Fate/after Silent Noise (フェイト/アフター サイレント・ノイズ)   作:どっこちゃん

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六章 無音残響「サイレント・ノイズ」-4

 

 私はそれまでの住まいを引き払い、鞘に同行する事を望んだ。しかしそれを口頭で告げるより先に、鞘は有無を言わさず私の手をとって走り始めていた。

 

 それからは一事が万事、その調子だった。それでも私はそれを迷惑だと感じることはなかった。

 

 それからというもの、世界中を駆け巡るようにしてわたしたちは諸国を渡り歩いた。

 

 そのための資金を得るために、各国の曰く付きの遺跡などの発掘や探索をしながらの旅だった。

 

 それまでの生活とは比べにならない騒がしい毎日。だが鞘と共にいるだけで私は一人だったときのように暗鬱な思索に落ち込まなくて済んだ。

 

 暫くすると二人組みのトレジャーハンターとしてある程度名が知られるようになった。そのため舞い込んでくる仕事も大きいものになり、たびたび魔術師や無法者、他のトレジャーハンターたちと小競り合いをするようなこともあった。

 

 私たちはその度に協力して困難を乗り越えた。不思議だった。鞘が大丈夫だといえば、本当にそうなのではないかと思えてしまうのだ。

 

 実際、私は自分でも信じられない力を発揮して危機から生還することも少なくなくなかった。そしてひとりでいたことに比べ、露ほどの不安も抱くことはなかった。

 

 あるとき、私はそれまで己の内にのみ抱えてきた疑問を鞘に打ち明けた。人の生における意味の欠乏にあえぎ続けてきた半生を、告白した。

 

 彼女が、鞘がそれに答えをくれるような気がしたのだ。

 

 そんな私に鞘は暫し眉間に皺を寄せ、黙り込んだ後でこんな事を言い出した。

 

「『――総ての欠乏を訴える不満は、現に与えられているものへ感謝する心の欠乏から生じるものである――』Byデフォー」

 

「……」

 

「『ロビンソン・クルーソー』だよ? 知らない?」

 

 知らない訳ではない。確か、子供のころ書庫で見つけて呼んだ覚えがある。しかし、

 

「これでも、生まれは英国だ。だが、その言葉は知らない。憶えていない……」

 

 俯く私の視線を強引に己へ向けさせ、サヤは言う。

 

「つまりはさ、事の総ては自分がどう感じるかってことが大事なわけですよ。だから」

 

 私は聾啞のように無言で彼女の目を見つめていた。私の視線はまるで母の返答を待ちきれぬ童の如く、虚空を掻くようにしてじっと言葉を待った。

 

「何かが足りないって言う前にさ、自分にはどれほどのものがあるのか、どれほどのものが足りているのかを見てみればいいんだよ」

 

 何かを乞うかのような私の視線を、鷹揚に受け止めて、サヤはゆっくりと、しかし彼女らしい揺らぎのない声で、私の迷いを断ち切るように流麗な刃を歌う。

 

「そうして、一旦引いてみるとさ、結構充分だったりするんだ。これが」

 

 その言葉だけで、私は己の不安定な内面の基部が何かに包みこまれたかのような安心感を得ていた。

 

 しばらく呆然と言葉を反芻した後で、私は言った。

 

「……今は、何かが不満だとは思っていない。もう、充分だ」

 

「へぇ、ほんとに? じゃあ、なにが充分?」

 

「充分だ……」

 

 そう言って私は鞘を抱きしめた。鞘はむずがる子供のように、くすぐるように私の腕になかで笑っていた。

 

 私は心から、鞘を離したくないと思った。心の底から、こんなにも人を想ったことはなかった。

 

 

 

 鞘のことを話そう。

 

 生国は日本。家はその北方の南にあるらしい。本人曰く中途半端な場所だそうだ。昔の事をあまり話したがらないので多くのことを聞いてはいないのだが、彼女の曰く所によれば、そこは何もない街なのだそうだ。

 

 所謂役人の街だそうで、娯楽も少なく、見て回るような場所もない。長く住むには適さない場所で、皆大人になったらそれぞれに別の場所を目指すから、老人ばかりがいるところなのだ、と。

 

 彼女はあまり故郷というものを好いてはいなかった。

 

 こんな私でも、あのような別離によって別たれたはずの故郷を、あの山並みや森の空気を夢に見ることがあった。たとえそこでの人との繋がりを忌避しようとも、場所とのつながりというのもは誰しもの根幹に深く浸透しているのが人の常というものだ。

 

 しかし彼女の場合はそうではないようであった。

 

 あるとき、私がなぜ世界でも有数の安楽な故郷を捨ててこんなところまできたのかと問いかけたことがあった。彼女の素性について、誰であろうとまず真っ先に気にかかるのは其処なのではないだろうか。すると、彼女は私に言った。

