Medal of Honor Silver Star 作:機甲の拳を突き上げる
薄暗く、山の中にチラホラと見える電灯。その中に居住用の建物が並ぶここは、ガリアの工業都市・ファウゼンである
工業都市と言う名の通り、高い生産能力を誇りガリア国内の生産の大半を賄っていたが、ここを帝国軍にとられてからガリアの生産能力はガクッと落ちていた
その帝国軍の勢力圏内であるファウゼンの入口付近を巡回中の帝国兵がいた
「たく、ここまで油臭くて堪らないぜ」
悪態をつきながら、相方に同意を求める。最近はガリアが巻き返しをしているが、
「おい、どうし……」
まっても返事が返ってこないから振り向いた。そこには地面に倒れている相方と、血がベットリと付着したナイフを持った見たこともない装備をした男の姿だった
一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、直ぐに緊急事態だと理解しライフルを男にむける。だが、向けようとした瞬間に何かで首を絞められた
「……!……!」
締め付けを緩めようと足掻くが、首の肉に食い込んで取れず、叫ぼうにも首を絞められて声が出ない。動脈も絞められ頭に血が行かずに、帝国兵は白目を向いて失神した
2つの死体は、谷底へと投げ捨てられた
《エネミー、クールダウン。クリア》
無線で連絡をすると、後ろから駆動音が聞こえてくる。岩陰から現れたのは第7小隊とトマホーク02を主力としたデルタ&レンジャー部隊だった
サイレントキルをしながら前方の偵察をしているのはレンジャーのスナイパーチームである。近くにあったトロッコに乗り目の前にいたスナイパーを消して、射撃ポイントにスタンバイする
《こちら、スナイパーチーム。射撃ポイントに到着、指示を待つ》
無線連絡が入ると
《こちら、ウルフパック1。敵スナイパーを排除し待機せよ》
指示を出した後にパンサー達が前進を開始する。狙撃ポイントにいるレンジャーは居住区域の上の崖に陣取っており、まだトロッコにいた仲間がやられたことに気付いていない
手前の1人に照準を合せ、引き金を引く。飛翔した弾丸はヘルメットを貫通し即死させた。次弾装填の為にコッキングレバーを引く、チャンバーから弾き飛ばされた空薬莢が煙を上げながら地面へと落ちた
サプレッサー付きのM24は音も閃光も軽減され、撃たれたことに他の帝国兵達が気付いていない。その後に2人の狙撃兵を排除すると、遠くにある橋から帝国戦車の砲門が見えた
「やばっ!」
直ぐにスナイパーチームはその場から離れる。下へと降りていく途中に帝国戦車から榴弾が発射され、先程までいた地点に着弾した。
《おい!大丈夫か!》
その光景にパンサーは急いで無線を繋いだ
《大丈夫です!前方に敵戦車!数は1、居住区域に突撃兵2を確認!》
スナイパーチームの無事と、状況の報告が入る。直ぐにエイプラムスが橋の上まで行き敵戦車に砲口を向け、エーデルワイス号が突撃兵のいる地点に榴弾の照準を合す
敵戦車と突撃兵を片付けるが、目の前にサーチライトがあった。そして橋の所にも対戦車地雷が設置されており、突破するには時間が必要だった。故に歩兵のみでの殲滅戦に切り替える
破壊した戦車のある橋を渡ると、敵兵がトロッコの前にいたのでこれを排除。第7小隊の突撃分隊とデルタが同行し、目の前の橋に陣取っている対戦車兵と戦車の後ろをとる
突撃分隊が上の敵兵を排除している間に、デルタが戦車の背後に周り、ダスティとベガスが対戦車兵を排除。デュースがラジエーターにラグナイト爆弾を設置してタイマーを起動させる
岩陰に隠れて爆発するまで待つ。そして、時間が来ると敵戦車は大爆発を起こして撃破された
