Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
義勇軍基地、ウェルキンの小隊長室にマザーやパンサーといった面々が集まっていた
そこで喋るとなく無言で椅子に座っている。ここに集合をしていた理由は唯1つ、アリシアが味方に撃たれたことだ
「隊長、失礼します」
すると扉がノックされクライスが部屋に入ってきた
「クライス……もしかして頼んでいた調査の結果がでたのか?」
報告を聞くために部屋の全員がクライスに視線を向ける
「はい。先日お預かりしたこの弾丸ですが……弾丸の形状、刻印から、ガリア軍で開発中の新型狙撃銃の弾丸と断定されました」
その報告はある意味予想通りと言えた。なんせ衛生兵ですら見分けられるほど希少性の弾丸であるのだから。衛生兵の話はマザーからパンサー達にも伝えられていた
「そうか……やはりアリシアを狙撃した犯人はガリア軍の中にいるのか……」
ウェルキンもこれは予想内だった様子だった。まだ量産が決まってない新型狙撃銃なら数も少ないだろうし、兵器庫からの貸し出しの際の記録があるはずだから特定は簡単だろうマザー達は考えていた
「それで、持ち主は割り出せたのか?」
いったい誰が撃ったのかを訪ねると
「……はい……それが……」
クライスはその人物を言うのを尻込みしていた
「……誰なんだ?」
ウェルキンが再び強く問いただす
「……はい。事件前夜、ランツァート少尉に貸し出したとの記録が残っていました」
その答えに、この部屋にいる皆が驚いた表情をした
「ファルディオがだと!?何かの間違いじゃないのか?」
デュースが聞き尋ねる。ファルディオとは第7小隊の面々に続いて仲の良かった1人であった。傭兵である自分達を快く接してくれ、同じ戦場で戦った信用できる人物であった
「戦車長に狙撃銃を貸し出すのは珍しいことなので、兵器庫の者もしっかりと記憶していました。それに、この狙撃銃は軍内に2丁しかありません。1丁は兵器庫で管理されているのが確認済みです」
これは疑いようのない事実であった。2丁の内1丁が兵器庫に、残りはファルディオが借りたと言う事実、そこまで少ないのなら記憶の間違いの可能性も低いと言えるのだ
「それに、残りの狙撃銃もランツァート少尉に貸し出したまま返却されていないとのことでした」
そうクライスが言い切り、部屋は重い沈黙に包まれた
「ファルディオが……まさか……」
信じられない表情で絞り出すように言うウェルキン
「……なら、直接問いただしてみるしかない」
椅子から立ち上がったパンサーが言う。いまだ、ファルディオが撃ったことが信じられないのなら直接聞きに行こうと言うのだ。それに頷き、パンサー達はファルディオの部屋に向かった
ファルディオの小隊長室に来たが、生憎の留守であった。パンサー達は無断で入り込み部屋を見回った
「ヴァルキュリア民族の研究……人類的見地からみたヴァルキュリア人……これは、ヴァルキュリアに関する資料か」
本棚の近くの机に置かれていた本をデュースが取り、題名を見ていた
「ん……ファルディオのメモだ……」
ウェルキンはファルディオの執務机の上に置かれた本に挟まれたメモを見つけた。そして……その内容に目を見開いた
「アリシアを、覚醒させなければならない……」
そう呟き、その声にデュース達がウェルキンの方を向いた。ウェルキンはメモに書かれた内容を見ていき
「ファ、ファルディオ!」
何時もでは考えられないような怒りを含んだ怒声を上げ、部屋を出ていった。マザーがその内容が書かれたメモを拾い読み上げていく
アリシアを覚醒させなければならない。それが、苦悩の末に出した私の結論出る。そもそもの契機は、彼女達と共に訪れたバリアス遺跡の出来事だった
