私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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始まりの旅と似たように…








第四話~ジム戦と、それから~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりすぎなんだよお前は!!」

「そんなわけないだろう…これでも手加減したが」

『チルゥ』

「手加減したのッ?!」

「んなわけあるか!!シルバーお前手加減なんて言葉はバトルじゃ使わねえだろ!!」

「何事にも本気で戦うのが俺のバトルスタイルだが…チルタリスのはかいこうせんはこんなもんじゃ済まないぞ」

『チルルゥ!』

「はかいこうせんを極め過ぎよシルバー!!」

「やりすぎたらいけないって博士に言われただろ!!もう少し考えて行動しろよ!!」

 

 

 

 

「ハハハ…ヒナちゃん達、喧嘩しちゃいけないよ」

 

 

 

 

やらかしたことの重大さに気づかない無自覚なシルバーにヒナとヒビキが怒鳴り声を上げて怒る。だがそれを見て喧嘩に発展すると感じたジロウが苦笑しつつも3人を仲裁し、ヒナを見つめた。

 

それを見たヒナはシルバーを見てまだ言い足りないというような表情を一度したがすぐに改め、そしてジロウを見て好戦的な瞳で見つめる。

 

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

 

 

面白いバトルを期待しているよと言葉に出さなくてもジロウはそう言っているのだと、ヒナはそう感じた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「お前後で覚えてろよ」

「フンッ上等だ。返り討ちにしてやるから覚悟していろ」

「はいはいヒビキとシルバーそこで喧嘩しない!バトルの邪魔になったら燃やすからね!」

 

 

 

「ハハッ…じゃあ、これよりジムリーダージロウ対挑戦者ヒナの試合を始めます。使用ポケモンは2体…それでは試合開始!」

 

 

 

観戦席から聞こえてくる口喧嘩にヒナはバトルフィールド越しから怒鳴り声を上げて喧嘩は止めろと叫ぶ。その声には何かやらかしたら燃やしてやると有言実行しそうな色を含んでおり…ヒビキとシルバーは少々不満そうにしていながらも口を閉ざしてバトルを観戦することにした。

それを見たジムリーダーのジロウや審判のサブロウが苦笑しつつもバトルを始めるために顔を引き締める。それを見たヒナも気持ちを切り替えてバトル開始を待つ。

 

 

「よし行くぞ…プテラ!」

『ギャァォオオオオッッ!!』

 

「プテラね…じゃあこっちは…いくよピチュー!」

『ピッチュゥ!!』

 

 

 

レベルが高く、とても強そうなプテラが出てきたことにヒナは笑みを浮かべて帽子をしっかりと目深に被り直し、懐からボールを手に取ってバトルフィールドに向けて投げた。ボールから出てきたのはいかにも気合十分なピチューであり、電撃をバチバチと地面に向かって放ちながら空を飛ぶプテラを睨みつけた。

睨みつけられたプテラも同じように威嚇する。その瞳はとても凶暴に見え、四年前のあの日バトルにいたならば絶対に怯えていたであろうピチューはものともしない。もちろんヒナも同じようにただ相手を見据えて勝ちに行くのを狙っているようだとジロウは感じていた。

 

――――――そしてしばらく沈黙の後、両者が口を開く。

 

 

 

「プテラ!いわなだれだ!」

『ギャァァアアアッッ!!』

「全部躱してプテラに10まんボルト!」

『ピチュ!』

「回転して避けろ!」

『ギャァォォオオ!!!』

 

 

地面のバトルフィールドが奇妙な形で抉れ、すべてがいわなだれとなってピチューに襲いかかる。それを見てヒナが指示を出し、ピチューはその通りに動く。

素早く動き、岩を避けつつプテラに急接近したピチューはすぐさま強暴な10まんボルトを放つ。だがそれは力強いプテラの竜巻にも似た回転によって避けられ、風圧を避けて大きな岩に潜り込むことによってピチューはダメージを防いだ。

ジロウが本気で来ていることにヒナも気づいていた。そしてピチューもプテラが手加減なくこちらに向かって勝つ気でいることに気づいていた。だからこそヒナはピチューを見て口を開く。

