私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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ジムに挑戦するにあたっての不安







第三話~ニビジム挑戦と始まり~

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハガネール、叩きつけろ!!」

『イワァァアア!!!』

 

 

「ゾロアーク、そのままひきつけとけよ…!」

『ガァァア!』

 

 

大きく飛び上がったハガネールを見上げ、ゾロアークはヒビキの言うとおり何もせずそのまま立ち止まってハガネールを睨みつけていた。

ヒナはこのままだとハガネールの巨体に押しつぶされてしまうのではと思われたが、ヒビキがニヤリと笑ったことによってその考えは変わる。

 

 

「ゾロアーク、全部吹っ飛ばせ!ナイトバーストだ!」

『ガァァアアアアア!!!』

 

 

「何っ!?」

『イワァァアアッッ!?』

 

 

 

ナイトバーストによってハガネールは横殴りされたかのようにふっ飛ばされ、バトルフィールドにある大きな岩山にぶつかった。その威力はとても強く、反動もあるのかハガネールは立ち上がらない。むしろ目を回しているようにも見え、審判の手が上がった。

 

 

「ハガネール戦闘不能!」

 

「よっし!」

『ガァゥ!』

 

 

「戻れハガネール。ああ面白い戦い方をするね…度胸があって、なおかつ熱い戦い方だ…行くぞゴローニャ!」

『ゴロォォォオオ!!』

 

 

「……ゾロアークの【あれ】って無意識?」

「いや、おそらく意識してやっていることだろうな。ヒビキもバトルで有利に戦うための方法をよくゾロアークに教えていたから…【つめとぎ】もバトルの合間だが癖のように行っている」

「もしも審判とかが知ったら不正だって言われるんじゃないかな…」

「イリュージョンを含め、それも覚悟して行っているぞあいつは…だから馬鹿なんだ」

「ああ……」

 

 

ヒナとシルバーは観戦席からゾロアークが軽くつめとぎという技を行っていたことに対して話し合っていた。つめとぎという技はゾロアークの攻撃と命中率を一段階上げるものだが、ゾロアークはハガネールと睨み合った時、威嚇する方法として使うこともあり、ポケモンの技のようには【見せていない】。

まさにゾロアークのイリュージョンのように意識して見なければ分からない行動だ。しかもそれをヒビキは許容し、公式なジム戦でも行っている。ちょっと不正になるんじゃないかとヒナは心配しているが、シルバーはそうなるのであればイリュージョンを初っ端から行わないだろうと苦笑いだ。だから馬鹿なんだと言う言葉に、ヒナは苦笑しつつこれからのヒビキのバトルスタイルがどうなるのか少々心配になったのだった。

 

そんな話し合いをしているうちにジロウはゴローニャを出してバトルを始める。

 

 

「それでは、ゴローニャ対ゾロアークの試合開始!」

 

 

「ゴローニャ、じしんだ!!」

『ゴロォオォォオ!!!』

 

「くっ…ゾロアーク、いちゃもんとつじぎり!あと飛び上がれ!!」

『ガァァアッ!!』

 

 

じしんの威力は観戦席にも届き、ヒナたちはそれぞれ観戦席にある取っ手に掴まって揺れから逃れようとする。取っ手に掴まりながらもバトルフィールドを見ると、岩がじしんによって抉られ、割れているのが見える。ゾロアークはそのじしんによるダメージを負ったようだが、それでもまだジャンプしながらいちゃもんとつじぎりをするという技の二重ができたようだ。つじぎりによってゴローニャにダメージを負わせることに成功したが、ゾロアーク自身もゴローニャの技を受けてしまう。

ヒビキが行ったゾロアークの指示を聞いて、じしんの技がかなり大ダメージを負う可能性があるからこそいちゃもんをしたのかもしれないという考えと、飛び上がりながらつじぎりといちゃもんする少々サトシに似た強引なやり方にジロウは感心したかのように笑い、そして飛び上がっているゾロアークを指差して言う。

 

 

