私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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私はコガネ弁がよく分からないです。ですので変な部分が多いかと思います。これ絶対におかしい!というセリフがありましたら指摘お願いします。






第四十三話~別に嫌いなんかじゃないんだからね!~

 

 

 

 

 

 

ハナダシティより少々町から外れた場所にある一軒の家。野生が出やすそうな場所だが、その家に住む人間は野生のポケモンとも何とか友好的に関わってきていたため、今までトラブルなんかは起きずにいた。

遅刻したり忘れ物をしてわざわざ戻る羽目になったりといろいろとその人間のせいでトラブルが起きると言うことはあったが、野生のポケモンとのトラブルなんて起こしたことはなかったのだ。

 

だからこそ、イーブイは目を白黒させていた。ボールの中で眠っていたところ、人間がイーブイをボールから出して、なんとみずのいしをイーブイに使おうとしているのが見えたのだ。

 

 

『ブ、ブイ…!?』

 

 

イーブイはまだ進化をするつもりはない。というか、何に進化をするのか選ぶ段階だからゆっくりと考えようと思っていたのだ。

その人間――――――マサキがイーブイの願う進化をさせてくれるかどうかはわからないが。それでも、進化を強要するということは今までしなかったはずなのに。

 

 

『ブイ…ブィィ!!』

 

「大丈夫やでイーブイ。身体の力抜いて…すぐ終わらせたるから…」

 

『ブイ!!?』

 

 

イーブイは部屋の奥の机の下に潜り込み、隠れる。身体の毛を大きく見せ、威嚇をして『こっち来んな!』とばかりに何度も鳴き声を上げる。

対するマサキは右手にみずのいしを持ち、左手はイーブイを狙って手を伸ばす。イーブイが思いっきり噛みついたとしても、右手にみずのいしがある限り何かのきっかけで石が当たって進化をしてしまうかもしれないとイーブイは攻撃できずにいた。

 

伸ばされた手が目の前に広がる。

 

 

もう駄目だと、イーブイが目を閉じたその時だった。

 

 

 

 

「10まんボルト」

 

『ピィカッチュゥゥ!!!!』

 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」

 

 

 

マサキの悲鳴と、見知らぬ男とピカチュウの声。目を開けて見ると、マサキが黒焦げになっている様子が見える。そしてこちらを心配そうに見つめている少女がいる。

 

前に助けてくれたあの女が、こちらに手を伸ばして頭を撫でてきた。

 

 

「イーブイ、大丈夫?」

 

 

 

『…………ブィィィィィッ!!!!』

 

 

―――――助けに来るのがおっそいんだよこの馬鹿!!!!

 

 

 

イーブイは頭を撫でてきたヒナの手に向かって、八つ当たり気味に噛みついた。

当然その結果ヒナから痛みによる悲鳴を上げられたのが聞こえてきたけれど、イーブイは膨らんでいた毛がもとに戻るぐらいには安堵していたのも気付いていた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

マサキさんがいるため、伝説のポケモンと言われているミニルギアにはモンスターボールに入っててもらい、マサキさん家を訪問した私達。

まあやっぱりマサキさんは洗脳にかかっていて、ものすごく大変な状況にあったのは理解できたけど、お兄ちゃんたちがいるから何も問題はなかった。

 

うん、一応…。

 

 

 

 

「ヒナちゃんがポケモンに懐かれないなんて珍しいね?」

 

「あはは…なんか私との出会いがイーブイにとって最悪らしくて…」

 

 

 

セレナさんが驚いたような声を上げたことに対して乾いた笑みを浮かべた。

 

でも、いまだにガジガジと噛まれている手は最初に頭に噛みつかれた時と違って血が滲みそうになるほどの力強いものではない。

このイーブイに嫌われるのはなんでなんだろうかとちょっと疑問に思うけど、噛みつきが手加減されているイーブイに苦笑するだけで済んだ。

 

その間にも、兄がマサキさんの胸ぐらを掴んでぶんぶんと揺さぶっており、シルバーがさっさと目覚めろとばかりにマサキさんにだけアリゲイツによるみずでっぽう発射が行われているのが見えた。マサキさん大丈夫なのかな…?

 

 

「ブッフォ!ぐっ…何やねん!!!」

 

「何やねんじゃねーよ」

 

「いっだ!!!」

 

「それで?洗脳は解けたみたいだな」

 

「…洗脳?」

 

 

マサキさんがパチパチと目を瞬き、周りを確認する。そして地面に転がっているみずのいしを見て、引き攣った笑みを兄に向けた。

 

 

「ど、どういう…」

 

「マサキさん。あなたは新生ロケット団に洗脳されていたんですよ」

 

 

兄とシルバーの説明により、自分が何をしたのかを察したらしいマサキさんが、顔を青くしながらも私の手を噛んでいるイーブイに近づいてその頭を撫で、「すまんイーブイ…」と言った。その言葉にイーブイがようやく噛んでいた手から離し、顔をフイッと逸らしつつ『ブイ…』と許してくれたようだった。

