Medal of Honor Silver Star   作:機甲の拳を突き上げる

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9話 バリアス砂漠 後編

バリアス砂漠の東側にある遺跡周辺、そこには多数の銃を持った兵に複数の戦車がいた。そして、そこに立てられていた旗は双頭の鷲が描かれた……帝国軍の国旗であった。

 

帝国兵は今さっきばかり来た高官にざわめきが満ちていた。上からの指示で整列して待っていたが、車から降りてきた人がまさかあれほど(・・・・)の人物だとは思っていなかったのか、整列して道を作っていた兵士の顔が引きつり冷や汗を流しながら敬礼していた。

 

高官が遺跡に入って姿が消えてから、兵士達は体からどっと力が抜けていた。護衛に選ばれるんじゃないかと皆が思っていたが、高官がそれを断り副官と思われる銀髪の女士官と共に遺跡へと入っていった

 

ホッと一息を吐いて、警戒と言う名の駄弁りをしていた。その場にいた帝国兵達は気が抜けており、それが……彼らの命取りだった

 

轟音が空に響くと、彼等の後ろにあった戦車が爆発したのだ。完全に意表を突かれた帝国兵はパニックに陥っていた。その時、一人の兵士が見たのは遠くから迫ってくる3台の戦車だった

 

「初弾命中!」

 

エイプラムスに乗る砲手が報告する。3,000mをも超える遠距離からのアウトレンジ攻撃を可能とする高度な射撃統制装置(FCS)を積んであり、有視界戦闘では既に敵を捕らえ有効射程内と言える

 

装填手から装填完了の報告がくる。砲手が次の戦車へと狙いを定めていると、戦車が始動し始めているのかラジエータが青く光っていくだが、まだ停止している状態では恰好の的である

 

「照準よし!」

 

「てっー!」

 

戦車長の号令と共に120㎜の砲口から火を噴いた。走行しながらの砲撃であったので目標から狙いが外れたが、地面に当たった衝撃と爆音で一帯の帝国兵は吹き飛ばされたり、耳を手でふさいで転げまわったりしていた

 

敵陣地は壊滅的被害と指揮系統の麻痺によって大混乱となっていた。その状態を見逃すはずが無く、エイプラムスを追い抜き陣地へと強襲をしかけたのはエーデルワイス号とネームレスの戦車『ブレイヴ』である

 

第7小隊はこれまで森や市街地戦闘などで、戦車の機動性を充分に生かせない戦場ばかりであった。だが、バリアス砂漠では、障害となるのは岩ぐらいで広大な大地はまさに戦車の独壇場であった。その図体から思えないような高機動で敵戦車の砲弾を避け、こちらの砲弾で敵戦車を葬る姿は陸戦の花形に恥じない戦果だった

 

ネームレスの戦車『ブレイヴ』も勝に劣らない性能であった。ガリアでは珍しい中量級型タイプの戦車であり、速度、起動と申し分ない性能である。敵の脇腹を突くように突撃し、攪乱するような動きに、隙を見せたらすぐさま隙を突く姿はエイプラムスの戦車長が見事と思うほどだった

 

敵戦車が全部破壊されるころには、陣地にいる帝国兵は3方向から攻撃されたアメリカ軍、第7小隊、ネームレスに成す術もなく敗北した。

 

敵陣地を壊滅させ、帝国兵も死んだか逃げたかで辺りにはいなくなっていた。一応警戒のためレンジャーが見回りの任についていた

 

≪HQ、こちらエコー。敵影は見当たらない。オーバー≫

 

警戒をしている部隊から本部へと定時連絡がくる

 

≪エコー、こちらHQ。了解した、引き続き警戒にあたれ。オーバー≫

 

≪HQ、こちらエコー。引き続き警戒にあたる。アウト≫

 

無線の通信が切れる。HQにいるラビットは敵影が見当たらないことにホッとした。死者数を数えた結果、大半の帝国兵が死亡してるのが確認できた。逃げたとしても恐らく10数名程度、こちらの戦力は3個小隊規模である

 

腕時計をみると、もう10分程で警戒している連中が戻ってくる時間であると確認すると辺りを見回した。既にウェルキン等の調査隊は遺跡に向かっており、エイプラムス、エーデルワイス号、ブレイヴと3台の戦車が並んでいた。その戦車の上でラルゴやロージや戦車長達がスイカを齧っていた

 

「ハ~イ、少しいかしら?」

 

声を掛けられ振り向くと、眼鏡を掛けカメラを片手に持った女性、ラビットはラーゼル橋での戦いの後に一度会ったことのある女性、イレーヌ・エレットであった。彼女はバーロット大尉から直接許可をとり従軍記者となっていた

