Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
「よし、撤収するぞ!」
戦闘を終え、民間人の救出作業を開始したアメリカ軍面々。突如現れた空飛ぶ箱舟こと、『ブラックホーク』輸送ヘリの姿に皆が目を奪われ、
「空を・・・・飛んでいます!!」
と空を見上げたまま動かなかったイサラに、口をあけて唖然とするアリシア。
米軍の救出した人数は結構なもので、『ブラックホーク』1機では足りず、無線で『チヌーク』を呼び出した。
『ブラックホーク』では妊婦と数人の民間人を野営地まで運び、次に飛んできた『チヌーク』にラビット達が迎えに行った母親達とアリシア達の自警団、SEALs達が乗った(その時ヘリに乗るのが初めてなアリシア他数名は、まるで子供のように興奮していた)。
そして残されたエーデルワイス号を、M1と随伴歩兵、ATVが先導した。
≪こちらトマホーク1、聞こえるか?≫
ウェルキンはいきなりの無線に驚きながらも、張りのある元気な声で返答する。
≪は、はい。聞こえます≫
無線機から聞こえる声は、これまで彼が聞いたどのような無線音声よりも、遥かにクリアな音質だった
≪そちらのコールサイン・・・・・・では分からんかな・・・・・・そうだ、君の戦車の名前は?≫
≪名前ですか?この戦車はエーデルワイス、エーデルワイス号です≫
≪エーデルワイス・・・・・・いい名前だ。これから君をエスコートする、離れずついて来てくれよ≫
M1を先頭に、エーデルワイス、ATVの順番に並んだ車列は、ひとまず安全と思われる野営地点に向かった。
野営地に着くと、工兵が戦車やヘリなどの簡易点検を、衛生兵がナイチンゲール宜しく負傷者の手当てを、ラビットが先程助けた少女をあやしたりなどせわしなく動き回る中、帝国軍に占拠された町を、アリシアとウェルキンは悲しげに見つめていた。
「よう、こんな所でなにしてんだ?」
2人が振り向くと、そこにはデュースがいた。ふと見ると、その両手には数本のドリンクが握られている。
「ほらよ」
デュースは2人に飲み物を投げ渡し、彼らと同じく町の方を眺めはじめた。町はそこらかしこから黒煙が上がり、所々に翻る帝国の国旗と共に風に揺られていた。
「・・・・・・これからどうするんだ?」
野営地の方に戻りながらデュースが聞くと、ウェルキンが答えた。
「ランドグリーズに向かおうと思う、いまの状況なら、召集令が出ているはずだから」
「召集?」
デュースは思わず首を傾げた。ウェルキンが言うに、ここはガリアという中立国で、小学校から大学までの教育機関では、軍事教練が必修科目になっているらしい。
そして国民民兵制度なるものも存在し、有事の際には一般市民男女問わず、すべてが義勇軍として召集されるのだという。
「永久中立国か・・・・・・スイスみたいもんか」
デュースはウェルキンの話を聞いて、同じ中立国であるスイスを思い浮かべ言葉を漏らした。それが聞こえたのか、ウェルキンが首を傾げる。
「スイスって?」
隣にいたアリシアが同じく首を傾げながら聞くと
「俺達の知っている国に、ガリアと同じような国があってな。そこがスイスって名前なのさ」
「へぇ~」
アリシアが思うところがあったのか、目を丸くして頷いた。そうしながら歩いていると、野営地に到着した。
「ウェルキン」
思い出したように、デュースがウェルキンの方を向きながら声をかける。
「君の事を隊長達が呼んでいてな。俺が向かえに行ったのもそのためなんだ。ついて来てもらえるか?」
ウェルキンは頷いてデュースについて行くと、一機の『チヌーク』の前に着いた。そこには武装したレンジャーが銃を手に警備しており、彼らはデュースの姿を認めると敬礼した。
デュースもそれに返すと、レンジャーの一人が、肩越しに親指で後ろを指さした。
「中でパンサー達が待っている」
ウェルキンは導かれるまま『チヌーク』の中に入ると、各部隊の隊長が集まっていた。その中にいたパンサーが立ち上がる。