 

 

「そんで?俺に何をさせるつもりや?」

 

「よく分かったな」

 

「当たりまえや。一体何年の付き合いがあると思っとるん?」

 

「そうだな…とりあえず、機械を作ってくれないか?」

 

「機械ぃ?」

 

「ああ。洗脳を洗脳で上書きできるようなやつ」

 

 

 

 

ニヤリと笑った兄の顔をじっと見て、やがてマサキさんもニヤリと悪い笑みを浮かべる。何が伝わったのかはわからないが、マサキさんとセレナさんはちゃんと理解しているらしい。

 

 

 

 

「なるほどな…そら、俺にしかできんっちゅーわけや」

 

「そうだ。頼んだぞ」

 

「任せとき!」

 

 

 

早速とばかりに機械の方へ向かうマサキさんに対して、セレナさんが話しかける。

 

 

「モンスターボールに入れられているポケモンは洗脳が効かないわ。だからボールの中にポケモンを入れて…何かあったらすぐに攻撃して洗脳を解除してもらえるようにね?」

 

「おお!せやったらブラッキーに任せとくわ」

 

 

棚の上にあるモンスターボールの中にあるダークボールを取り出したマサキさん。その中には自信満々な顔で頷いたブラッキーの姿が微かに映っており、とりあえずまた洗脳の効果が出たとしても大丈夫だと悟った。

それを見て笑った兄が、隣にいたシルバーの頭を撫でつつも口を開いて言う。

 

 

 

「おし。んじゃあさっさと乗り込むか―――――」

 

 

『―――ブィ!!』

 

 

 

 

玄関を防ぐように、イーブイが立ちはだかった。

 

 

 

「どうしたのイーブイ?」

 

『ブイブイブイ!!ブィィ!!』

 

「…協力したいんやろ?この子は負けず嫌いやから…助けられた恩を返したいんや」

 

『ブィィ!』

 

「いだだだッ!!な、何?!」

 

「あはは。気に入られた見たいやな。ならそのイーブイはヒナちゃんに預けたるわ。大事に育ててくれへんか?」

 

「え?……ええぇ!!!!?」

 

 

いや急に何でそんな話になってるの!?

というかこんなにも腕を噛みつかれてるのに気に入ってるって意味が分からないし、全然気に入られたような顔してないよ!イーブイにあるまじき物凄い顔して噛みついて来てるよ!!

 

 

「普通はお兄ちゃんとかなんじゃ――――」

 

「あ、せや!ヒナちゃんがイーブイ貰うんやったら、君もやらなあかんわな!」

 

「はっ?」

 

「ああ、マサキ。それだったらお前が持ってるあれも渡してやってくれ」

 

「おお!ほんならこれとこれ、貰ってくれ。シルバー君やったら、ちゃんと大事に育ててくれるやろうし…」

 

 

 

シルバーが渡されたのは、二つの丸いモノ。一つはモンスターボールであり、その中には小さなイーブイが眠そうに目をパチパチさせているのが見えた。

 

 

 

 

「良いんですか…?」

 

「ええで!どっちみちヒナちゃんと君と…あとヒビキ君には渡すつもりやったからな!」

 

 

 

なんというか…こんなにもイーブイを渡して大丈夫なのかと言いたい。

でも、マサキさんもイーブイも何も問題はないように見えた。私の腕に噛みついてるイーブイはともかく、シルバーがモンスターボールから取り出したイーブイは眠そうに目を前足でこすりながらも、シルバーに近づいて『ぶいっきゅ』と鳴き声を上げ、足にすり寄ってきたのだから。

それを見てシルバーはフッと笑い、「宜しくな、イーブイ」とその頭を撫でた。頭を撫でられたイーブイは気持ちよさそうに『ぶい~』と鳴き声を上げて、大きなあくびを溢していた。

 

 

 

「というか、お前…まだイーブイをいろんなトレーナーにばらまいてんのかよ」

 

『ピカピカ?』

 

「ちゃうわ!変なトレーナーには渡さへんよう選んでるんやから、ばらまいてないで!!可愛いイーブイには旅させろ言うやろ!?」

 

「いや言わねーよ」

 

『ピィカッチュ…』

 

 

「でも良かったね。ヒナちゃんにシルバー君」

 

「はい。ちゃんと大事に育てます」

 

『ぶぃ~』

 

「わ、私も!…とりあえずこれ以上嫌われないように頑張ります」

 

『ブィィ!!』

 

 

腕をガシガシと噛んできているイーブイの頭を撫でたら、イーブイの力がちょっとだけなくなり、仕方ないなとばかりに噛むのを止めてくれた。その様子を見て苦笑し、このイーブイは素直じゃないのかなと思う。最初に出会った時からずっと不機嫌だったし、反抗期だった頃の兄のリザードンみたいな感じなのだろうか。でも、一応私の手持ちになるという言葉には頷いているみたいだし、兄もセレナさんも険しい顔で否定なんかせず、大丈夫だと頷いてくれたから信じよう。

 

