Medal of Honor Silver Star   作:機甲の拳を突き上げる

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今回もかなり短いです


14話 慰霊

ファウゼン解放後、両部隊が基地に戻った翌日……彼等は墓地にいた

 

ロバート伍長が吹き飛ばされた付近で残っていたのは、破損したヘルメットと片腕のみだった。あの榴弾で、身体の一部が残っていることが奇跡である

 

ロバート伍長の片腕が入った棺桶の上に、星条旗を広げたロメオ分隊と、棺桶の頭の方に第75レンジャー部隊の隊長であるフォード少尉がいた

 

初めての死者で、祖国(アメリカ)に持ち帰ることが不可能なこの状況……故に自分の祖国と思い、戦っているこのガリアの地に埋めることになった

 

葬儀に参列しているのは、隊舎のパトロールを残したアメリカ兵士に第7小隊の全メンバーに加えて、第1小隊といった基地にいる第3中隊のメンバーも参列している。助けて貰ったリィンに幼い故によくしてもらったアイシャ、長い付き合いであったアリシアにイサラが涙を流していた

 

ロメオ分隊とフォード少尉は数少ない礼服を着用している。そして、レンジャー隊員の4人がボルトアクションライフルを手に持っていた

 

完璧な葬儀とはならないが、せめて安らかに眠ってもらいたく、可能な限りアメリカ式の葬儀を行っている

 

葬儀屋の店主も、独立遊撃隊の人間と聞くと格安で高級な棺桶を用意しってくれ、花屋の主人も葬儀用の花を用意してくれた

 

人種も国も違う人間なのに、ここまでしてくれることにアメリカ兵達は感謝をしていた

 

そして、葬儀が開始される。キリスト教徒であるアメリカ兵が持参している聖書の一節を読み、各部隊長に分隊長が弔辞を述べる。その時にアメリカ兵達は全員敬礼をし、それにつられて第3中隊のメンバーも敬礼をする

 

聖書の祈祷を言うなか、少し離れた場所にいるレンジャー隊員の一人が

 

「レディ」

 

声を出すと、4人のレンジャー隊員が空に銃口を向ける

 

「ファイア」

 

その指示と同時に、空へ空砲を撃つ。それに続き、2発、3発と撃つ。撃ち終わると、号令と共に控え銃をして直立する

 

4人が身体と並行になる様に銃を持つ。そして、ラッパ手が永遠の別れを告げる為に奏する

 

最後の祈りの終えると、星条旗を三角形に折りたたまれていく。綺麗に折りたたまれた星条旗は分隊長に渡される

 

本来ならば折りたたまれた国旗は遺族に手渡されるはずだが、遺族はこの世界にいない。だから、分隊長が元の世界に戻った時に遺族に手渡すのだ

 

そして、分隊の仲間が棺桶に金属でできたレンジャーの部隊章を棺桶の上に置く。その上から拳で叩き、張り付ける。分隊全員がそれをすると、レンジャー全員が一言ずつ語りかける

 

「お前はレンジャーの誇りだ」や「親御さんにお前の活躍をしっかり報告してやる」など一人一人が別れの言葉を掛ける

 

すると、ウェルキンが棺桶の前までやってきた

 

「僕からも……いいですか?」

 

真剣な表情でフォード少尉に尋ねると、フォード少尉は静かに頷いた

 

「あなたの勇気ある行動のおかげで僕の仲間は無事生き残ることが出来ました。ブルールから今まで守ってくれて、このガリアを自分の祖国の様に愛してくれた」

 

一言ずつ噛みしめる様に言い

 

「第7小隊の皆だけじゃなく、他の小隊の皆や民間人の人達も救ってくれて……」

 

そして、その眼から涙が零れる

 

「本当に……ありがとうございました!」

 

涙を流しながら敬礼をする。その言葉、その眼差しは感謝と敬意を表したものであると誰もが思った

 

「わたしからも……」

 

その後にアリシアが続き、ラルゴ、ロージーと第7小隊のメンバーも別れの言葉を言った。特にイサラやアリシアといったブルールからの付き合いがある人達は涙を流し感謝の言葉を言った

 

「最後に……」

 

黙って見守っていたバーロット大尉が前に出てくる

 

「コーデリア姫より伝言があります」

 

言われた人物の名前に皆が驚く。国のトップから傭兵の1兵士に言葉があると言うのだから

 

「自分の命を捨ててまで民の命を救ってくださったのには感謝しきれない。どうか安らかに眠れんことを……とだ。それと」

 

コーデリア姫からの伝言を言い、懐から勲章を取り出した

 

「これもコーデリア姫からの贈り物だ」

 

その勲章はファウゼン解放戦従軍章……ファウゼンの解放へと導いた者に送られる勲章だ。これは第7小隊と独立遊撃隊(アメリカ軍)の為に作られた勲章である

 

「よう。俺は、あんたの仲間に守ってもらった身だから言える……あんたほどの兵士が俺達の同胞を救ってくれてありがとう」

 

その言葉はザカが言ったものだ。ファウゼン解放後にザカは義勇軍へと入隊し、第7小隊の戦車兵と配属されたのだ。その時に傭兵であるアメリカ軍から戦死者が出て、葬儀をすると聞き、参列していた

 

アダムス達に護衛してもらったからこそ、ロバートも同じ部隊の人間で高い錬度を誇る兵士であると感じていた。そしてダルクス人であるリィンを自分の命に代えてまで救ってくれたと聞いた時も驚きと一緒に感謝の気持ちでいっぱいになった

 

貰った勲章を棺桶の上に置き、棺桶は穴の中へと埋められていく。祖国では無いが、人の思いを胸に安らかに眠ってくれ……最後までフォード少尉はそう願った

 

棺桶が埋められた場所に墓石が置かれ、その前に花束と破損したヘルメットが置かれていた……そして、墓石にはこう書かれていた

 

 

 

          Robert surface

             SSG

         United States Army

         75th Ranger Regiment 

 

 

 

と、書かれていた。2階級特進し、2等軍曹へとなっていた。たとえ元の世界に帰れなくても、彼がいたという事実を書き残すのだ……


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