Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
「マーモットを視認!距離およそ4000!」
アリシアが後退しながら進んでくるマーモットの姿を報告する
「あれは……ヴァルキュリアの槍?」
双眼鏡を覗いてみると、マーモットに巨大なヴァルキュリアの槍を積んでいた
「いやな予感がするな……部隊をマーモット正面から側面に回り込め」
パンサーが部隊に指示を出すと、ウェルキンも同じ指示をだす。そのままマーモット正面から移動しているとセルベリアが巨大な槍を見つめているのに気づく
「どうした?」
デュースが尋ねると
「いや……あそこにマクシミリアン様がいると思うとな……」
セルベリアは複雑な表情をしていた
「なんだ、会いに行きたいのか?」
その問いにセルベリアは首を横に振る
「確かに私はマクシミリアン様に救われた。だが、捨てられたいま、私は自分の意思で動こうと思う」
そう言い、笑みを浮かべる。大丈夫そうだと判断したデュースはそれ以上何も言わなかった。すると、マーモットが動きを見せる。斜め上の向いていた槍が水平になっていき、蒼く輝きだす
「な、何をする気なんだ!」
尋常じゃない様子からウェルキンはハッチを開き確認する。その光は更に膨張していき……発射された
それは一直線に大地を焼き、目の前に進撃中であったガリア正規軍を文字通り消滅させ、山に穴を開けた。余りにも衝撃的な行動に驚くのを通り越して茫然とするしかできなかった
「……なんなんだ、あの威力は」
その威力は舌を巻くほどだが、ここで止まる訳には行かなかった
「ウェルキン!さっき話した作戦通りにいくぞ!」
パンサーが伝えた作戦とは、前の戦いでアリシアが貫いた場所を集中的に狙いマーモットの動力を奪う。停止した所に歩兵で内部を制圧し、マーモットを無力化するのだった
すると空からローター音とエンジン音が近づいてきていた。空には7機のヘリに、地上からはエイブラムス2両にブラッドレー2両と海兵工兵隊を乗せた輸送トラックまで来ており、アメリカ軍の総戦力が集結した
ブラックホークとチヌーク3機が地上に降りてきて、兵員を下す……すると
「パンサー中尉!ご無事ですか!?」
なんとブラックホークからコーデリア姫が下りてきた。それにパンサー達が心底驚く
「こ、コーデリア姫!なぜ戦場に!」
普段は冷静なパンサーもこの予想外には驚いていた
「お邪魔化もしれませんが、わたくしにもみなさんの援護をさせてください。わたくしも、戦いたいのです。わたくしの故郷を守るために」
そこには初めて会った人形のような姫はおらず、祖国を守りたいと心から願う1人と統治者がいた
「ならば祈ってください、我々の勝利を」
パンサーがそういうと、アメリカ兵たち笑って言い出す。こんな美人の為に戦えるのなら本望だと……その言葉にコーデリア姫は涙を流す
≪全ユニットにつぐ!これより作戦を開始する!戦車や装甲車は歩兵の盾になれ!ヘリは機銃座を潰し、損傷部に猛攻を加えろ!≫
無線で作戦開始が通達される
「いくぞレンジャー!我々が道を切り開くんだ!」
フ~ア!とレンジャーの返事し、フォード少尉の合図と共に進軍
「
ウ~ラ!とフォース・リーコンが返事し、ラミレス中尉と共に進軍する
≪ガンシップ02と03は機銃を破壊しろ≫
アパッチ2機が側面にある機銃座を破壊しに行き、ガンシップ01が損傷部分にロケット弾を浴びせる。さらにチヌークとブラックホークがドアガンで上にいる歩兵を攻撃していた
「目標をロック!」
戦車の陰に隠れていた工兵が手にしているのはFGM-148ジャベリンであった。ミサイルが右動作冷却部目指してトップアタックをする。冷却部が壊れたことによりプロペラの動きが止まる。損傷部が壊れたおかげで、マーモット内部への道ができており、続々と兵士が進撃していく
左動作冷却部のラジエータを見つけたレンジャー隊員がそこに乱射する。ひどく脆いその部分はたちまち壊れ、左のプロペラも停止する。2つの冷却部が壊れたことでラジエータが停止し、聖槍に供給していたエネルギーがなくなり、聖槍を包んでいた力場が消えてなくなった
