Medal of Honor Silver Star   作:機甲の拳を突き上げる

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20話 乙女の盾

まだダモンが要塞に到着する前、デュースはパンサー達と別行動を取り、先にセルベリアを担いでウェルキン達と合流していた

 

木陰に簡易ベッドを作り寝かせると、アリシアが様子を見に来ていた

 

「この人が……」

 

ベッドで寝ているセルベリアを見てアリシアが呟く。ヴァルキュリアとしてセルベリアと戦った記憶が残っていたのか複雑そうな表情をする

 

「彼女に見覚えが?」

 

アリシアが知っている風なのにデュースが尋ねる。デュースはセルベリアがヴァルキュリアであると知らず、マザー達からアリシアがヴァルキュリアになり戦った話は聞いていた。それから銀髪で赤目の女性であると報告を聞いており、セルベリアも若しかしたらとしか考えていなかった

 

「うん……」

 

頷いただけで話そうとはしなかった。デュースも無理に聞こうとはしなかった。すると、セルベリアが声を漏らしゆっくりと目を開いていく

 

「起きたか」

 

セルベリアが目を開き、体を起こした。その後辺りを見渡し状況を確認する。それを見たデュースが水筒に手を伸ばしセルベリアに渡す

 

「……そうか、私は」

 

自分の置かれた状況を理解し、デュースが手渡した水筒を無視してアリシアの方を見る

 

「お前達に敗れるとは……これも運命なのかもな。マクシミリアン様にご命令された最後の命令を全うできずに、こんな醜態を晒すとは……」

 

セルベリアは自嘲気味に笑う

 

「あの……最後の命令って」

 

アリシアがおずおずと尋ねると

 

「……ガリア軍の主力部隊を道連れに自爆だ」

 

下を向いたままセルベリアは答えた。それにアリシアは手で口を塞ぐ

 

「笑え、唯一お側にいれたヴァルキュリアを打ち砕かれ、マクシミリアン様から用無しと捨てられ、死ぬことも叶わず無様に捉えられ……傑作ではないか!」

 

セルベリアは笑う。その笑い声も泣き叫ぶようにしか聞こえないにも関わらずだ

 

「……気はすんだか?」

 

それをデュースはキッパリと言った。それにセルベリアは顔を上げる

 

「とにかくこれを飲んで休め。まだ本調子じゃないだろ」

 

そういい再び水筒を渡すが、それはセルベリアの手で弾き飛ばされた

 

「貴様ら傭兵に何がわかる!実験動物のように毎日体を弄られ!そこから救ってくださった人から捨てられた気持などわかるまい!」

 

セルベリアはベッドから立ち上がり涙を流し叫ぶ、それを無表情で聞いていたデュースは

 

「俺はお前ではないからそんなものしらん。お前の縛る物が無くなったのなら自由にすればいいだろ」

 

雁字搦めであったセルベリアが自由になるなら問題ないだろうと思っていたデュースであったが

 

「マクシミリアン様のお役にたてることこそが私の生きる理由であり存在意義だったのだ!私は何を理由にして生きていけばいい……私には何もないのだ……」

 

膝から崩れ落ちたセルベリアは茫然とした表情をして涙を流し続ける

 

「生きるのに理由が必要なのか?」

 

その言葉に下を向いていたセルベリアはデュースの方を向く

 

「そこらの虫を見てみろ、こいつらは何かを理由に生きているか?こいつらは生きると言う本能に従って生きているぞ」

 

指差した所にアリがおり、それがせっせと動いていた

 

「何もないと言ったが、逆に言えば何でもできると言うことだ。それに、帰るべき場所があるのも辛いものだ」

 

帰る場所があるのに辛いと言う意味がセルベリアには理解できなかった

 

「俺達は今でこそ傭兵だが、帰る祖国もあれば家庭を持っている奴もいる」

 

デュースの言葉にセルベリアは先ほどの乱れっぷりが嘘のように静かに聞いていた

 

「だが、祖国に帰りたくても帰れない。愛する家族を一目見ることなく死んでいった戦友がいる。これは戦争だからお互い様といえるが……」

 

下を向いて喋っていたデュースがセルベリアと目線を合わせる

 

「お前に分かるか?昨日一緒に食事をした奴が次の日にはいない、祖国の地で眠りたくても眠れない者の苦痛がお前に分かるか?」

 

睨みつけるように言う言葉にセルベリアはたじろぐ。セルベリアにはマクシミリンにしか興味を持っていなかったもあり、戦友……というものが分からなかった

 

「それに生きる意味がないなら見つければいい」

 

なにげなくデュースが言う

 

