私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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生まれたポケモンはちょっぴり変な子。






第六話~そのポケモン、バグではない~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆらゆらと揺らめくたまごにヒナたちは驚愕し、そして困惑していた。

野生のポケモンたちの誰もが知らないと首を傾けるからだ。その反応と目の前にあるポケモンのたまごにヒナとリザードンは真剣な表情で呟く。

 

 

 

 

 

「もしかしてトレーナーが持ってたたまご…なのかな…?」

『グォォオ…』

『ピチュゥ?』

 

 

「というか…すっごく揺れてるんだけどもしかして生まれる?!」

『グォォ…!』

『ピ!?ピチュゥ!!』

 

 

たまごがゆらゆらどころではなくグラグラと揺れ始めてきて、なにか音が聞こえるような気がするヒナは首を傾けて呟いた。その声にリザードンとピチューは反応してすぐにたまごを温めようと近づく。そしてそんなリザードン達を見た野生のポケモンであるピィたちも一緒になってたまごの周りに集まって来た。

 

 

「大丈夫だよ。生まれておいで…」

『グォォ』

『ピチュゥ!』

 

 

 

グラグラと揺れ光り始めるその動きに、ヒナたちは本当に生まれるのだと分かり、たまごを撫でた。外の世界は怖くないよという気持ちを込めて…大丈夫だよと優しく言う。そしてリザードンが寒くないように尻尾の火を近づけた、瞬間だった―――。

 

 

 

 

「うっ…わッッ!?」

『グォォッ!?』

『ピチュゥ!?』

 

 

 

 

 

『ナッゾォ…?』

 

 

 

小さなナゾノクサが元気よくたまごから生まれてきた。

ちょこんと座って身体を傾けているナゾノクサがゆっくりと目を開けてヒナを見た。その幼い瞳にヒナたちは笑みを浮かべる。

ヒナは頭を撫でて、口を開いた。

 

 

 

「生まれてきてくれてありがとうナゾノクサ」

 

 

『ナゾ…ナッゾォ』

 

 

 

もじもじと身体を揺らめかせながらヒナの手にすり寄るその姿は何処かかつてのヒトカゲの姿を思い浮かべた。

 

 

 

「ナゾノクサ…ここで会ったのも何かの縁だし、まだ赤ん坊だし…私と一緒に旅しない?」

『ナゾォ…?』

「もちろん、野生のままでいいならここかナゾノクサが棲める場所でお別れするけど…」

『ナゾ…ナゾォオ!』

 

「そっか…ありがとう、そしてこれからもよろしくね」

『ナゾ!』

『グォォ!』

『ピチュゥ!』

 

 

 

まだ生まれたばかりで育ててくれる親らしきポケモンがいないため、ここに置いていくのは微妙かなとヒナは考えていた。もしも野生がいいのならばおつきみやまのポケモンたちに育ててほしいと頼み込むか、兄に頼んでナゾノクサが野生として暮らせる最適な場所へ送ろうと考えながらも…。

でもナゾノクサはそれらを選ばなかった。ヒナ達と傍にいて、仲間になることを選んだのだ。

だからヒナは笑みを浮かべ、リザードン達は笑って歓迎した。ヒナは一つのボールを手に取り、ナゾノクサに優しく当てながらも…。

 

そして捕まえたというボールの合図とともに飛び出したナゾノクサはヒナの膝の上によじのぼり、ヒナを見てからよろしくねと言うかのように一声鳴いたのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

(ううむ…これは問題が多いかなぁ…)

 

 

 

生まれてからすぐにナゾノクサはヒナに懐いた。おそらく目を開けて最初に見たのがヒナだからという理由があるのだろうと考え、そしておつきみやまにナゾノクサはいなかったような気がするとヒナは遠い目をして考えていた。

たまごから生まれたナゾノクサはまだ赤ん坊で、育ててくれるはずの親がいない状態なのだ。ナゾノクサがいないと言うことは、やはりトレーナーがたまごを置いていったか…それとも捨てていったかのどちらかだろう。このままではいけないとヒナが考えていた時にそれは起きた。

 

 

 

『ピッチュゥ!』

「あ、こらピチュー!」

 

 

『ナゾ…ナゾォ!』

『ピッっチュゥ!!!?』

 

 

「うわっ…ピチューが宙を飛んだ…!?」

『グォォ…!』

 

 

ピチューがきのみを食べているナゾノクサに近づいて遊ぼうよと抱きつこうとしたら、ナゾノクサがピチューを見て半回転し、回し蹴りのような攻撃をした。

ポケモンの技に回し蹴りなんてなかったはずだよねとヒナは思わずリザードンに聞いて見るが、リザードンは何も答えずにいる。というよりも、答えられない。

ナゾノクサはオーキド研究所でよく見ていたが、回し蹴りなんて覚えていなかったはずだしピチューとレベル差が激しいのにピチューを一撃でノックダウンさせてしまうだなんてと混乱する頭で考えていたからだ。もちろんそれはヒナも同じく。

 

 

 

 

「よ、よし…ちょっとナゾノクサのレベルアップのためにも図鑑で技調べなきゃ…よね?」

『グォォオ…』

 

 

 

