聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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さて、前回よりどれほどのイベントが過ぎたのか......もう覚えておりません。しかし増えた星5は確定ガチャで引いたジャックのみ。お久しぶりです皆さん、作者です。
数ヶ月ぶりの投稿ですが、今回は生存報告をしたかったので既に書き上がっていた没話を挙げさせてもらいたいなぁと......えぇ、中を見ればわかりますが......作者のチョイスというか季節感が異次元にレイシフトしています。
特に内容に意味もありません。なにせ雪の上で戦う信長を書きたかっただけで適当に場面を作っただけですので......
やはり信長可愛い。聖杯を思わず彼女につぎ込んでしまうくらいには可愛い。みなさんは誰に聖杯をあげるのでしょうか?マシュの分は残されていますか?今後のイベントやストーリーの難易度、現在の手持ちを考えてご利用くださいね。

さて、前書きも長くなりました。番外です、どうぞー


幕間 決闘の約束

────白き世界を、黒き威光が薙ぎ払い

 

 

────黒き波を、無数の火線が食い破る

 

 

破壊し、蹂躙し、侵略し、衝突しては弾けていく。

そこに踊る影は二つ……雪の降りしきるその白銀の夢で、二度目の邂逅をよろこびあう様に刃を打ち合わせ、その余波でもって泡沫の空間を削っていく

 

ここは聖夜の世界、求めるもの達が作り出し、願われた者がそれを叶えるだけの小さな箱庭(ものがたり)

既にすべての満足を持って完結した、終幕を待つだけの、閉じた世界に過ぎなかった─────異物が混入する、その瞬間までは

 

「ふむ、あれからどれほどの時間が経過したのか、所詮夢でしかない私には預かり知らぬことだが────随分と本来の強さに近づいてきたのではないか、魔王よ」

 

この物語において、ただ与えるもの(サンタ)に選ばれた少女……その名はアルトリアペンドラゴン。いつもの黒きドレスの上に、それなりの衣装を施したマントと帽子を装着した、反転した騎士王である。

彼女は夢を求める子供たちの為にとソリに乗って、空で特別な夜を彩る星を背景に沢山のプレゼントを配り終えた。狂気に染められた子供たちを寝かし沈め、祭事に浮かれた娘共も寝かし沈め、酒に煽られたどうしようもない大人をも更に寝かし沈め……女尊男卑な弓兵共は海に沈めて、ここでようやくマトモな子供たちと出会い、偽のサンタを駆逐して、行き遅れの同類を叩きのめし、その一週間にも及ぶ聖夜までの旅を終えたのだ

 

「前回負けておいてその上から目線────わしをして絶句する他ないとか快挙もんじゃぞ!てか随分と珍妙な格好になったのぅ、騎士王ッ!!」

 

しかしその最後の瞬間、まさに夢から覚めるその瞬間という所で、奴は来た。

突如カルデアから姿を消し、トナカイとしてサンタに付き従わされているマスターの気配を察知して、戦国に生きたくせに無駄に持ってる技術力で持って夢の世界へと飛び込んできた最凶最悪の武将────その名は織田信長。

黒き衣装にマント、帽子と文にしてみれば衣装は似ているが、絵的にいえばただのロリ軍人である。クリスマスの情緒もへったくれもありはしない。

そんな彼女がこんな世界に飛び込んできた理由はただ一つ……己が主を取り戻すため。

あと一瞬もすれば帰ってくるとか、そんなことは関係ないのだ。彼女からすれば、奪われたのだから取り返す、そこに帰結しそこで完結している。

それでも無理やり理由をつけるとすれば……まぁ、サンタからプレゼントを強奪しに来た……とかでいいのではないだろうか。大体織田信長なんて存在はそんなものだ。これでも長い付き合い、とうにそんなことは分かりきっている。

あぁ、お前は誰だという言葉には一応答えておこう。どうも、近衛凜です。今は(マスター)で子ジカで旦那様(ますたぁ)でトナカイです。

いつものことながら疲れたので、俺にはもう触れないでください。俺ももうこの光景をただ伝えることのみに尽力します。自分のことには触れません……えぇ、触れません

 

 