戦闘を終了させ、下にあるダルクス人の協力者がいるという収容所まできた。その中にはボロ雑巾のように使かわれているダルクス人達がいた
「なんてこった……」
その惨劇にラルゴも息を飲み、冷や汗が流れた。ロージーがベッドの柱に隠れていた女の子に近づくと、女の子は逃げてテーブルにいたダルクス人の背後に隠れた
「なんだ、お前さん達は……どこから入ってきた?」
頭にダルクスの伝統的な布を巻き、片目を閉じた男が問う
「俺達はガリア軍の者だ。ここに義勇軍の協力者がいると聞いて来たんだが」
パンサーがそう言うと、男は安心したように溜息を吐いた
「……驚かすなよ、俺がその協力者だ」
男が椅子から立ち上がり、顔を合わせた
「ザカだ、よろしく頼むぜ」
ザカはウェルキンと握手すると
「で、お前さん達は?」
パンサーの方を向いて何者かを尋ねる。正規軍でも義勇軍でもない格好をしているのだから仕方ないと言える
「俺達は独立遊撃隊の人間だ」
その説明でザカは少し驚いた表情をする
「あんたらがか……噂は此処まで届いてるぜ。曰くガリア軍が最精鋭揃いの傭兵集団を雇ったと」
そう言い握手しようと手を伸ばす、それにパンサーは応じて握手した。すると、ザカは女の子の頭を撫でながら大事な話があるからと寝るように言った
その姿をロージーが何かを思いながら眺めていると
「あの子の両親は酷い拷問をうけてね……」
そこから先は察せた。この場にラビットがいなくて、ある意味よかったとデルタの面々は思った。この話を聞けば、彼の逆鱗に触れることになるからだ
「よし、作戦の話に移ろう。こっちに来てくれ」
暗い話はここまでとして、ザカは作戦の話をする
「ファウゼンの向上地帯は、渓谷に沿う形で低層と高層に分かれて広がっている」
テーブルの上に地図を広げて、指をさしながら説明する
「帝国の装甲列車は高層に張り巡らされた線路を相呼応して、砲撃をしてくるはずだ」
地図の上の線路をなぞる。ここに攻め込めない理由の1つである装甲列車の存在は基地内のブリーフィングでも知らされていた
「こちらの攻撃が届かなければ、手も足も出ないな……」
ウェルキンが射程圏外からのアウトレンジ攻撃に頭を悩ませると
「そこで、こいつの出番だ」
ザカがある物を取り出した。四角い鉄の塊でタイマーが付いている
「ラグナイト爆弾だ。帝国の連中の眼を盗んで少しずつ材料を集めて造った物だ」
爆弾……そこから導きだせる答えは1つだった
「線路の爆破か」
答えを当てたパンサーにニヤリとしながら首を縦に振る
「そうだ、鉄橋にこいつを仕掛けて、その上に装甲列車が来た時に……ボンッとな」
手で、爆発するジェスチャーをする。確かにこれならば装甲列車を谷底に落せる
「爆弾の設置はオレに任せてくれ。お前さん達には帝国の防衛部隊の駆逐と爆弾の起爆を頼みたい。俺が設置して退避したら爆弾に銃撃して鉄橋を爆破するんだ」
ザカの説明を聞き、ウェルキンは頷く
「設置しに行くときには俺達から護衛チームをだす」
鉄橋に行くまでの護衛をレンジャーの部隊に任せようとパンサーは考えていた
「お前さんの所から出してくれるなら、こりゃ安心だな」
噂に聞く部隊の実力を目の前で見れるといい、笑った
作戦時間まで休憩をしていると、ザカとロージーの話し声が聞こえてきた。歌の話をしているかと思えば、ダルクス人が何故ダメなのかと聞く
「この世には色んな人種がいる。それぞれ特徴があって、ひとりひとり違って。人間も歌と同じように、それぞれに良さがある……オレはそう思うよ」
そう笑って言う。強いな……そう思いながら黙って聞くパンサー達
「それぞれに良さがある……か。そうよね」
アリシアもどこか嬉しそうに言うと
「カブトムシって世界中には1300種類もいて、その種類の数だけ特徴があるんだよ。人間もそれと同じだと思う」