 

「そうねー、私、故郷を離れて結構になるんだけどさ、ホームシックって掛かったことないんだよねー。きっと、私ってどっかおかしいんだろうね。むしろ、何かずっと同じところにいると飽きちゃうっていうか。うんそう、私って結構飽きっぽい?」

 

 そう単純な話ではないだろう、と私は思った。彼女は故郷への愛着がひときわ希薄なようであった。彼女はたとえ家族であろうとも、誰かが自分の側に居ることに違和感を感じていたのだという。ゆえに、通学先や勤め先が変わる度にそれまで有った他人との繋がりを断ち切って来たのだと。

 

 悪意からではない。彼女は人見知りをしないし、誰からも好かれ、彼女自身も隣人を愛する心を持っていた。

 

 ただ彼女にとって、誰かと繋がっていること自体が、ひどく違和感を伴うことだったのだ。だから常にひとりだった。

 

 ひとりでいることが自然であり、誰かと共に居ることがひどく不自然なことだったのだと。

 

 彼女は万人のうちに杞憂な、完全にひとりでも生きていける人間だったのだ。私とは真逆の、真理をその心に秘める人間だった。

 

 だから、私は彼女に惹かれたのだ。私は長い間。一人であることに、その欠乏に喘ぎ続けてきた人間だったから。

 

 あるとき、私は尋ねた。「ならば、なぜ自分とは共にいるのか」と。

 

 それに、彼女は子供のようにはにかみながら応えるのだ。

 

「何でだと思う?」

 

 ――と、

 

「私はねー、人と一緒にいるのが嫌なんじゃないの。同じ所に留まりたくないだけ。だから……私についてきてくれない人とは、一緒に居られない。私は別にそれを辛いとは思わないけど。……けど、さ。もしもついてきてくれて、一緒に居てくれる人が居るならそれを嫌がったりはしないんだ。――ま、そんな奴は今までにひとりしかいないけどね」

 

 そう言って、

 

「それにさ、あたし結構マニアみたいだからさ。普通の男じゃ多分うまくいかないと思う」

 

 シシシ、とはにかんで、また子供のように笑うのだ。

 

 

 

 そのような生活が何年か続いた後のことだ。それは、そう。もう十七、八年ほど前になる。私たちは仕事として、ある魔術師が残したと思われる遺跡の調査を行っていた。場所は北欧のとある秘された洞穴だった。

 

 以前の仕事で知り合った知人から紹介された仕事だった。何でも普通の人間の手には負えない仕事だとのことだ。

 

 その遺跡で妙なものを見つけた。十六世紀ごろのものと思われるそれは、幾重にも掛けられた魔術的なロックとプロテクトのために、ただの発掘家の手には負えず、私たちにまわってきた依頼だった。

 

 魔術による封印(プロテクト)が何重にも施されたそれを、私たちは取り出した。――取り出してしまった。

 

 それは一枚の黄金の輝器だった。この遺跡そのものはせいぜいが数百年ほどしか経過していないものだったが、この魔器自体は比較にならないほどの年月が経過している。にもかかわらず、それはまったく劣化することもなくいまたった今磨き上げられたかのように艶めかしく輝いているのだ。

 

 それはどうやらいくつかのパーツに分断された北欧の剣の一部のようだった。並みの呪物でないのはすぐわかった。もはやただの器物から格上げされ、一個の概念と化したそれは、もはや時間の制約さえそれを劣化させるには至らないようであった。

 

 さらに調べてみると、周囲に一定の範囲で六つの同じような遺跡が点在していることがわかった。私たちは更なる調査を依頼された。

 

 そこいらの遺跡の調査とは難易度も労力も危険も比べ物にならない規模の仕事だったが、それに見合うだけの桁違いの報酬の事もあり私たちはその仕事を引き受けることにした。

 

 そうするに足る理由が、そのときの私たちにはあった。

 

 共に行動するようになってからも、鞘は殆ど私の名を呼ぼうとはしなかった。生来努めてひとりで生きてきた彼女には、それゆえにそのような習慣がなかったのだという。実際名を呼ぶ相手は私一人しかいなかったのだから、()()()()はそれでこと足りていた。しかしそれも改めねば成らないときが来たのだった。

 

 私たちの間に子供が生まれた。鞘譲りの黒髪と、私と同じ色のオッドアイの瞳を持った女の子だった。

 

 鞘は、この子ほすごく綺麗になるといって喜んだ。無論私もだ。むしろ、私こそが己の総てを引き換えにしても飽き足らないほどの愛情を感じていた。娘を抱く鞘の美しさに私は魔道の奥義をもってしても説明できない暖かな光を見ていたのだ。

 

 蜜月の時――そうとしか言い表しようのない時間が流れた。

 

