いつも通りの平和な日々の最中、時刻は羊の刻くらいであろう。
博麗神社の室内をポテポテと馳け廻り、騒がしくはない私の小さな足が畳にこすられる。
「れーいーむー。私のおやつどこー?」
「おやつ……? あぁ、お煎餅? そこのちゃぶ台の上に置いてあるわよ。あんたのお茶碗の中に入ってるから」
そう言いながら、霊夢は台所で洗い物をしつつ私に目を向けずに声をかける。
「はーい! よいしょ……っと!」
擬音が鳴るとすれば、ピョコンという音が相応しいと思う。私は畳を軽く蹴りながら浮き上がり、ちゃぶ台の上にスタッと着地する。さーて、食べてやるぞー。と意気込みながら、私は笑顔をちゃぶ台の上に向けた。
ちゃぶ台の上にはティッシュの箱、霊夢がいつも使っているはたき(大幣)、そしてひっくり返され、辺りにお煎餅の欠片が散らばっているという、私のお茶碗が転がっていた。
「…………」
私は笑顔のままピタッと止まり、少し熟考する。そして出した結論は、
「霊夢! いくらなんでも私のおやつ食べないでよ!」
台所にいる霊夢を疑うことにした。
「……はい? 私があんたのを? 食べるわけないじゃないの。何の足しにもならないわ」
.
霊夢がこちらに一瞥することもなく、やや呆れたような声を私に向ける。
「だって、お茶碗がひっくり返されてるし、何よりお煎餅ないもの! 霊夢以外に誰がいるのさ!」
「ひっくり返されてるのなら、どこぞの天邪鬼がやったんじゃないの? あんたへの嫌がらせとかでね」
「こんなくだらないことに正邪が関わってたら、呆れてものが言えないよ……」
そう言いながら私は肩をすくめる。本当に霊夢は知らないみたい。じゃあ一体誰が……?
私がきょとんとしてると、居間から外の境内に出れる開いた襖の縁側に、少し大きめな鳥が私の方をジッと見つめていた。そしてその口元には、何かの食べカスと思える小さな欠片が付いていた。
「……私のお煎餅、食べたのはお前かー!」
ちゃぶ台の上で少し声を上げ、地団駄を踏む。鳥はその私の様子を見ても怯むことなく、というより何も感じることはないと言ったように私に背を向けて、軽く一声鳴いた。
「くっ……この私を前になかなか余裕だね……よーし、いいよ! 食べ物の恨みは恐ろしいんだから!」
そう言いながら私は腰に縫い付けてあった裁縫針を取り出し、その鳥に目掛けて襲いかかる。
すると鳥は、私の襲撃を見越してか、ふわっと翼を広げて飛び上がる。くぅ、なかなかやるじゃないか!
「こらー! 卑怯だー! 降りてこーい!」
縁側に立ちながら、私はその鳥に向けて針をブンブンと振り回すように腕を回す。
この時は思いつかなかったけど、後に私は思い出すんだ……
私、飛べたんだった(テヘッ☆)
鳥に夢中になっていた私だったが、背後から近づいてくるもう1人の気配に気づいた!
「針妙丸、何騒いでるのよ」
そう言いながら霊夢が洗い物を終え、台所から居間に戻ってくるみたい。
霊夢が来る、これで勝てる! 私がそう思いながら霊夢の方を向いた瞬間
私の体は浮き上がった。
「……へ?」
きょとんとしながら私の体を見てみると、そこには私の服をがっちりと掴みながら飛行する、先ほどの鳥の姿があった。
「……ななな、何してるのさー! はーなーしーてーよー!」
そんな私の言葉が届くはずもなく、私は鳥によってその場から連れ去られてしまったのであった……
はい、ということで久しぶりでしたが更新いたします!
いやー、針妙丸ちゃんって、動物が連れ去るにはちょうどいいサイズだと私は思うのですよ。うんうん
まぁそれはさておき、いかがだったでしょうか?サボり過ぎた分、これから少しずつになるでしょうがちびちびと進行中の小説と合わせ更新していくかと思いますが、よろしくお願い致します♪