「隙だらけだ!ゴローニャ、ストーンエッジ!!」

『ゴロォォォッ!!』

 

「うっそまじかよ!!?」

『ガァァアアッ!?』

 

 

ストーンエッジは尖った岩を相手に突き刺して行うという技。通常は地面に立つ相手に行う攻撃技なのだが、さすがはジムリーダーといったところか、ストーンエッジによって尖った岩と岩が高く飛び上がったゾロアークに向かて伸びていき、折り重なるかのようにゾロアークに向かってぶつかる。ジャンプしたせいで躱すことができないゾロアークはそのストーンエッジの技をもろに受けてしまった。だが折り重なった岩からすぐに抜け出し、少々辛そうな息を吐くが、すぐに大丈夫だとヒビキに向かって鳴き声を上げ、次の指示を待つ。

 

 

 

 

「ゴローニャ、じしんだ!」

『ゴロォォォ!!』

「クッ…ゾロアーク、もう一度ナイトバースト!!!」

『ガァァアアア!!!』

 

 

じしんによって地面が抉れ、それを吹き飛ばすかのようにナイトバーストが周りに巻き起こる。まるで砂嵐かのように思えるその技と技のぶつかり合いは、しばらくした後収まり…そしてゾロアークが倒れたことによって終了の意味を持った。

 

 

 

「ゾロアーク戦闘不能!」

 

『ガァウ』

「…サンキューなゾロアーク」

『ガゥ』

 

 

「…え、もしかしてヒビキこれで終了?ゴローニャふらふらなのにもったいない…!」

「いや、そんなことはない。まだ一体いるからな」

「え…?」

 

 

ボールに戻されたヒビキのゾロアークを見て、ヒナはこのバトルはヒビキの負けで終わりなのかと言う。ゴローニャは今にも倒れそうなぐらいフラフラになっていてこれでバトル終了するのはヒビキにとって惜しいとヒナが言うのだが、シルバーが隣でそれを聞いて違うと首を横に振る。だが、シルバーがあと一体いるという言葉にヒナは首を傾けた。

何時の間にポケモンを一体捕まえたのだろうかと疑問に思ったヒナだったが、ヒビキが出したポケモンによってそれは解決する。

 

 

 

 

 

 

 

「お前にとっては初バトルだ…頑張れよ、ヒノアラシ!!」

『ヒ…ヒノッ!』

 

 

「ヒノアラシか…ゴローニャはかなり不利なポケモンだと思うが…どう戦うのか楽しみだ!」

『…ゴロォォ!!』

 

 

 

「ヒノアラシ…!?」

「ジョウト地方のウツギ博士から学校卒業の祝いに貰った3体のポケモンの中の1体だ」

「え、卒業の祝い?…ってことはシルバーも貰ったの?」

「ああまあな…後でジム戦で見せる」

「そっか。楽しみにしてるね」

 

 

「ヒノアラシ!お前なら大丈夫だ…できるぞ!!」

『ヒノォ…!』

 

 

 

 

「あと…あのヒノアラシって臆病な性格なのかな」

「ああそうだ。だが臆病な性格のせいか、素早さが通常よりも上回っているんだ…それにあのヒノアラシは今はバトルには向かないかもしれないが育て方によっては化ける可能性もある。素早さ特化したポケモンはサトシさんのポケモンやバトルスタイルを見れば有利に戦えることもできると知っているが、ダメージを与えることができなければスピードは無力に等しいかもしれん…だがあのヒノアラシは―――――」

「――――ああはいはい。ほらシルバー!観察してないでバトル見ようってば!!」

「…そうだな」

 

 

 

ヒノアラシにとってゴローニャがゾロアークとの戦いによってふらふらしていることが幸いなのか、あと一撃さえ与えれば倒れそうになっている。だがヒノアラシは身体をぶるぶると震えさせ、ヒビキの背に抱きついて隠れたいというかのようにしきりに後ろを振り返ってヒビキを見ている。それを見たヒビキは大丈夫だとヒノアラシに激励し、その声を聞いたヒノアラシは頑張るとでもいうかのように少々目を釣り上げた。

