聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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はーい皆さん、これは番外ですからねー。本編じゃないよー。本編だとまだこれ謎扱いだからねー



え、ならなんで出したんだよって?だって前の話がまだ続くって思ってた人多いみたいだし、次書こうとしたカーミラとエリザベートの話がぶっちゃけだいぶむずかったんだもん。カーミラって何で戦うの?光の玉出すのはいいけど魔術要素あるのかねカーミラ様。しかもカーミラ様ランサーなエリちゃんより足早いし。三騎士とは何だったのかだよほんと。

さて、もう一度言いますけど入れる予定になかった話なんで完成度自体は低いです。戦いではなくallお話タイム。でもまぁだってノブナガがこれを使うってことは敵は神秘か神に該当する存在で、その時点でゲームエンドお疲れ様な訳ですから戦いとか書き用がないですもの。存在が燃やされるってすごくね?


番外 踊るもの達after

────それは灼熱。焼くのではなく、存在を許さんと揺らめく、少女の中で巻かれる欲望の炎。

もはやその幼い体躯には収まらんと言わんばかりの勢いで、心臓を爆心とし広がった煌々の世界は、総数二万本にも上る吸血鬼の森ごと空間を上書きし、その担い手ごと地獄へと叩き落とした

 

「AAAAaaaaa─────────!?!?!?」

 

古きは滅ぼし、天は堕とし、新しきは栄え、人は伸びる。

少女が己が覇道の為に不要と断じ殲滅した、一つの原初の風景。少女の覚悟と渦巻く欲望を表せし魔王の心象風景────固有結界

普段の刃や弾丸へとこぼれ落ちるだけの欠片とは訳が違う────ここは、正真正銘全力全開の魔王の胎内。ここには死神すら立ち入らぬ、死ではなく消滅の待つ煉獄の具現

自身を蝕む炎に悶え苦しむ吸血鬼を、そんな世界の持ち主は哀れんだ目でただ眺めている

逃げ場の無い百面業火犇めく中に、自身の衣服すら焚いて、魔王は痛々しくも生々しい傷を晒してそこに立っていた

 

「────第六天魔王・波旬。貴様のが吸血鬼の力ならば、ワシの魔王としての力がこれじゃよ」

 

既に彼女を縫い止めていた刺のは存在しない、それどころか一帯4キロ四方を埋め尽くしていたその血啜りの枝はその尽くを主よりも早く存在から消していた

 

「固有……結界だとぉ!?この灼熱が、この閃光が!その様な体躯には眠っているとでも言うのか!?この地獄を秘めてなお!貴殿は魔王を名乗るというのか!?」

「問答は無駄という結論だった気がするがのぅ……まぁ、ワシもちとはしゃぎ過ぎて疲れたからな、話して終わるのなら、それに越したことはないわい」

 

そうして少女は傷が焙られる事すら気にも留めず、未だに慎ましやかな双丘の中間より出る刺を弄りながら言葉を続けた

 

「そもそも、ワシらは宗教観とか以前に性質から異なるよ。貴様も確かに大した破壊をしたのだろう?そしてそれを必要だと割り切り、気にせず、足を止めずに国を守りきった」

「あぁ、そうだとも。我は全てを護国に捧げた!貴殿とて変わらぬはずだ!貴殿の行いは、外国の戦力へ対抗するためだと、国を守るためだと!そう伝わっている!!」

 

存在を燃やしながら、しかしランサーは自身の忌むべき吸血鬼としての力を使いながらも無理やり魂の燃焼を抑え込む。それでも徐々に消えゆく肉体に焦りを覚えながら、しかし自身の同類へと問いを投げかける

 

「あぁ、それのぅ。別に嘘でもないが本当でもないよ。ワシのは単に自身の欲望を成すための理由付けに過ぎんからのぅ……ワシの破壊に“割り切る”なんて言葉は付きまとわない。破壊するべくして破壊し、守るべくして守った。すべて理由は自己の中で完結しておるし、だから自身が作ったこの地獄を見た時も、ワシはそれを心象風景だと、すんなり受け入れることが出来るた。あるのはその違いじゃ吸血鬼の、貴様は自身の結末を、その後の印象に嫌悪感を抱いた……その高潔さから、他者によって貶められる自身の名前が気に入らなかった」

 

語りながらも少女の傷は癒えていく。自己再生の力も無く、魔術も使えぬ彼女にはありえないその再生速度は、つい一日前にも経験したもの……カルデアの用意した礼装による、距離無関係の回復魔術。

胸元の刺すら引っこ抜いて、完全に元の姿へと戻った少女は、それでも恥じらいを見せることなくその肢体を晒しながら、苦しみに悶える男へと近づいていく

 

「……それはいけない事か?不浄は許されざることだ。怪物とは神の敵だ。嫌悪すべき、唾棄すべき、我ら信徒の敵だ!どうして自身がそう扱われているのも黙ってみてられる!?我の行いのどこに間違いがあったのだ!?どうして赤きランサーはそんなにも哀れむような目を向けたのだ!!」

