しかもですね。戦闘が書けない時の逃避法、「メンタルカウンセリング」も、敵との因縁がそれに適した感じではないのですごい厳しかった。本編見たらわかるけど完全に「セルフカウンセリング」です、誠にありがとうございました。
では本編どうぞ
邪竜ファブニールは、かつて自身が倒した竜である。竜種として、絶対的な力を奮った彼を貫いたのはこの剣だ。
そしてその恩恵で、当時は無かった不死身の肉体と、今でこそ機能していないものの、竜の心臓という破格の能力を手に入れることが出来た。
まぁ要は、今対峙しているのはかつて倒した敵であり、俺自身も当時よりも圧倒的に強くなっていると、そう思ってくれればそれでいい。
だが、現実的に勝率を出すとすれば、まず間違いなくそれは零に近いものだと思う。竜殺しの力を持ってしてもなお、正面からの打倒は難しい。だからこそ竜殺しの偉業は伝説となり、語り継がれる要因となりうるのだ。
山脈が蠢くかのような挙動で打ち出された掌底、それはきっと奴にしてみれば何気ない動作なのかもしれない。試しにとばかりに腕を上げ、下ろしただけの攻撃かもしれない。
「ぐっ……お……おぉ!」
しかしそれを受け止め、弾き返すだけでも大きな苦労だ。威力だけならばまだいい。この肉体は彼の日輪の鎧すら上回る強度を誇る宝具なのだから。
問題なのは伸し掛る重圧、単純なる重さだ。如何にダメージが通らないとはいえ、この様に上から抑えられてしまえば退かすのは一苦労なのだ
「
故に片手で受け止め、宝具による面上の斬撃をもって押し返す。戦いはお互いの体力の続く限り、これを繰り返して行く他ない。
無論そんな力比べに付き合わなくとも、根気勝負に持ち込まなくとも、人間には人間の戦い方があるだろう。突き出されたものに打ち合わず、ヒラリッと躱して剣を振るう道は確かにある。
だが、そうもいかない。
「ぐぅぅ────幻想大剣・天魔失墜!!」
吐き出された灼熱の呼気にも、踏み抜かれた大地による驟雨にも、大気を切り刻む鋭き尖角にも……
「幻想大剣・天魔失墜!」
「幻想大剣・天魔失墜!!」
「幻想大剣・天魔失墜!!!」
剣先より迸る波動でもって対応し、敵の身を抉り、削っていく。
幸いだったのはこの
そもそも竜と正面からぶつかろうという方がおかしいのだ。攻撃を受けようという考えがおかしいのだ。この采配になった事には文句は無い。恐らくマスターも、信長公の力故に、俺がここまで苦戦するとは思っていなかったのだろう。だからといって今更彼らに移動する余力はない。後ろは後ろで数多の飛竜の襲撃を、決死の力で乗り切っているのだから。
だとすればやはり状況を変えるのは俺であるべきだ。でなければここまでしてもらった面目が立たない。
俺はここで、ライダーが散ってまで願った民の平和を、守り抜かなくてはならない。そうした願いに……応えなくてはならない。
発想を変えるのだ、信長公のように頭を働かせろ。彼女ならばどうする?あの破天荒ならばこの状況────手荒くなるか、だがそれでこそ破天荒。
「マスター、清姫と共に衝撃に備えてくれ」
念話と同時に身を深く沈める。
それを好機とみたファブニールは、隙も気にせず口内を鮮明な赤に染め、炎の舌を迸らせた。
先程までなら全霊で迎撃していたそれを、俺は敢えて飛び上がる事で躱してしまう。
自然とどまることの無い怒涛の流れは飛竜を巻き込みながらマスター達へと向かっていき────
「────ここだ。幻想大剣・天魔失墜!!」
上から押しつぶす様に広がったバルムンクによって捻じ曲げられ、衝撃で持って彼らの身を吹き飛ばした。
頭の中は瞬時にマスターの文句や、密着して嬉しい、しかしこの乱暴さに怒り狂うべきかと葛藤する淑女の声に満たされるが、それらに気を取られている暇は無い。
背部に魔力を集中する。竜殺しであるこの身だが、それと同時に俺は竜の力も持っている。この不死身はある一種の呪い。であれば自然、使い続けていればこの身もどんどん竜へと変質していく。
俺の意志に応えるように、魔力を集中した部位からは、本物には及ばなくとも、肉体相応の強靭な翼が一対となって生えてくる
「が……ァ──────ァァアアアッ!!」
より強靭に、より強固に、より暴力的に。
赤熱に侵されながら身体は瞬く間に変遷していく。頭部からは頑健な角が伸び、臀部からは硬質な竜尾が姿を覗かせた
「────行くぞ、ファブニール!」