 娘の名はテフェリー。私ではなく、鞘が決めた。名の由来は別段何の意味もなく、唯直感で決めたのだという。冗談ではなく、彼女はもともとそういう行動方針を持っていたようで、重要な局面でこそ己が直感を頼りにするのである。

 

 実際、共に生活する間、困惑することも多かったのだが、それでも名前に関する限り何よりも大きな理由あった。彼女は私にもあまり自分の名を呼ばないようにと言っていた。

 

 彼女は自分の名が嫌いだったのだ。

 

 鞘。サヤ。Saya。――前史において世界で最も美しい刀剣を作り上げた国、彼女の生国にあってはその刃を納めるための物の名を与えられた彼女。私は美しい響きの名だと思っていたが、彼女にとって、それは呪縛のようなものだったという。

 

 まるでその名に縛られるかのように生きることを、彼女の父は望んだのだという。

 

 男という刃物を受け入れ、その受け皿として生きる慎ましかな女性になるようにと、彼女の両親は名づけたのだという。

 

 彼女はその命名に、己を縛りつけようとする悪辣なエゴという名の愛情を見透かしていたのだ。ナンセンスな話だと私も思った。一枚の流麗な刃のような彼女に、それを収める物の名をつけたのはなんという皮肉かと思えた。

 

 そのせいもあって、彼女は我が子の名に生き方を束縛するような意味を込めたくなかったのだろう。

 

 私も彼女のその意を尊重した。何よりも私もその名が良い名だと思った。鞘が深い愛情を込めて付けた名だ。なら、その名には言葉にする必要のない意味が充分に込められているのだと、私にも思えたのだ。

 

 真面目一徹とでも言おうか、物事を倫理的に考える性分の私と破天荒で直感的な鞘との生活は衝突も多かったが、しかしそれゆえにかみ合う部分も多く、私たちは急激に離れ難い存在になっていった。

 

 少なくとも、私は鞘を失うことを想像もしていなかった。

 

 交代で赤子を腕に抱きながら、私たちは世界の善性の只中に包まれていた。――思えば、このころの記憶だけが、私のおぼろげに擦れてしまった記憶の中でも、ひどく鮮明に輝いているのだった。

 

 もう望むべくもない、金糸の揺籃に抱かれた日々、思い出すたびに臓腑を抉られるに等しい痛みを伴うというのに、それを――――忘れたいと思ったことは、一度もない。

 

 

 大規模な発掘作業はさすがにいつものような二人での作業というわけには行かず、わたしたちは依頼主に要請して十数人程度のチームを組んでいた。

 

 作業そのものは順調だった。封印魔術の解呪自体は手間こそ掛かるが難解というわけではない。もとより年月によってほころびをきたしていた箇所も多く、予想していたよりは簡単に紐解くことができた。

 

 私がその作業に掛かりっきりになっている間も、サヤはテフェリーの世話をしながら、チームの指揮を執り、率先して活動していた。

 

 そのエネルギッシュさはいつもの通りで、私は特に気にかけることもなく作業に没頭していた。総ての行為が、何のことはない挙動の総てに言い知れぬ充実感がそなわっていた。その報酬のために危険な仕事を受けたもの、愛する娘と妻のためを思ってのことだった。

 

 だが、その総てが反転する時がやってくる。総てが邪悪と絶望に染め上げられる予兆が現れ始める。

 

 最初の兆候は何のこともないものだった。

 

 あるとき、最初に見つけた黄金の柄を手に取った鞘はぼんやりとそれを見つめていた。

 

「どうかしたのか? 」

 

「や、なんでもない……」

 

 そのときの、心ここに在らず、といった様子の鞘を私は訝ることもしなかった。それを、今の今まで後悔し続けることになるとはそのときは考えもしなかった。

 

 普段はいつも通りだったが、たまにぼんやりとする機会が増え、それが次第に長くなっていった。最後には発掘に勤しんでいる以外の時間はそうしているようになった。

 

 それから、鞘の精神は徐々に変質していった。病んだ様に残りの欠片の発掘に取り掛かる様を見て、私はただ苦悩することしかできなかった。

 

 明らかに精神を病みながら、鞘は遺跡の探索を止めようとはしなかった。そして発掘の傍らで、まるでその剣に魅入られたように研究していた。

 

「……どうしたら、この宝具を再生できるのかしら? ……」

 

「……唯の人間を■■にしても駄目なのよ……」

 

 そんな台詞をぶつぶつと口走るようになった。こちらから何を言ってもまるで取り合おうとしない。

 

 あれほど可愛がっていたテフェリーの世話をすることもなくなり、ほったらかしにして、私と口論することも多くなった。

 

 私は発掘よりもテフェリーとサヤの世話に追われるようになった。何故サヤがそのようになってしまったのかはわからなかったが、しかし私はそれについて何ら絶望は感じていなかった。

 