さて、このふたりが出会うまでの流れはだいたいつかんでもらえたと思います。そして、なぜ戦っているかも説明は不要でしょう。片や武闘派サンタで、片や略奪系ヤンキーです。そりゃこうなります。ガンの飛ばしあいの代わりに光線を打ち合って雪解けの水蒸気で辺りを染め上げ、頭突き合いの代わりに秒間数十を越える剣戟で舞い上がった雪ごと蒸気を切り飛ばし、殴り合いの代わりに大地を揺らす……まぁこんな喧嘩がない現代に生まれてよかったなぁなんて思いながら……こんな存在を呼べる現代嫌だなぁとも思ったりしてます。

さて、とはいえこの二騎の組み合わせは既に一度終えています。お互いあの時から変わったものですが、だからといって普通戦闘の内容は変わりません。それは既にお互いが完結した存在であるからなのですが……セイバーオルタ────いえ、サンタオルタの変化はその常識を覆します。

クラスをセイバーからライダーに変えた彼女は、魔力放出に加え聖剣の極光すらも推進力として使えるようになりました。その機動力は正しくライダーのサーヴァント(サンタ)、前回ではかわしきれなかった三千丁による掃射戦闘も、今の彼女ならばその戦闘機じみた曲芸飛行によって追随することすら可能です。

そして対する信長も負けてはいません。相手が変わったように、信長も進化を遂げました。常時三千丁同時運営による、強力無比な圧倒戦法……これまで超えてきた特異点での戦いから得た、信長の新しい手札です。これに加え、いつもの三千世界による立体高速移動もあるのですから、その力は何らサンタオルタに劣るものではありません。

絶対無二の一撃に、怒涛の斬撃による雨、魔力放出で高速移動の微調整と加えて防御まで兼ね備えたサンタオルタはさながら戦闘機の如く動く大型戦艦。

それとぶつかる信長は、射角に射程、弾数まで制限を突破らって動く、同じく戦闘機レベルの機動要塞です。今カルデアでは、技術力を持て余した職員達が、信長の新しい切り札として『AZUTI』なる爆撃機を作っているらしいですが……この光景を見るに、もうそんなもの必要ないんじゃないでしょうか?

無論このふたりがぶつかり合うのだから、地表は灼けますし山もくり抜かれます。空も広がりますし、その出力だけで成層圏まで行ける二人なので俺の目に見えない様な遠くもきっとこんな有様でしょう。むしろ俺への被害を考えてならべく直下への攻撃を避けている分、きっと地平線の向こうの方がひどいことになっている可能性は非常に大きいです。

 

約束された(ジングル)ぅ────勝利の剣(ベル)ぅぅぅーーーーッ!!」

「ハッハッハァ!そぅらメリークリスマス!メリークリスマスじゃぁ!!」

 

あぁ、サンタオルタがソリを漕ぎながら歌っていた『特異点をパドルパドル』がリアルになるとは思わなかった……やめろ、漕ぐな。世界という規模で漕ぐんじゃない。

ゴン太の黒き閃光が宙を薙ぐと、その周りを旋回するように信長は周囲に浮かべた火縄銃を推進力に滑空し、心象風景より零れ落ちた炎を刃へと宿らせ切りかかる。

対するサンタは肩に担いだプレゼント袋を振りかぶると、魔力放出でもって強化して殴りかかった。

面での攻撃であり、なおかつ布地であるが故に自由に動くプレゼント袋に攻撃をいなされ好きを晒す信長へ、周囲に揺蕩わせた霧状の魔力を凝縮してサンタは振り下ろす。逆さ十字の黒剣が牙を向くのは白きうなじが覗く魔王の首元。髑髏をイメージとする彼女への意趣返しか、その狙いは鋭く疾く澄んでいた。

 

「───相も変わらず、自身の剣技への過信がすぎるのぅ」

 

しかしてなお余裕をかます信長の首を、空より落ちた幾条もの流星が守る。赤き輝きの正体は鉄の球、赫灼とした魔力の塊。周囲に展開され、信長の動きに合わせて援護射撃をする三千世界が撃ち込んだ防御の一手。

 

「ムッ?」

 

思わずと唸ったサンタへ、しかし手を止めることなく攻めたてる。

魔力放出の効力は一瞬。その瞬間さえ過ぎてしまえばプレゼント袋は所詮ただの袋へと成り下がる。包まれた刀を少し引くだけで捌かれた布地は拘束力を失い、中身と刀を解放した。