 

「どうしましたか?」

 

エレットに要件を訪ねると

 

「いえ、ちょっとお話をと思いまして。1枚いいですか?」

 

カメラを掲げると、ラビットは首を横に振った

 

「もう少しすると見回りしている部隊が帰ってくるので、そっちの方でお願いします。で、話とは?」

 

写真を断ると、本題に入った

 

「いえ、貴方がたが前にいた所はどんな場所だったのかなと思いましてね」

 

ガリアにはアメリカ軍は傭兵団として味方に加わったとされており、そのことはアメリカ軍の皆が知っていることであった。そこで前にいた戦場を知りたがる人物がいるとしても不思議ではないと考えたラビットは

 

「わかりました、ですがここでは熱いですから」

 

ラビットは戦車で出来た影を指さした。その意味が分かったエレットは頷き、戦車の方に向かった。戦車の影につくと話始めた。航空戦力と機密事項の所は隠しながらも話始めた。山岳戦での攻防、潜入のことなどアフガンでの戦いを順番に話って言った。

 

「なるほど、では砂漠での戦闘も初めてではないと言うことですね」

 

ラビットが語ったことを手帳にまとめるエレット。ラビットの話に興味津々なのか、食いついてくる

 

「あの日も今日の様に暑い日でしたね……」

 

思い出すかのようにあの時の戦闘を思い出していると

 

「……よくもまぁ、これだけの土地を焼き払ったものだね」

 

突然ロージがそう呟いた

 

「ここの砂漠は大昔にダルクス人が邪法の力とやらで年ここにあった都市を焼き払っていううじゃない。いったいどうやって焼き払ったんだろうね?」

 

エーデルワイス号の上でロージがそう言うと

 

「でもイサラは歴史的根拠のない風説といってたけど?」

 

話が聞こえていたエレットが返事をする

 

「あいつら、昔からラグナイト堀の仕事とかやらされてるだろ?アタイらも知らない怪しいラグナイトの技術とかしってんだよ、きっと」

 

そうぶっきらぼうに言うと

 

「それこそないな」

 

話を聞いていたラビットがそう言った

 

「なに?」

 

戦車の上で寝転がっていたロージが体を起こした。その表情には不満が見て現れている

 

「ダルクス人がバリアスを焼き払ったなんて歴史的根拠以外にもありえないと言い切れるよ」

 

そう言い切ると

 

「なんでだい?」

 

そう不満そうな顔をしながらロージ聞いてくる

 

「仮に焼き払ったとするとダルクス人が黙って迫害されているはずがないからだよ」

 

その返答にロージとエレットは首を傾げた

 

「1個の都市を焼き払いこれだけの大地を砂漠にするほどの力を持っていれば、ヴァルキュリア人がいない今、黙って迫害されるはずがない」

 

ラビットはウェルキン達が向かった方を眺めると

 

「それに、それ程の力を持っているならヴァルキュリア人も一方的に勝てたはずがないし、その力を危険視してダルクス人を根絶やしにすると思う」

 

それを聞いたエレットとロージは納得し、納得してしまったロージは反論できずに不貞寝をし始めた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

一方遺跡の方では第1小隊と合流したファルディオと共に古代ヴァルキュリア遺跡の中へと進んでいた

 

「遺跡の中だと聞いたが、意外と明るいものだな」

 

護衛チームの隊長であるパンサーが遺跡の中は暗闇だと思いっていたが、壁から青い光が発光し、薄暗いが見えない程ではないことに驚いていた。だが、その光はやはり青白いものでヤバイ物(チェレンコフ)見えて仕方がないのはいつものことで、いまだに慣れずにいた

 

「この遺跡自体がラグナイト含有率の高い石で作られていますから。明るいのはそのためです」

 

パンサーの疑問をファルディオが答えてくれた。この世界の歴史書は英語と同じ文字で書かれており、歴史書を呼んで知識を取り入れていたパンサーは古代ヴァルキュリア人の遺跡があることは知っていたが、中がこうなっているとは思いもしなっかった

 

「うわぁ、遺跡の中にこんな場所があったんだ……」

 

アリシアが遺跡の中をキョロキョロ見回しながら言うと

 

「びっくりしただろ?俺も初めてここに来たときは随分と驚いたものさ」

 

そう笑いながらファルディオが説明していく

 

話をしながらある程度進むと道が無くなっており、目の前の壁には螺旋状の壁とその周りに文字が刻まれたリングみたいなのがあった

 

「ファルディオ、なんだこれは?」

 

パンサーが壁に書かれている見たことの無い文字尋ねる。ファルディオは大学で考古学を専攻しており、ヴァルキュリア関係の遺跡に強い関心を持っていると聞かされたことがあった