「自己紹介がまだだったな。アメリカ陸軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊「AFOウルフパック」隊長、パンサーだ。階級は大尉」
彼が自己紹介すると、ウェルキンは慌ててガリア式の敬礼を返した。まさか将校だとは思いもよらなかったのだろう。
「じ、自分は、ウェルキン・ギュンターであります!」
ウェルキンはガチガチに体を固まらせており、緊張のせいか、声も絞り出したようなものになっていた。
「楽にしてくれていい。我々は違う国の人間だからな」
緊張して体を固まらせたウェルキンを見たパンサーは、どこか懐かしさを感じながら笑みを浮かべた
「は、はぁ・・・・・・」
楽にしろと言われても緊張が抜けないウェルキンは、畏まりながら指定された席についた。
「さっそくで悪いが、まず我々の質問に答えてほしい」
パンサー達の質問は、基本的にはデュースが聞いたのと変わらなかったが、彼らの質問は、この国の現状や外交、そして内政などにも及んだ。
「なるほど・・・・・・ガリアは現在、帝国と呼ばれる連合と戦争中で、国境に近かった君達の町、ブルールに攻め込んできた帝国軍と君らの自警団が交戦していたところに、我々が現れた、と」
フォスナー中尉が、ウェルキンの回答を簡略化して述べると、
「はい・・・・・・ところで、僕からも質問があるんですがよろしいですか?」
大学で幹部候補教練過程を履修していたウェルキンは、その場の空気に慣れたのか質問を返す。
「・・・・・・なんだ?」
「あなた達は、アメリカという国の軍人だというのは分かりました。ですが僕は、アメリカという国を見たことも、また聞いたこともありません」
ウェルキンはパンサー達を真剣な表情で見つめながら続けた。
「あなた達は・・・・・・何者ですか?」
その場に不気味な沈黙が流れた。ウェルキンの額から頬へ、一滴の汗が流れ落ちる。
沈黙を破ったのはマザーだった。
「・・・・・・このことは他言無用でお願いする」
「マザー!」
咄嗟にパンサーが咎めるが、マザーは続ける。
「今の状況ではしかたない。ウェルキン君は質問に答えたんだ、こちらも答えなければフェアじゃない」
マザーはパンサーを諭しながら皆を見回すと、ウェルキンに向き直って続けた。
「我々は別の世界・・・・・・異世界とでも言えばいいのか?そこからきた」
マザーの言葉はとても衝撃的だったのか、ウェルキンは口を開けたまま固まった
「・・・・・・」
どんな内容だろうかと覚悟していたウェルキンだが、遥か斜め上を行く内容の回答に、思考が停止した。
「まぁ、いきなりこんなこと言われれば、俺達でも迷わず精神病棟をオススメするさ」
マザーが言いながら嘆息すると、周囲の人間も同じ考えだったらしく、同じように溜息が漏れた。
「だが話に聞くところこの世界、最低でもこの国や帝国、連邦などには、ヘリコプターなんていう航空機は無いんだな?」
話を振られ、思考が回復すると
「・・・・・・飛行船などはありますが、こんなものは見たことがありません」
記憶から探し出すかのように考えながらウェルキンが言う
「更に言えばこの世界の主な燃料はラグナイト鉱石だそうだが、俺達の戦車やヘリ、車は、ガソリンという液体燃料で動いている」
マザーが言うように、未知の燃料にオーバーテクノロジーと呼んでも過言ではない技術、正規軍顔負けの洗練された行動、極めつけは国の情勢や、主な国家の場所を知らないことである。この事から導き出された答えは・・・・・・
「本当にこの世界の人では無い・・・・・・と?」
「信じてくれ、としか言えないな」
ウェルキンは少し考えた後、
「分りました。信じます」
マザーの目を見ながらはっきりと頷いた。
「そうしてくれると助かる。だが最初に言った通り、この事は他言無用にお願いする。もし外部に漏れるようなことがあれば・・・・・・」
マザーはウェルキンを睨む。眼光だけで撃ち抜きそうなぐらい鋭い視線を浴びせながら、彼はさらに続けた。