その言い分はどうかと思うが……実にウェルキンらしいなと思っていた
「おまえさん……はーっはっはっは!いやぁ、面白い奴だなぁ。人間と昆虫を同じ土台で考えてしまうなんて!」
虫の話にザカは笑う。変わった男だな……と思うなか、面白い男であるなとも思っていた
「あんたらも、仲良くやっていこうぜ」
座って目をつぶり休憩をしているパンサー達の方を向いて笑いながら言うと
「ダルクスの人間は物を作るのが得意とらしいな。お手製の爆弾の威力、楽しみにしておくぜ」
ダスティが顔を上げ、笑みを浮かべながら答える。その笑みは侮辱や差別などに使う見下した笑みではなく、友に向けるような笑みだった
「おう、威力はお墨付きだ。任せといてくれ」
ザカも笑みを浮かべて答えた
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夜が明け、日が昇る……作戦開始の時間となった。両部隊が行動を開始し、鉄橋が目の前に見える位置にまで接近していた。だが、そこに行くためには配置されている帝国兵を排除する必要がある
「隊長さんよ、1つ頼まれてくれねぇか。まず北西にある橋を爆破して欲しいんだ」
ザカがウェルキンに橋を爆破してくれと頼む
「そうすれば、敵の増援を食い止められるし、そのスキに俺は鉄橋まで近づくことができる」
敵の増援が止められるのは重要であると言うことで、目標が北西の橋にとなった
「分かった、爆破の方は頼むぞ」
一緒に聞いていたパンサーがそっちの仕事をこなせと励ますと
「まかせとけ、この日のために入念に下調べはしておいたんだ」
ここで仕事をしていて、入念に調べ、地理に詳しい彼なら問題ないと判断する
「それに、そっちの護衛も随分優秀そうだしな」
レンジャーからの護衛チームはジム・パターソン軍曹率いるチームで、その実力はお墨付きであった。今彼等は武器の最終チェックをしている
「彼等なら問題ない。作戦開始だ」
パンサーの声と共に作戦が開始された。目の前の橋を進んでいくと装甲列車に各拠点にいる帝国兵に橋を防衛する戦車などの大部隊がいた
「ふん!汚らわしいガリアの狗共め……この『エーゼル』を……ここを守る私に勝てると思っているのか」
装甲列車『エーゼル』に乗っているベルホルト・グレゴールが作戦開始をしたガリア軍の動きを見ながら言う
「280mm榴弾砲用意!」
その声を聞き、帝国兵たちが急いで準備にかかる。すると、グレゴールが様子を見ていた望遠鏡にガリア軍の戦闘服とは別の服を着た集団がいた
それがガリアの雇った傭兵部隊であると気付く。そして、クローデンの森から帰ってきたイェーガーが恐ろしく場馴れした熟練の兵であると言っていたのも思い出す
「……たかが、傭兵のハイエナなんぞに恐れることなど無い」
驕っている訳ではない、ただ……この世界の基準で考えていたのだ
「風は北西に60m、空気は乾燥している」
橋を進む中、スナイパーチームが橋の上から敵兵を狙っていた
「撃て」
観測手の合図に狙撃手が引き金を引く。すると、土嚢に隠れていた突撃猟兵の頭が風船のように破裂した
狙撃手が持っている銃はM24ではなくM82A1……
まさか橋の上からの狙撃なんて考えてもいなかった帝国兵はあせる。この場所は渓谷で、風が強く狙撃には難しい場所で、よっぽど命中精度の高いライフルが必要になる。更に、土嚢越しに撃つ殺されたことからかなりの大口径で、対戦車ライフルで撃ってきたのかと訳の分からない状態になっていた
北西の橋に主戦力が進み、そちらを警戒している隙に爆破チームが橋を護衛している戦車の後ろをとる。傍にいた対戦車兵を撃ち殺し、それに気付いた戦車が砲塔を向けるが