 

「それは古ノーザン文字です」

 

護衛チームが興味もしめしたのか全員がその壁に書かれている文字を見た

 

「これに書いているのは読めるのか?」

 

ベガスが碑文を見ながら尋ねると

 

「あぁ、大学で去年に習ったからね」

 

ファルディオが碑文の文字を見て少し考えた表情になると

 

「……おおむね、ヨーロッパに古くから伝わる『ダルクスの災厄』についての記録だな」

 

古ノーザン文字を指でなぞる様に解読していく

 

「かつて、ラグナイトから力を引き出す技を得たダルクス人は、地上を我が物にしようとし、邪法のちからで100の都市を焼き払い、100万の人と家畜を殺した。この地も、ダルクス人によって焼かれた都市の一つである……とある」

 

書かれている碑文を読み解いていき、ベガスは気になった所があった

 

「ダルクス人の……邪法の力?」

 

その邪法の力とは何を指しているのかと考えている内もファルディオは話を進めていく

 

「そんな古代ヨーロッパ史に忽然と現れたのが、『ヴァルキュリア人』達だった。ヴァルキュリア人は青く輝く聖なる槍を手に取りダルクス人達に戦いを挑んだという。属に言う『古代ヴァルキュリア戦争』だ」

 

古代ヴァルキュリア戦争……パンサーは歴史を調べる時にそのような言葉を見たが、それは唯の神話でしかないと思っていた

 

「それ絵本で読んだことあるけど、お伽話じゃなかったの?」

 

アリシアも同じ考えだったのか、ファルディオに尋ねると

 

「この遺跡をはじめ、ヨーロッパ各地にはヴァルキュリア人が存在した痕跡は数多くある。民族考古学においては、ヴァルキュリア人は実在した……という説が最近有力なんだ」

 

歴史の勉強をしているなか、デュースとダスティーはその話を聞きつつも、おかしいと思っていた。遺跡に入ってからブリーフィングンで聞いていた高官おろか帝国兵の姿すらない。先程潰した陣地には高官らしき人物が見当たらず、先に遺跡に入られていると考えてい

 

「パンサー」

 

ダスティーがパンサーの肩を叩く

 

「どうもここはおかしい、帝国兵の姿は1人も見当たらず、ここに入ってから無線の調子がおかしくなっている」

 

パンサーは直ぐに自分の無線を確かめると、通じてない訳ではないが、ノイズが出ていた

 

≪HQ、こちらパンサー。無線チェック、オーバー≫

 

すぐにパンサーは無線の状況をたしかめる

 

≪パ…ザザ…サー、こちらマザーだ。とこ…ザザ…ころで、ノイ…ザザ…が入るが聞こえるぞ、オーバー≫

 

≪マザー、こちらパンサー。引き続き遺跡の探索を行う、アウト≫

 

無線を切り、辺りの様子を伺うと螺旋状の壁に目がいった。ファルディオ曰くヴァルキュリア人の力の象徴であると言っており、今はアリシアが調べていた……すると、突然と螺旋の壁に穴が開いた

 

その決定的瞬間を一部始終見ていたパンサーとダスティーにデュースは度肝が抜かれた。アリシア自身も突然壁が無くなり、口をパクパクしながら驚いていた

 

他のメンバーも気付いたのか、さっきまであった壁が無くなっているのに驚きを表していた

 

「アリシア、何かしたのかい?」

 

ウェルキンが直ぐに近寄って安否を確かめながら尋ねる

 

「わからない……手をふれたら扉が勝手に開いて……」

 

アリシアも今だ状況が把握できていないようだった。護衛チームは空いた壁の奥に何もいないか、警戒しながらライトを照らしていた

 

「バリアス遺跡に深部があったとはな、これは歴史的発見だぞ!」

 

ファルディオは考古学を専攻した人間として輝いた目をしていた

 

「どうする?進むのか?」

 

パンサーが警戒しながらファルディオに尋ねると

 

「もちろんだ!」

 

嬉しそうに頷いた。パンサーとデュースが先頭にダスティーとベガスが後方に付いて警戒しながら進んでいく。辺りはさっきの所よりも暗く、レイルに付けていたライトで前方を確認しながら進んでいく

 

すると、出口なのか、明るい光が目の前に見えてきた。暗い道から抜けると

 

「……なんだここは」

 

デュースとファルディオが同じ声を上げた。目の前には巨大な螺旋の柱があり、その下へと螺旋階段が続いていた。すると、ファルディオが先に進み壁にライトをあてた

 

「こ、これは……そんな……」

 

驚いた様子にデュースが前方を警戒しながら尋ねる

 

