Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
"春の嵐作戦〟は負傷者を出すものの死者は無く勝利した
自分達の他に負傷者は数多くおり、衛生兵はそれらを見て回っている
今回の作戦で部隊をまかされていたマザーはラビット達と死者に敬礼をしていた。死者が出なかったのはアメリカ兵と共に行動していた第7小隊と第1小隊だけであり、他の小隊は当然の如く死者がでていた
死体を一ヶ所に集められ布を被せられているが、その死体を見た時に新兵が数多くいる第7小隊はその場で嘔吐する者もいた
祖国の為にその命を散らした兵士達に敬意を示していると、後ろからウェルキンとファルディオが来てマザー達と同じく死者に敬礼をした
「・・・・・・ありがとうございます」
敬礼をし終えたファルディオがマザーの方を向き礼の言葉を言った。その表情は真剣であり、マザーもその表情を見て聞き返さず黙っていた
「あなた達はこの国の人間じゃないのに、この国の為に戦ってくださり・・・散っていたった皆に敬意を表してくれました」
それにマザーはフォルディの方からガリア兵が集まり勝利に喜んでいる方を見た。それにつられファルディオとウェルキンもその方を見た
「祖国の為に命を張って闘った勇敢な兵士に敬意を払うのは当然だ。礼を言われることじゃない」
マザーはそう言うが
「それでも・・・・・・それでも礼を言わせてください」
ファルディオが礼をしながら言い
「僕も礼を言わせてください」
ウェルキンもマザーに礼を言った
「中尉達が奮闘してくれたおかげで多くの命が救われました。もし中尉達がこの戦線に加わっていなければ負けていたかもしれません」
それには言い過ぎだとマザーが言おうとしたら
「そのとおりだ」
声の発言主はバーロット大尉だった。マザー達はすぐさま敬礼をすると
「いや、楽にしていい。今回はギュンター少尉の作戦が功を奏したようね。はじめての作戦で、よくやったわ」
バーロットがウェルキンに称賛の言葉を言う。そしてマザー達の方を向くと
「あなた達の活躍は聞てるわ。先陣をきって拠点を占拠したそうね、よくやってくれたわ」
マザーは笑顔浮かべながら
「任務を遂行しただけです」
と答えていた。その一方で
「・・・・・・何て奴だ、本当に戦車で川を渡っちまうなんてよ」
地べたに座り込んでいるラルゴが呟くと
「ここまで上手くいくとわね・・・・・・正直驚いたよ」
傍にいたロージーも呟いていた
「それに・・・・・・」
ロージーがある方向を向くとラルゴも同じ方向を見た、そこにはアメリカ兵が談話しながら鹵獲した銃を見ていた
「まさかあそこまで凄いなんて・・・・・・あいつらの話は案外嘘じゃないかもね」
戦場での彼等の動きは義勇軍どころか正規兵なんかより戦場を熟知していた
「俺は何回か特殊部隊を見たことはあるが・・・・・・その部隊よりいい動きをしてたな」
ラルゴも彼等の動きには舌を巻くほどであった。銃弾が飛び交う中で恐れずに簡易陣地まで走り、的確に敵兵に銃弾を当て、互いの背中を守る、これらをいとも容易く行動する彼等は相当な訓練を積んできたと感じていた
そんなラルゴ達の気も知らずに
「随分古い銃だな・・・・・・だがセミオートマチックのライフルだな」
1人のレンジャーが鹵獲したライフルを見ながら言うと
「確か時代的に今は第2次世界大戦の少し前ぐらいだから、俺達の爺さんが使っていた頃の銃だな」
SEALsの隊員も同じライフルを見ており
「だがここら辺はヨーロッパだろ?主力はボルトアクションだと思ってたぜ」
周りにいた1人が感想を述べ
「聞いたことの地名もあるし、見たこと無いからな・・・・・・やっぱ別の世界なのだな」
などと話していた。そんな様子を見ていたラルゴ達に
「あなたたち!約束通り、ウェルキンを隊長と認めなさいよね!」
強く言ったのはアリシアだった
「チッ、しょうがねぇな」
ラルゴは今回の作戦でウェルキンの実力を見られて渋々だがそこまで嫌な顔をせずに了承し、どこかへ歩いて行った
「隊長のこと認めてやってもいいけどさ、アタイ達はダルクス人まで認める気はないよ」
ロージーはそう言うと何処かに行ってしまった
「ちょっと!もう・・・・・・」
アリシアが何か言おうとしたが、その時には既に背を向けていた
「アリシアさん、いいんです。馴れていますから」