≪よし!あの槍の先端を破壊するんだ!≫
ウェルキンが無線で聖槍の先端を破壊するよう指示を出す。するとガンシップ01が先端の前でホバリングしてロケット弾を撃つ、しかしダメージは与えているが相当固くて壊れない
≪ならば≫
シーカーを作動させる。熱源を持った聖槍の先端をロックオンすることができ、ヘルファイアを発射する。流石にヘルファイアの直撃には耐えられなかったのか罅がはいった
「よっしゃっ!」
マーモット内部へ登ってきていたラルゴが先端めがけて対戦車槍をブチかます。さらに罅が入りあと1歩であった
「これで最後だ!」
次弾装填したジャベリンが発射、ミサイルが先端へと直撃する。すると先端の光が消えて、マーモットが完全に沈黙した
「よし!敵陸上戦艦を撃沈!繰り返す!敵陸上戦艦を撃沈したぞ!」
ウェルキンの報告に皆が歓喜の声を上げた。これほどの巨大な戦艦を仕留めたのだ。まだ敵がいる可能性があり、Tier 1 Operatorの両部隊と第7小隊がマーモット内部に突入する。他の部隊は周辺の警戒をしていた
「よし、機関部を爆破するぞ」
パンサーが銃を構えながら、エレベーターを探していると
「そうはいかぬぞ、義勇軍に傭兵の諸君」
突然マクシミリアンの声が響き、辺りを警戒する。すると周りから柱が出てくると、正面からマクシミリアンが上がってきた。その腕にはコードで繋がれた槍と盾を手にしながら
「帝国の技術の粋をもって作り上げた、この人造ヴァルキュリアの盾と槍……その力を、諸君らにお見せするとしよう」
人造ヴァルキュリア……いかにも不穏な単語が出てきたと思っていると
「もうやめて!なんでそこまでした戦う必要があるの!」
アリシアが叫ぶ、もうこれ以上戦う必要など何処にもないと言わんばかりに。それをマクシミリアンが見下していると
「殿下!」
セルベリアがマクシミリアンを呼ぶ
「セルベリアか……余に助けられた恩を踏むにじり、ノコノコと出てきたか」
忌々しそうにセルベリアを睨み付ける
「だが、丁度いい。セルベリアよ、この者らを巻き込んで自爆せよ。これは命令である」
淡々と言うマクシミリアン。それに体をビクッと震わせるセルベリア
「わたしは……」
体を震わせながら言いよどむセルベリア……だが
「何を勘違いしている」
デュースがHK416の銃口をマクシミリアンに向ける
「捨てておきながら、なに飼い主面しているんだ。セルベリアは貴様の所有物ではない」
既に引き金に指を掛けており、何時でも撃てる態勢であった
「その命令は……聞けません」
セルベリアは体を震わせながらもマクシミリアンを見る
「私は……生きる意味を知りたい。与えられたものではなく、私自身が生きると心から思えるものを見つけるまで……死ねません」
はっきりとマクシミリアンの命令を拒否した。その言葉にデュースは笑みを浮かべ、他の者も笑みを浮かべていた
「そうか……ならばここで余が直々に殺してやろう!」
周りの柱が青く輝きだし、マクシミリアンを包み込む。完全に白目を向き、声にエコーがかかっていた
「余は帝国に復讐し、それを手中におさめる方法を探し出し、それを見つけたのだ!」
それはその姿を見てわかる
「それが、ヴァルキュリアの力だというのか……」
人を辞めてまで、その力にしがみ付く執念には感服するなとパンサーやマザー達は思っていた
「兵士が戦場で銃弾を交わしながら戦う戦場はいずれ終わりを告げるだろ、それがこのヴァルキュリアの力だと言うのだ!」
マクシミリアンが機械の槍を向けてくる。そこからエネルギー弾が飛んでくる、障害物の陰に隠れながら状況を確認していると
「……ッ!あの柱だ!あの柱を狙え!」
マザーは柱がマクシミリアンとを光で繋いでいるのを確認し、柱を壊せばヴァルキュリア化が解けると考えた
≪ガンシップ、こちらパンサー。マーモト上部の青い柱を攻撃してくれ。なお、反撃が予想される、十分注意してくれ≫
そう無線で伝えると、偵察をしていたアパッチ3機が戻ってくる。それに気づいたマクシミリアンも上空に撃つが、連射にも限りがあり、十数発撃つと、腕を下げた