バリアス遺跡の奥の間、ヴァルキュリア人だけが入れる聖域である。だが彼女は、事もなげにその扉を開いた。彼女の身体の中にヴァルキュリア人の血が流れているからこそ、扉は開いたのだ
(中略)
バリアス遺跡はダルクス人が大地を焼き払ったと言う偽りの歴史を後世に広め、真の歴史であるヴァルキュリア人達戦闘民族がダルクス人を滅ぼし大地を焼いたのだと言うのを一族のみに伝える巨大な碑文なのだ。そこに記されたヴァルキュリア人の力……その恐ろしさに、私は慄然とされた
それと同時に、こうも考えた……この力を、帝国との戦争に使えないかと。それ以来、私はヴァルキュリア人について調査と研究に没頭し、ある真実にたどり着いた
このヨーロッパには非常に僅かだがヴァルキュリア人の血を引く人間がおり、それを気づかずに一生を終えていく。だが極稀に力を覚醒する者が歴史上に現れることがある
彼らに共通しているものは……みな一度、死に瀕する重傷を負っていることだった。生命が失われる程の傷を受けた時、彼らの中の『血が』覚醒し、数千年前から身体の中で眠っていた力が目覚めるのだ
そして、高度に精製されたラグナイトの武器を手にしたとき……戦闘民族・ヴァルキュリア人が再び歴史に姿を現す。私は大学の考古学研究棟の倉庫からヴァルキュリの盾と槍を持ち出した。ヴァルキュリア人の生命の力はラグナイト原子に未知の反応を及ぼすようだ
ナジアル緒戦で、わが軍は敵のヴァルキュリアに壊滅的打撃を受けた。もはや、迷っている時間はない……私は狙撃銃を借り出した。そして、アリシアを撃ち……その手に盾と槍をもたせた……しばらくは、苦悩にさいなまれた。親友の恋人とこの手で撃ったのだ
そして、傭兵なのに私達の為に戦ってくれたあの人達を裏切る行為だったのだ。だが……今は確信している、これでよかったのだと
「これは……とんでもないぞ」
アリシアが撃った真実を知り、それを知ったウェルキンが飛び出していった……これから言えることは
「まずい!急いでウェルキン達を探すぞ!」
マザーがそう言い、急いでファルディオの部屋を出た。途中でガリア兵士を見つけ、ウェルキンはファルディオのいるバーロットの元にいる情報を得た。そして、急いでバーロットのいる中隊長室に向かい扉を開けた。そこにはファルディオを殴り胸倉を掴むウェルキンの姿があった
「アリシアの力がなかったらガリアは確実に負けていただろう。アリシアが……ヴァルキュリアがいれば、それがガリアを守る切り札となるんだよ!」
祖国を守るため、大国に挟まれた小国を守るためにヴァルキュリアという抑止力が必要だと主張するファルディオ
「……違う!強い力を持った所で戦いは終わらない。相手はそれ以上の力を持とうとするだけだ!」
それに反対するウェルキン。強い力は争いを生み、より多くの人を殺す力を生み出すだけだと主張する。二人の考えは真逆で平行線を辿っている。その時、バーロットが机を叩いた
「そこまでだ。2人の言うことは、多分どちらも正しく……そして、どちらも間違っている。私にも……その答えは分からない」
2人の主張はどちらも理があり害もあった
「しかし、いかなる理由があろうとも仲間を撃った罪は重い。軍規に基づきファルディオには逮捕監禁を命ずる。そしてウェルキン、私闘を行った罪で独房24時間収監の処置にする」
二人とも軍規を背いた罰が言い渡される。その光景をただ見ることしたできなかったマザー達は自分たちの無力さに拳を握りしめることしかできなかった
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あの出来事から数日後、第7小隊と