傍にいたイサラは怒っていたアリシアをなだめた
「でも・・・・・・いつかダルクス人と皆が分かりあえる日が来るのを願っています」
目をつぶりながら願うよう言うと
「大丈夫ですよ、人はそこまで愚かではありません」
イサラが振り向くとそこにいたのはラビットだった
「人は何かしら区別をつけたがる生き物です。しかし、そんな物に囚われない人だっています」
顔に笑みを浮かべながらイサラの頭を撫でると
「必要なのは諦めないことです。自分から歩みよれば必ず手を取ってくれる人がいます」
するとイサラの表情が柔らかくなり
「はい。ありがとうございます」
その様子を見ていたアリシアも笑みを浮かべていた。すると、いきなりフラッシュと共にシャッター音が聞こえた
「ハーイ!お取り込み中すみません。GBS記者のエレットです」
カメラを片手に眼鏡をかけた金髪の女性がおり、腕には"GBS〟と書かれた腕章が巻かれていた
「ギュンター隊長!初めての作戦で目の覚めるような作戦でしたね」
ウェルキンの写真を1枚取るとメモ帳らしき物を取り出しインタビューをし始めると
「はい、今回は隊員達の活躍と仲間達の働きのおかげでヴァーゼル橋を奪還することができました」
笑顔でインタビューを受けていた
「この戦いを通じてギュンター隊長なりに感じたことはありますか?」
再び問い掛けてくると
「感じた・・・・・・そうですね・・・・・・」
ウェルキンは何か考える表情をすると
「橋と言うのは道と道を繋ぐ人々の生活にはなくてはならないものです。僕も第7小隊の中で、皆の心と心をつなぐ橋のような存在になりたい・・・・・・そう、思います」
その様子を見ていたマザーは心の中で
「(天然かどうかしらんが、オフィシャルなコメントをすらすら言うとは・・・・・・中々策士だな)」
などと考えていると
「そうですか、それに・・・・・・」
エレットはウェルキンの方からマザーの方に視線を向けた。それに嫌な予感を感じたマザーが早々に退散しようとしたが
「あなたが例の傭兵団の隊長さんですね!」
近寄ってくるエレットにマザーは内心舌打ちをした
「噂は聞いていますよ!砲弾を弾き返す装甲をもった重戦車に、空を自由自在に動き回る未知の飛行船など!是非お話を聞かせて欲しいのですが」
やはりそこを聞いてきたなと思いながらも
「スマンが、これらの情報は重要機密でな、そう簡単には教えることはできない」
するとエレットの表情はますます好奇心に満ちた表情になった、しかし
「他の情報を言うつもりは無い、我々の商売道具の情報を簡単に口にしたら此方の価値が下がるのは目に見えている」
喋らないことを明確に表現するが、エレットも中々食い下がらないから
「聞きたいことがあるならバーレット大尉に許可を貰ってからにしてくれ」
そう言い立ち去ろうとすると
「最後に1つだけ聞かせてください!」
まだ聞いて来るとは見上げた記者魂だと思いながら振り向くと
「なぜそれだけの戦力持って置いて、敗戦寸前のガリアについたのですか?」
これは記者としてガリア国民の1人として当然の疑問だった。敗戦ムードが強く、王手一歩手前のガリアに傭兵がついてもメリットが少なければデメリットが多い状況で博打みたいな行動をしているのか
「その戦力があれば帝国でもそれなりの地位が貰えるほどなのに、なぜガリアについたのか教えてください」
再度聞いて来る問いに対してマザーは
「・・・・・・ただの恩返しさ」
そう言うと皆の所に戻って行った
「あ・・・・・・いったいどんな恩を受けたのかしら?」
そう疑問が残るエレットだった
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"春の嵐作戦〟から数日がたち、アメリカ軍が駐屯している義勇軍第3中隊の専用格納庫では忙しそうに皆が動いていた
「砲弾の数はどうだ!」
戦車長が格納庫の中で戦車の整備をしていた。だが、彼らは戦車兵であって整備兵ではない。整備にしても限度があり、いつまで動かせるのか不安があった
「まだ大丈夫です!しかし、駆動系やエンジンに手が付けられませんよ!」
戦車の中でチェックをしていた兵士がいうと
「まだ数回しか戦闘していないから大丈夫だ」
戦車の外で破損部分がないかチェックしてると
「しかし、電子系統が何時までもつか分かりませんよ!」