「生きるだけなら飯くって寝れば問題ない。だが、生きる理由ってのは確かに難しい。俺は生きて祖国に戻ると言う理由があるが、祖国にいたころは任務を成功させて仲間とビールを飲んで熱いシャワーを浴びるぐらいが理由だった」

 

なんとも軽い理由にセルベリアは唖然とし、アリシアは苦笑いをする

 

「そんなに生きる意味を知りたいのなら世界中周って探してみろ。お前は自由なのだから」

 

何か思うことがあったのかセルベリアは黙ってしまった

 

「私はね……家族がいなかったの」

 

するとアリシアがセルベリアに話しかける

 

「孤児院で育って、両親の顔も名前もしらなかった。私は1人ぼっちだった……だけどねウェルキンが……あ、ウェルキンていうのはこの第7小隊の隊長でね、君は1人ぼっちじゃない、僕もイサラも……小隊の皆も、今はアリシアの家族だって言ってくれた」

 

セルベリアは黙って話を最後まで聞く

 

「その時は本当に嬉しかった……私は1人ぼっちじゃない、皆がいるんだって分かったの。その時からかな……ウェルキンへの気持ちが強くなったのは……」

 

胸の前で手を握り、本当に嬉しそうに言うと、アリシアはセルベリアの手を握る

 

「私はアリシア・メルキオット。あなたは?」

 

そう満面の笑顔で名前を尋ねると

 

「……セルベリア、セルベリア・ブレスだ」

 

セルベリアの表情が笑みに変わる

 

「アリシア、彼女の容体はどうだい?」

 

ウェルキンがストライカーの陰から現れる。その場の様子からセルベリアの無事を確認する

 

「もう大丈夫そうだけど……どう?」

 

セルベリアに体の状態を尋ねると

 

「大丈夫だ。私はヴァルキュリアだ、傷の回復も早い」

 

そう答えた

 

「そうか、よかった。所でさっき虫の話をしていなかったかい?」

 

いきなり尋ねるウェルキンにデュース達は呆気にとられ、笑った

 

「まったくウェルキンは……ただの気のせいよ」

 

目じりの涙を拭いながら笑うの堪えるアリシア

 

「人間1人じゃ生きていけないと言うし……いろんな人と接してみるのもありじゃないか?」

 

デュースは飛ばされた水筒を広い、飲み口を拭くと、中身があるのを確認してセルベリアに渡す。それをセルベリアが受け取り、水を飲む

 

「……そうだな」

 

水筒をデュースに返す。セルベリアの顔は、もう先程までの悲痛な様子が微塵も感じられないほど穏やかであった

 

「旅に出るのならお前にも付き合ってもらおう。私を救い旅を薦めたのもお前だ、責任を取ってもらおう」

 

セルベリアが意地悪そうに言うと、デュースはバツが悪そうな顔をする

 

「デュースさん、どこですn」

 

その時、デュースを探していたイーディがセルベリアと仲良く話すデュースの姿を見て一気に不機嫌になる

 

「デュースさん!」

 

ズカズカとデュースの方に歩いていき、デュースの手を引き、自分の方に向ける

 

「何を鼻の下を伸ばしてデレデレしていますの!」

 

それを皮切りにイーディがデュースに文句を言うが、その光景が面白くないのかセルベリアが段々と不自然になっていくその時……無線が入った

 

≪ダモン将軍が狙撃された!繰り返すダモン将軍が狙撃され死亡した!≫

 

無線からパンサーの声が聞こえ、その内容に皆が固まる。そして直ぐに騒がしくなった

 

「ウェルキン、直ぐに兵を集めて警戒させろ。まだスナイパーがいる可能性がある。セルベリアは俺と一緒に来い」

 

デュースが直ぐに指示を言うとウェルキン達が動き出し、デュースもレンジャーと合流を急いだ

 

スナイパー捜索の結果は見つからず仕舞いで終わり、帰路についている最中バーロットから無線が入る

 

≪たった今、ランドグリーズから緊急入電が入ったわ!正体不明の巨大兵器が、クローデンの森を突破しランドグリーズへと向かっているそうよ!≫

 

それはハンヴィーや輸送トラックに積まれていた無線からも聞こえ、座って寝ていた奴も飛び起きるぐらいの出来事であった

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

クローデンの森の崖の上を走行するハンヴィーとストライカー。その巨大な兵器を確認し横並びに走っていた

 

「でけぇ……」

 

その巨大さにデュースの口から感想が漏れる。全長142.5m、全高35.8m、全幅35.2mと規格外にも程があった。並んで走るストライカーと比べても全長が約20倍、全高は約12倍、全幅も約11倍もあり、正面に主砲2問は800mmと戦艦ミズーリの主砲406mm砲の約2倍の大きさであった

