蓮は泥より出でて泥に染まらず   作:時雨ちゃん

5 / 9
今回もいろはす回です。



第5話

無事に平日を終えた後の土曜日。

午前中にやるべき勉強を一通り終わらせ、俺はリビングでこの一週間で溜まったアニメを消化中である。

ほんと、心がぴょんぴょんしたりだとか、どんな敵も一発で倒したりだとか、憧れの先輩に姉妹契約申し込んだりだとか、アニメって色々あるよなー。

……あと妙に聞き覚えのある声のするキャラがいる気がするがまぁそれはいいとしよう。

 

あーー、土曜日って最高だな。

なんたって家から出なくていい。小町も今日は午前中から友達と遊びに行ってるし。カラオケに行くんだそうだ。

だから今日は夕方まで一人でゆっくりできる。

 

♪〜〜

 

すると俺のスマホからメッセージを受信した電子音が鳴る。

誰だ一体。俺の休日を邪魔する奴は。

 

 

☆いろは☆

 

 

……お前か。そういや一昨日メールするだのどうのこうのいってやがったな。

んーと

 

『せんぱいこんにちは!わたしですよー!明日のこと忘れてませんよねー?

明日の九時三十分に駅でお願いします!』

 

日曜日の午前中に俺を呼び出すとか遊びたいとかじゃなくて単なる嫌がらせかよ。

……まぁそんなに嫌ではないんだがなんせ二人だ。そう、二人きり。

今までの二人きりとは少し違う。なんたって聞いてしまったから。

今まではこいつに限っては葉山がいるから勘違いはないだろうと言う保険があったのだがそれがなくなってしまった。

まぁかといってこのプロぼっちたる俺がそんな事で勘違いなどするはずもないのだが……。

 

俺は了解。とだけ返してアニメの消化を再開する。

 

するとまたスマホが鳴る。

 

はやっ!早すぎだろ!由比ヶ浜もそうだが最近の女子高生は文字打つの早すぎやしませんかね?机に置いたスマホをもう一度開く。

 

『せんぱい短すぎやしませんかね(´・ω・`)まあいいですけど。それじゃぁ明日!忘れないでくださいねー!ではー(^ー゜)!』

 

え、この長さのを今の早さで打ったの?やばいな……。指どうなってるんだ。

 

一色はこれ以上続ける気は無いようでメールを終わらせる文面だった。気を使ってくれたのだろうか。ありがたい。いちいち返さなくていいからな。

さて続き続き。

 

 

 

その日の夜、晩飯の時に小町が

 

「明日デートなんでしょ?」

 

と真顔で聞いてきた為、飲んでいた味噌汁を少し吹いてしまった。

小町に汚い!って怒られた。

いやいや、お前のせいだからね?

 

「っ、急に何を言ってるのかな?」

 

「昨日聞こうと思ってたんだけど忘れてて。小町一昨日の夜お兄ちゃんがずっと電話してたの知ってるよ?どっか遊びに行くんでしょ?ねぇねぇ誰と?てかどっち!?」

 

ぬぅ。一色との電話を聞かれていたみたいだ。まぁそりゃそうか、隣の部屋でずっと電話してりゃあ嫌でも聞こえるか。それにうち結構壁薄いし。

 

「どっちってなんだよ。」

 

「もー、分かってるくせにー!結衣さんと雪乃さんでしょー?」

 

なんでその二人なんでしょうかね。由比ヶ浜はまぁ…ありえるかもしれんが雪ノ下はあり得ないだろう。

 

「どっちでもねぇよ。それにデートでもねぇ。ちょっと出かけるだけだ。」

 

「えー、じゃあ誰なの?あ、戸塚さん?」

 

いいねぇ戸塚!戸塚とならどこへでも行くまである。

 

「戸塚でもない。お前の知らない奴だよ。」

 

「えー!嘘嘘、あの二人以外に女の子が!?お兄ちゃんいつの間にそんなお義姉ちゃん候補を!?」

 

