況ではイメージが上手くいかず、一発退場には出来なかった。結局その後は太刀川さんの旋空弧月の乱舞にごり押しされた。

 

 そして、ログインした部屋。つまり太刀川隊のソファーに落下して戦闘は終わった。

 

「おぶっ」

「お、降って来たねーお疲れにゃんこー」

 

「どもでっす……」

 

 太刀川隊のオペレーター国近柚宇さんに労いの言葉を頂きながら、俺は欠点を再確認した。俺は焦った時に失敗する。思考が一瞬止まった時はイメージもボロボロに崩壊する。もっと簡単なイメージでも良いのか確認しよう。さっきの戦闘を振り返れば、米屋先輩に放ったハウンドはかなり良かったかもしれない。それと比較してもメテオラなんかを作る時は時間が掛かり過ぎな気がする。

 

「どした~何を悩んどるのかね~。ゲームするかい?」

「よぉ惜しかったなネコ」

「うぐぅ……なんですかあの必殺ゲージが溜まったような弧月乱舞は……」

 

「お、じゃあ格ゲーにするかね」

「柚宇さんはマイペースですね~」

「お前も中々にマイペースだろう」

 

 それを言うなら太刀川さんもじゃね?

 

「お? 太刀川さん。忍田さんから連絡~」

「……ぉ、ぉう」

 

 太刀川さんは忍田さんから電話で怒られた。俺のデータ取りやシュミレートをするのは許可しているが、遊び感覚で集団で襲うとは何事かと怒られてる。忍田さんの声が受話器から漏れてくるからめっちゃ聞こえる。そして、電話は切られ、太刀川さんは部屋を後にした。これから面と向かって怒られるらしい。

 

「がんばってね~。よし、ネコ君どのキャラ使う?」

「あ、じゃあガイルで」

 

 さぁ本気のバトルの始まりだ。

 

 

 




◆太刀川さんと互角レベルで戦うネコ
いえ、少し誤解です。個人戦などの公式のランク戦ではないので太刀川さんがマジでやってないところがあります。が、ネコが少し勝つようになってからは割と本気でやってくれます。中距離を維持できれば何とか勝てますが、旋空の間合いに入れば大体負けます。勝てるときもあります。

◇可能性のネコ
サイドエフェクトの制御不可能により多大な被害をボーダーに与えていた可能性のあるネコですが、優しい人たちに囲まれて割と平気です。そんな中、武富桜子と会うことでどうなることやら。

◆風間隊との相性。
基本的にネコは射程が取れるものが好きです。ぼっち意識が強まるので孤独なスナイパーはそこまで好きではなく、テレポーターを使った一気に距離を詰める近距離スナイパーをやったりします。中距離にもなれば即落ち率も低くなり、風間隊ともやりやすい距離です。

◇カメレオンとネコ
隠れる=騙まし討ちなどに繋がる事から、ネコは何となく嫌な雰囲気を感じ取れます。周囲からは野生の感として認識されています。

◆見つめ直すネコ
月見蓮さんから教えられた事は割と基本的なことで、嵐山隊や防衛任務中に自分で学んだ事でもあります。再度その辺を認識させ、出来るはずなのに出来てない事を理解させました。
また、自分の欠点を理解し、焦らないようにさせていきます。

◇月見蓮
三輪隊オペレーター。太刀川慶と幼馴染。
ネコの事を可愛い弟でも見るような感じで接してくれてます……が、ネコは三輪隊の人だし少し怖い。という印象を持っています。少し和らいだかな?

◆国近柚宇
太刀川オペレーター。マイペースさん。ボーダーNo.1ゲーマー。
ネコのことは一緒にゲームが出来るペットの様に認識している。

◇ガイル
ネコは待ちガイルは好きではなく、ソニックブームが好きです。そして、ゲームは好きですが弱いです。負けが込むとココアでも回復しきれないかもしれません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。