リュックの中から取り出したポケモン図鑑には、手持ちのポケモンの技を確認することができる。新たに仲間となったナゾノクサはまだ生まれたばかりだからあまり技を覚えていないはずだと思いながら開いて調べてみた結果。

 

 

 

 

――――ナゾノクサ くさ、どくタイプ

昼間は根っこの足を地面に埋めて動かないことが多い。夜歩き回ってタネをまく。

 

【すいとる】

【じたばた】

【くすぐる】

 

 

 

 

 

「あ、よかった…回し蹴りなんて技ないよね…ちょっとお兄ちゃんのポケモンのたまごからナゾノクサが生まれたのかなって思っちゃった…」

『グォォ…』

 

 

『ナゾォ?』

『ピ…チュゥ…』

 

 

 

安堵のため息をついてから、ヒナはナゾノクサを抱きしめてそろそろ寝ようかと声を出す。レベルアップはまた明日しようと考えて、夜を過ごしたのだった。

回し蹴りのようなことをやったのは、トレーナーになる前にイッシュ地方で見たズルッグのずつきのようなものかなと考えながらも…。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「このなかでナゾノクサと軽く戦ってくれるポケモンいるー?できれば手加減してくれるポケモンで!」

 

『ッッ―――――!!』

 

 

 

朝日が眩しくてとても気持ちのいい朝。

 

朝食を食べ終えてから野生ポケモンたちにヒナは片手を上げて話しかけた。その声に反応したのはたくさんのポケモン達。皆たまごから生まれてきた姿を見てとても嬉しかったのだろう…。でも、バンギラスのような本気で戦うポケモン達にはリザードン達が相手するとして、ナゾノクサにはバトルを覚えてもらうためにまずこうかいまひとつな水タイプから始めようと考えていた。

 

 

だからこそ、朝起きたら何故か近くにいたクラブに手を貸してもらってバトルを始めたのだが…。

 

 

 

 

「なんでこうなった」

 

 

 

『ナッ…ゾォ……』

『ゴキゴキッッ!?』

 

 

「ナゾノクサァァしっかりして!というかクラブのあわに一回当たっただけでやばいって思わなかったごめんなさい!!」

『グ…グォォ…!』

『ナッゾォ…!』

『ピチュゥゥ!!!』

 

 

 

半泣きの状態でヒナはリュックからきずぐすりを取り出しすぐに怪我を治しにかかる。クラブはうまれたてでも大丈夫なように手加減したぞと右往左往しているが、リザードンとピチューは気づかない。そんななかで、ナゾノクサはふらふらの身体のまま、リザードンの尻尾に近づこうとしていて…。

 

 

「こら!ナゾノクサは炎タイプが弱点なんだから近づいて触ったら危ないわよ!!」

『グォォオオオ!!!』

『ピッチュゥゥウ!!!』

 

『ナッゾォ?』

 

 

ナゾノクサは怪我の処置をしているヒナ達に可愛らしく身体を傾けていた。疑問に思っているようだと感じたヒナは膝の上にいるナゾノクサに弱点について教えていく。

 

 

「きみは草と毒タイプなんだから弱点はリザードンのような炎なんだよ?逆に水タイプは効果いまひとつで全然大丈夫なんだけど…わかった?」

『ナゾ!』

「うん全然分かってないねリザードンナゾノクサに尻尾近づけないでね!」

『グォォオオ!』

 

 

 

 

もちろんよ!と元気よく叫んで頷く相棒にヒナは少しだけ良かったと安心し、近くにいたコダックに誰もいない方を狙ってみずでっぽうしてほしいと頼んだ。その頼みを聞いたコダックは頷いて水を放つ。

そしてヒナはいまだにリザードンの尻尾に近づこうとしてピチューに身体ごと抱きかかえられて止められる姿に向かって話しかけた。

 

 

 

「ほらナゾノクサ!こっちが君にとって好きな水よ。炎は危ないからね!」

『ナゾ…?』

『ピチュ…』

『グォォ…』

 

 

 

ナゾノクサがヒナの言葉を聞いてピチューから降りてコダックの放ち続ける水に近づいた。

そして恐る恐る触ろうとして―――――。

 

 

 

『ナ、ナッゾォォ…』

 

 

「嫌がってる…だと…?!」

『グォォ…!?』

『ピチュゥ!?』

 

『ゴキゴキ…』

『ゴッパァァ』

 

 

 

ナゾノクサはコダックの放つ水を嫌がり、すぐにヒナに抱きついて触りたくないと身体を横に揺らす。オーキド研究所で見たナゾノクサは普通に水を喜んで身体全体で浴びていたのだが…たまごから生まれたナゾノクサが拒絶したことに対してヒナたちは驚愕する。

もしかして手加減してくれたクラブの小さなあわに一回だけ当たっただけでダウンしてしまったのはそのせいかとヒナは考え、これがバトルにも影響されたらどうしようかと悩む。

 

 

 

 

「炎を好んで水を好まない…かぁ……なんか逆さバトルとかで有利になれそうな気がする…」

『グォォ…』

『ピチュゥ…』

 

 

 

 

『ナゾォ?』

 

 

 

ナゾノクサはヒナたちの言葉が分からないようで、ただ小さく鳴いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 










ちなみにまだまだ秘密はある。





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