特に問題なコンピューターは、変えの部品が殆どなければ、現地調達がほぼ不可能に近い状態である。もし不備がでれば生死を共にした戦車を破棄しなければならなくなる
「確かにな・・・・・・もしもの時は覚悟をしなければならんな」
もし戦闘中に自動照準にブレがでたらマニュアル操作になり、激戦の最中ならそれが命取りになる可能性もある。中にいた兵士達もその現実に息を飲んだ
「いまその心配をしても仕方ない。そんなことにならないようにしっかりとチェックしろよ」
戦車長がそう言うと戦車の中から返事が返ってきた
「・・・・・・フィルターの方もまだもつな。おい!坊主共!」
戦車長が外でエンンジや武装を真剣に見ていた技術者らしき青年2人に声をかけた
「は、はい!」
眼鏡を掛けた青年は思わず声を出して姿勢を正し、隣にいた頭にゴーグルを掛けている青年も同じく姿勢を正した
「見るのはいいが、下手な所は触るなよ。大尉達の要請だからと言って弄ってみろ、戦車砲の的にするからな」
凄みを効かせながら言うと、2人は冷や汗をダラダラ流しながら返事をした
「だが、整備兵がいなければ部品も燃料もないからな・・・・・・お前達の力を借りる以外に方法が無いのも確かか」
そう言い、簡易点検に戻ろうとすると
「でも・・・・・・凄いです」
眼鏡な青年がそう言うと、戦車長が振り向いた
「まったく見たことも無い技術に素材、ラグナイト燃料(ラグナリン)じゃなくて未知の液体燃料!機動も口径も規格外って言っても過言じゃない性能なんですから!」
後半から興奮しながら言っていると、冷静になったのか恥ずかしそうな表情をするが
「まったく、なんで技術者はこんな奴らばかりなんだかな」
戦車長が笑いながら2人をみると、砲塔部分をポンッと叩いた
「だが、その技術者のおかげで俺達は生き残っているんだからバカにできんな」
すると2人の固い表情が幾分かやわらいだ
「エンジンの方はどうにかなるのか?」
真剣な表情で尋ねると
「今は何とも言えません。これほどまで技術が違っていると難しいのは確かですね」
眼鏡の青年が答えると
「駆動系もガリアのと全然ちがうんスよ、整備しようにも部品の互換性も合わないし、中もコンピューター制御なら0から造らないといけないのも問題っス」
ゴーグルを掛けている青年も付け足すように言う
「そうか・・・・・・そう言えばまだ名前を聞いて無かったな」
戦車長が聞くと
「僕はクライス・チェルニーです」
クラウスは律義に頭を下げ
「俺はリオン・シュミットっス!」
敬礼しながら言うと、戦車長や中で整備していた戦車兵とも親睦を深めた
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イサラは目の前の物を真剣に観察していた。その観察している対象はヘリコプター、この世界に無い空を自由に掛ける乗り物である
「そんなに興味があるのか?」
声を掛けながらイサラに近づくのはパイロットのホーキンスだ
「はい、空を飛ぶだけでも凄いのに色々の種類がありますから」
そこには『アパッチ』はもちろん『ブラックホーク』に『チヌーク』もあるのだから仕方ないと言える
「まだ飛行船しかないからな・・・・・・興味が沸くのも分かる」
ヘリを見ていたホーキンスがイサラの方を向くと、なにやらメモ帳に熱心に書いていた。それをホーキンスがみると何やら見たことのある絵が描かれていた
「これは・・・・・・複葉機?」
そうメモ帳の1ページ全体に描かれていたのは複葉機であり、その形は座学で習った有名な2人、あのライト兄弟が造った複葉機に酷使していた
「ふくようき?」
イサラはホーキンスの言葉に興味を示した
「あぁ、主翼が上下に2枚あるから俺達の世界では複葉機と呼んでいた」
それを聞くとイサラはメモ帳をジッと見た
「それは君が考えたのか?」
こんな少女が飛行船しかない時代で、複葉機の構造を考えたならまさしく天才であるとホーキンスが思っていると
「いえ、これは父の絵です」
少し目を輝かしながらイサラが答えた
「たしかベンゲル・ギュンターだったか?」
ホーキンンスが尋ねると
「いえ、ベンゲル・ギュンターは義父です。私の父と母は幼いころに事故に遭って亡くなり、義父が私を養女として引き取ってもらいました」
それを聞いたホーキンスは申し訳なさそうな表情をし
「・・・すまない、不躾な質問だったな」
あやまるが、イサラは
「気にしないでください。2人とも私の大切な父ですし、兄さんやマーサさんも一緒でしたから」