滞空こそままならないが、翼のおかげで空中でも加速を得る程度のことは出来る。
力強く空を叩いた両翼が、推進力となって身体を竜の眼前へと持ってきた。
なされるがままだった先ほどとは違う、ここからは……俺の攻勢だ。
切り揉む身体を尻尾で直し、ブレスの硬直から立ち直れないその顔面へと刃を叩き込む。
「幻想大剣────天魔失墜!」
面上に広がる斬撃とは、要は斬撃を拡散させているということ。対竜の力と、元々の威力が、それでも脅威的な結果を生み出させるが、それでも本来の威力には程遠い。
故に、拡散し切る前の、零距離における真名解放が生み出す結果は……今までの比にはならない。
絞られた斬撃は、強固な鱗と凌ぎを削り、その切っ先を逸らしながらも、それでも悪竜の左顔面を抉りとった。
間髪置かずに剣を振りかぶったところで、ファブニールの身体が緑色に輝き出す────蘇るのは生前の記憶。激怒した竜による、星屑の煌めき……
「しまっ─────」
反射的に天を見上げた俺へ、一条の炎塊が炸裂する。骨が軋み、肌は爛れる─────不死身の肉体を越える威力の一撃。
抵抗する余裕もなく地面へと叩きつけられた俺へ、今度は顔面の半分ほどを喪失した悪竜が、それでも目いっぱいに顎を開き、食いついて来た。飲まれた下半身より伝わる熱は、慣れ親しんだ竜の息吹のもの。
直後に広がった煉獄の海の中で、それでも無理矢理に剣を振りかぶる。
「幻想大剣・天魔失墜ッ!!!」
口内で爆ぜた暁の光は、灼熱の大気と反発し、互いを打ち削りながら、その暴威をお互いへそのまま返していく。
お互いに口内と、そして下半身を熱にやられ、激痛のままに大地をのたうった。
負傷具合でみれば、まだこちらが優勢だ。だがしかし、純正の竜であるファブニールは回復力すら並外れている。
このまま泥沼の戦いに浸ってしまえば、結果はどう転ぶかわからない。
────そして問題はそれだけじゃない。この竜に近づいた身は、いわば宝具の副作用の面なのだ。本来ならば有り得ぬ使い方を、魔力に任せた暴走によって無理やり引き起こしている。剣を振るう事に激痛が走るのがその証左……早く決着をつけなければ、下手をすれば自身の力で身を滅ぼしてしまうかもしれない
しかし焦れば焦るほどに、その身は動きに無駄を増やしていく。
……らしくない。しかしこれは自身でどうこうできることではない。自分でもわかっていて抑えられないのだから、手に負える代物では無いのだろう。
────正義が好きだ。英雄と呼ばれることを、誇りに思う。だけれど、その憧れは呪いに近い。多くの人間が、潜在的に持ち、いつの間にかくじかれている大きな呪いだ。
一度善悪を定めてしまえば、二度とそれを裏切ることは出来ない。正義の味方は常に崖っぷちであり、勝利してもなおその身はまた少し奈落へと近づいていく。
悪に美学などというものがあるとすれば、正義にあるのは美談のみ。美談しか許されない。美談以外は正義ではない。
「ファブニール、俺は変わったか?俺は今、自身の正義のために、立ち上がっているのだろうか?」
俺にはもう正義なんてわからない。でもだからと思考停止をするのはもうやめたのだ。誇りに従って、自分の思う善行をなす────しかしそれだけのことが、これ程に重いとは思わなかった
。
今まではただ助けを求められるがままに敵を切ってきた。最後にようやく自身の夢を見つけ、死後の聖杯戦争ではその鍵をつかむことが出来た。だからこそ俺はここで民のために立ち上がったのだ……だがどうしたこのザマは?街一つ守り着ることも出来ず瀕死になり、その後は仲間の足を引っ張るばかり。挙句一人の犠牲を出してまで復活させてもらったにも関わらずこの体たらく……自分で自分が嫌になる。
結局俺は他者の願望を叶えるだけの機械の時の方が良かったのではないだろうか?そんな思考が過ぎるほどに……背負った命は重すぎた。
マスター達を吹き飛ばした事もそうだ、結局俺は誰かを信用することが出来ていない。だからこそ彼らに背中を任せることが出来なかったし、もしも自分がヘマをして彼らが死んでしまったら、今度こそその重さに耐えきれず潰れるとわかっていたから遠ざけた。だからこそ無茶を承知で竜化をし、その理由に破天荒を使った。
────俺の意思は借り物だ、紛い物でしかない。覚悟も無い、あるのは理想のみ。そんなものの振るう剣が、どうして竜殺しに至るのか?
