Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
「がっ・・・・・クソ」
そう呻きながら体を起こしたのは第75レンジャー連隊所属のダンテ・アダムス特技下士官だ。強烈なGでシェイクされた頭はかなりキツイみたいだ
「起きたかアダムス」
頭を押さえながら声の方を向くと、パターソンがいた
「・・・・・・軍曹、無事でなによりです」
自分の上官が無事なのにとりあえずホッとする
「あぁ。俺らだけじゃなく皆無事だ・・・・ヘリもな」
パターソンもアダムスが無事だったのに安心したが
「そうです・・・・・ん?ヘリも?」
アダムスのパタ-ソンの言葉に疑問を感じた。ヘリが無事であると言うことだ。回りを見回してみたが機内には破損がなかった
「記憶違いで無ければ墜落していたはずですが?」
今も頭に感じる痛みはGによるものであり、意識が途切れるその前まではヘリが墜落するのを感じていたのだから
「外を見てみれば分かる」
頭痛で痛む頭を我慢しながら立ち上がりヘリの機内から外にでると・・・・・・そこは目の前一杯に広がる緑だった
「・・・・・・」
アダムスは目の前の光景に一瞬思考が飛んだ。それもそのはずだ、彼らが先程いた場所はアフガニスタン。荒野の大地と雪が積もった高い山ぐらいしかない国にいたはずが、目の前の光景は輝く緑の絨毯に生い茂る木だからだ
「ここは・・・一体」
突然の状況に言葉がでないアダムスだったが
「分からん。GPSも反応無し、今パイロットが無線で呼びかけている所だ」
「GPSに反応なし!まさかそんなはずが!?」
GPS・・・正式名所はグローバル・ポジショニング・システム、これは宇宙へと衛星を上げ、そこから受信した電波で受信地点を正確な3次元位置が得られるのである。アメリカはGPS衛星を少なくとも20以上もあり、現在地が分からないはずが無いのである
「事実だ、ヘリに積んでるGPSはイカれていない。配線等を調べたが異常は無く壊れていないのに繋がらない。何回も試したがな」
アダムスは無理やり納得し回りを見渡すと・・・・・あり得ない顔をした。彼らが乗っていたヘリ、CH-47D『チヌーク』の特殊作戦用の改造されたMH-47Dに乗っていたのだが・・・・・その隣に『チヌーク』が2機並んでいた
その2機からも何人か外に出ており大半が見知った顔だった。何故なら彼らの野戦服についてある紋章が自分と同じ『第75レンジャー連隊』のものだった
「おい!」
近くにいた仲間に声を掛けると
「ダンテ!お前もいたのか」
アダムスが声を掛けた相手は同僚であるバージル・マコイッツ伍長だ
「確かお前たちはムジャヒディンのキャンプ破壊に行ってたんじゃ?」
「ああ。そしたら何か目の前に積乱雲が現れたとか何とかで、操縦不能になり墜落していって目が覚めたらここだったんだ」
それに驚いた表情をするアダムス
「お前たちもか。俺達も作戦後帰還中に積乱雲に突っ込んで墜落、さっき目が覚めるとここだ」
ネルソンが何やら考え込んでいた
「・・・・偶然にしちゃ出来過ぎてないか」
「お前もそう思うか?・・・・・俺もそう思っていたんだ」
二人は座り込み考え込んだ
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皆が状況確認をしている中、ある一角は静かに黙祷していた。それはNavy SEALsの隊員達である
「・・・・すまないラビット。お前を祖国に帰すのは難しそうだ」
マザーはすまなそうにラビットに言った。彼らはGPSが届かないと聞き、ここはかなり遠い国の田舎・・・・・つまり死体を保存する方法が無ければ施設も無い。故にラビットは此処に埋めるかも知れないと言うことだ
「せめて嫁さんにはちゃんとこれを渡す」
プリーチャーはお守りを見ながら言った。・・・・・・・・すると
「う・・・・ん」
今の声にSEALs隊員達は固まった。なぜなら今の声は間違いなく
「う~~ん、あれ?ここは・・・・」
横になって死んでいたはずのラビットが上体を起こしたのだ。それに隊員達は口をあんぐりさせていた。ラビットは回りを見回し
「隊長・・・・自分は助かったのですか?」
ラビットがマザーに尋ねると
「メ・・・・メディーーク!メディーーク!急いで来てくれ!」
マザーがそう叫ぶとそこにいた全員がマザーに注目し、メディックが急いで駆け寄った
「sir!どうしましたか!」
突然大声で呼ばれ、緊急事態であると感じメディックに緊張がはしる
「こいつ診てくれ!」
マザーがメディックにラビットを診た結果
「健康な状態ですよ」
と診断された
「隊長、一体なにが」
ラビットがマザーに尋ね、情報を聞くと
「そうですか・・・・・一度死んだのですね自分は」