どこか幸せそうな表情にホーキンスはホッとした
「しかし、君の父親は凄いな。この時代でここまで設計図を完成しているとはな」
イサラからメモ帳を見せてもらったホーキンスは改めてそれを実感した。まだライトフライヤーが発明されていない状況で、数年・・・もしかしたら数十年先の技術を構築した人物に敬意をもった
「はい。私の父テイマーは『エーデルワイス号』を自ら設計し、造ったのですよ」
その事実にホーキンスは驚いた。他の小隊や正規軍で使用されている戦車を見たが、素人の目からみても造りがまるで違うのが分かっていた。戦車小隊のダニエル曹長から聞いたが元の世界でもこの時代じゃ規格外の戦車だと聞いた
「まさか、あの戦車を造ったとは・・・・・・天才とは君の父親のことを言うのだろうな」
これは誇張な表現ではなく純粋に心から思ったことだった
「私もそう思います」
イサラは自分の父が褒められたのが嬉しかったのか、笑顔で答えた
「だが君も天才だ」
メモ帳を返すとホーキンスがそう言った
「え?」
イサラは何のことか分から首をかしげると
「このメモ帳を見たが父親の文字かな?それは設計図のところまでだった、そこからの基礎理論を書いたのは君だろ?」
メモ帳の前半部分はテイマーの文字だったが、中盤からは殆どイサラの文字だったのだ
「1人でここまで出来てるなら、もはや天才の領域だと俺は思う」
ホーキンスの褒め言葉にイサラは顔を若干赤らめながら
「いえ・・・・・・私は」
否定しようとすると
「謙遜することはない、君は十分天才さ」
親が造った戦車を1人で整備、改良し、運転もできる。そして、親が残した設計図から基礎理論を構築した頭脳はもはや天才といっても過言ではなかった
「そうだな・・・・・・おい!ギークボーイ!」
ホーキンスが周りを見回し、ある兵士の呼んだ
「どうされましたか、大尉殿?」
呼ばれた兵士は敬礼し、尋ねると
「これを見てくれ、どう思う?」
ホーキンスがメモ帳の絵の部分を見せると
「すごく・・・・・・複葉機です・・・・・・」
ギークボーイはその絵をマジマジと見てると
「これはライトフライヤーに似ていますねこの露出した骨組みに、機体前方にある昇降用の前翼と後方にある方向用の後翼、ワイヤーによる動翼の制御が可能にした・・・・」
1人でペラペラ喋っている彼の名はジャック・エメリッヒ。AK-47をNATO基準の5.56×45mm弾を撃てるように造り変え、ユニバーサルボルト使用に魔改造した張本人であり、これを見た仲間から「ギークボーイ(オタク野郎)」と呼ばれていた
「しかし大尉殿、これは一体・・・・・・」
メモ帳の書いた本人を訪ねようとすると
「これは彼女の持ち物だ」
親指でイサラを指すと、ギークボーイはイサラに近寄り
「ここの計算は・・・・・・」
メモ帳の計算式の部分を指差しながら言うと
「なるほど・・・・・・じゃぁ、ここの部分は?」
イサラも話が通じる相手が出来て嬉しいのか・・・・訳の分からない話になっていき、ホーキンスは苦笑いしていた
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整備は戦車やヘリなどの乗り物だけではなく、銃も必要なことである。レンジャーやデルタなどが自分の銃をクリーニングしていた
その近くには第7小隊の面々もいた
「それにしても、いろんな銃があるね」
ウェルキンは、その場にある銃の種類に驚かされていた
「まぁな、これらは俺達の相棒であり命を預けるものだからな」
デュースがクリーニングしながら答えると
「訓練生時代に教官に言われたよ、銃は女と同じだってな。大事に優しく扱えば振り向いてもらえるが、乱暴で雑に扱えばそっぽ向くなんてな」
M110のクリーニングが終わると既にクリーニング済みのHK416を持った
「それに、レイルにアクセサリーを付けると喜んでくれるなんて言ってたな」
マガジンを抜いてあるHK416のACOGを覗き、ピントを合わす
「へぇ~、でもその銃ってライフルでもないし、サブマシンガンでもないよね?」
アリシアがHK416を見ながら言うと
「これはライフルとマシンガンの中間に当たる銃で、俺達はアサルトライフルと呼んでる」
デュースはアリシアにHK416を元に説明をし始めた