 

「あれは……マーモット!」

 

デュースの隣に座っていたセルベリアがその巨大兵器の名を言う

 

「帝国でマクシミリアン様が極秘で造られていた陸上戦艦だ。あれを使ってガリア軍の首都に突撃するつもりだ」

 

セルベリアの説明を聞き、デュースは前夜に聞いた男達の会話を思い出す

 

「鋼鉄の鎌……マーモット……ガリアの腹を切り裂く……そういうことか!」

 

全ての単語の結び付きが今分かった所で意味は無かった。ともかく、バーロットから言われた作戦を遂行するのが先決だと切り替えた

 

バーロットが言うにはギルランダイにいる主力部隊はナジアルでの損失が余りにも大きく、通常の半分程度しか兵員がおらず、目の前には帝国の部隊が現れたことで身動き取れないとのことだった。そこでモーモットを枯れ谷へと誘い込み、首都防衛大隊が設置した地雷原地帯へ誘い込み、地雷と首都防衛大隊の総火力をマーモットにぶつけるとのことだった

 

第7小隊と独立遊撃隊は囮となり、谷へ誘い込むのが任務であった。基地にいるフォース・リーコンとブラックホークで先に帰っていたマザー達も動き出しており、全兵力を動かせる準備をしていた。さらに航空支援としてアパッチ2機が此方に向かっているとの報告があった

 

「側面にある砲台は此方を狙えん、此方から上の機関砲と下の砲台を狙い、下の部隊を掩護する!」

 

パンサーが無線で他の部隊に指示を出す。崖の下では第7小隊とエイブラムスがマーモットを追いかけていた。2両のストライカーには105mm戦車砲と40mm擲弾砲を積んでおり、装甲側面にはシュルツェンを装備し至る所に追加装甲を施し、20発前後しか積めなかった砲弾も追加弾倉を取り付け70発前後まで持ち運び可能となった。速力は若干落ちたものの、整地では90km以上をキープしている。40mmの方も同じくガリアン改修をおこない防御能力を高めている

 

105mm徹甲弾がマーモット上部の37mm機関砲を目標に発射、初弾命中し3基の内1基を破壊した。だが、それに反撃をし始める機関砲を狭い道ゆえに避け切れずに直撃を食らう。追加装甲のお蔭で損傷は軽微だが、このまま直撃弾を食らい続けるわけにもいかなかった。上でマーモットも気を引いている内に、下ではマーモットを追い越し崖の近くに置かれているラグナイトボックスを目指していた。誘導方向とは違う方に行かれては作戦失敗である

 

エイブラムスとエーデルワイス、シャムロックにタンクデサントしていたレンジャーが先行し、ラグナイトボックスまでの道を確保する

 

「コンタクト!11時の方向、数は2!」

 

先行していたジム・パターソン軍曹率いる分隊が待ち構えていた少数の帝国兵を見つけ、銃撃戦となる。だが相手は突撃猟兵と対戦車猟兵のみであり

 

「敵兵2名、排除!」

 

排除は直ぐに終わった。すると彼等の後ろをアリシアが駆けていき、誘導方向とは違う方の崖の近くに向かい、傍にあったラグナイトボックスを撃つ。ラグナイトボックスは時限式であり、衝撃を加えるとタイマーが動く仕掛けであった。それを二つ起動させると、急いでその場を離れ誘導方向に向かう

 

ラグナイトボックスからアリシアが離れると、爆発が起こる。その爆発で崖崩れが発生し、道が岩で塞がれた

 

「よし!次のポイントに向かうぞ!」

 

その崖崩れを確認したパターソンは次のポイントへと向かう。戦車3両はマーモットの下を走り回っており、上から榴弾砲が降ってくるので気を抜けない状態だった。だが、攻撃せずに目標ポイントまで連れて行くのみだったので、まだ回避に専念できる分マシであった

 

すると、空から音が聞こえてきた。アパッチがランドグリーズ方面から飛んできたのだ

 

≪なんて馬鹿でかさだ≫

 

ガンシップ01がその大きさに冷や汗を流す。幸いか上に対空兵器などは装備さえれておらず、歩兵もいない

 

≪ガンシップ01、目標を確認。攻撃開始≫

 

上部甲板を狙って2機のアパッチがロケット弾を発射する……だが

 

≪うそ!なんて硬さなの≫

 

そのロケット弾が直撃するが、装甲に皹1つ入らなかった。余りの硬さにガンシップ02の驚きの声が無線に流れる。ならば、とラジエートを直接攻撃しようとマーモットの後部へ回り込むが