その間にアパッチ3機のヘルファイアが発射され柱を破壊した。するとマクシミリアンの包む青い光が弱まりだした
≪いまだ!迫撃砲を撃て!間違えても此方に当てるなよ!≫
ダスティーが無線で下のレンジャーに迫撃砲の支援要請を送る。下で準備をしていたレンジャーが迫撃砲の弾を入れ打ち上げる。重力に従い落下していき、見事マクシミリアンのいる場所に命中した。するとマクシミリアンがそのダメージに怯んだ
「ぐぅっ!」
ひるんだ所に一斉の銃撃を浴びせ、さらにマクシミリアンのいる場所にベガスがスモークを投げ込む。これによりマクシミリアンの目と防御を潰し一方的に攻撃をする
「撃て撃て撃て!銃身が焼付くまで撃ち続けるんだ!」
マザーのいう通りTier 1 Operatorはおろか、一緒に上ってきた第7小隊も十字砲火を浴びせる
「イーディ!」
デュースがイーディを呼ぶと近づいてくる
「いいか、俺が合図したら持っている手榴弾を全て投げろ」
手榴弾を投げ込んで一気に片を付けようとしたが、煙が強制的に晴らされた
「いいだろ!出力を限界まで上げて相手をしてやる!」
更に柱が出てきて、出力を上げていく。それに耐えきれずに盾が吹き飛び、マクシミリアンの青い炎が禍々しくなる
「くそ!また柱が出てきやがったか!」
壊れた柱が戻され、新しい柱が出てきたのだ。すると一番奥の柱が銃声と共に壊れた。売ったのはマリーナであった
「銃撃で壊れるのか」
それに気づいたマザーが直ぐに上のアパッチに連絡しダスティーも迫撃砲に再び支援要請をいれる。アパッチの30mmが残り2本の柱を撃ち壊し離脱、迫撃砲が撃ち込まれその攻撃にとうとうマクシミリアンは槍を杖のようして体を支えた
マクシミリアンを包んでいた青い炎はほとんどなく、僅かに覆っている程度であった
「イーディ!」
その声と同時にデュースが飛び出し、イーディも飛出す。弱り切ったマクシミリアンに手榴弾を持っている分すべて投げ込み、障害物に身を隠した。爆発音と共にマクシミリアンの呻き声が聞こえる
「これで最後だ!」
弾を持ってきた海兵隊が狙いを定めなおすレンジャーの迫撃砲に入れて打ち上げる。その迫撃砲が留めとなり爆発後にマクシミリアンは膝をついた。既に虫の息であり、白目だった眼も元に戻っていた
「バカな……ヴァルキュリアの力を得た余がなぜ負ける」
自分が負けたことを未だに信じられない様子だが
「その力に頼った時点で、お前の負けだ」
銃を担ぎながら、その理由を言うデュース
「おのれガリアどもめ……」
もう瀕死のマクシミリアンにウェルキンとアリシアが近づく
「降伏するんだ、アシミリアン!」
降伏勧告を言うが
「フフフ……降伏だと?貴様たち……忘れたのか……ヴァルキュリアは、その命と引き換えに巨大な破壊の炎を燃やすことができることを……」
壊れた柱が再稼働し、マクシミリアンを包む。自爆してウェルキンを道連れにするつもりであった
「もはや余の望みはかなわぬ……ならば……ガリアよ!荒野と化すがいい!」
雄叫びを上げ、命を燃やし爆発する……かと思えたが、突然柱の供給が止まり、マクシミリアンのヴァルキュリア化が解かれてしまった
「な、何だ!なぜ止まったのだ!」
突然のエネルギー停止にマクシミリアンは焦りの声を上げ、ウェルキン達も何事かと辺りを見回す
「それはな……動力源を破壊したからさ」
声が聞こえた方を全員が向いた、そこにいたのは独房にいるはずのファルディオだった
「ファルディオ!何故ここに!」
そこにいるファルディオの姿にラビットが驚きの声と共に理由を聞く
「ランドグリーズからマーモットに潜入したんだが……動力源を破壊するのに手間取っちまってな」
ここにいた訳を話すと、ファルディオはマクシミリアンに飛び掛かる。まともに動けないマクシミリアンの背後を取り、裸締めをする
「き、貴様!何をする、放せ!」
必死に抵抗をするも、まともに体が動かず抵抗らしい抵抗はできなかった
「すまんが……放すわけにはいかない!」
すると、ファルディオが一歩、また一歩と後ろに下がっていく
「……ッ!やめるんだ!ファルディオ!」