 理由がどうであれ、鞘が自分で決断したと言うなら、私がそれを支える番なのだと思った。サヤが私の内容を満たして救ってくれたように、今後は私がそれに報いる番なのだと思った。

 

 眠ろうともしなくなったサヤを無理にベットに押し込み、押さえつけるようにして眠った。最初は暴れもしたが次第にむずがりながらもおとなしく眠るようになった。テフェリーと三人で抱き合うようにして眠った。

 

 しかしそれも一時的なことで、サヤの精神状態はますます悪化していった。発掘現場から引き離すと自傷行為に及ぶことさえあった。したかなく、私はサヤと共に発掘現場で眠るようになった。

 

 

 

 徐々に、サヤの行為はエスカレートしていき、私は彼女から逐一眼を話すことが出来なくなった。

 

 突発的になにをするのかわからないので、彼女が起きている間は私も眠ることが出来なかった。

 

 そして、そのとき満足に寝ていなかった私は不意に意識を失ってしまった。

 

 この一瞬の入眠を、私は永らく後悔することになる。

 

 その間に、鞘は姿を消した。鞘は永遠に私の前からいなくなってしまった。

 

 

 それから二年の間、私はテフェリーを抱えながら、プロジェクトを進めるしかなかった。すぐにでもサヤを探しに行きたかった。事実幾度となく、寝る間を惜しんでは彼女の捜索にも勤しんだ。私は幼いテフェリーをつれて鞘の行方を求めて駆けずり回った。

 

 その間、私は物心ついたばかりのテフェリーを知人に預けておくしかなかった。鞘の捜索と発掘作業の合間には我が子を省みている時間が充分にあったとはいえなかった。

 

 

 

 そして――その日。ちょうど最後の遺跡の発掘作業を終えた直後のことだった。不意に一人にしてしまったテフェリーのことが気にかかり、私は作業を一時中断して娘の元に駆けつけた。

 

 久しぶりに見た愛娘はいつの間にかずいぶん成長していて、私はその成長を身近で見つめていられなかった事を悔やんだ。日に日に大きくなる我が子を見守ることもできぬ己が情けなくて仕方がなかった。

 

 そして心配そうに見上げてくる二色の瞳を抱きしめ、私は大丈夫だと、ただ繰り返した。なにが大丈夫なのかも解からぬまま、ただ、繰り返した。

 

 

 再び発掘現場に赴いて見ると何かが変わっていた。

 

 何か異様な空気が流れていた。私は用心しながらそこに足を踏み入れた。灯りが無く、チームの作業員たちの息遣いも聞こえない。

 

 私は見た。暗がりには血の海が広がっていた。作業員たちは見る影もなく惨殺され、その中心には独りの黒い女が立っていた。

 

 鞘、鞘だ。不謹慎にも、私の視界は足許に転がる亡骸を忘却し、実際に捉えることのできた鞘の生き姿に涙さえ流していた。

 

 私は自分でも何事かわからぬ言葉を投げかけていた。

 

 しかし反ってきたのは見慣れた鞘のはにかみではなく、看たこともない妖艶な冷笑だった。

 

「……ずっと探していたのだ。我が器に相応しい依童をな。この身体もそうだが並の人間では駄目だ。ろくな力が発現しない。……やはり唯の人間ではだめなのだ。そうだな、例えば一流の魔道の血脈。とかな……」

 

 息を呑む私の前で、サヤは独り言のように語る。しかし、それはとても本当にあの鞘なのだとは思えない。

 

「何を言ってるんだ。さあ、もう帰ろう。テフェリーも待ってる。いつまでもあの子を待たせてはだめだ……」

 

 その言葉に鞘の体がビクリ、と震え、虚ろに弛緩した表情から声が漏れる。

 

「テ、フェ、リー……」

 

「そうだ、あの子もずっと待ってるんだ。だから……」

 

 しかしそこでまた身体を奇怪に振るわせた鞘は、折れ曲がる程に仰臥して暗い天上を見つめ、すぐに姿勢を正して私を見た。

 

 そこに、おぞましいほど淫靡な笑貌が張り付いてた。

 

 鞘は不意に、操り糸に吊られるギニョール人形のような手つきで手にしていたオートマチック拳銃を構えた。迷わぬ発砲。唖然とするより他なかった私の手足が次々に打ち抜かれていく。絶叫する。痛みよりも恐怖から、私は逃げ出した。戦うことなどできない。鞘と、戦えるわけがない。しかし有無を言わさずに彼女は私に襲い掛かる。

 

 わけが、――解からなかった。

 

 血溜まりを蹴散らして走った。外に出る。私はそこで始めて己の窮地を悟った。周囲はすでに暗い夜によって包まれており、しかも周囲には助けを呼べるような集落のようなものはない。

 

 あるのは深い森とそれを冷たく彩る雪ばかりだった。

 