ギリランダイオとはガリアと東部ヨーロッパを結ぶ交通の要所として中世より関所が置かれた要害の地である。その要塞は帝国のガリア戦線総司令部が置かれ、文字通り『帝国の最終拠点』であった
どう考えても1個小隊と傭兵に任せるような任務ではなかった
「今回はいったいどんな作戦なのですか?」
パンサーがバーロットに尋ねると
「うむ……まだ詳細な指示は私の所にも降りてきていないのだが……」
上司であるバーロットが作戦概要をしらなかった……そして作戦指揮所に現れたのは
「心配するな、バーロットよ。わしが自ら作戦を伝えにきてやったぞ」
ダモンであった。その場にいる誰もが嫌な目でダモンを見た。ダモンの突撃で大多数のガリア兵が死に、アメリカ軍にもレンジャー3名、フォース・リーコン2名が戦死していた。そのせいでアメリカ兵は無能な突撃を命じたダモンを目の仇にするほど憎んでいる者もいるほどだ
「将軍閣下……わざわざご足労いただき恐縮です」
バーロットが敬礼し場所を譲った
「ナジアルでの義勇軍中隊の働き、誠に見事であった。そこで今回は、栄誉ある要塞攻略の先鋒を義勇軍中隊に与えよう」
パンサー達は耳を疑った。僅か1個中隊と遊撃隊に要塞攻略をして来いと命じているのだから
「作戦はこうだ。要塞へは、物資運送用の線路が通じておる。その線路に、爆薬を満載した車両を走らせ要塞正面を爆破するのだが……義勇軍には、爆薬列車を正門まで走らせる為に線路上のスイッチを切り替えてきてもらいたい」
さらに要塞正面にある線路の切り替えスイッチを押して来いと言ってくる
「敵の猛烈な戦火を掻い潜っての任務……先鋒というより、決死隊ではないでしょうか?」
バーロットは回りくどく死んで来いと言ってるのではないかとダモンに尋ねる
「ブハハハ!何を言う、勇猛で命知らずのお前たちだからこそ出来る仕事ではないか!この戦いに勝利すれば、ついにガリアから帝国軍を駆逐することができるのだぞ」
ニヤニヤしながら死んで来いと言うダモン。パンサー達の堪忍袋の緒が切れる寸前であるが、何とか抑える
「将軍、よろしいですか?」
パンサーが手を挙げる。ダモンがそれに頷く
「この作戦の重要性は充分すぎるほど理解できました。ならば、この作戦は正規軍からの砲撃要請などの援護は期待してもよろしいので?」
榴弾砲かロケット砲による砲撃支援はできるのかと尋ねる
「何を言うかと思えば……」
またニヤニヤしながらパンサーを見ると
「そんなもの必要ないであろう、お前達みたいな勇猛な兵士なら己の力のみで攻略できるだろ?ブハハハハ!」
堪忍袋が逃げ出した
「それと、この作戦後にお前たちが持っているヘリコプターだったか?あれはガリア軍が接収する」
その言葉にパンサー達4人の堪忍袋がズタズタに引き裂かれた
「……それは本気で言ってらっしゃるのですか?」
相当ドスを気さえた声でパンサーが尋ねる
「ナジアルで見せた作戦……じつに興味深かった。あの作戦にはそっちにあるヘリコプターが必要と分かってな、それとも……わしらに刃向う気か?」
どうやらナジアルの戦闘で勝利したことで相当図に乗っていることと、あまりの怒りで逆に頭の中が冷めているパンサーは思った
「お待ちください!将軍!それでは契約違反となります!」
バーロットが将軍に詰め寄る。バーロットと交わした契約には一切此方の兵器に手をださないと書いており、これはガリア軍最高司令官からの署名もされてある
「だまれ!バーロット!これは中部方面軍総司令官である、わしの命令だ!お前達は黙ってわしの命令を聞いていればいい!」
そういいきるとダモンは去っていく。デュースやダスティー、ベガスの手がホルスターに伸ばされており、いつでも射撃可能だったがパンサーに止められ、その場には重い空気が漂っていた