 

 

「ピチュー、でんこうせっかで接近!」

『ピチュ!』

「プテラ!接近したところを狙え!もう一度いわなだれ!」

『ギャァォオオオ!!』

「させないわ!ピチュー、てんしのキッス!」

『ピッチュ!』

 

『ギャッ…!』

「なにっ…!?」

 

 

「…ん?なあシルバー、てんしのキッスって何だっけ?」

「相手を混乱状態にする技だそれくらい覚えとけ」

「お前説明の後にいちいち一言余計なんだよ!」

「騒ぐなヒナがキレるぞ」

「マジ後で覚えとけ…!」

 

 

急接近してきたピチューに向かって攻撃を仕掛けようとしたプテラだったが、それをすべて素早く避けたことによって不発に終わり、そして逆に可愛らしいピチューに頬をキスされたことによって混乱状態に陥ってしまう。ぬいぐるみのような可愛らしさを表現してなのか、ピチューはそのてんしのキッスに何故かメロメロを発動させる時のようにウィンクをしてプテラを混乱させた。もしもプテラが雌だったならピチューの可愛さによってメロメロ状態にもなっていただろうなとシルバーは考える。

ヒナもシルバーと同じようなことを考えたのか頬をかいてメロメロを覚えさせたつもりはないんだけどなと呟き声を上げていた。

 

だがヒナはすぐに気持ちを切り替えて叫ぶ。

 

 

 

「ピチュー、あなたのショーを見せてあげて!」

『ピッチュゥ!』

 

 

「なっ…これはボルテッカー!?」

『ギャッ…ギャウ!』

「プテラっ!!」

 

 

「ピチュー、そのままでんげきは!」

『ピチュゥゥウ!!』

 

 

ピチューが走る方向に電撃の跡ができる。ピチューの身体全体が黄色く光り輝き、尻尾からはキラキラとした光が降り注ぐ。もしもここが薄暗く、そしてピチューが大きく空に向かってジャンプしたならば星空のように降り注いだだろうと考えるほど、煌びやかに駆け巡る。

それを見たジロウは混乱したプテラを何とか躱してもらおうとしたが混乱が解けていないプテラはそのままピチューに突撃され、もろに電撃を浴びて倒れてしまったところにヒナは欠かさず追撃を指示する。

その声を聞いたピチューはでんげきはをバトルフィールド全体に向かって行い、プテラを倒すことに成功したのだった。

 

 

 

 

 

「プテラ戦闘不能!」

 

 

 

「ありがとうプテラ…うん、本当に強くなったなヒナちゃんは」

『ギャァゥ…』

 

 

「よしやったよピチュー!」

『ピッチュゥ!』

 

 

ハイタッチをして喜び合うヒナ達を見てジロウは懐かしげに彼女たちを見て、そして腰につけてあるボールをバトルフィールドに向かって投げる。

プテラを出したのはジロウにとっての強いポケモンであり、どんな戦い方をするのかという期待で出したポケモンだ。もちろん勝つ気はあったが、それでも負けたとしても喜びの方が強く感じられた。あの時とは違って本当に強くなったのだと、そう感じたのだ。

 

 

 

「行くぞ、バンギラス」

『バンギャァァアアッッ!!』

 

 

「バンギラス…か…よし、ピチュー戻って」

『ピチュッ…!』

「トレーナーになって初のジム戦だしリザードンも気合十分だから…お願い」

『ピッチュゥ…ピチュ!』

「ありがとうピチュー……行くよ、リザードン!」

『グォォオオオオ!!!!』

 

 

 

ピチューがまだ戦えるよと気合十分にヒナに向かって鳴き声を上げるが、その声を聞いてヒナは申し訳ないような表情でピチューに向かってお願いを言った。ニビジムで戦いたいと思うのはピチューだけじゃないと言うこと、ずっと懐でボールがぐらぐらと動いてバトルしたいと言っているのだと話す。その声にピチューは納得し、分かったと声を出してボールに戻っていった。