それでも迫力十分のゴローニャを見たらまた怯えたように身体を震えさせているが…逃げようとはしない根性はあるのかとヒナは笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「ゴローニャ、ストーンエッジ!…………何ッ?!」

『ゴォォォオッッ!!?』

 

「たいあたり!!」

『ヒノォォオオオオッッ!!!』

 

 

ゴローニャが繰り出したストーンエッジを見事に躱しつつ、素早い動きでゴローニャの懐までやって来たヒノアラシは、ヒビキの声を聞いてその速さのままたいあたりをする。

だが、ヒノアラシは泣き顔のまま怯えつつさっさとバトルを終わらせようとしているのか…ロケットずつきのように大きく飛び上がってぶつかったため、ヒノアラシも頭を押さえつつ痛そうに泣いている。

もちろんそんなヒノアラシの技はゾロアークの技によって大ダメージを負っていたゴローニャが耐えることなく倒れてしまった。

そしてヒノアラシは相手が倒れたのを見て我慢せずとヒビキに駆け寄り、ジャンプしてヒビキの顔に抱きついた。

 

 

 

 

それを見てジロウは笑い、試合終了の合図を出してからバッチをヒビキに渡したのだった…。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「うぉぉぉおジムバッチだぁぁああ!!!!」

「喧しいぞヒビキ!!」

「うるさい!」

 

 

「ブフォッ!」

 

 

ヒビキはヒノアラシに向かってお疲れと礼を言った後ボールに戻し…そしてジムバッチを手にした喜びを叫んでいた。その声を聞いてシルバーとヒナによって頭を殴られ撃沈したが…それでも喜びからか反撃することはなく笑っていたのだった。

 

ジロウはヒナとシルバーを見て次はどうするか聞く。

 

 

「シルバーが先でいいよ」

「いいのか…?」

「うん。シルバーが貰ったっていうジョウト地方のポケモンも見たいし!」

 

 

 

ヒナは笑ってシルバーに次のバトルを譲った。ヒナはヒビキがヒノアラシを出したのを観戦し、シルバーが仲間として迎えたポケモンをバトルで見たいと思ったことを正直に話す。ピチューやリザードンはやる気十分というかのようにボールをゆらゆらと揺らしているが、ジョウト地方のポケモンを見たいと言うヒナの言葉にその揺れは収まり、ボールごしに観戦しようと決めたらしい。シルバーやヒビキとはいつか戦う相手だからかもしれないが…それでもバトルできないという不満を言うことはなく、ヒナたちはシルバーに譲ることができた。

 

それを見たジロウは頷いて、シルバーに今から行おうかと声をかけたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「それでは、ジムリーダージロウと挑戦者シルバーによるバトルを始めさせていただきます。ジムリーダーの使用するポケモンは2体!挑戦者は使用ポケモンが戦闘不能になるまでバトルを続けられます…それでは、バトル開始!!」

 

 

「行くぞ、カブトプス!」

『カブゥゥウ!!』

 

「…バトル開始だワニノコ」

『ワニィ』

 

 

「へぇ…シルバーはワニノコを貰ったんだ」

「おいシルバーァア!!何やってんだカブトプスにはみずタイプのポケモンは効果抜群にならねえぞアホシルバー!!」

「喧しいぞヒビキ!!!」

「ほらヒビキ、バトルの邪魔になるから叫ばない!シルバーも怒ってるし…それに大丈夫でしょ」

「馬鹿ヒナ…あいつのことだから絶対にやらかすだろ…」

「……え、あ…でも…」

「4年前の惨劇を思い出せ」

「………うん」

 

 