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夜が更けた頃、ギルランダイオ要塞の機銃陣地や戦車に近づく黒い影があった。デルタ・フォースとシールズである
作戦決行の前夜に彼らは要塞に忍び込んでいた。死んで来いと言われ死ぬつもりなど端から無いく、脅威となる重機関銃座や内部にある戦車にC4を設置している
今回の作戦にはありったけのC4を用意しており、アメリカ軍基地にあるC4は必要最低限程しか置いていなかった
要塞外壁にある銃座に周囲を警戒しながらC4を仕掛けるデュース。この作戦はデルタが内部の重要施設に爆薬設置し、シールズが外にある線路の切り替え器に細工をしていた
どちらも危険すぎて特殊部隊でもそう簡単にできる任務ではない。だが、彼らはアメリカの国家指揮最高部直轄のTier 1 Operatorと呼ばれる特殊部隊であり、どんな不可能な任務もこなしてきた古強者である
機銃座の陰に隠れ、サーチライトが通りすぎるのを確認したデュースは無線のスイッチを入れる
≪こちらデュース、要塞右側の銃座、砲座にセット完了。これより燃料庫に向かう≫
できるだけ声を抑え、デュースは自分の範囲での設置を終え次の場所に向かうと連絡をいれ
≪こちらベガス、左側も完了だ。これより弾薬庫に向かう≫
反対側も設置し終えたベガスが弾薬庫へ向かう
≪こちらダスティー、車両に設置は75%って所だ≫
戦車などの戦闘車両に設置しているダスティーも順調だった
≪こちらウルフパック。ネプチューン、状況は?≫
パンサーがマザー達に連絡を入れる
≪こちらネプチューン。1つ目の切り替え機は完了、2つ目は……今完了した。これより3つ目に入る≫
無線では切り替え機の方も上手くいっているみたいだった。サーチライトの数が多い分、切り替え機の方が危険度が高いが、よくやってくれていると思っていると
≪パンサー、
ふとマザーがパンサーに尋ねる
≪問題ない、ちゃんとくすねている≫
そう伝えるとマザーは満足そうに頷いた
≪しかし、目標は本当にくるのか?≫
マザーは目標が現れるか疑問に思っていると
≪くるさ、奴はこの要塞ともう一つの狙いなんざ直にわかる。作戦に集中しろ、アウト≫
パンサーは無線のスイッチを切り、次の目標へと足音を鳴らさずに進む
その頃デュースはラグナイト燃料が置かれている施設にC4をセットした後に第1集合ポイントに向かおうとした時、一つだけ装飾が豪華な扉に、話し声が聞こえていた
「・・・・・・リアの「最後の炎」……軍を「消滅」……」
会話内容は全部聞こえないが、重要そうな単語から周囲を警戒し盗聴する
「……「鋼鉄の鎌」作……戻るぞ……」
若い男の声の後に
「何だと!?……とう、マーモットを!?」
そこそこ歳のとったダンディーな声が聞こえ、単語だけだが内容を覚えていく
「……れるガリアの……腹を切り裂く……」
どうも物騒な単語ばかりで、これは最重要だと判断したその時、角から帝国兵の巡回が来た。デュースはいつものグロッグではなくサプレッサーが取り付けられたMk.23を抜き頭に一発撃つ。デュースがいたことすら気づき驚いた表情をしたが最後、崩れ落ちる帝国兵をデュースは受け止め音を出さないようにし、死体を隠すため引き摺っていった
「……ん?」
先ほどまで指揮所で話していたラディ・イェーガーが壁の方を見る
「どうした?」
マクシミリアンがイェーガーの見ている壁の方を向く
「いやなに、今誰かいたような気がしてな。唯の気のせいさ」
イェーガーが口元に笑みを浮かべ肩をすくめる。それにマクシミリアンは興味を無くし、最後の準備に取り掛かっていた
死体を焼却炉の中に入れ、燃やし証拠隠滅をする。すぐにこの場を離れ集合ポイントに向かう、今からでは集合時刻に少し遅れる時間であった