ファルディオの意図に気付いたブードゥーが叫ぶ。ファルディオの後ろには巨大な穴があり、そこにマクシミリアンを道連れに落ちるつもりであった
「ウェルキン……アリシア……中尉達……理由はどうあれ、俺は仲間を撃ってしまった。その罪ほろぼしを……しなければならない……」
重い罪を犯した自分が敵の大将と心中することが贖罪であると言う
「放せ、放さぬか!」
心中する気など更々ないマクシミリアンは叫ぶ
「俺とあんたは、力のみを信じた者同士……大人しく舞台から去ろうぜ」
もう穴まで目の前と迫っていた
「お前の罪滅ぼしに俺たちが付き合う通りはない。そんなに罪を償いたいなら生きて軍法で裁かれろ」
マザーが死にゆくファルディオに言う。するとファルディオは微笑みを浮かべ
「貴方達には本当にお世話になりました。傭兵で風当りが強かったでしょうに……それでも、ガリアの為に此処まで死力を尽くしてくれました。だからこそ自分が恩返しできるのは今だけです!」
自分を心配して言ってくれたのだとマザーの本意を理解していたファルディオがマザー達に感謝を言い、決意が変わらないことを示す
「じゃあな、ウェルキン……アリシア……幸せにな。そして……中尉、俺が元の世界への道を開きます!」
そういい、穴へ身を投じた
「うああああああああ……!」
マクシミリアンの叫び声と共に落下していき、その叫び声も小さくなっていく。そして、落ちて行った穴から何かが響いてき、ラグナイトの青白い光が天へと伸び、爆発した
その爆発はマーモットを揺らすほど大きく、その場に立っていられないほど揺れていた。その爆発により、穴から飛び出てきた機材や骨組みが一緒に舞い上がりウェルキン達へ降り注ぐ
爆発の場所に近かったウェルキンがアリシアを庇い、それ以外も各々の安全を確保しようとしていた。他の場所でも爆発がおき、火の手があっている
「くそ、ウェルキン達が!」
ラビットがウェルキンのいた方を見ると炎の壁に閉ざされていた
「ウェルキン!アリシア!無事か!」
パンサーがウェルキン達の無事を確かめるべく声を掛ける。すると無事なようで、声が返ってくる
「甲板は火の海だ。もうそっちには行けない!皆は先に脱出するんだ!」
ウェルキン達がいる場所に行こうにも火の手がそれを邪魔し、その勢いは人が強行突破するのも不可能なほどであった
≪レイブン1!救出に向かえないのか!≫
ダスティーがブラックホークにウェルキン達の救助要請をだすが
≪ダメだ!火の手が強すぎて近づけない!≫
ウェルキン達を飲み込むかのような勢いの炎に近づくのは余りにも危険であり、助けにいけなかった
「皆、先に脱出するんだ!」
すると、ウェルキンが先に逃げるように言うが
「バカヤロー!隊長たちを置いて、脱出できるか!そんなことしたらイサラに顔向けできねえだろ!」
ロージーが反対する。自分の隊長であり戦友であり頼れる仲間を置いて逃げるはずが無いと言うが
「ここでじっとしていても全滅してしまう!いいか、これが最後のオーダーだ!脱出せよ!……パンサーさん、後はお願いします!」
小隊長の命令といい、この場で最も冷静に指揮ができるであろうパンサーに任せた。それにパンサーが歯軋りをするが
「……全員この場から脱出する。急げ!」
そう言うと、全員がどれほど悔しい思いをしているかを察することができ、食い縛り、拳を握りしめながらマーモットから退艦していく
「甲板にいるのは危険だアリシア、艦橋に登ろう」
まだ死ぬつもりなどなく、この場にいるのは危険であり、少しでも火の手が弱い所に逃げようとする
「うん、わかった!ウェルキンと一緒なら、あたし、何も怖くない」
それに頷くアリシア。彼女また死ぬつもりなどなかった。ウェルキンは頷き、艦橋へと急ぐ
マーモットは大半を火の海に包まれ、上へ上へと逃げてたウェルキン達も等々追い詰められた
「ダメだ……もう脱出する方法がない……」
流石に手詰まりになり、ウェルキンにも諦めが浮かんでいた
「アリシア……」
ウェルキンはアリシアの方を向き
「うん……」
アリシアも覚悟を決める。すると
「アニキーっ!」
若い男の声と共にエンジン音が空に響く
「ウェルキン!あれ!」