それ即ち信長の自由である。刀から再度炎を迸らせては彼女は刃を翻した……が、しかして伊達に騎士王を名乗らぬ少女である。反転していても尚その勘は鈍ることなく、むしろ反転したが故に取れる自由な動きがその危機から身を逃がす。

袋より溢れたプレゼント箱へ向けて魔力を放ち、さながらアーチャーの如く射出する。

見た目こそふざけているが、騎士王の黒き魔力を纏ったそれらはさながら禍津星の如く、着弾すれば地を抉り、命を攫う。

 

「受け取れ、プレゼントの時間だ」

「いやプレゼントの使い方的にサンタ失格じゃね!?」

 

悲鳴を上げながらもツッコムという快挙を成し遂げながら信長は撃墜され、地に落ちる。

雪を巻き上げながら着地し、ならばと言わんばかりに展開した三千世界の掃射が宙を走って逃げるサンタを追いかける。

 

「フハハハ、貴殿の破天荒は既に貴殿だけのものではない。私は暴君、なれば他者のものを奪ってこその暴君だろう!貴殿からは破天荒を、私からはプレゼントを!これでwin-winというヤツだ」

「あいでんてぃくらっしゅというやつなんじゃが!?ワシ一方的に個性殺されてるんじゃがそれはぁ!?」

「知らん、そんな事は私の管轄外だ。貴様のようなロリババアに用はない。全国のちびっ子が待っているのでな!貴様と違って人気があるのでなぁ!」

「あー、今貴様地雷を踏んだぞ!誰が人斬りのおまけか!?知名度的には絶対こっちの方が上じゃもん!立場的にも実力的にも上じゃもん!────セイバー顔がそんなに偉いかぁ!?」

 

空からは一撃で大地を砕くビームが、地からは三千撃を持って大空を埋め尽くすビームがそれぞれ打ち出され続けている。

一応の配慮からか俺の周囲はほぼ無傷であるが、それでも2mも離れれば焦土が広がる。余波だけでこうなっているのだ。信長の宝具が大規模である故か、彼女の喧嘩は必ずこうして戦争じみた光景を作り出す。

 

「あぁ、うん。もうよくわかった」

 

身体を地面へと投げ出し、戦いの間隙に移り込む聖夜の空を見上げる。映る大天にあの円環は無く、この日この時ばかりは平和がある事を感じさせてくれる。

翳した手を月へと向けて、輝く2画に思いを乗せて語りかける……否、()()()()()

 

「今すぐ喧嘩をやめろ、俺の相棒たち」

 

ぐえっ、という悲鳴を聞きながら俺はどこか清々しい気持ちで崩壊を始める世界を見ていた。願いによって維持されていたこの聖夜は、数分と立たず訪れる25日の零時をもって達成される。───達成とはつまり終焉、終わるということ。完結するということ。

 

この箱庭(ものがたり)は間もなく終わる。夢は、もう終わりだ。

 

「だから最後くらい仲良くしなよ。オルタだって、こんな事をするためにライダーになったんじゃないだろう?」

 

お互いボロボロになりながら、それでもいがみ合いながら歩いてきた片割れへ、そう問いかける。

 

「……ふん、トナカイの分際で最後まで生意気なものだ。だがまぁ───今回ばかりは不問にしてやろう。受け取れ魔王よ」

「あん?───なんじゃこれ?」

 

投げ渡された影は焼きこげたプレゼント箱の一つ。信長に直撃し、地面へとたたき落とした件の箱である。

 

「言ったであろう?今の私はただ与えるもの……今更与えるもの者を選ぶまい、たとえそれが童女の皮をかぶった魔人であろうと、今の私には分け隔てなく聖夜を心待ちにするちびっ子なのだから」

「……ふん、それでは是非もない。ありがたく受け取って────」

 

……どっちも素直じゃないことだけは変わらない。仲良く出来ないのは相性の問題なのか、あるいはこれが彼女らの友愛の示し方なのか

 

「───やるかこんなもの」

 

「───ほぅ、それは新手の挨拶か魔王よ」

 

 

 

 

 

おう、やりやがったよこの魔王様。素直じゃないとかそういうレベルじゃなくてもうなんというか……やっぱ魔王だわ。

 

「ふん、献上品であれば受け取ろう。しかし施しであらば受け取るわけにはいかん。それが夢であるのであれば、それこそわしには資格がない。そもそも魔王とは即ち他者の夢を奪う者……必要であれば自分で奪い取るわい」

 

だからと言ってあの流れでプレゼントを斬るかね?