「……おそい」
集合時間から10分が過ぎ、ポイントで待機しているウルフパックとネプチューン。C4の設置に切り替え機の細工も無事に終え、出来る限り死体を出さないようにした。すると5時の方角から物音が聞こえ、パンサー達が木やその場に伏せて身を隠す
「ブレード」
パンサーが相手にギリギリ聞こえるぐらいの声で言うと
「ケイオス」
デュースの声と共に合言葉が返ってきた。それに一息つき、パンサー達が警戒を解く
「何をしていたんだ」
合流したパンサーがデュースに尋ねる
「燃料庫に設置後、指揮所と思わしき所である作戦の会話を聞いた」
それに他のメンバーも耳を傾ける
「全ての会話ではなく要所だけだが、「最後の炎」、軍を「消滅」、「鋼鉄の鎌」作戦に「マーモット」、そしてガリアの腹を切り裂く。恐らく敵の反撃作戦ではないかと考えられる」
その内容にメンバー全員が思考を巡らすが
「とりあえず、この場を離れ本隊と合流するぞ」
パンサーの指示通り、ここは一応帝国軍のギリギリ警戒地域の中であった。それに頷きウェルキン達本隊と合流すべく移動を開始した
翌朝、ギルランダイオ要塞の前に構える第7小隊と独立遊撃隊。目の前には土嚢を積み上げ、戦車や榴弾砲が固めていた
「敵は迎撃、榴弾、戦車といったありとあらゆる方法で……」
ウェルキンが作戦開始をしようとした所をパンサーに止められる
「どうしたんですか?」
なぜ止めたのか不思議そうに尋ねると
「なに、デカイ花火でも上げようと思ってな」
その意味が分からず首を傾げるウェルキンだが、パンサーがある物を取り出す。透明のカバーを開き、赤いボタンを押した。その瞬間、大爆発音が起きた
目の前に陣取っていた戦車などの戦闘車両が次々と爆発していき、傍にいた歩兵も爆発に巻き込まれていた。それに留まらず、要塞外壁の機銃座が次々と爆発していき、それは要塞内部でも起こっていた
「なんだ!何が起こっている!」
司令官であるセルベリアが突然の出来事に混乱し、部下に調べさせていた
「戦車部隊!榴弾砲が爆破!機銃座に砲座も爆発!」
調べてきた帝国兵が今起こっている状況を報告すると、また大爆発が起こる
「あの場所は……マズイ!弾薬庫だ!」
そばにいた帝国兵が爆発した場所を見て声を上げ、さらに同じ場所で大爆発がおこり、銃声も聞こえてくる。弾薬に引火した証拠であった。更にセルベリアの近くでも爆発がおこり
「あそこは燃料庫!」
帝国兵が悲痛な叫びで言い、ラグナイトの引火し大惨事。2柱の塔の内、1つが爆発に巻き込まれ倒壊した
その光景を見たウェルキン達は唖然とし
「きたねぇ花火だ」
そうデュースが感想を漏らした。それは特大の花火であり、要塞から帝国兵の阿鼻叫喚の声が聞こえてくる
「さて、フィナーレだ」
マザーが取り出し、スイッチを入れる。すると切り替え機の信号が赤から青に全て変わり、正門前で閉じてあったシャッターも開いた
「ウェルキン、大尉に連絡だ。爆弾列車に突撃させろと伝えろ」
ありのまま起こったことをウェルキンが報告すると心底驚いた様子だったバーロットは爆弾列車を突撃させ、正規軍に連絡を行った。爆発列車が線路を爆走し、正門に正面衝突する。正門が爆発し倒壊する
「よし、突撃だ」
パンサーの指示通りにレンジャー部隊とストライカー2両にエイプラムスが突撃。少し遅れ第7小隊も突撃した
「う……ぐ……」
火の海の中、瓦礫に埋もれたセルベリアは朦朧とした意識の中、走馬灯のような者を見ていた。もう顔も覚えていない優しかった父と母の思い出……そして実験体として弄くりまわされラグナイトの光しかない部屋の苦しい思い出……自分を助けた人には見捨てられ、この火の海に焼かれ死んでいくだろうと
「……いやだ」
それは無意識だったのだろうか、口から言葉が零れた