 銃弾が追ってくる。私は密生する針葉樹の合間に身を捻じ込んだ。最愛の相手から向けられる殺意。体験したことの無い、想像したことさえ無い恐怖に、私は心底から怖気づいていた。

 

 ただの危機ならば、ただの敵ならば、この程度の状況などいくらでも体験している。しかし今度は反撃することができないのだ。どうすればいい? 何の解決策もないまま私は雪を掻き分けて逃げ続けていた。

 

 必死に口をつぐんでいた。悲鳴を上げても周囲の雪に吸われてしまう。そもそも声の届くような範囲に人などいるはずもない。何より悲鳴はこちらの位置を知らせるだけだ。だがどうしようもない絶望と打ち抜かれた足からの出血が、私の心から意志の抑止力を奪い去っていくようであった。

 

 意図せぬままに口腔の隙間から呻くような音が漏れようとする。噤むだけでは足りない。有らん限りの力で歯を食いしばった。そして走った。

 

 後ろの方で発砲音が響いてきた。「彼女」も森に入ったらしい。発砲は当てずっぽうだ。当たる筈もない。それに銃弾もそれほどあるわけではないだろう。案の定、しばらくするとその発砲音も聞こえなくなった。

 

 しかし、それで何かが好転する訳ではない。どうする――何を? どうする――私が? どうする――彼女を? どうする、どうするどうするどうする――。思考はもはや機能していなかった。脳髄そのものが委縮してしまったかのように、何の考えも浮かばない。思索はなんの答えももたらさない。

 

 出血と寒さで感覚の無かった足はいつも間にか止まっていた。動かぬ足にいらだった私が僅かに屈むと、それまで私の頭があった場所の近くの幹に、何かが凄まじい勢いで激突し突き刺さった。作業場にあったシャベルだった。

 

 銃弾がないからと安易に予測して油断したのは愚劣の極みだった。それからは次々と、まるで本物の銃弾と遜色の無い速度で作業場にあった発掘道具が唸りを上げるのだ。

 

 動かぬ足のことなど忘れて、私はさらに走った。逃げるべきだ。とにかく、ここで戦うことはできない。逃げるしか方法はない。だが、このまま当てども無く森の中を彷徨うことは出来ない。どうにかして外部の人間に助けを求めなければならないだろう。

 

 私は森の中を大きく迂回して、ここまでくるのに使ったジープのもとに辿り着いた。

 

 このジープには無線が付いていた。私は急いで何処かと連絡を取ろうとしたが、なかなか通じない。いつも以上に騒々しいノイズばかりが聞こえてくる。急いた気持ちを抑えながら暫く呼びかけると、ようやく誰かの声が聞こえてきた。

 

「誰か聞いてくれ、――」

 

『ああ、聞いているとも。鬼ごっこは終わりかな? セルゲイ』

 

 そこから聞こえてきたのは「彼女」の声だった。声は確かに彼女の物だったが、やはりソレは彼女の言葉ではなかった。あまりにも不条理な事態が私の反応を奪った。

 

 次の瞬間には私はジープの上から弾き飛ばされていた。もんどりうった私の頭を鞘の足が強引に押さえ込んだ。

 

「つまらない能力だが、まあ使い道はあるものだな」

 

 言いながら鞘は――いや、()()は私を踏みつけにしたまま、今度は肩口にツルハシの鋭先部を打ち込み、私を串刺しにした。形容しがたい苦痛とおぞましい異物感に叫び悶える私を見下ろし、ソレは鞘がやるのとまったく同じ所作で「ふぅ」と息を吐いた。

 

 それでも、殺されそうになりながらも私は問うた。痛みよりも疑問のほうが深刻だったのだ。

 

「おまえは、誰だ。――いや、なんなんだ、貴様はッ!」

 

 鈴鳴りのような喜悦に乗せて、ソレは最悪の呪詛を吐き散らした。

 

「わが名は兇器特権(テュルフィング) ! 神代よりの、魔剣の祖に他ならぬ! 礼を言うぞセルゲイ・ワーロック!」

 

 おそらくは十六世紀前後、神話の時代から数多くの人間に取り付きながら生きながらえていたこのインテリジェンス・ソードはさる魔術師たちの手によって分割、封印されていたのだろう。

 

 それがこの地の遺跡だったのだ。私達は知らずの内にそれを開放してしまっていたというのか! しかしそのときの私にはそんなことは慮外の事柄に過ぎなかった。私はそれを傍観することしか出来なかった。何ひとつ受け止められるものが無かった。

 

「しかし、この身体では駄目だった。二つ以上の欠片を取り込むことさえままならない」

 

 その手には今までに発掘した――おそらくは刀身の破片であろうと思われた――欠片のようなものが在った。すると、それは我が意を得たかのように、不意にまるで小さなナイフか何かのように変容した。それは異様な魔力を放っていた。まるで仮死状態だったエンジンが息を吹き返したかのように、それは奇怪な鼓動を伴って鳴いていた。