手持ちになったからには、イーブイがちゃんと望むような強さを身に着けて育てていかないとね。

 

 

「よろしくね。イーブイ」

 

『………ブイ』

 

 

 

 

「……それで?この石は何ですか?」

 

 

シルバーの問いかける言葉に私は思わず顔を見上げた。シルバーが持っている石は、何か見たことのあるもので…。

 

 

「シルバー。それはチルタリスナイトっていうメガシンカ用の石なんだ」

 

「メガシンカ…前に文献で読んだことがあります」

 

「ああ。…だが、メガシンカするにはちゃんとしたキーストーンが必要だし、ある程度の修行だって必要だ」

 

『ピィカッチュ』

 

「……はい」

 

 

シルバーが力強く頷いた光景にため息をついた。これでヒビキかクリスが持つことになったらなんか大変なことになる気がする。

マサキさんが何で持っているのかはわからないけれど、兄がその石を見て驚いたようには見えなかったため、マサキさんが所持しているのは知っていたのだろう。セレナさんも納得したような顔をしていることだし。そもそもさっき兄が言った「あれも渡してくれ」って言葉はつまり、メガストーンを渡してくれってことなのかな。

 

 

 

 

「トレーナーとして旅に出ている以上、いつかはメガシンカできるようになるかもしれないから、持っていて損はないぞ。な、ヒナ?」

 

「あのね…私はキーストーンを貰ったとしてもまだ使うつもりないからね!お兄ちゃんから貰ったものは返そうと思っても返せないって諦めてたし!」

 

「何だヒナ。お前は持っていたのか?」

 

「う、うん…リザードナイトをね…」

 

 

 

 

最初にハナダシティに行こうとした時に兄によってプレゼントされたもの。それがリザードナイトYであった。たぶんもう片方のはリザードナイトXの方かなと思う。でも、ポケモンマスターである兄から貰ったものだからこそ、周りでメガシンカするようなトレーナーに会うまでは絶対に使わないと決めていた。メガシンカなんてまだまだ貴重なものなのだから、使う人間は限りあるというのに…ポケモンマスターの妹だから貰えるんだという反応を周りから貰いたくはなかった。これ以上の特別は必要なかった。私は私として旅に出ているからこそ、シルバーやヒビキがメガシンカの道具を手に入れたらって考えていたんだ。

一応貰ったものだけれど、今は持たされたとしても使うつもりがなかったからこそ、リュックの奥底に入れておいたと言うのに…。

 

だが、シルバーが呆れたような顔で私に向かって言う。

 

 

 

 

「何故もらったものを使おうとしないんだ?」

 

「え?」

 

「バトルをして、必要ならば使うのが戦略というものだろう。ヒナ、お前はバトル相手に対して侮辱をする気か?」

 

「う、ううん…侮辱なんてしない。でも、私なんかが持っていいもんじゃないから…」

 

「だが、メガシンカの石を貰ってもなお、使わないと言うことはそういうことだ。ヒナ、相手に対して同情するな。ポケモンマスターの妹だからと、謙遜するな。貴様は、他の人間が持っていない物だからと言ってひけらかすような性格じゃないだろう?貰ったものはバトルに勝つために最大限に使ってこそ、トレーナーというものだ。それをちゃんと理解しろ、ヒナ」

 

 

 

 

シルバーの言葉が心の中に浸透する。

私はポケモンマスターの妹だから、メガシンカの石を貰ってもあまり嬉しくはなかった。リュックの奥底にしまって、絶対に使わないって思っていた。

でもシルバーはそれは違うと私に教えてくれる。そんなのはバトル相手に対して侮辱しているのだと言ってくれる。

強くなるためにたくさんの知識を持っているシルバーだからこそ、その説教は何よりも重いものだった。

ふと、兄の方を見てみた。兄は真剣な顔で私を見ていて、シルバーの言葉に沈黙で返していた。だからこそ、リザードナイトをあげた意味がちょっとだけ分かったような気がする。

 

リザードナイトを使おうとしない私は…バトル相手だけでなく、兄に対しても侮辱をしていたのだろう。貰ったものを使わない理由が、ただポケモンマスターの妹だからという理由だったのだから…。

 

 

私の懐のボールがカタカタと揺れている。そのモンスターボールを全て撫でてから、シルバーに正面から向き合った。

 

 

 

「………うん。ごめんシルバー…それにお兄ちゃんも、ごめんなさい」

 

「フンっ。分かればいいんだ分かれば」

 

「いや。気にしてねーよ。どのみちまだ石は使えねーし…それに、いつか使う時が来るだろうからな」

 

『ピィカッチュ』

 

 

 

シルバーが顔を背け、兄とピカチュウが笑った。セレナさんが私の背中を叩いてくれた。

 

 

私はまだ、トレーナーにちゃんとなれていないような気がする。

 

 

 

「もっともっと…頑張らないと…」

 

『……ブイ』

 

 

 

珍しくイーブイが励ますかのように、私の腕を小さく舐めた。

 

 

 

 

 

 


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