「あの時振るう剣には、楽しさがあった。だがお前を倒し、英雄へと至って、世界が広がってからの俺は……きっと弱くなった」
拳を交わし、角を打ち合い、尻尾を叩き合わせ、剣と息吹が混じり合う。
今や惰性で剣を振るうのみの俺では、そう遠くないうちに突破されてしまう。わかっていても行動に移す気力がない。
「きっと俺は英雄の器などでは無かった。なぜなら俺は、有るべき芯を持ちえない。それをマスターは従順な良いサーヴァントだと言ったがそれは違う。俺のは、ただの無個性だ。怠惰が生んだ、愚かな他人任せの極みに過ぎない」
今思えば、あの黒騎士は似たようなことを考えていたのかもしれないな。
卓越した武技とは裏腹に、発露させた怒りの深淵はきっと俺と似たようなものだ。自分を出し切ることも出来ず、他人に頼り切ることも良しと出来なかった半端者……英雄未満の竜殺し。
「いっそ、ここで討たれれば楽にもなるのだろうか?きっと信長公であれば、ファブニール……お前も容易く討ち取ることだろう」
ならば、俺はあとを誰かに任せることこそ最善なのではないか?
────バカを言え。この途方もない愚かさを、俺は嫌っているのだ。
「ファブニール、俺は英雄だ……いや、今からでも、本物にならなくてはならない。他人の願いを叶えて満足するような機械では無く、自身の欲を持って、誇りを持って戦いを制す────そんな英雄に」
続く激しい戦いの結果。ファブニールの傷は顔面の物以外はほとんど全快……対する俺は、身体の機能が実に半分ほど停止している。肉は爛れているし、中身もおそらく歪んでいるだろう。だがそれでもまだ半死だ、聖女をして生きているのがおかしい呪いに耐えて来た俺にとって、それしか脳の無い俺にとって、こんな物は傷には入らない。
……ならば互角以上だろう、楽勝だ。
「ファブニール、俺はな─────今からお前を殺すぞ。何度だろうが打倒して、自分が認められる英雄になってやるさ」
特に傷のひどい左脚に尾を巻き付け、無理やり動かせるように調整する。倒れないための支えになりさえすればそれでいい。最悪移動は翼と剣がある。
そうだとも、何も真正面から闘う必要はない。
躱して、ただ叩き込めばいい。
俺の言葉を理解したわけでもないだろうが、踏み出された足の下を掻い潜る様に走り抜け、内側に入り込んだところでふたたび抜剣。
ドーム状打ち出された斬撃に翻弄され、ファブニールは宙へと舞いあげられる。
羽ばたいて、姿勢を保とうとするその背へと飛び乗り再度のバルムンク。今度は逆に地面へとその身を縛り付ける。
そう、これだ。
あとは、激昴と共に打ち上げられる炎にさえ気を付けてさえいれば─────
「くっ、言ってる側から!」
全身から吹き上がるように打ち上げられた巨大な球は、空中で分散し、隕石の如く一体へと降り注ぐ。
恐ろしいのはその威力。あまりの高熱に触れた空気が瞬間的に膨張し、範囲の中はさながら嵐のようになる。動きを止められたそこへ更に遅れて降ってきた球が止めを指すのだ
あの攻撃は、この不死身を持ってしても、そう何度も受けきれない。
であれば────砕くのみ
「幻想大剣・天魔失墜!!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
戦いは終わらない。いくら剣を振り上げようとも、いくら咆哮を叩きつけられようとも、どちらが倒れることもない。
遠に限界など超えている、だが倒れない。であれば今さら何度同じことを繰り返したところで決着など付くはずもない。
とはいえ、この身は竜殺しに特化したもの。器用さなどなく、他のサーヴァントの様に応用を効かせることは難しい。
ファブニール自身も、度重なる竜殺しの剣により回復もままならなくなってきている。特に顔面の傷は、既に治癒の兆候すら見られない。
─────GYAAAaaaaaUUUUU!!!!