 

≪……ッ!≫

 

ガンシップ01が咄嗟の判断で上昇する。すると、ガンシップ01がいた所に重機関銃と機関砲の十字砲火が飛んできた。これはラジエーターの直接攻撃が不可能だと判断し、崖の上で戦っているストライカー部隊の援護に周る

 

そして下の戦車と歩兵は迫ってくるマーモットを背に目標地点まで走る。幸いにマーモットは、その巨体故に非常に足が遅く轢かれる心配はないが、長距離榴弾砲があるので気は抜けなかった。第2爆破ポイントに到着するとアリシア達が起爆に向かい、パターソンの分隊が敵兵排除に向かった

 

起爆も銃を撃つだけなので直ぐに終わり、帝国兵も非常に少数なので手こずることなく排除されていた。そして、爆発と共に崖が崩れ第2ポイントも完了し、目標地点に到着した

 

≪こちらアルファ分隊!目標ポイントの到着、指示を待つ!≫

 

ストライカー部隊はその報告を聞き、マーモットから離れレンジャーが達のいる目標地点に向かう

 

≪アルファ分隊は近くの岩陰に隠れ待機、ガンシップは一度補給に戻り再出撃の準備をしろ≫

 

ハンヴィーで指揮をとるパンサーがアパッチを下がらせ、レンジャーを待機させる。目標地点に到着すると、首都防衛大隊の戦車隊が砲撃しており、多数の対戦車地雷と共にマーモットを砲撃する。だが、その装甲に傷一つと付かず側面にある副砲で戦車隊が全滅してします

 

「くそっ!あれだけの砲撃を食らわしても止まらねぇのか」

 

岩陰に隠れ状況を見ていたラルゴが悪態をつく。既に谷から平野に抜けられる寸前であり、この戦力ではなすすべもなかった。パンサーもアパッチ3機を損傷覚悟でラジエーター破壊に向かわせるか本気で悩んでいると

 

「おい、あそこに人がいねぇか!?」

 

ラルゴはマーモットのいる方を指す。それにつられ、皆が見ると確かに人がいた

 

「だれだ、そんな馬鹿は!」

 

デュースが双眼鏡を覗き、確認すると……絶句した

 

「あれは……アリシアじゃないか!ヴァルキュリア化してるぞ!」

 

そこにいたのはヴァルキュリアと化したアリシアであり、それに皆……特にウェルキンが心底驚いた表情をする

 

「……まさか!」

 

するとセルベリアが何かに気付いたのかハンヴィーから身を乗り出す

 

「アリシアを止めろ!奴は……自爆してマーモットを止める気だ!」

 

それを聞き、ウェルキンは戦車から飛び出して走り出す

 

「アリシアッ!」

 

なりふり構わずアリシアのいるマーモットの方へ駆ける

 

「ごめんねウェルキン……さよならも言わずに、だまって出てきちゃって」

 

眼前へと迫ってくるマーモットを見ながら、1人ウェルキンへの謝罪を口にする

 

「あれから、ずっと考えてったの。なんであたしがヴァルキュリアなんだろ……って。ヴァルキュリアなんかじゃなかったら、みんあと今まで通りに暮らしていける……って」

 

アリシアは手に持ったヴァルキュリアの槍をマーモットに向ける

 

「でも……今なら分かる。あたしの力を使えば、マーモットを止められる。あたしの命の炎を燃やせば……故郷やガリアの人達を守ることが出来る」

 

そして、アリシアを包む蒼い炎はしだいに大きくなり、輝きを増していく。そのまま足を進めマーモットへと向かう。雨霰と降り注ぐ砲弾がアリシアを襲い、その爆風で走っていたウェルキンが吹き飛ばされる

 

「うわぁーっ!ぐっ……アリシア!」

 

泥だらけになりながらも、ウェルキンはアリシアの名を叫ぶ。砲弾が直撃したかと思えたが、盾で防ぎ、無傷だった

 

「あたしは……ヴァルキュリア」

 

目が真紅へと輝き、その言葉を皮切りに駆ける。砲弾を避け、全速力を持ってマーモットに接敵し

 

「こんなものーっ!」

 

ヴァルキュリアの槍を投擲する。それは音速を超え、レーザービームの如く飛翔していき、マーモットの機関部を貫く

 

「あたしは……ヴァルキュリア……もう……みんなと一緒には……」

 

その手に残った盾を離し、呟く

 

「いられない……」

 

目から涙を流し、命の炎を燃やし、止まったマーモットを道連れにしようとする

 

「まさか……あの蒼い炎は!」

 