ヒナが不安そうな顔をしている一方で、ヒビキは絶対にやらかすとばかりに遠い目をしてバトルを観戦していた。先程までバッチを手にしたことの喜びが嘘のように空気が重い。

そんな観戦席とは違って、バトルフィールドでは冷静にカブトプスを観察し、ワニノコは静かにシルバーの指示を待つ。

まるで冷たい水のような空気を纏う彼らに、ジロウは熱く燃えるように少々計画を考えず戦うヒビキとは違ったタイプだと考えて口を開く。

 

 

 

「カブトプス、シザークロスだ!」

『ガブゥゥウ!!』

 

「…ワニノコ、避けろ」

『ワニ』

 

 

ワニノコは一歩横にジャンプしてカブトプスのシザークロスを避ける。その行動はまさに熟練されたかのように動き、とても冷静に技を躱していった。通常のバトルでは避けろと言われてもポケモンはどう避ければいいのか分からず右往左往して結果ダメージを食らうのが一般的だが…シルバーのワニノコはどう避ければいいのか、何をすればいいのかまるで分かっているかのように動いているのだ。

 

 

「面白いね君のワニノコは…でもレベルがまだ足りないな!カブトプス、いわなだれだ…!」

『ガブゥゥウウ!!』

「ワニノコ、みずでっぽう」

『ワニッワッッ!?』

 

 

ワニノコはみずでっぽうでいわなだれを防ごうとするが、まだ十分育てきっていないためかいわなだれを抑えきれずにダメージを負い、フラフラとして一度は立ち上がろうとしたがすぐに倒れてしまった。それを見てシルバーは悔しそうな顔を見せず、ただワニノコに近づいて抱き上げ、頭を撫でた。

 

 

「まだお前を仲間に迎えたばかりだが…よくやった」

『ワ…ワニ』

「これからよろしくな」

『ワニワニ…』

 

 

ワニノコはバトルに負けて悔しそうだが、シルバーの優しい笑みを見て何も言わずに微笑んだ。シルバーならば己を鍛えてくれると思っているからだろうか…トレーナーとしての才能があるように見えるシルバーを見てワニノコは将来強くなるだろうなとジロウは考えつつも、シルバーがバトルフィールドから下がり、先程まで立っていた位置へ戻ってからワニノコをボールに戻す。

そしてシルバーがポケモンを出したことによってバトルは開始する。

 

 

 

 

「終わらせるぞチルタリス」

『チルゥゥ!』

「かなり強いなあのチルタリスは…気をつけろカブトプス!」

『カブゥゥウ!!』

 

 

「それでは、カブトプス対チルタリス…バトル開始!!」

 

 

 

 

「はかいこうせん」

 

 

 

 

バトル開始の合図とともに、シルバーは静かにチルタリスに指示を出す。その声に反応したのは幼馴染でもあるヒナとヒビキだった。

 

 

 

 

 

「えっちょっと待っっ!!?」

「やべえヒナ伏せろ!!」

 

 

 

 

『チルゥゥゥウ!!!!』

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

バトルフィールドが一部焦げて破壊されてしまった箇所が目立つのが見える。ジムリーダーや審判が引き攣った表情を見せるのが分かる。

チルタリスはあの後はかいこうせんによる無双を行い、まるでバトルとは言えない壮絶な行動をして見せた。

それはまさしく、ジロウが先程考えた水のような冷静なバトルスタイルという言葉を前言撤回させるほどの威力。そしてジムリーダーのポケモンを2体とも倒すほどの強さを見せてくれたのだ。

 

 

 

 

「しょ、勝者…挑戦者の、し、シルバー!!」

 

 

 

 

 

 

審判の引き攣った声を聞いて、観戦席の2人が我に返ったかのように叫ぶ。

 

 

 

 

「シルバーてめえこの馬鹿野郎がぁぁああ!!!」

「ちゃんとバトルしなさいよこの馬鹿ぁぁあああああ!!!!!」

 

 

 

「喧しい!!ちゃんとバトルしただろうがっ!!」

 

 

 

 

「「そんなわけあるかッ!!!!」」

 

 

 

 

 

少々微妙な空気のまま、ジロウはシルバーに勝者の証としてジムバッチを渡したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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