アリシアが指差した方には複葉機の姿があった
「あれはっ!」
エーデルワイスから身を乗り出していたイサラが驚く。あれは紛れもなく自分とリオン達と共に造った飛行機だったのだ
複葉機はマーモットと平行になるように飛ぶ
「時間がない……飛び移ろう!」
ウェルキンはアリシアの手を握り締め
「うん!わかった!」
アリシアも手を握り返す。そして……2人はマーモットから飛んだ。機体を傾け、翼にしがみ付いたのを確認しマーモットから離脱していく
マーモットに積んであった聖槍が壊れ始め光が飛び出る。すると……マーモットの真上に黒雲が現れ、所々で雷がはしり……マーモットに稲妻が落ちる。その直撃に聖槍は砕かれ、マーモットが爆発した……と誰もが思った
しかし、そこに出来たのは黒い穴であった。突然の出来事に皆が混乱し何事かとおもっていると
≪こちら、ラングレー空軍基地。聞こえるか!?≫
突然無線に声が入った。そして、その名前にアメリカ兵達は動揺を隠せなった。ラングレー空軍基地はバージニア州にある空軍基地の名前だ
≪こちら、アメリカ軍特殊作戦部隊「AFO ウルフパック」所属、パンサーだ!≫
すぐに無線に応答すると
≪パンサー、こちらで観測した謎の力場の発生地点に多数の友軍を確認できる。説明されたし≫
無線からは謎の力場……おそらく目の前の黒い穴ではないかとパンサーが直観で感じた。それは他のアメリカ兵も同様であった
「……目の前の穴がアメリカ本土の繋がっている可能性がある。もしかしたら違うかもしれんが……俺は進む、お前たちはどうだ!」
パンサーが周りにいるアメリカ兵に声を上げて聞くと、全員が頷く。祖国に帰れるかもしれない状況に躊躇う余裕などなかった
突然の出来事で第7小隊の面々は混乱中だったが、アメリカ兵達が手短に別れを言っていく。別れの言葉に驚きながら、別れの時が来たのだと理解した。ラビットやブードゥーを慕っていた者や、他に世話になった人たちが目に涙を浮かべながら別れを言う
それに頷いたパンサーが穴へ向かうよう指示を出す、それに伴い半場がむしゃらに穴へ突撃する。するとデュースの袖を引っ張られ、振り向いた。そこに居たのは不安な表情をするイーディとセルベリアだった
「あ、あの……これは……」
どこか否定する言葉を言うが、袖を離さなかった。行って欲しくないと体現しているものであり、セルベリアも今にも泣きそうな顔をしてデュースを見ていた。詳しい事情をしらないセツベリアだが、自分の目の前から消えてしまうと本能で察したのだ
イーディからの好意はデュースも嫌ってなく、むしろ嬉しいと思っていた。この世界に来て、祖国に戻ると言う一心で戦って、イーディと話したり触れ合うことで救われた自分もいることを感じていた。最後の決断を迫られ……そして
「パンサー、俺はここに残る」
決断を下した。それにパンサーが振り向き、親友であるダスティーや仲間のベガスが驚くように振り向く
「まだ基地には武器やトラックなどがある。あれを破壊しないと、技術がガリアに渡り、戦争を仕掛けると思う奴が出てくる可能性がある。まだ、あの技術は早すぎる」
武器もトラックの車の技術などは何世代も先の技術であり、この技術がガリアに全て暴かれてしまうと大きな技術の進歩となるだろう。だが大きな進歩は戦争を呼び、増長し、争いを生む
「そうなったら俺たちの責任だ。それを起こさないために、あれらを爆破する必要がある」
その言葉にパンサーが黙って聞き
「本当に残るのか」
デュースは部下であるが、子供ではない。軍人であり国の所有物であるが一人の人間としての決心を反対する必要などなかった
「あぁ」
それに正面から頷くデュース。それを見たパンサーは踵を返した
「元気でやれよ、お前は俺の最高の部下だった」
そう言い、パンサーは穴へと向かう。ダスティーはデュースと抱きしめあい、最後の別れをする
「お前は俺の相棒だ。どこにいようと親友だ」
別れの挨拶を済ませると、ダスティーは離れる。ベガスとも最後の別れをし、デュースを除いたアメリカ兵達は穴を潜り、そして……最後の1人が潜ると穴は何もなかったかのように消え去った