「ここにも碑文か、なんて書いてるんだ?」

 

だが、ファルディオは驚いた様子のまま固まっていた

 

「い、いや……この文字は俺にも読めないな」

 

ファルディオが驚いたままでいると、足音が聞こえてきた。その足音にパンサー達が一斉に足音の方へ銃口を向ける。そこから現れたのは白を基本とした格式高そうな服をきた短髪の男と、銀色の髪と黒い帝国軍の服、螺旋状の槍を持ち、そこから強調されている巨大な胸が特徴の女性だった

 

「ほほう……ここに訪れているものが他にもいるとはな」

 

男性は目の前にいる人物達を見た。その中で4人だけ装備と雰囲気が全く違いことに気づき

 

「貴様らか……例の傭兵と言うのは」

 

その4人が報告で聞いた傭兵団の傭兵であると認識した。だがパンサー達は沈黙したままで銃を構えているままだった

 

「どうやってここまで来たか知らぬが、この神聖なる場所に貴様らは場違いだ」

 

そのまま通り過ぎようとするが

 

「動くな!」

 

デュースが声を上げて止まるように言う。銃口は男性の眉間を捉えており、女性が庇おうととするが、男性がそれを手で止めた

 

「……ん?お前……まさか、マクシミリアン!」

 

ダスティーが驚いた表情をしながら言った。その声に他のメンバーも驚いた

 

「まさか……敵の司令官だと」

 

銃を構えたままデュースも驚いた声をだした。帝国軍の高官であるとは聞いていたが、まさか司令官クラスの人間が来ているとは思いもしなかったのだ

 

驚いた様子を気にすることなく再びマクシミリアンは歩きだした。そのままパンサーの隣を通ろうとした時、行動にでた

 

M4を基軸に腕の関節を決めたパンサーがマクシミリアンを地面に押し倒した

 

「殿下!」

 

すぐさま女性がマクシミリアンを助けようとしたが、デュースが女性の腕の取り、一本背負いのような方法で地面に叩きつけた。地面に背中から叩きつけられ、肺の中の酸素が出されて、体が硬直している間に女性をうつ伏せにさせて腕の後ろに回した

 

「くっ……離せ!」

 

女性が暴れるが

 

「動くな、動くとこいつの頭に風穴があくぞ」

 

パンサーがグロッグ17Cの銃口をマクシミリアンの側頭部に当てていた。それを見た女性は抵抗を止めた。デュースとパンサーは2人の両手を後ろに回しハンドカフで拘束した

 

≪HQ、こちらダスティー。敵高官と副官らしき女性を拘束した、オーバー≫

 

2人を拘束したことを無線で連絡しようとしたが

 

≪ザザ…き…ザザ…じ…ガガ……≫

 

無線からノイズが酷く、何を言っているのか分からなかった

 

≪HQ、こちらダスティー。ノイズが酷くて聞こえない、オーバー≫

 

再び無線を使うが、今度はノイズしか聞こえなかった

 

「ダメだパンサー、ノイズが酷くて使い物にならない」

 

無線の状況をしらせると

 

「……直ぐにこの遺跡から出て、部隊と合流。その後直ぐに本隊と合流だ。それで構わないな」

 

パンサーは拘束し立たせたマクシミリアンを立たせて指示をだす。それにウェルキン達も頷いた

 

「妙な真似はするなよ」

 

デュースは女性の後頭部にグロッグ17Cを突きつけたまま言った。マクシミリアンはベガスが見張り、来た道を戻る。途中、螺旋の壁が全員出ると閉まったことに若干驚きつつも出口付近に近づくと

 

≪こちらマザー、誰か応答しろ!≫

 

突然無線からマザーの声が響いた

 

≪マザー、こちらパンサー。どうやら遺跡の奥では無線が使えなかったみたいだ、オーバー≫

 

パンサーが無線で応答すると、無線からマザーの溜息が聞こえた

 

≪とりあえず無事でなり寄りだ。状況を頼む≫

 

仲間が無事なのにホッとしたマザーは直ぐに状況の確認をする

 

≪遺跡にて敵高官と副官を拘束した。どうやら……≫

 

無線で連絡を取りながら出口に付いた瞬間……

 

「セルベリア」

 

アクシミリアンが女性に名前を呼んだ

 

「御意に!」

 

すぐさま返事を返し、体が蒼い炎の様なものに包まれた。それにデュースは驚き、体が一瞬硬直してしまった。直ぐにセルベリアを取り押さえようとするが

 

「はっ!」

 

掛け声と共にハンドカブが千切られ、衝撃波でデュースと同じく取り押さえようとしたダスティーが吹っ飛ばされた。そのままダスティーが持っていた槍を拾い、マクシミリアンの方へ向かう