 

「……なるほど、道理だ。確かに礼を欠いたのはこちらの様だ。先程のは私の理論……一方的な意見の押しつけはプレゼントとは言わんな」

「夢は終わりじゃ主よ、さっさとあるべき場所に帰るぞ。夢からは醒めるもんじゃ。自身で目覚めなければ意味が無い。自分の足で歩けよ」

 

彼女の力強い手に引き上げられ、立たされてようやく目に入る、両断されたそれの姿に思わず笑みが溢れる。

 

 

そうだとも、心配せずとも彼女らはきっと仲良しなのだ。きっと素直になった結果がこれなのだから。彼女らは何よりも自分に素直に生きる人種……王なのだから。

 

「騎士王よ、次こそは決着をつけよう───別れの挨拶はこれで良いか?」

 

返答は無かった。しかし彼女らの関係にそれは不要なのだろう。お互いが主張するだけの関係に、会話なんて成立するはずもないのだから

 

「さぁ、帰ろうか───俺達の世界へ!」

 

一歩踏み出す、再び降り出した雪に刻まれた足跡は道となり、反射した光が視界を照らす。一歩進む事に身体が浮いていくようだ。ほとんど前も見えなくなるほどの眩い世界で、それでも前を歩く黒い彼女の姿ははっきりと見えていた。

 

 

聖なる夜が明けていく─────。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ふむ、行ったか」

 

一人取り残されたのは物語の此度の物語の主役、あるいは主役たちへと夢を届けた狂言回しか。

 

「いや、流石にそれは言い過ぎだろう。立場的にいえば、トナカイこそがそれだ。他ならぬ私がそれを求めたのだから間違いない」

 

何にせよ、この世界に残るのは自分ひとり、醒めた夢に重さはなく、ただ忘れ去られるのに合わせて消え行くのみ。

……だがそれのどこがいけないのか?自分にとっては素晴らしいとしか思えないのだ。

 

未来へと夢を託す、それこそが人間の本懐であり本領である。その夢の結晶を振るう自分であるからこそ、それを忘れてはならない。

また来年の冬になれば雪は降る。降れば積もり、積もればソリは走る。

 

「サンタを待つ者がいる限り、私は何度でも現れる。また会おう、ちびっ子たちよ!」

 

 

ソリさえ走れば───サンタはまた来るのだ。

 

 

「───メリークリスマスッ!」

 

 




最後にぶった切られたプレゼントはそれなりに意味があります。一応、信長のセリフと絡めて洒落の効いたプレゼントにしたのですが、あえて答えは書きません。なんかダサいじゃないですか言っちゃったら。考えてみてねってやつです。

さて、今回は久しぶりの鯖紹介なので張り切っていきましょう。
今回のサーヴァントはアルトリアペンドラゴン、おまえ何体目だよという質問には答えられません。
ちなみにこのアルトリアはオルタ化している上にライダーという謎仕様です。何に乗っているかって?ソリに決まってんだろ?話を見ていなかったのか?......えぇ、彼女なんとついにサンタさんになってしまいました。なので聖剣を使って高速移動しやがります。大気圏だか成層圏だかまで飛べるそうです。でも宝具は安定のビームなんですけどね。
グランドオーダーのクリスマスイベントにて配布されたサーヴァントで、性能はほとんどセイバーオルタと違いはありません。ただしクラスがライダーであること、魔力放出のバフの強さが変わっていること、カリスマの代わりに回復+クリティカルスター発生率アップバフスキルを持っていることの違いがあります。
性格はシリアス次元ではないのでそこまで過激には見えませんが、実際には多分本編と変わらないんでしょうね。プレゼント交換画面ではいくつかのボイスを聞けるのですが、中でもオルタが歌うパドルパドル〜はとても可愛く、必ず聞くことをおすすめします。

さて、本来書ける事はまだいくつかありますが、充電的な関係とネタバレ的なあれもあるので今回はここまで。
八月中にはこの作品ともう一つの作品の話を進めたいなと思っております。また次の機会にお会いしましょう!ではまた!

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