「……??ただの咆哮とは違う────ワイバーンか!?」
戦場を埋め尽くす飛竜の群れは、その全てがファブニールによって統治されている。なにやら合流した現地の兵士が食い止めてはいるが、それでもこの規模ならばこちらへ回す余力がある。
全快の状態であれば、気に求めない木っ端だが……今の状態であればダメージはなくとも、俺の足を縫い止めるほどの役割は果たすだろう。
一掃の為にバルムンクを発動し、視界を切り開いた俺の前に広がったのは、宝生の空────一面の天へと広がる悪魔の卵、死傷の竜星。
「
再装填は間に合わない。確かに連射の効く宝具ではあるが、全盛期には届かぬこの身では、流石にこのペースで切り返すことは叶わない
────すまない、マスター。勝利は難しそうだ。
竜星の迎撃を諦め、ようやく発射体制になった剣はファブニールへと向ける。
勝利はできなくとも、せめて相討ちには持ち込んでみせる。
たとえ理想に届かなくとも、せめてこの身をもって仲間の理想位は届けて見せよう。
そうして光の柱が降り立つ終世の中を駆ける俺の頭上を、また別種の
空間すら歪ませる竜の咆哮に、神仏すら恐れんと逆巻く炎の大蛇────マスターからの援護だ。
大技の直後で動きを止めた悪竜へ、俺はその刃を突き立てる。開放を今か今かと待ち受けるその剣の柄を捻り、宝玉を露出させると共に告げる
「
眩い輝きが宝玉より溢れ、渦巻いた魔力が刃に流れ込む事で、その刃を竜殺に足る物へと昇華する。
広がる斬撃とはつまり巨大なる刃、竜の体内へと伸び込んだ聖剣が、その役割を存分に果たし、進路を阻む尽くを粉砕する
────バルムンクがその輝きを失う頃には、既にファブニールは絶命し、その巨体を魔力へと溶かしきっていた。
「終わった……のか?」
緊張からの解放と共に、全身へ広がっていた竜の因子が落ち着いていく痛みを自覚する。伸びた角や翼、尻尾が再び肉体の中へと引っ込んでいく激痛と、ファブニールに食らわされた攻撃の負担が合わさって、立っていることも出来ずに倒れ込む。
フランスは竜の悪夢より解放された。まだ諸悪の根源こそ残っているものの、一先ず事態は好転しただろう。ライダーの意志も、これでちゃんと繋ぐことは出来たはずだ。
そう思うと、自然と頬が緩んだ……そう、これなのだ。この感覚こそが俺の欲したもの。正義として、自分の想いを、強敵との戦いの果てに実現する。
────あぁ、願いはここに叶った。俺はようやく俺を手に入れた。
英雄(ファブニール戦)→機械(死亡直前)→正義の味方志望(死後)→英雄としての誇りを思い出す(アポクリファ)→初心に返り、自分の意思で正義をなす(今回)
というイメージです。ここら辺まで来るとそろそろタグに「独自設定、独自解釈」が必要ですかね。
さて、今回は特に出てきたサーヴァントが居ないので、軽めにカーミラさん紹介しときましょう。
カーミラというのは昔に出された本の主役、女吸血鬼の名前です。その本のことはよくわからないのですが、なんか人間の女の子との百合話らしい?ですね。まぁ、Fateのカーミラはあまりこちらは関係ないので気にする必要はないかもですけど。
さて、じゃあ大事なのは何なのか、という話でして。この吸血鬼カーミラのモデルになったのが何を隠そうあのエリちゃんことエリザベートなんですね。だから血筋からドラゴンのイメージを当てはめたエリザベートを召喚した場合はランサーになり、吸血鬼としてのエリザベートを召喚したらアサシンとして出てくる感じなのかな?容姿は銀発グラマーな奇抜ファッション女王様みたいな感じ。金属のパーツがやたらついてたり、なんか怖い仮面をつけていたりと、若い時でも成長しても独特なんですねぇ。ちなみに宝具はまんまアイアン・メイデン。何でも発明者がエリザベートらしいからですね。ぶっちゃけた話持ってる記憶はほとんどエリちゃんと同じなのであまり書くことがない......あぁ、ストーリーだとだいぶ過激ですけど、バーサーカー成分が抜けると普通にいい人になります。ツンデレ気味ですけど。記憶が同じだけあって実はエリちゃんそっくりなんですね。攻撃方法は謎です。吸血鬼だし、再臨すると爪が伸びるからそれで切り裂くのかと思いきや、ゲームでは魔弾を飛ばします。でもそんな記述は特にないし、魔力もCと普通なのでこの作品では強化した拷問器具を魔力で操る感じで戦わせてみました。あとさりげなく敏捷値はAと高いんですよね。スタイルの差何でしょうか?歩幅が明らかに違うもんね!あとこの年齢のエリザベートは既に結婚済みのはずだからこっちはきっと姦通済。
割とマジで書くことないなぁ。あ、エリザベートには確かなかった「女性特攻」を持ってたりします。あとはゲームだとジャックが出るまでは最高ランクのアサシンでした。