 

パンサーが銃を構えるが衝撃波の余波で咄嗟に顔を庇い、ベガスは余波のなか銃を構えようとするが、既にセルベリアがマクシミリアンのハンドカフを引きちぎり身を確保していた。

 

起き上がったデュースとダスティーはM4を構えるも、セルベリアがマクシミリアンの身を抱き上げ、岩山へと()()()。ここから何十mもある岩山まで跳躍したのだ

 

その光景に唖然となるメンバーだが

 

≪おい!一体何があった!≫

 

無線からマザーの声が聞こえハッとなる

 

≪拘束していた捕虜が逃走した!副官の女が蒼く光りだしたら飛んでいきやがった!≫

 

ダスティーが無線で情報をつたえる、マザーはそんなバカなと言うが

 

≪直ぐにそっちと合流する、戦闘準備をしといてくれ。アウト≫

 

そう言うと無線をきる、幸い負傷者はいなく、飛ばされたウェルキンやアリシアも無事の様で、ベガスもファルディオの無事を確認した

 

メンバーは部隊への合流を急いだ

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ウェルキン達が急いで部隊へと戻る。部隊と合流した時には、まだ戦闘は始まっておらず皆が戦闘準備をしていた

 

「突然中尉の仲間から戦闘準備するよう言われたが、何があった?」

 

所々装甲のような物を付けた黒い戦闘服を着たクルトと後ろに赤と銀の珍しい髪色の女性……リエラが立っていた

 

「敵高官と副官を拘束していたが、拘束具を引き千切り逃走した。恐らく部隊と合流しこちらに攻めてくるはずだ」

 

遺跡で起こった状況を手早く説明すると、クルトは直ぐに思考をめぐらせ、無線機を使って部下に指示をだす

 

「高官は敵司令官のマクシミリアンだった。恐らく後方に大部隊がいる可能性が高い」

 

さらに得た情報を言うと、クルトは驚いた顔をした。パンサー達と同じく司令官とは思わなかったのだろう、無線で更に連絡し指示をだす

 

すると、後ろから駆動音が聞こえ振り向くとエーデルワイス号に乗ったウェルキンがハッチから顔をだしていた

 

「中尉、バーロット大尉達の本隊に連絡を入れておきました」

 

現状を本隊に連絡を終え、戦闘準備も整えた。無人偵察機があれば敵の規模が分かるのにと頭の片隅で考えたが、無い物を強請っても現状を打開できないと考えを切り捨てた

 

すると、なにやら地鳴りが辺りに響き始めた。辺りを警戒していると……岩陰から馬鹿でかい何かが出てきた。ウェルキンは直ぐに戦車の中に戻り、クルトやパンサーといった歩兵は岩陰や地面にできた溝に体を隠した

 

岩山と同等の高さを持ち、馬鹿でかい図体に全身を覆う鋼鉄、至る所に機関銃が配備され、前面には2門の砲門、その上にはさらにデカイ大砲を積んだこの超大型戦車の名はゲルビム

 

その図体に圧等されながらも、パンサーは直ぐに大声で指示をだす

 

「物陰から身を出すな!機銃座に穴あきチーズにされるぞ!」

 

その指示に続きクルトも大声で仲間に指示をだす

 

「対戦車兵は機銃座を狙え!他の兵科は機銃が全部壊れるまで身を出すな!」

 

歩兵に指示を出している間にも戦車は動き始めた

 

≪いいか、絶対に正面に出るな。このエイブラムスなら耐えれるかもしれんが、お前達の装甲では一撃で潰される。側面から機銃を狙って歩兵の援護だ!俺はラジエータを探す!≫

 

エイブラムスの戦車長がウェルキンとネームレスの戦車長であるNo.6……グスルグに指示を出していた。エーデルワイス号とブレイヴが側面に回り込んで機銃を潰す間にエイブラムスは正面に躍り出た

 

正面下部にある2門の砲は340mmのラグナイト砲であり、いくらアメリア軍のMBT(メイン・バトル・タンク)であるエイブラムスといえども耐えれるかどうか怪しい物である。だが、当たってヤバイのなら避ければいい話である。規格外と言われるエーデルワイス号よりも何倍もの出力と機動力を有し、主砲じたいも120㎜の劣化ウラン弾である

 

「撃ぇー!」

 

戦車長の号令と共に劣化ウラン弾が340mmラグナイト砲めがけて飛んでいくが、回避行動しながらの攻撃ゆえに目標からブレて前面装甲に着弾する。その威力はケルビムを揺らす威力であった

 

「被害報告!」

 

ケルビムの戦車長がこのゲルビムが受けた被害を聞くと

 