「アダムス!やれぇ!」
アダムスがもっていたM72LAWが敵中戦車のラジエーターに直撃、爆散する。その光景をみたザカがあまりに衝撃的な光景に笑みをこぼす
「はじめてみた武器だが……凄まじい威力だな!」
対戦車槍みたいなゴツイ武器でなく、小さな筒からあれ程の威力がでるなんて予想もしていなかったのだろう
「まぁな、それで次はどっちだ」
使い捨てのLAWをその場に捨てると、M249を手に持ちザカに道を聞く
「あぁ、こっちだ」
進もうと思ったが、その時に爆音が響く。装甲列車から撃たれた榴弾砲が自分達のいた橋に命中し、大爆発を起こした。既に橋を渡り切っていたスナイパーチームはその威力に冷や汗を流す
だが、再装填と照準には時間が掛る。順調に作戦が進んでいると誰もが思った……だが
「チッ!」
ロージー達の突撃分隊が目の前の陣地に弾幕を張られて手間取っていると、レンジャーの一人がM4に付いているランチャーで陣地を吹き飛ばす
「GO!GO!GO!」
陣地を吹き飛ばしたのを見て、レンジャーの分隊長がロージー達に前進しろと言う。すると突撃分隊が前進する中、側面から帝国兵が現れてロージー達を攻撃し始める
それをレンジャーが応戦するが
「あう!」
足に銃弾が掠り、突撃兵のリィンが転倒する。転倒した場所を装甲列車の榴弾砲が狙っているのに気付いたレンジャーが
「カバーしてくれ!」
そう叫び、リィンの元に走りだす。それに分隊全員が弾幕を張り、援護する
「大丈夫か!?」
全速力で走り、リィンに肩を貸す
「大丈夫、銃弾が掠っただけです」
足から血が流れてるものの、当たっては無かったので血の量も少ない。急いで目の前の吹き飛ばした陣地に向かおうとするが、レンジャーが装甲列車を方を見ると……榴弾砲が放たれた瞬間だった
その音にリィンも顔を上げ、その表情は絶望に染まっている。そして、レンジャーは腹を括り
「うぉぉぉぉぉぉ!」
リィンの両腕を持ち、一回転させてロージー達がいる陣地に投げた
「痛っ!」
背中から地面に落ちたリィンは声をだすが、何が起こったのか一瞬分からなかった。
「逃げろ!ロバート!」
名前を呼ぶ声に、リィンは投げられた方向を見る。そこには、投げた格好のまま笑っているレンジャーの隊員が……榴弾に巻き込まれた
その光景はリィンやロージー達、レンジャーの分隊は目を見開いたまま固まった
《榴弾着弾、状況報告》
パンサーが榴弾が着弾したことによる被害の状況確認の無線をいれていた。他の部隊に負傷者なしだが、ロメオ分隊の隊長が無線機を取り
《……こちらロメオ分隊、ロバート伍長がKIA。繰り返す、ロバート伍長KIA」
その連絡に、銃を撃っていた者、マガジンを交換していた者、先に進もうとした者全てのアメリカ兵が固まった。無線から聞こえたKIA報告、KIA……つまり戦死者が出たのだ。この世界に来て初めての死者が出たのだ
その衝撃に固まっているが、戦況はまだ続いている。銃撃音を聞いたアメリカ兵達が動きを再開した
ロメオ分隊は目の前で文字通り吹き飛ばされたロバート伍長の場所を越え、ロージー達がいる陣地へと向かう。そこには茫然としたリィンの姿があったが、それを無視して先に北西の橋に向かい
「フラグアウッ!」
分隊長がラグナイト製フラググレネードを橋に向かって投げる。その爆発で、橋は吹き飛んだ
《こちらロメオ分隊!北西の橋を破壊!》
目標を達成し、後は鉄橋に爆弾を設置し起爆するだけとなった。ロメオ分隊が陣地へと身を隠しに行くと、リィンがまだ立ち直っていなかった
「いつまでそうしている!ここは戦場だぞ!」
分隊長がリィンの両肩を揺らす。リィンの目には涙が溜まっており
「あそこで……私が撃たれなければ……」