「アサルトライフルの特徴はフルオートとセミオートに切り替えることができ、どんな戦況に対応できるようになっている」
左側にあるセレクターを動かす
「飛距離は物によるが、こいつは約600mまでの目標に当てることが出来る」
次にデュースはハンドガードのアンダーレイルに付けているフォアグリップを握る
「これにはピカニティー・レイルシステムが標準装備されてあって、これに色々なアクセサリーを付けることで戦闘をしやすくしている」
レイルの説明をしていると
「そのレイル?アクセサリー?よく分からないのが付いていらっしゃいますわね」
デュースの説明に参加していたイーディーが首をかしげながら言う、話の聞いていた第7小隊のメンバーに首を傾げているのが多いことに気付き
「実際に見てみれば分かる。これにはライトやグリップ、光学スコープにレーザーサイトなんかが取り付けられるが・・・・おい、ダスティー!」
HK416についているアクセサリーを見せながら説明し、近くでM4をクリーニングしていたダスティーに声を掛ける
「あいつが持ってる銃にはグレネードランチャーが付けられている。あれは個人携行火器の威力アップを目的として造られたものだ、ああ言う物も取り付けられことができる」
偵察兵や突撃兵の皆さんが頷いていると、向こうの方で青白いい光が見えたので、その方向を見てみる・・・・・・そこでは支援兵がラグナエイドの実践をしており、傍でみていたヘルナンデス等の衛生兵達の顔が青ざめた
無理も無い・・・・・・なぜならその光は座学でならったチェレンコフ放射光にそっくりなのだから。その光景を見ていたデュースも顔を顰め
「本当に大丈夫なのか・・・・・・あれ?」
実践されていたラグナエイドの光景を指差しながら言うと
「大丈夫・・・・・・とは?」
ウェルキンが不思議そうに聞くと
「いや・・・・・・体に害とかはないよな?」
それを聞くと、ウェルキンは笑いだし
「大丈夫だよ、むしろ色々なエネルギーの役割を果たしたり、傷の治療効果もあるから、いいことづく目じゃないかな?」
その言葉を聞いても、チェルノブイリの話を聞いたことのあるアメリカ兵達にとっては簡単に馴れることは出来ないとデュースは思っていた
そう思っていると、肩を叩かれ振り向くと・・・・・・黒い前髪が左目を隠した女性、マリーナ・ウルフスタンがいた
「あぁ・・・・・・あの時のスナイパーか」
"春の嵐作戦〟の時に簡易陣地の1人を撃ったスナイパーであるとデュースは気付いた
「あれ・・・・・・」
マリーナが指差したのは、クリーニングをし終えたM110だった
「あれがどうかしたのか?」
M110を指差した理由を聞くと
「あれ・・・・・・欲しい」
その言葉にデュースは納得した。狙撃手である彼女に俺達のスナイパーライフルは魅力的ではあるなと思っていた
「スマンが、あれはやることは出来ない。そうだな・・・・・・パンサー!」
デュースはパンサーを呼び
「彼女にM24を貸しても構わないか?」
そう尋ねると
「大丈夫なのか?」
パンサーが近づきながらデュースに聞いた。なにが大丈夫なのか他のメンバーには分からなかったが
「大丈夫だ、俺が保障する」
するとパンサーは少し考えたあと・・・頷いた
「少し待っていてくれ」
クリーニングを終えた銃を持ち、何処かへデュースは行った。10分後、戻ってきたデュースの手には先程とは違う銃が握られていた
「これがお目当ての物だ」
武器庫から持ってきたM24をマリーダに渡した
「これはM110とは違いボルトアクションだが、最大射程は800mに弾も5.56mと違い大口径の7.62mで威力も保証できる」
実際に構えてみると、気にいったのか口元に笑みを浮かべており
「狩にも使えそう・・・・・・」
そう言うと
「狩猟用の民間モデルを軍事モデルに改造した銃だからな、使いやすいと思う」
デュースがM24を返すように言うと・・・・・・マリーダは物欲しそうな表情をする
「それは俺個人のじゃなくて、俺達の備品だからあげることはできない。その代わり、武器庫で俺の名前を言ったら貸すように頼んでおいたから我慢しろ」
それを聞くとマリーダは渋々だがM24を返した
「他にもスナイパーライフルがあるが、話を聞くか?」
少し落ち込んだ表情をしていたマリーダの表情が明るくなった
「・・・・・・お願い」
その話は他の小隊メンバーも興味をもち、またデュース先生の講義が始まり・・・異世界での1日は過ぎていく