マーモットの中にいたマクシミリアンは冷や汗を流し焦る

 

「やつめ、自らの命もろとも、コノマーモットを葬り去るつもりか!ええい、取り舵45度!全速で離脱しろ。急げ!」

 

マーモットは再び機関を再起動させ、この場から逃げようとする。それを睨み付けるアリシアだったが

 

「アリシア!」

 

その声に驚き、振り返る。そこにいたのは泥だらけになりながらも自分を追ってきたウェルキンの姿だった

 

「ウェルキン!来ちゃダメ!帰って!ヴァルキュリアの力を使えばマーモットを倒せるの!」

 

アリシアは必死に帰るよう言う

 

「あたしが死ねば、たくさんの人が助かるのよ!」

 

そう泣き叫ぶ……だが

 

「ちがう……違う!」

 

ウェルキンはそれを正面から否定する

 

「そんな破壊の力でかったって、それは本当の勝利じゃない!本当の勝利は、僕達が、自分たち自身の力で掴み取らなくちゃダメなんだ!」

 

アリシアの命を犠牲にした勝利など、本当の勝利ではないと叫ぶ

 

「ウェルキン……」

 

アリシアは悲しい表情をし、顔を背ける

 

「でも、あたしにはヴァルキュリア人の血が流れてる……あなたとは違うのよ」

 

自分の体に流れるヴァルキュリアの血が、隔てる壁になると泣く

 

「確かに、君は僕達と違う能力を持っている。だけど……アリシアは、アリシアじゃないか」

 

そんなもの関係ないとウェルキンは語る

 

「明るくて、優しくて、パン屋になるのが夢で……それは変わってないだろ?」

 

それにアリシアは顔を上げる

 

「ヴァルキュリアであっても、君は君なんだ。彼女だって一度はそれを理由に死のうとした、だけどデュースが彼女を救い、彼女は救われた。ヴァルキュリアだからって、それを理由にする必要なんてないんだ」

 

その必死の語りかけにアリシアはウェルキンの方を向く

 

「ウェルキン……」

 

その眼には涙を流し続け

 

「僕は、君を守る。かけがいのない君を……きっと守ってみせる」

 

ウェルキンはアリシアの目をじっと見詰め

 

「アリシア……僕は、君を愛している」

 

愛の告白をする。それにアリシアの目は大きく見開いた。ウェルキンは戦闘服の胸ポケットに入れていたコナユキソウを手に取り

 

「アリシア……戦いが終ったら、一緒に暮らそう」

 

コナユキソウを結び指輪のようにすると、アリシアの左手の薬指にはめた

 

「僕はずっと、君と一緒にいたい」

 

それにアリシアは泣きながら笑みを浮かべ

 

「ウェルキン……」

 

愛しき人の名を呼ぶ。そのまま2人は見つめあい……キスをした。すると蒼い炎は二人を包み込み、渦を巻きながら天へ上ると、緑の粒子になって2人ぶ降り注いだ。まるで祝福するかのように……

 

「おーおー、お暑いね、お二人さん」

 

その声に反射的に振り向く2人。そこにいたのはハンヴィーに乗ったデュースと助手席に乗るセルベリアだった。2人の顔をニヤニヤしていた

 

「たく、ここは戦場だぜ。見せつけてくれやがって」

 

そう言うと、アリシアとウェルキンの顔が真っ赤になる

 

「アリシア……」

 

セルベリアがアリシアの方を見ると

 

「おめでとう、お前は自分に素直に生きていいんだ」

 

笑みを浮かべて言う。それにアリシアは再び涙を流す、その涙は悲しみではなく嬉しさで流す涙だった

 

「おら、お二人さん乗りな。生憎、ブライダルカーとはいかないが、まだ終わってない」

 

その言葉にハッとなりウェルキンとアリシアは急いでハンヴィーに乗り込む

 

「合流したら覚悟していおけ、なんせ愛のプロポーズを音声付きで全部見られてたんだからな」

 

そう、ハンヴィーに搭載されている無線のスイッチを入れており、ウェルキンの告白は全員に知られていた。更に、双眼鏡で見ていたのもあって完全にバレている

 

アリシアは顔を真っ赤にし俯き、ウェルキンは苦笑いしながら合流をいそいだ

 




緑の粒子がコジマ粒子に見えた人は少なからずいるだろ……

セルベリアの説得シーンが無茶じゃないかと少し不安ですな……しかし、こんなダダ甘なのを書くとはな……砂糖吐いて悶絶しそうになったよw

さて問題は、デュースを元の世界に戻すか、このまま残すか……ちょいと読者の方々の意見も聞いてみたいので、感想に書いてくだされば幸いです

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