自分を責めるような発言をするが
「そんな考えに意味はない。ロバートはレンジャー隊員だ、死を覚悟で戦場に来ていた」
いくら精強なレンジャーであろうとも撃たれれば死ぬ人間であり、前にいたアフガンでも戦死者は決して少なくなく、今まで誰も死んでいなかったこの状況が異質なのだ
「そんな所で泣いている暇があったら銃を持ち帝国兵に向かって撃て!」
そう言うと、ロメオ分隊が先に進む。その後をロージー達突撃分隊も続き、その中には表情は暗いがリィンもついてきていた
「おい!まだか!」
ザカが爆弾を設置している最中、パターソンの分隊が帝国兵と応戦中であった。設置が完了するまでその場を動けなく、アダムスがM249で弾幕を張るが、その多さに参っている
「くそ、まだいやがるのか!」
ヘルナンデスが帝国兵の頭を撃ち抜き悪態をつくが
「よし!完了だ!」
ザカの報告にアダムス達は「やっとか」と感じていた。実際は1分ぐらいであったが、その1分は銃撃戦では10分以上に感じていたのだ
《ザカだ。爆弾の設置が完了した。退避したら銃撃で爆破してくれ》
無線で爆破設置完了の報告が入る。狙撃ポイントで援護していたスナイパーチームが、爆破用の狙撃ポイントへと向かう
その間にアダムス達が急いで退避する。ある程度離れて、大きな岩の後ろに隠れると
《いいぞ!爆破してくれ!》
パターソンが無線で退避を報告。そのまま爆破を頼むと、狙撃手がM82で爆弾を撃った
「何だ今の爆発は?」
グレゴールが北西の橋が爆破した頃、爆発音の原因を聞いた
「はっ!どうやらガリア軍が北西の橋を爆破した模様です!」
部下が状況を報告する
「何だと?小賢しい真似をしおって!」
明らかにグレゴールの表情が険しくなる
「よし、作業リフトの電源を入れろ。偵察兵を向かわせ、性格な状況を報告させるのだ」
それが無駄に被害を大きくすると思う筈もなく指示をだす
「いかに足掻こうが、この装甲列車に攻撃は通じぬ。じっくりと嬲り殺しにしてやろう」
そう言うが、望遠鏡で戦況をみると此方が不利なのは一目瞭然だった。戦車砲も対戦車槍も弾き返す装甲の戦車に、帝国兵が殺され前線が後退していっている
その前線にいるのが件の傭兵であり、その錬度はイェーガーの言う通りだった。望遠鏡を握る手が強くなる中、偵察兵が状況を確認するために前線へと行くが、その途中で上半身と下半身が泣き別れする光景をみた
その他にも頭が破裂したり、上半身に風穴を開けて倒れたりする偵察兵の姿にグレゴールは対戦車ライフルでの狙撃と判断し、狙撃兵を探す
狙撃兵がいた所には傭兵が800m以上離れた位置から対戦車ライフルで狙撃する姿があり、こちらが見た時には物陰へと移動していた
その錬度、その度胸、傭兵と言って侮ればこっちがやられる。ハイエナと言って馬鹿にしたが、奴らはまるで大きく翼を広げた鷲のような強さを誇る兵士であった
「(イェーガーの言う通り……傭兵と侮れる相手ではない)」
冷静な判断でアメリカ軍が最も恐ろしい相手と認識し、榴弾の標的を変更しようとした時には既に遅かった
「な、何だ、この振動は!?状況を報告せよ!」
突然、装甲列車が揺れ始めたのに驚き、状況確認をすると
「わ、わかりませんが……鉄橋が……鉄橋が崩れています!」
部下もかなり驚いており、報告する声も震えていた。報告が終えると、帝国兵は叫び声を上げながら落ちていく
「な、なぜだ!この装甲列車は、帝国の威信そのもの!帝国の威信が崩れることなどあってなるものかっ!」
装甲列車が落ちていく中、グレゴールは必死に今の状況を否定する
「やつらか……奴らのせいなのか!」
グレゴールの脳裏に浮かぶのはアメリカ兵の姿であり
「傭兵風情が帝国の脅威になるなどと……なるものかぁぁぁぁぁぁ!」