「我々は、君を殺さなくてはならなくなる」
発せられる気迫にウェルキンは冷や汗を流し、唾を飲み込む。口の中が渇くのを感じながらも、
「はい」
マザーから目を逸らさずに頷いた。
「・・・・・・いい目をしてるな」
マザーから先程の気迫が消え、その顔に笑みを浮かべた。
「あんだけ脅してやっても目を逸らさないとは、いい根性してるぜ。どうだ、俺の部隊にこないか?」
笑いながらウェルキンの背中をバンバン叩くと
「待ってくださいよ大尉、彼は戦車兵みたいんで自分の部隊が適任でしょ」
戦車小隊のマクレイン曹長が会話に参加する。突然の談話に混乱するウェルキンの肩に、手を置いたのはパンサーだった。
「みな君を信用したのさ」
パンサーが顔に笑みを浮かべながら言うと、ウェルキンはホッとした表情になった。
「だが、信頼はしていない」
ウェルキンは不思議そうな顔をしてパンサーを見る
「信用と信頼は違う。俺達は兵士だ、仲間を信用しないと戦争などできん。同じ部隊に来ると信用から信頼に変わる」
パンサーは談話するマザー達や、外にいる民間人達と会話するデュースやラビットを見回し、ウェルキンの方を向いた。
「何故なら皆、仲間の背中を守ると言う行動で示しているからだ。信頼を勝ち取りたければ行動で示してくれ、俺は期待してるぞ」
パンサーはそう言いながら、デュースの方に向け歩いてゆく。
「はい!頑張ります!」
パンサーの背中にウェルキンが元気に答えると、パンサーは片腕を上げてそれに応えた。
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簡易会議の結果、米軍の目的地はランドグリーズへと決まり、ひとまずは腹ごしらえとなった。そうして皆で晩飯を食べだしたのは良いが・・・・・・あまりに酷いレーションの味に、ウェルキン達の顔はみるみる青ざめた。
中にはその場で悶絶する者すらいる。何人かが「何故これを食べられるのか」と聞くと
「もう・・・・・・なれたよ」
問いかけられた兵士達は遠い目をしていた。
そして早朝、一行は帝国軍に発見される前に移動を開始した。『アパッチ』の各種センサーや目視で周囲を警戒しながら進んだのも幸いして、
一行はこれといった障害もなくランドグリーズに到着した。しかし・・・・・・
「止まれ!」
一行は到着するが早いか、警護する衛兵に銃口を向けられた。ウェルキンが説明すると、衛兵は民間人とウェルキン達の身柄は保障すると約束したが、
「貴様らは何者か!?」
米軍へ対する対応は変わらなかった。
「待ってくれ、俺達は流れの傭兵だ。ブルール近郊に野営してるところ、戦闘に巻き込まれてな。民間人を攻撃していた帝国軍と交戦、ここに義勇軍があると聞いて雇われにきた」
と、マザーが苦し紛れに説明するも、
「黙れ!戦車を多数所持し、飛行船をもつ傭兵がどこにいるか!!」
と、空から降りてきたヘリに唖然としていた衛兵は、やがて向き直って怒鳴り散らした。周囲には野次馬が人だかりを作ったが、銃を持った衛兵に接近を阻まれていた。
「だが、それらが味方になると言っているんだ」
「黙れと言っとるんだ!!」
衛兵の反応に、米兵達は諦めに近い感情を抱いた。
自分達は正規軍だが、命令ではなく自己判断で民間人を救助し、ここまで護衛してきた。もう少し優遇されても良いではないか。だがもし自分たちが衛兵の立場なら、所属もはっきりしない正体不明の連中を、あっさりと味方に引き入れる事は考えられない。
なにより彼ら自身、このような待遇を受けたのは始めてではなかった。
「貴様らか、流れの傭兵というのは」
数十名の兵士を連れて現れたのは、鼻の下にプロペラ髭を蓄えた中年太りの男だった。
「わしはガリア中部方面軍総司令官のダモン将軍だ」
マザーはダモンの身体から漂う雰囲気で、この男は無能だと感じた。
「ハッ!そうであります、閣下!」
だが彼が軍人である以上、相手がいかなる人物であれ、将官には敬意を払った態度を取らねばならない。