 

「……聞いていたか? つまり、新しい依童が必要だ。出来れば強い魔道の血筋がいい。……例えば、お前ではどうかな? セルゲイ」

 

 私は応えなかった。なんの声も出すことは出来なかった。

 

「鞘、……は何処にいる?」

 

 奴の口角がまるではじける寸前の弓の如く歪んだ。道化の笑みのようだった。

 

「もういない。何処にもいない。お前の愛する女はもう死んだのだ。私の苗床として、消滅した。もう二度と再生することもない」

 

 それを聞きながら、私は自分の身体の中で乱気流の如く荒れ狂っていた鼓動が急速に制動していくのを感じた。恐怖が去り、途方もない怒りが湧き起こる。

 

 それが逆に、私へ軍神への讃美歌の如き音楽をもたらした。未知の恐怖に委縮し用を成していなかった心臓が規則正しく脈動し始める。

 

 戦いの旋律が私を包み込んだ。そうか、そういうことか。あれはもう鞘ではないないというのか。鞘は、もう居ないのか。

 

 ああ、ごめんよ。サヤ。苦しんでいたのを気付いてやれなくて。

 

 足を払いのけ。私は突き刺さったツルハシも意に介さず立ち上がった。

 

 ――だから。だから、いま、終わらせてあげるから。君をその寄生虫から解放してあげるから。君を自由にするから。だって、君はいつも自由でいなければ。そうでなければもう、それは君ではないのだから――。

 

 怒りと、そして彼女を己の手で止めなければならないという決意が私の全身から溢れた。もはや逃走という選択は無かった。

 

「おや、こわい、こわい。しかし考えてもみろ。精神的にはバラバラになってしまったわけだが、このとおり身体はちゃんと生きているのだぞ? お前はそれを――」

 

 起き上がる私から距離を取っていたソレは、嘲笑う様に揶揄する言葉を投げかけて来る。どうやら、既に私から戦闘力を奪ったつもりでいるらしい。

 

 だが、私の行動はヤツの言葉より早かった。私は背中のツルハシを無造作に引き抜くと、小石でも放るかのようにのように投擲していた。

 

「――――ッ!」

 

 ヤツが仰け反った。ツルハシはヤツを掠めて背後に会ったトラックのフレームを突き破って大穴を穿った。もはや、私に躊躇はなかった。

 

「これは――拙いな。この素体では勝負にならないやもしれぬ」

 

 そう言って、奴の笑みがねじれた。

 

 ――笑うな! 無手になった私は前進して拳打を見舞う。その顔で笑うな。手足の負傷など気にすることなく。ありったけの魔力によって賦活強化された私の五体は、頑強な車体フレームを、自然石の石壁を、魔術による対物結界をも砂糖菓子の如く粉砕した。

 

 逃げるのはヤツの番だった。しかし足を縺れさせて転げまわったヤツは、それでも歪んだ笑みを絶やさない。笑うな。笑うな、笑うな――ッ!

 

 闇雲に振り回された私の拳は遂にヤツを捉えようとして、――しかし矢庭に静止した。

 

 最後の瞬間、私は躊躇した。

 

 私は思考の上では()()を受け入れていたかもしれない。それでも私の心は()()を許してなどいなかった。そのときの私は、まだ人間だった。私にはサヤを殺すことができなかったのだ。

 

 薄汚く乾いた、粘りつくような笑いが彼女の顔に張り付いていた。大粒の瞳からは黄色く澱んだ光が溢れ、私を見つめていた。

 

 本当に、それはもう、鞘の貌ではなくなっていた。私は全身から力を抜いた。 

 

 そしてヤツが手にしていた、ヤツ自身でもある刃が私の腹部を深々と貫いていた。喉の奥から血が溢れ、私の胸や腹を真赤に染めた。

 

「本当に、お前は愚かなのだなセルゲイ」

 

 手ごたえから、今度こそ致命傷だと確信したのだろう。脈打つようなそれで私のはらわたをかき混ぜながら、ヤツは鞘の舌で私の唇の血を舐めあげる。

 

 ――だが刃のことなどどうでもよかった。己の生き死にのことなどどうでもよかった。重要なのは、これはもう鞘ではないという事。そして、それは二度と躊躇する必要が無いという事。冷たい安堵と絶望とが、私を貫いていた。

 

 私はヤツの刃を自分から迎え入れた。そして手首ごと掴まえ、残った拳を振り上げる。もはや、自分の命など勘定に入っていなかった。

 

 彼女が驚いた時にする、子供のように目を丸くした表情(かお)。見慣れたそれがきょとんとして見上げて来る。今度はためらわなかった。私の拳が彼女の頭蓋を捉える。生涯忘れられない感触が私の手を襲った。

 