「もう……1人は……いや」
目から涙を流し、深く傷ついた心は助けを求めた……そして、それは訪れる
「おい!誰かいるか!」
奇跡とは人が起こすものである。一人の男の声が聞こえた、朦朧とした意識の中、視線だけを声のした方に向ける。それに気づいた男達は急いでセルベリアの元に向かう
「大丈夫か!?すぐに助け出してやる!」
男達はセルベリアの上に積まれていた瓦礫を持ち上げ、セルベリアを引き摺り出す
「おい大丈夫か!しっかりしろ!」
そこでセルベリアが見た男はデュースだった。ギルランダイオ要塞をほぼ無力化したデュース達に帝国兵は次々と降伏、今は帝国兵の生存者を探していたのだ
「あ……あ……」
喉がカラカラで言葉が出なかったが、セルベリアは涙を流して自分を救ってくれた男に手を伸ばす。抱きかかえていたデュースはその手を握り
「安心しろ、もう大丈夫だ」
そう語りかけた。その言葉にセルベリアは嬉しそうな表情をして気を失った。すると、パンサーの無線に連絡が入る
「目標が接近、行動開始だ」
フェイズ1からフェイズ2への移行の合図だ。デュースは水筒の水を少しずつセルベリアに飲ませ表情が和らいだ後、黒い遺体袋に入れた
「おぉ!このギルランダイオを落としたか!」
ジープに乗って現れたのはダモンであり。爆発に巻き込まれ瓦礫が散乱しているギルランダイオに掲げられたガリアの旗を見て笑う
「将軍、ここは危険です」
要塞から出てきたパンサー、ダスティー、ベガスがダモンに近づく
「お前達か、あのヴァルキュリアはどこにいる」
ダモンは髭をなでながらパンサーに尋ねる
「ヴァルキュリアは、まだ確認しておりません。恐らく瓦礫の下かと」
パンサーがそう伝えると
「嘘をつくな!ヴァルキュリアがこのギルランダイオにいることはしっている!さっさとヴァルキュリアを連れてこい!」
そう激怒しながら怒鳴る
「お言葉ですが、将軍。生存者の確認をしていますが、未だヴァルキュリアの姿を見たものはいません」
その怒鳴り声を涼しげに受け流し答えるパンサー
「黙れ!あのヴァルキュリアが死ぬはずがなかろうが!貴様!もしやヴァルキュリアの力が欲しく隠しているのだな!」
ダモンはパンサーを指さし怒鳴る
「とんでもありません将軍。あの力は我々では扱いきれません」
表情を変えず淡々と答えると
「黙れ黙れ黙れ!わしの命令がきけんのか!わしは総司令なのだz」
ダモンが怒鳴っているその時、一発の銃声が空に響く。銃声の音が消えると同時にダモンは地面に伏した。その頭には銃弾で出来た風穴ができていた
「スナイパー!」
パンサーが叫び、近くの障害物に身を隠す。ダモンの付添いで来ていた正規兵も物陰に隠れ震えていた
≪ダモン将軍が狙撃された!繰り返すダモン将軍が狙撃され死亡した!≫
その無線の内容に同様が走る。腐っても鯛な中部方面軍総司令官であるダモンが撃たれたのだから
≪レンジャーは辺り一帯を捜索!まだスナイパーが近くにいるはずだ!見つけだせ!≫
パンサーの指示にレンジャーが当たりを虱潰しに捜索する。だが、見つかったのは爆破された狙撃銃のみであった。それ以外の痕跡は影も形もなかった。狙撃手捜索は打ち切りとなりパンサー達デルタとレンジャー部隊は義勇軍と共に基地に戻り、ダモンが連れてきた正規軍はダモンの副官を頭にギルダランダイオ要塞に残った
ファルディオのメモは長々と書いても面白くないと思い省略と簡略化させてもらいました。全部見たい人はゲームをやるかニコニコ動画で上がっているのでそちらを参考にしてください。
イサラ生存、セルベリア生存、ダモンを狙撃で暗殺……この小説でやろうと思ったことは大抵はできた。後はデュースをどおうするかだけですな
あと4~3話で完結か……ゴールが見えてきたな