彼はそう考える前に、気をつけの姿勢をとって大声で答えた。
「貴様らが流れ者で、我々の側につきたいという事はよく分かった。ここで立ち話もなんだ、君らをわが兵舎に招待しよう」
手のひらを返したような対応の切り替えに、マザーを含め、米兵達は何が起こったか理解できなかった。
そして同時に、彼らはダモンの無能さに感謝し、温かい食事と寝床にありつけるかもしれない期待に心を躍らせた。
「うむ、あの空飛ぶ乗り物だが・・・・」
ダモンは駐機された『チヌーク』や『アパッチ』、『ブラックホーク』を眺めると神妙な眼差しで答えた。
「あれは戦力としては如何ほどになるのか?」
マザーは即座に答える。
「あの機体は、自分の考えるところでは、一機で精鋭戦車一個連隊程度かと」
マザーの言葉にダモンは胡散臭そうな表情をした
「あれ1機で一個連隊と同等など・・・・・信じられんな」
精鋭戦車一個連隊・・・・・・この規模程の戦力が僅か1機と同等であるとは到底信じられなかった
「お言葉ですが閣下、これらは空を自由に飛べる他、対戦車用兵器を装備しております。空に向けて砲弾を撃てない戦車はいい的です」
マザーの説明を聞くと、無能の脳味噌でも空を飛ぶ兵器がいかに強大かを理解するに足りた
「ふむ・・・」
ダモンは顎に手を当て考えていると
「貴様らがわしの私兵になるのであれば、雇ってやらんでもないが?」
ダモンの提案は魅力的だったが、マザーの心は既に決まっていた。
「お断りします」
自分の提案を断られ、元々沸点の低いダモンの怒りは、即座に頂点に達した。
「き、貴様等!だれにそんなこっと言ってるのか分っているのか!・・・・・フン、まぁ良い」
しかし彼は急に怒りを窄めると、下品な笑みを浮かべながら更に提案した。
「わしの下に入れば有効に使ってやれるし、給金や勲章もタンマリ出してやるぞ?」
ダモンはマザー達はあからさまに買収しようとしたが、マザーも負けずに
「お言葉ですが閣下、我々一同は義勇軍に志願すべくこちらに参りました。義勇軍に志願する以上、この地を我が祖国としてガリアを守る所存です。しかしながらそれは、決して貴方だけを守るためではありません」
とダモンの眼を睨みながら真剣な表情で答え、更に続けた。
「・・・・・・交渉が決裂したの場合、我々は帝国の軍門へ下る覚悟もできております」
マザーの言葉に、兵士、そしてウェルキン達は言葉を失った。
空を自由に移動できる乗り物に、恐らくガリアや帝国のそれをも凌駕するであろう性能を持つ9両の戦闘車両、そしてそれらを操る完全武装の兵士240名が、ただでさえ劣勢のガリアに牙を向けるというのだから。
ダモンは顔を真っ赤にしてマザー達を睨み、マザー達も怖気づくことも無く睨み返している。何か物音がすれば、それをきっかけにして銃撃戦でも始まりそうな、まさに一触即発の状態だ。
「ダモン将軍」
ダモンの後ろに立っていたメガネの女性士官が、長く不気味な沈黙を破った。
「彼らは義勇軍に志願すると言っておりましたが、ここは小官にお任せ頂けませんか?」
しかし脳天に血が昇りきっているダモンは、まったく聞く耳など持たずに怒鳴り散らした。
「やかましい!こいつらは帝国のスパイだ!衛兵を呼べ!!」
マザー率いる米軍将校達は、ダモンの言葉に内心呆れ果ててしまった。
やはり交渉には無理があったのだ。これではアフガンとまったく同じだ、と。
しかし女性士官は、顔色一つ変えずに淡々と続けた。
「しかし閣下、彼らは傭兵と聞き及びました。傭兵にならず者が多いのは事実ですが、この現状で帝国に雇われていないのは不自然です。先ほどの発言は、傭兵らしい彼らなりの交渉術では?」
女性士官はメガネをクイッと上げ
「それにもし、彼らが義勇軍に編入されたならば、兵力不足の我が軍としては好都合と考えます」
ダモンは苦虫を噛み潰したような顔をして、ドカドカと足音を立てて帰っていった。
彼が部屋のドアを叩きつけるように閉めて出ていくのを見届けると、マザーはわざとらしく大きな溜息をついた。