 まるで血袋のようになって吹っ飛んだソレは血の筋を引いて深雪の足場を汚した。私達の血がまるでアートのように点々とキャンバスを彩っているようだった。

 

 感慨など湧かなかった。そんな余裕は無かった。私は嗚咽に咽び泣くのを止めようとしなかった。哭きながら殴った。彼女を殴りたくなかった。彼女を殺したくなかった。彼女を砕きたくなかった。彼女を引き裂きたくなかった。彼女に元に戻ってほしかった。彼女を抱きしめたかった。彼女に触れたかった。彼女に笑ってほしかった。

 

 どのぐらい打ったのだろう。不意に忘れていた呼吸が再会されて、私は深海から生還したかのように喘いで肺の中の邪魔な血を吐き散らした。

 

 その一瞬の隙を突いて、襤褸切れのように伏せていたはずのソレがまるで軟体動物の如く跳ね起き、近くの車の中へ滑り込んだ。瞬きも許さぬほどの動きだった。

 

 まだ息があったのか。――いや、そうではない。迂闊だった。あれはそもそも生きてなどいないのだ。殺すのではなく、(こわ)さねばならない!

 

 雪跡に血の五線譜を描きながら、私は無線機の付いていた資材運搬用のトラックに乗り込んだ。そして奴の後を追った。

 

 ここで逃すつもりは無かった。腹部に突き刺さった刃の欠片は先ほどよりもさらに奥にめり込んでいたが、気にも留めなかった。どうせ抜いて処置している暇はない。

 

 ならば最後までこれでいい。私は両足でアクセルを踏み込んだ。足どころか全身の感覚がそもそも曖昧になっていたからだ。

 

 さすがに血を流しすぎていた。私はもう自分が助からないだろうということはわかっていた。腹をやられた時点で致命傷だったのだ。だからこそ良かった。だからこそ私の覚悟は決まった。もとより彼女を殺めたま生きていくつもりなどなかった。

 

 私は最大限までアクセルを踏みこんだ。新雪の積もった、ろくに整備もされていない山道を鉄砲水の如く車体を荒ぶらせながら、それでも斟酌などしなかった。後はヤツを巻き込んで総てを終わらすつもりだった。

 

 私は加速を望んだ。もっとだ。もっと、もっと速く――。

 

 特攻の様相を呈した私の暴走車両はとうとう敵の駆る車を捉えた。二つの車両は玉突きをする形で曲がらなければならないはずのカーブを直進し、最後には総てを巻き込んで崖下の原生林に諸共に落下した。――

 

 

 

 次に眼を覚ました時、私はまだ生きていた。転倒したトラックから投げ出され、そのまま雪崩と共に山裾まで運ばれたのだ。

 

 なぜ、生きている? 当然唯の人間なら数十回は死ねただろう。実際魔術師の血を引く私であっても、通常では有り得ないことだった。

 

 おかしい、何故自分は助かったというのだろうか? ふと見てみれば、腹部に深々と突き刺さっていた筈のあの刃の破片のような輝器が私の体と一体化しているではないか。

 

 先ほどのように突き刺さっているわけではない。まるで溶け込むように融合しているのだ。そっと触れて見ると、それはすぐに私の体の奥深くに沈みこんで行き、完全に消えてしまった。

 

 するとそれまで流れていた血が止まり、体中にあったはずの軽傷が次々と消えていった。そうか、これがこの魔具の力か!

 

 体の疲労も感じなくなっていた私は、様々な疑問やそれらへの解答などに対しての思索を保留し、すぐに帰途についた。本来なら助けを待つべきだったのかもしれないが、すでにあたりは深まった夜の闇に包まれ、音を食らう雪のせいで生み出された、恐ろしいほどの静寂が私の心の不安を掻きたてていたのだ。

 

 鞘が失われたことが、鞘をこの手で殺したのだという事実が、執拗に私を打ちのめそうとしていた。

 

 しかし私は膝を折りはしなかった。思い出したのだ。テフェリーだ。私にはテフェリーがいた。さっきまで死んでも構わないといっていた自分の無責任さに吐き気がするぼどの憤怒を感じた。

 

 鞘がいなくなり、私まで死んだら、あの子はどうなってしまうのか。そうだ。私には生きる理由が、死ねない責務があったではないか。

 

 あの子がいる限り、私に泣き崩れている暇はない。私は足を動かし続けた。何よりもあの子に会いたかった。そう、私はあの子のぬくもりに縋ろうとして必死だったのだ。

 

 もう、私が拠り所とすることができるぬくもりは、この世にたったひとつしかないのだから。

 

 そうしてようやくテフェリーの元に、知人の宅の着いたとき、私にはどれほどの時間が経っていたのかが解からなかった。

 