「待て待て待て。なんで女子ってわかるんだよ。」

 

「え、違うの?」

 

「………いやそうだけど。あとお義姉ちゃん候補ってなんだ。」

 

「あ、それは気にしないでー。」

 

急にガチトーンになんじゃねぇよ、ゾワってしただろ。

 

「で、誰なの?」

 

まぁ別に隠すようなことでもないしいいだろう。

 

「うちの生徒会長だよ。ほら、前にお前達に協力してもらった時の。」

 

「あー、お兄ちゃんに騙されて会長になった人ね。」

 

「いや別に騙しては……。」

 

「じゃあじゃあお兄ちゃん!明日朝チェックするからね!」

 

あぁダメだ聞いちゃいねぇ。こうなると小町は止まらない。

 

「チェックって何を?」

 

「服装だよ!ふ・く・そ・う!」

 

え、俺ってそんなに絶望的なフッションセンスしてる?別に普通でいいんじゃねぇーの?

 

「え、別に普通でいいんじゃないの?」

 

「お兄ちゃんの普通はちょっとおかしいから。」

 

………嘘だろ。

実の妹にそれを言われるのは予想以上にショックだな。

まぁでも確かに選んでもらえるんならそっちの方がいいか。

相手は一色だし、中途半端だと何言われるかわからん。

 

「……んじゃ頼むわ。」

 

「んー!おっけー!まっかせてー!でさでさお兄ちゃん。その人ってなんていうの?」

 

「ん、あぁ一色っつうんだ。」

 

「ほー。可愛い?」

 

「え、ぁあまぁ可愛いほうじゃねぇの?」

 

あいつは確かに可愛いほうだ。ほうというか可愛いと思う。

あのあざとい性格も相まって男共に人気があるのは分からなくもない。

女は……まぁ、うん。触れないでおこう。

 

「へー!可愛いんだ!今度つれてきてね!」

 

「え、嫌だよ。」

 

一色と小町を会わせてしまったら絶対とんでもないことになるし。

あざといのとあざといので超あざとくなるのは目に見えてる。そうなってしまったらもう俺には扱いきれない。

 

小町は俺の発言に特に興味を示さなかったのか、何やら携帯でカチカチ打っていた。

 

「小町、飯の途中だぞ。」

 

「あーうん、ごめんごめん。」

 

ご飯の時に携帯触っちゃいけません!

友達との外食は可。あ、俺友達居ないんだった。

小町はそう言うと用は済んだのかケータイをしまい、俺と小町は食事を再開した。

 

 

 

そして夜が明けて日曜日。

俺は今待ち合わせ場所にいる。

 

小町にチェックしてもらった服は黒いニット?の中に白いシャツを着て、下は白いジーパン?いや、パンツ?っていうのか?俺にはわからないがまぁそれなりだと俺も思う。てかこんな服俺持ってたか?いつ買ったんだよ。

まぁ、何はともあれ流石小町だ。

その小町は俺の服を選んだ後すぐに何処かへ出かけていった。

昨日もカラオケ行ってたのに……。まぁ中学生活最後を満喫しているんだろう。

 

今は音楽を聴きながら一色を待っているのだが……現在の時刻は九時四十分。

待ち合わせは三十分。

…………来ない。

一度電話してみたが繋がらなかった。

 

これはまさか実はどっかから見てて

「うわ、あいつ本当に来たよwwwwキモwww」っていうやつなんじゃ……

…いやまぁそれはないか。俺のこと誘う時あいつ最初建前使ってたし、多分寝坊かなんかだろ。

もう一回かけてみるか。

 

スマホを取り出し一色を呼び出す。

数回コール音がした後電話が繋がった。

 

『あーい、もしもしぃ…せんぱいですかぁ〜、どうしたんですかこんな朝から…ふぁ〜。』

 

……こいつ、今起きやがったな。完全寝起きの声だし。あくびしてるし。

 