将校達も緊張が解けたのか、溜息をついたり顔を見合わせていた。
「私はエレノア・バーロット。義勇軍第3中隊長、階級は大尉だ」
先ほどの女性士官がマザーに自己紹介をした
「やっとまともに話せる相手がきたか」
マザーは更に大きく溜息をついた。しかし今度のそれは、周囲に安堵を与える為のものだ。
「部屋を待たせてある、付いて来てもらえるか?」
バーロットがマザーに促し、彼はそれについて行こうとしたが、ふと思い至って立ち止まった。
「待ってくれ。その前に確認したい」
バーロットが立ち止まり、こちらを振り向くのを確認したマザーは、周囲を一瞥してから尋ねた。
「俺達を雇ってくれるのか?」
バーレットは口元に笑みを浮かべながら
「そのために部屋を用意したのだ。詳細な確認が必要だろう?」
その言葉にマザーは白い歯を見せて笑う
「言葉の通じる相手で助かった。俺はマザーだ。ところで、あいつらは何処に向かわせればいい?」
窓の外を指さした。そこには250あまりの米兵が、兵器の周りで思い思いの仕草に耽っていた。
「彼らは兵に案内させる」
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「詳細な設定はこれでいいか?」
ダモンとの交渉決裂から数時間後、マザーとバーロットは、用意された部屋で給金や配属諸々の確認、部隊構成などを話していた。
「あぁ、それと無理な相談だが、良いかな?」
必要書類と契約書を読み終え、サインする前にバーロットに相談を持ちかけた。バーロットは何も言わずにおり、沈黙を肯定と受け取ると
「俺達に独立して動ける権限をくれないか?」
「・・・・・・理由を聞こう」
バーロットがマザーに問うと
「俺達は傭兵だ、義勇軍の中にも俺達を快く思わない連中がいるかもしれない。突然背中を刺されるのだけは避けたい。それに俺達を監視するなら、団体ごと監視したほうが好都合じゃないのか?」
バーロットはマザーの言葉に耳を傾けながら
「もちろん其方の指示に従う。だが此方も、貴女がたを制限する権限が欲しい」
この権限はいわば軍から離れ独自での戦闘行動と撤退等の権限をくれと言っているのだ。普通の軍人なら嫌な顔をするものだが、それに対しバーロットは顔を顰める等の表情ではなく沈黙を継続させていた
「そうだな・・・・・独立遊撃部隊にでもできないか?」
考え込み・・・・数分たつと、バーレットがソファーから立ち上がり窓の外をみると
「ダモン将軍対策か?」
マザーは頷き
「この国にきてブルールでは世話になった。彼らやそんな人達のためならいいが・・・・正直、ヤツの指示には従いたくない。俺達も、ダテに長く生き延びてないからな」
肩を竦めながら言うと
「基本的には、義勇軍の一員として命令に従ってもらうが構わないか?」
「あぁ、構わない」
バーレットはソファーに戻ると
「次の問題は、弾薬か・・・」
ガリアで使用されている小銃弾は7.5mmだが、米軍の使用するそれは5.56mmと7.62mm弾で、戦車のエンジンやヘリのエンジンをラグナイト仕様に変え、戦車砲もガリアで一般に使用されている重戦車ですら75mmなのが
M1エイブラムスは120mmと、それこそ規格外のものであり、帝国軍の誇る世界最強の重戦車ですら、その口径は88mmなのである。
「小銃の弾を今すぐ造っても、前線に届くのに3週間・・・・・・それも工場が動いてくれれば、の話だ」
マザーが溜息つきながら言い
「それに戦車砲も付け加えるとなると・・・・・・もはや絶望的だな」
バーレットも溜息をついた
「・・・・・・だが方法が無いわけではない」
マザーはバーレットの方を向くと
「あなた達が戦果を挙げれば、上が動いてくれるかもしれない」
マザーはしばらく考えていたが、数秒も経たずに立ちあがって、
「了解しました。義勇軍第3中隊独立遊撃隊、拝命いたします」
バーレットにアメリカ式の敬礼を披露して見せた。