「正面下部の装甲小破!」

 

その報告に敵戦車長は唖然となる。このケルビムにダメージを負わせたのだから。豪華な椅子に座っていたマクシミリアンもこの報告には驚く、ケルビムの正面装甲は新型戦車である『ヴォルフ』の砲弾ですら弾き返すのだから

 

「正面装甲に傷を負わせるだと……」

 

マクシミリアンの頬に冷や汗が流れる。決して侮っていたわけではない、イェーガと部下からの報告を聞いていた傭兵団の戦車の凄まじさを聞いていた。だが、それはこの世界での恐ろしさであり、別の世界で何世代も先の技術で造られた戦車にはその常識が通用しなかったのだ

 

これほどの力を有していたのかと、マクシミリアンは拳を強く握りしめる

 

「他の戦車は無視して構わん、目の前の戦車の破壊を優先しろ」

 

マクシミリアン直々の指示であった。ケルビムがエイブラムスに釘付けの間に歩兵は遺跡の方へと移動しながら随伴歩兵と戦闘をしていた

 

7(セブン)!そっちに2人いった!」

 

レンジャーのアルファ分隊であるダンテが敵兵の位置を叫ぶ。それに反応してクルトが手に持った機関銃を掃射する、一人は撃ち殺したが一人は岩陰に隠れてしまった

 

「俺達が先行してあのデカ物の様子をうかがってくる。何人かついてこい」

 

マザーがそう言いラビットと共に岩山の方へと向かう

 

「アルフォンス、彼らについて行ってくれ」

 

クルトが肩に11と書かれた太った金髪に指示をだした

 

「了解した」

 

アルフォンスはそのままマザー達を追いかけた。岩山の上からマザーはケルビムの戦闘の様子を見ていた、対戦車兵と戦車のおかげで殆どの機銃座を破壊できているようだが、進行は止まらず占拠していた第1拠点が踏み潰されていた

 

「……11、本隊と無線をつなげるか?」

 

共についてきたアルフォンスが担いでいる無線機で本隊と連絡がとれないかきくと

 

「問題ない、直ぐに繋げるさ」

 

背負っていた無線機を下すと周波数を弄り……受話器をマザーに渡した

 

≪バーロット大尉、こちらマザー。聞こえますか?オーバー≫

 

≪聞こえるわ、そちらの状況を≫

 

受話器からバーロット大尉の声が聞こえると、今の状況を話し始めた

 

≪現在、敵大型戦車と交戦中。みたことのない車種から恐らく新型だと思われます。敵歩兵は少数ですが、大型戦車の進行を食い止められない状況です。オーバー≫

 

≪その大型戦車はギルランダイオ要塞の防衛線を踏み砕いた城塞攻略戦車・ゲルビム。そちらに援軍を送りたいのだけど謎の女兵士に手が付けられない状況で第1小隊とも合流ができていない。どうにかして進行方向に障害物があれば動きが止まるはずだわ。どうにか耐えて頂戴≫

 

あの大型戦車の詳細と本隊の状況に攻略方法が分かっただけでも収穫だった

 

≪了解です、なんとかしてみせます。アウト≫

 

通信を切ると、受話器をアルフォンスに手渡すと

 

「7に連絡だ、遺跡の出っ張ってる柱や破片をゲルビムの進行方向に倒して足を止めろとな」

 

マザーがそう言うとアルフォンスは笑みを浮かべて頷き、直ぐにクルトに連絡を入れる。その間にラビットとついてきたマリーナが狙撃の準備にはいる。ラビットは使い慣れたM110だが、マリーナはアメリカ軍から借りたM24を構えていた

 

下では帝国兵の数が大分少なくなり、イーディが突撃しようとしてり、それをデュースが首根っこを掴み瓦礫へと引っ張り身を隠す

 

「なにするんですの!」

 

イーディが引っ張られたことに怒ってると

 

「敵前に突撃かますなんて死にたいのか、ここから身を隠しながら撃て」

 

そう敵が隠れている所に銃を構えながらデュースが言う。その一部始終をスコープで見ていたラビットは内心ひやひやしながら見ていたが、岩の後ろに隠れている帝国兵の頭に照準を合せ、引き金を引く。銃弾は見事帝国兵の頭に命中し、事切れた人形のように倒れた

 

次の標的を探していると爆発音が聞こえた、その方をみると地面から生えるようにあった遺跡の残骸が道を塞ぐように倒れていた。そして、その方向に向かうゲルビムの姿も

 

「ふん、その程度でゲルビムを止めたつもりか。主砲用意、瓦礫ごとガリア兵を吹き飛ばせ」

 