「おいおいこんな朝からってな……。一色さん、今は何時ですか。」

 

『…え?何時って……え!うそ!ちょっと!え、え、え、ご、ごごめんなさいせんぱい!!寝坊しちゃいました!せんぱいもう駅ですか!?」

 

めっちゃ慌ててる。慌てる一色は新鮮でちょっと面白い。

 

「俺はもう駅についてるしお前が寝坊してることもわかってる。」

 

『あーもう!ちゃんと目覚ましかけといたのに!こんな事ならお母さんに起こしてって言っとくんだった!』

 

……聞こえてないな。

 

『ほんとに最悪…。目の下クマとかないよねぇ…?。せんぱい…すいません。急いで行くんでもうちょっと待っててもらえますか……?」

 

いやなんでそんなに泣きそうなの?めっちゃ涙声なんだけど。

目の下クマって眠れなかったのか?

 

「わかったわかった、俺は大丈夫だからゆっくり落ち着いて来い。俺はどっか喫茶店でも入ってるから。」

 

『うぅ……ごめんなさい。』

 

「わかったわかった、大丈夫だから。気をつけて来いよ。」

 

『はいぃ。」

 

俺は通話を終了させ、スマホをポケットにしまい歩き出す。

やっぱ寝坊だったか。ドッキリじゃなくて安心した。

さて、適当に店探しますかね。

 

 

 

 

俺は駅の近くの喫茶店を見つけそこに入る。店員に気持ちよく挨拶をされ、お好きな席にと通されたので店内を見渡す。

すると窓際でいい場所があいていたのでそこに腰を下ろす。ここにした理由はここからは駅が見え、一色が来るとすぐにわかるからな。

一色に店の大体の場所と名前をメールで伝える。

 

 

朝飯は食べてきたのでコーヒーだけを頼み、こういう時のために持ってきていたラノベを読みながら一色を待つことにする。

 

 

 

一時間ほど経った頃そろそろかと思いラノベを閉じる。伸びをしながら窓から外を見ているとそこには息を切らして肩を上下させキョロキョロと辺りを見渡している一色がいた。

…と、店を見つけたのかこっちに寄ってくる。

 

すると一色は窓を見ながら立ち止まり髪の毛を整え始めた。しかも俺の目の前で。

な、何してんのこの子……。

え、俺がいることに気付いてない?

こんなに近いのに?

 

一色は手櫛で髪を整え前髪を弄ったり、服装を整えて息を落ち着かせたり、急に、キラキラ〜〜っていう効果音がつきそうなぐらいの笑顔になったりとそれはもうかわい…おもしろい。

 

俺がその変な光景を眺めていると髪を整え終え、笑顔の練習らしきことをしていた一色と目が合った。合ってしまった。

 

そこからの一色は、みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、口をパクパクさせて後ずさりながら俺を見ていた。

そういう俺もなぜか釣られて恥ずかしくなってしまった。俺はとっさに一色から目をそらして冷たいコーヒーを啜る。

一色も開いた口を閉じ、真っ赤な顔のまま入り口に向かい店に入ってくる。

店員も見ていたのかちょっと笑っているように見える。

……まぁ、あれはちょっと恥ずかしいわ。てかあいつ鏡とか持ってなかったのか?

 

店員さんに案内され俺のいる席まで歩いてくる。

一色は真っ赤な顔で席に座りすごい勢いで机に突っ伏した。

 

「……………お、おはようございます。せんぱい。」

 

「……あ、ああ、おはよう。」

 

一色は突っ伏したまま消え入りそうな声で挨拶をしてきた。

……これ、今日大丈夫かよ。

 

 

end




デート回は長くなってしまうと思います。

いろはす率高くてごめんなさい。笑
窓を鏡代わりにして身だしなみを直すのはニセ◯イを真似てみました。すいません。笑
反省はしてますが後悔はしてません笑

今回もお読みいただきありがとうございます。

お気づきの事がありましたら教えてください。

ではまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。