ラビットはそう言うと立ち上がった
「今の自分は生きてますんで大丈夫ですよ」
そう笑って見せた。その表情に安心した表情をした面々だった
するとプリーチャーがラビットに肩を回し
「これのおかげで生き返ったかもな」
と言いながらラビットにお守りを渡した
「かもしれませんね」
と笑うラビット達だった
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パターソンはヘリのコックピットに近づきパイロットに声を掛けた
「どうだ繋がった?」
パイロットは首を横に振り
「いえ、まだです」
パイロットは再び無線に向け
≪こちらブラウラー4、どうぞ≫
≪ザーーザーーザーー≫
聞こえてくるのは砂嵐の音だけであり、周波数を変えながら
≪こちらブラウラー4、誰か聞こえないのか!≫
諦めが表情に出てきていた・・・・・その時に
≪ザーーこ・・ザーーープ・・ザーー聞こ・・ザーーー≫
無線から砂嵐の音に混じって声が聞こえ、それにパイロットは周波数を必死に合わせ
≪こちらブラウラー4、聞こえるか!どうぞ≫
≪こちらガンシップ06、聞こえるぞ≫
無線からはっきりとした声が聞こえパイロットとパターソンに気力が戻る
≪ブラウラー4よりガンシップ06へ、そちらの現在位置はわかるか?≫
≪いや、GPSが壊れたのか現在地は不明。森の上空を飛行中≫
その声から数秒後、どこからかヘリのローター音が聞こえてきて、パターソンが上空を見ると・・・・3機のアパッチとブラックホーク1機が現れた
≪こちらガンシップ06、いま目の前の居るのが君たちか?≫
≪そうだ、会えて嬉しいよガンシップ06≫
アパッチとブラックホークが着陸すると飛んできた方向からエンジン音が聞こえ、兵士達が銃を構えるとM-ATVバギーに乗った4人にM1A1エイプラムス3両、M2ブラッドレー3両にM1126ストライカー3両、
部隊の一番階級が高い人物が集まり情報交換を始めた
「アメリカ陸軍第1大隊第75レンジャー連隊のゲンリー・フォード少尉以下100名」
「アメリカ海軍特殊作戦部隊Navy SEALsのTier 1 Operatorマザー大尉以下4名」
「アメリカ陸軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊のTier 1 Operatorパンサー大尉以下4名に他6名の10名」
「アメリカ陸軍第4機械化歩兵師団第25アルファー小隊のダニエル・マクレイン曹長以下12名だ」
「アメリカ陸軍第4機械化歩兵師団第32アルファー小隊のジョン・ブレムナー中尉以下27名」
「アメリカ陸軍第7機械化歩兵大隊第22ストライカー小隊のバニング・フォスナー中尉以下25名」
「アメリカ第22海兵隊遠征隊第16チャーリー小隊のドミニク・フラガ少尉以下16名」
「アメリカ第3海兵遠征軍戦闘工兵大隊ブラボー小隊のトニー・ジャクソン少尉以下40名」
「アメリカ陸軍第1大隊第2航空連隊のブラッド "ホーク" ホーキンス大尉以下6名」
彼らは『チヌーク』の中に集まり他の兵は武器等の確認や見張りをしていた
「まず自分達は情報部がムジャヒディンがいるキャンプ破壊の任務で向かっているいる途中で嵐に遭いここに来ました」
ブレムナー中尉がそう説明すると
「俺達と一部のレンジャー以外は全員施設破壊に向かっていたと」
マザーが確認をするかのように言うと
「俺達は違う任務だが、基地をでて数時間後に砂嵐に襲われここに来た」
パンサーがそう説明し
「あのトラックの中身は?」
マザーが親指でトラックの方を指すと
「2両が弾薬、1両が食料、2両が工兵輸送、内一台がデリック装備です」
ジャクソン少尉がマザーに説明し
「ヘリの方はどのぐらい飛べる?」
パンサーがホーキンスに確認をとると
「『アパッチ』と『ブラックホーク』に2機の『チヌーク』補給をし終えたばかりだから安心してくれて構わないが、もう1機の『チヌーク』は少々心持たないな」
全員が考え、意見を交わし合いしてると
「やはり偵察を出すべきですか・・・・」
フォード少尉がマザーに言うと
「ここが何処か分からんし下手に動けん・・・・・となると」
マザーはパンサーの方を向き
「我々で偵察か・・・」
「それが妥当だな」
マザーとパンサーは頷き皆の方を見ると
「無線はオープンのままにしておく、もしかしたら本部と繋がるかもしれん。我々が偵察に行っている間はホーキンス大尉にまかせる。目的地は此処から見える風車まで向かう、町があるかもしれないしな」
マザーがそう言い立ち上がると会議が終了した。Tier 1 Operatorの面々が装備を確認しお互いに点検し終えATVに乗ると風車めがけて駆けていった