その怨念を含んだ叫び声と共に装甲列車『エーゼル』は渓谷へと落ちて行った
「あばよ、グレゴール……」
落ちていく様を見て、ザカが呟いた
――――――――――――――――――――――――――――――
装甲列車を渓谷に落とし、一段落したと思ったら、中隊の方からダルクス人収容所に火が放たれ、辺りが火の海であると報告してきた
それに驚いた両部隊は急いで収容所に向かうが……そこには焼け焦げた収容所しか残っていなかった
「どうして……こんな事を……」
あまりにも悲惨な光景を目にしてアリシアは茫然として呟いた。他のメンバーも同じく、その悲惨さを目の当たりにして悲痛な表情をしている
戦争を経験しているアメリカ軍は民間人が虐殺される光景は見たことがある……といっても納得できるはずもなく、悲しみよりも怒りを露わにしている
「こんな建物に無理やり押し込めて……火を放つなんて……どうして……」
茫然な表情から悲痛な表情へと変わり、火を放った理由が全く理解できなと嘆く。するとロージーが焼け焦げた収容所に近づき……ある物を見つけて茫然とする
それは女の子が持っていた人形であり、そこにあることから既に女の子は焼け死んだのだと理解できた。それを見たパンサー達が民間人の……それも年端もいかない女の子を殺した帝国兵に明確な怒りを露わにしている
「まだ10歳にも満たないような……女の子を殺すのかよ」
拳を握りしめ、怒りが口から洩れるかのように言うデュースに
「もはや人間じゃねぇ……ウジ虫以下だ」
同じくブチ切れているダスティも呟く
「こんなことしやがった奴は誰だ!あたいがとっ捕まえてぶち殺してやる!」
ロージーも完全にブチ切れしていたが
「やめておけ……」
それを嗜めるように声をかけたのはザカだった
「……なんだって」
人形を握りしめ、ロージーが睨みつける
「やられたらやり返す……暴力には暴力……それじゃぁ、争いは終わらない」
ザカは焼け跡の中へと進む
「例えダルクス人だという理由で迫害されようが、俺達は誇りを持って生きている。俺達は……報復しない、それがダルクス人の生き方なんだ」
その胸には決して消えない真の誇りがあるようにザカが言う
「ダルクス人の……生き方……」
ロージーは再び人形に目を向ける。言いたいことは分かる。だが、それで何人の人が納得できるのだろうかとパンサーが思っていると、ザカが焼けた柱を持ち上げる
「憎しみを抱いても、報復しても……誰も救われない。自分に出来ることを、ひとつずつ確実にやっていくしかないんだ」
そう言い焼けた柱を退ける。再び柱を持ち上げようとした時に、誰かの手が見えた。ザカが顔を上げると、アダムスが反対側を持っていた
「退けるんだろ、早く上げろ」
そういい持ち上げると、ザカも持ち上げる。それを見たレンジャーが全員動き、瓦礫を退けていく。その中にはパンサー達やイサラもいた
イサラが持ち上げようと頑張っていると、ロージーが持ち上げるのを手伝った
「ロージーさん……」
その姿にイサラが驚き
「ロージー、ありがとう」
ザカは感謝の言葉をいった
「生存者がいるかもしれない!みんな手伝ってくれ!」
それを皮切りに、ウェルキン達も瓦礫の撤去作業に加わっていった
ここまで読んで頂きありがとうございます
昨日、やっと新型PSvitaを購入しましたwこれでゴッドイーター2の発売日が待ち遠しんですが……メモカ高すぎじゃね?
32GBの買おうかと思ったら普通に6000円超えや5000円超えばっかで、唖然となりましたよ。妥協して16GBにしようとしても3000円代だし、ソニーさん頼むから独自規格でもいいので値段下げてくださいよ……これじゃvita購入者が増えないはずだよ