 唯必死に足を動かして、気がつけばいつの間にかここまでたどり着いていた。森を越えて山道を抜けてきたにもかかわらず、未だ夜の闇は深く東の空ですらが白んではいなかった。

 

 これは私が魔剣の欠片と融合して得た異能『加速』に依る効果だったのだが、そのときの私にはそれについて思考することは叶わなかった。私が己の異能を自覚するのは暫く後のことになる。

 

 なぜなら、私がこれより見舞われる狂気から正気を取り戻すまで、今しばらくの時間を要するからだ。

 

 テフェリーを預けてある知人の元へたどり着いた私は、――そこでふいに異質な不安と変事を予期した。私は足を縺れさせながら一気に室内に駆け込んだ。

 

 なんということだろうか、そのときの私の絶望をどうやって言い表せばいいというのだろうか、私の持てるいかなる言葉を持ってしても、このときの私の心を言い表すことができない。

 

 テフェリーは浚われたのだ。近くには惨殺された知人の遺体が転がっていた。やったのはヤツだ! 

 

 ヤツはまだ生きていたのだ。死ぬはずだった私を生かしているこの魔具の再生力。それが砕いたはずの鞘の身体を復元してしまったのだ! ヤツがテフェリーを連れ去ったのだ!

 

 絶望が私という存在そのものを蹂躙した。私は私の想像力を打ち消すために頭を、身体を、まるでピンボールのように壁という壁に叩き付けた。

 

 母の姿を借りた魔物に、優しい声で語るその声に安堵した娘に、その心に、あのバケモノは、いったいなにをするつもりなのだ!?

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 考えるな。

 

 考えるな。

 

 かんがえるな。

 

 カンガエルナ!

 

 カ・ン・ガ・エ・ル・ナ――――――――。

 

 焼ける! 切れる! 消える! 思考が焼ききれる!! 血の色の霞が視界と思考を覆い始めた。それは福音だ。出来ることなら、今は今だけはこの恐怖と怒りを忘れさせて欲しかった。今はただ()(むせ)びたかったのだ。

 

 

 それ以来、私は廃人のようにして多くの時間を過ごさなければならなかった。

 

 深夜、ふいに眼を覚まし鞘の姿を探す。テフェリーの姿を探す。ろくに寝ることができないのでいつから寝ていたのかわからない。

 

 あれは大事なものだ。失くしてはいけない。探さなくてはいけない。探さなくてはいけない。実際にはほんの数分しか寝ていないのではないかと思われた。まったくといっていいほど意識が混濁している。

 

 私という存在に圧倒的に鞘という成分が不足していた。私はもう私ではなく、私でない私は独りで立つこともできなかった。

 

 意識を失い、覚醒を繰り返し、それを続けるうちに、私の前にいつもどおりの彼女が戻ってきてくれた。歓喜しながら、私は眼が覚めないことを望んだが、逆に私の意識は覚醒と酩酊を幾度となく繰り返した。

 

 夢ではなく幻覚だった。知っている。それでも同じだった。ただ、鞘に会いたかった。事実を受け入れられなかった。

 

 部屋の中の壁がひどく汚れた。壁中に鞘の名前や彼女とのやり取り、彼女の記憶の断片を書き殴るからだ。スペースがなくなったらその上から書くからだ。白かった壁は真っ黒な斑になった。

 

 おそらくは半年ほど、だったと思う。そんな、もはや生きているとも呼べぬ状態であった。正確な期間は今になってもわからない。苦痛から逃れようとするあまり、神にさえ祈ろうと、それまで置物でしかなかった聖書を手にとったことさえあった。

 

 だがいくら聖書の中の聖言を口ずさもうとも、私の心に福音が訪れることはなかった。それはそうだ。私は崩れ落ちるようにして吶喊しながら、納得した。

 

 なぜなら私の血そのものが、私の中に流れる魔道の支脈が、私の意志とは関係なく既に神に背を向けているのだから。

 

 私はまた、この身に流れる魔の血流を忌避し、憎悪せねばならぬというのだろうか。――いや、そうではない。

 

 今私が成すべきことはそんなものではないのだ。今、私が成さねばならないこと、それは追う事だ。

 

 彼女たちを、永遠の責め苦から開放するために――。

 

 悲しみと絶望を吐き出したことで――、いや吐き出したのではない。無限に湧いてくるそれに、私は対応したのだ。人間の心とは不可思議なものである。人はいかに過酷な状況に置かれても、いずれはそれに慣れ、対応していく。

 

 そして生きる意志がそこに伴うならば、それはすでに生存のためではなく闘争のための極限の能力となりうる。およそ総ての人間が持つ、いかなる異能よりも有用な機能である。

 

 そして私の意志を後押ししたのは、他ならぬ憤怒であった。脳髄と体躯機能を焼き焦がすような灼熱のような熱量が、私を今に続く復讐の鬼へと変えたのだ。

 

 

 

 

 

 


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