そして現れたのは漆黒の身体をもち、頑丈そうな翼を優雅に広げて大きく咆哮するリザードンだ。

その声を聞いてバンギラスは強い奴が現れたと笑い、ジロウも同じくつられて笑みを浮かべた。

 

 

 

「それでは…試合開始!」

 

 

 

「バンギラス、かみなりパンチ!」

『バンギャァァァ!!!』

「そうはいかない!リザードン、かえんほうしゃ!」

『グォォオオオ!!!』

 

 

 

かみなりパンチを繰り出そうとしたバンギラスは向かってきた力強いかえんほうしゃを見て技を繰り出すのを止めてすぐに避ける。避けられた炎は岩にぶつかり、熱を持って岩が赤く燃えた。それを見たジロウはジムリーダーとして戦っているという意識を一瞬だけ忘れ、気分を高揚させつつバンギラスに向かって指示を出した。

 

 

 

「バンギラス、ストーンエッジ!」

『バンギャァァア!』

 

「リザードン避けて!」

『グォォオオオ!!!』

 

 

バンギラスのストーンエッジはまるでヒビキと戦ったゴローニャが繰り出したかのように空を飛ぶリザードンに向かって真っすぐ…そして大きく抉られて向かう。それを見たリザードンは翼を大きく広げて宙を旋回し、避けていく。だがいつまでたってもストーンエッジは止まず、避け続けていることに少々苛ついたリザードンの尻尾によるアイアンテールによって砕くことでバンギラスに向かって叩き落とした。それをバンギラスはストーンエッジによって防ぎ、リザードンを睨みつけた。

 

 

 

 

「さっきのチルタリスのようにちょっと暴れてみようか…バンギラス、はかいこうせん!」

『バンギャァァアアアア!!!』

 

「はかいこうせんなら…こっちは真っ向勝負よ!フレアドライブ!!」

『グォォオオオオ!!!』

 

 

「おいおい何やってんだヒナの奴!!?」

「サトシさんのように…ポケモンにとって苦手なタイプの技を真っ向から受けて反撃し、見事逆転することに成功したことがあるが…まあヒナなら平気だろうな」

「リザードンなら平気ってか!?んな無茶な…」

「現に4年前、俺のチルタリスのはかいこうせんをリザードンはお前とヒナを背中に乗せながら防いだことがあったぞ」

「おいはかいこうせんぶっ放して俺たちに当たったかもしれない自覚ありかこの野郎!!」

「煩いぞヒビキ、試合の邪魔だ」

「はぁ…お前まじ空気読め」

 

 

 

 

はかいこうせんに向かってリザードンは炎をまとわせながらぶつかっていく、そして口から吐いた炎を破壊こうせんに向けて放ち、翼をたたんでそのままの勢いでバンギラスに向かって突撃していった。

巨大な炎の塊となったリザードンに、バンギラスはなすすべもなく倒れてしまったのだった。

 

 

 

 

「バンギラス戦闘不能…勝者、挑戦者ヒナ!」

 

 

「やった!ありがとうリザードン!」

『グォォオ!』

 

 

バンギラスが目を回して倒れたことに対し、ヒナは喜んでリザードンに抱きついてありがとうと礼を言う。その声にリザードンは笑顔でヒナにすり寄って勝ったことを喜び合った。

そんな彼女たちを見て、ジロウはバンギラスを労わってからヒナに近づいて言った。

 

 

 

「ヒナちゃん、4年前に渡したあのバッチを持ってる?」

「はい…これです」

「それは貰うよ…君にはこれを渡そう…グレーバッチだ」

 

「ありがとうございます…ジロウさん!」

『グォォ…!』

 

 

 

少々古ぼけたグレーバッチをジロウに見せると、ジロウはヒナの手からそれを受け取り、そして新品のグレーバッチを渡した。小さな箱に入っているバッチを手にしたヒナはリザードンと顔を見合わせてから笑みを浮かべて…そしてジロウに向かってお礼を言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「グレーバッチ、ゲットよ!!」

『グォォオ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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