マクシミリアンの指示で、主砲である340㎜ラグナイト砲が発射される。それは砲弾ではなく、青白いレーザーのようなものだった。瓦礫に弾着すると、その瓦礫が粉微塵に吹っ飛び辺りに衝撃波が襲った

 

「くそったれ!何て威力だ!」

 

ダスティーが悪態付きながら主砲の威力に冷や汗をながす。これがもしエイブラムスに直撃したのなら一撃で破壊されるだろうと考えていた

 

戦車兵たちも主砲の威力に悪態を吐くしかなかった、だが

 

「兄さん、あれを見てください」

 

イサラがウェルキンにゲルビムの上を見るように言った。そのまま上を見るとゲルビムが青い光を放っていた、それは他の戦車兵の他に岩山に陣取っていたマザー達も確認していた

 

「あんな所にラジエータがあったのか」

 

マザーは下にいるパンサーにラジエータの場所を伝えた。クルト達や第7小隊のメンバーがどう攻めるか考えている所、パンサーは無線機の受話器を取った

 

≪ベース、こちらパンサー。CAS要請、繰り返すCASを要求する。オーバー≫

 

パンサーが無線で繋いだのは基地にいる味方であり、CASとはClose Air Support……近接航空支援の要請だった

 

≪パンサー、こちらベース。了解、どうぞ≫

 

≪ベース、こちらパンサー。座標F(フォックトロット)ー5、目標は敵大型戦車、ロケット攻撃を希望、オーバー≫

 

≪パンサー、こちらベース。確認する、座標F(フォックトロット)ー5、目標は敵大型戦車、ロケット攻撃、オーバー≫

 

≪ベース、こちらパンサー。その通だ、攻撃後も滞空にて援護を求む、オーバー≫

 

≪パンサー、こちらベース。これより実行する、到着予定は10分後、アウト≫

 

通信を切ると、基地内が慌ただしくなる。外には既に2機のアパッチが離陸準備をしており、先程の座標と目標を伝えている。パイロットがアパッチに乗り込むとローターが回りだし辺りの木が風圧で揺れていた

 

≪ガンシップ01、離陸する≫

 

1機目のアパッチが離陸していくと、2機目もそれに続く

 

≪ガンシップ02、離陸する≫

 

2機目のアパッチが1機目のアパッチに続くように離陸し、作戦空域へと飛んで行った。飛んでから約8分、辺りには砂漠が広がり、穴の開いた岩山がみてきた

 

≪ガンシップ02、相手は相当のデカ物の様だが見えるか?≫

 

ガンシップ01が02に無線でゲルビムが目視できるか尋ねると

 

≪いいえ、まだ見えないわ。いったいどんな戦車なのかしら?≫

 

02の操縦士が辺りを見回すが、それらしき影が見当たらない。すると

 

≪ガンシップ01、こちらパンサー。まだ到着しないのか!≫

 

無線からパンサーの怒鳴り声が響く、次の瞬間無線から爆音が響いた。目の前で青い閃光が走るのが見えた

 

≪パンサー、こちらガンシップ01。青い閃光を目視で確認、すぐに目標に到着する。オーバー≫

 

≪ガンシップ01、こちらパンサー。了解した、目標を発煙筒でマークする。そいつにトップアタックを食らわしてやれ。アウト≫

 

通信が切れて数秒後に赤色の煙が見えた。すると、全長が100m以上もある戦車の上に発煙筒が見えた

 

≪こちらガンシップ01、目標を確認。攻撃を開始する≫

 

そう通信を入れた後に、発煙筒の周辺に青色に光るラジエータを3つ確認し、それめがけてロケット弾が勢い良く飛んでいく。2機のアパッチによるロケット弾の飽和攻撃により3つのラジエータは吹き飛んだ。さらにロケット弾の威力と弱点がかさなりゲルビムは完全に沈黙した

 

地上にいたクルト達ネームレスは傭兵団である独立遊撃隊(アメリカ軍)が飛行兵器を持っていると聞いていたが、あれ程の戦闘力とは夢にも思わなかったのだろう。今までなすすべもなかったゲルビムが一瞬で起動停止したのだ

 

「あれは……いったいなんなんだ」

 

クルトが喉からひねり出すようにパンサーに尋ねると

 

「ヘリだ」

 

そう短く答えた。クルト達も驚いてはいたが、ゲルビムに乗っていたマクシミリアン自身が一番驚いていた

 

「なんだ!一体なにが起こったんだ!」

 

敵戦車長が急に起動停止したかを確認していると

 

「分かりません!突然上部のラジエータが3つとも吹き飛びました!」

 

その報告にもはや唖然とするしかなかった

 

「ばかな……まさか飛行兵器だと」

 

アパッチが飛んでいる姿を見たマクシミリアンは信じられないものを見たような表情し呟いた

 

このままゲルビム内を制圧しにいこうとした……が

 

≪こちらガンシップ02、北東から増援を確認≫

 

アパッチからの通信で帝国兵の増援が報告された

 

「殿下……直ぐにお迎えにあがります」

 

増援の先頭にはセルベリアがおり、その手には螺旋状の槍と盾をもっていた。すると、セルベリアの身体か蒼い炎に包まれる

 

「総員!ガリア軍を殲滅しろ!」

 

セルベリアの号令と共に帝国兵が勢いよく突撃してくる……が

 

≪ガンシップ01、こちらパンサー。02と共に増援を叩け。ただし、武装はチェーンガンのみだ。オーバー≫

 

パンサーがアパッチによる増援殲滅を指示する

 

≪パンサー、こちらガンシップ01。了解した増援に攻撃を開始する。アウト≫

 

セルベリアと共に突撃してくる帝国兵だが、空から駆動音が聞こえ見上げた。そこには自分達に向かってくるアパッチの姿があり、一方的な虐殺が始まった

 

アパッチのチェーンガンであるM230は30mmの機関砲であり、歩兵が来ている戦闘服など紙切れ以下にしかならない。砲口から放たれる30mmの砲弾は毎分625発と脅威の連射速度であり、わずか数十人しかいない帝国兵が反撃をする余裕も悲鳴を上げる時間も無くバラバラになった

 

唯一そこから逃れたセルベリアが槍をアパッチに向ける。何かしてくると予感した01、02のパイロットは直ぐに回避行動をとる。すると、セルベリアの槍からまるでレーザーの様に青い閃光が空を切った

 

その攻撃にパイロットは驚いた。まさか人があんなものをぶっ放してくるとは思わなかったのだ。パイロット達が怯んだ隙にゲルビムに向かおうとしたが

 

「ああああああああああああ!」

 

雄叫びを上げながらセルベリアへと突っ込む一人の黒髪の少女が身の丈以上もありそうな銃の下部についている大剣を振り下ろした。それをセルベリアは槍で難なく受け止め弾き返す。弾き飛ばされた少女は空中で体勢を立て直し再び突っ込もうとしたが

 

「よせ!イムカ!」

 

後ろからクルトが少女……イムカを押さえつけた

 

「離せ!」

 

イムカがクルトの拘束から逃れようとしていた……だが、セルベリアが2人に槍を向けてレーザーを放とうとしたが、それは目の前で爆発した爆風で遮られた

 

「援護しろ!機銃は弾幕を切らすな!」

 

パンサーが指示を出しながら、セルベリアにM4下部についているグレネードランチャーを発射する。セルベリアの目の前の地面に当たり、爆発を起こす。その爆発地点へM249、M240が一斉掃射し弾幕を張る

 

その間にクルトとマザー、ブードゥーの3人で暴れるイムカを引きずって岩陰に隠した。それを見計らってアパッチ2機が爆煙に向かってチェーンガンを掃射する

 

だが、煙の中から無傷のセルベリアが一直線にゲルビムへと向かう

 

「殿下!」

 

セルベリアがゲルビム内に入ると、中の兵士が機密情報など書かれた書類を燃やしていた

 

「セルベリア、この結果を元にマーモット計画を修正せねばならぬな」

 

そう言いゲルビムから脱出していく。本隊の残存勢力と合流し帝国軍は浮足立って逃げていく

 

「逃げるな!戦列を立て直せ!」

 

マクシミリアンの逃げる時間を稼いでいるセルベリアは逃げる帝国兵に命令するも、逃げていく。そしてエーデルワイス号の主砲がセルベリアに砲撃する

 

「はっ!」

 

だが、その砲弾は槍で弾き飛ばされた

 

「せ、戦車の砲弾を弾き返されちゃったよ……」

 

アリシアがそう言うと、ウェルキンもクルト達もデュース達全員がその光景に唖然とした。今思えばグレネードの至近弾に機銃の弾幕、チェーンガンを食らって傷一つないこと自体がおかしかったのだ

 

「あれが件の傭兵か……あの戦力はマクシミリアン様を脅かす存在になる。それにガリアにも骨のある部隊がいるようだな」

 

セルベリアはそのまま踵を返すと

 

「全軍撤退!マクシミリアン様を傷つけるな!」

 

帝国軍の残党とセルベリアは撤退していった

 




3のクルトや他のメンバーの喋り方がこれでいいのか不安だな……てかイムカって17だし少女って年齢……まぁ、19歳でも少女言い張ってるキャラいるし大丈夫かw

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