「決まっておろう、どんな理由があれど人を殺すのは悪い事。他者を害するのはいけない事。不殺を持って不浄とし、愛を持って至高とする。貴様のその信仰と、立場は絶対的に噛み合わない。噛み合せたくば、それこそ聖女のように完全なる自己を持たねばならない。貴様は、神への依存で潔癖症をこじらせただけの、心の狭い領主に過ぎん」

 

そう……少女は言い切った。己が世界に、己が天に、自身以外の存在を許さぬ少女らしき結論。他人なんぞ気にしない、見たこともない神なんぞの言うことなど気にしない、興味の無いことなんて気にしない。

 

「貴様の価値観は、少し信仰に囚われすぎたのぅ。優秀で聡明で従順で素直で頑固……貴様のその在り方は、妥協が許せなかった在り方は、ただの人間には硬すぎる。それこそあの刺の様に、圧迫感しか与えてこんのよ」

「……フン、なるほど。やはり問答は無用だったな、貴殿との対話は……きっと結論が出ない」

「じゃろうのぅ。そんな素直な男だったのならば、きっと吸血鬼などと呼ばれることもなかったろう。裏切られることもなく、ただ英雄としての人生が待っていただろうさ」

 

男の影は既にドロドロと溶けだしている。間もなくその存在は焼かれ、消滅を迎える。その死に際は宛ら、顔を出した日から逃れるように棺桶に眠る化生の様で……救いもなく足掻き続けるしか無い男の未来を暗示しているようでもあった

 

「我は、人間関係に恵まれないのだ。本当に、次こそは……神の救いよ、在れ」

 

ゴウッと一際強く舞い上がった火柱に飲み込まれ、男は完全にこの世から姿を消した。その魂の行く先が、どこへなるのか……他者のことなぞ考えぬ少女には無責任ながらわかるはずもない。だがきっと神が男を見ているのならば、男の願いはいずれ叶うだろう。

男は純粋だった、ならば救われない事こそおかしいのだから

 

「……あー、まぁ。今回ばかりはここまでさせられた褒美じゃ。日の国風に、人間として火葬してやろう。西欧の土葬は“死に続けている”という意味らしいしの、それこそ余程化物じゃわい」

 

何の余韻か、あるいは戯れか……そう嘯いた少女は静かにその世界を後にする。

 

 

少女が消えた後も続く其の煉獄こそは、魔王が未だに燃やし続ける野望の象徴。向かう先も無く、ただ燃えるだけの巨大な燻りに過ぎない。

だからこそ此処は理解されぬ者達の墓場に相応しい。

 

人間には理解の及ばぬ、神域の者達の墓場────胎内それを秘めた少女は、変わらず一糸纏わぬ姿で現実へと帰還した

 




途中の癒しの力は念話で頼んだって感じです。そして珍しい完全三人称視点

前回は宝具の説明に偏ったのもあって今回ばかりはブラド三世と宝具の補足です。と言っても安定の歴史知識ナッシングなので信用度は低いですけどね。
さて、さんざん名前を出した通り、今回のランサーの正体はブラド三世。ルーマニアに生まれワラキア公国とやらの王様を務めた人ですね。とても優れた方で敵の進行にも屈さずに国を守り通した英雄ですが最後には部下に裏切られて殺されてしまいます。串刺し公というのは彼が行った二万人の兵に対する串刺し刑からついた名前らしいですね。吸血鬼ドラキュラの原点になったというのもこの逸話からだそうです。本人はとても熱心に神を信仰していたのですが、その分異教徒や教えに背く人間には厳しかったらしいですね。逆にそういった人間でなければとてもいい人格者の面を見せてくれた様ですが。
さて、そんな経歴もあって彼は吸血鬼になってしまった自分を嫌っています。自分をというかそう呼ばれることが嫌なんですね。だからこそ聖杯にかける願いは「自身に対する吸血鬼のイメージの払拭」。過去の改変とかそういう大それたことは望んでないのですが、やはり謂れのないことで自分が汚されているのが納得いかなかったのでしょう。今回の信長の説教ポイントはそこ、潔癖症すぎるよバカヤロウってことですね。ジャンヌ・ダルクが今回魔女のせいで名前を貶められても気にしていなかったように、教徒として彼女を尊敬する気持ちがあるならそこも見習いなさいと言ってると受け取ってください。要は「そんなふうに扱われてもこういう態度をとることを神は勧めてるんだよ?」ってことです。対するブラド三世も頑固なので納得はしません。正しいとわかっていても納得出来ないことはありますからね。その際に盛れた「人間関係に恵まれない」というのは裏切った部下やアポクリファでのマスターにジャンヌにその他のサーヴァント勢、今回召喚された味方鯖に似ているようで致命的に逆方向な信長など、理解者に恵まれないことを指します。将来いいマスターに会えるといいね。
バーサーカーとして召喚されたら一応従順ですけどよほど優秀でない限り最終的には殺してしまう的な意味で「狂化EX」がついてます。怖いね。あと宝具のあのやたらめったら出てくる刺の説明忘れてました。アレは見ているだけで精神的に圧迫感を与えるという効果が有り、信長の動きに精彩さがかけて来ていたのはその影響です。対魔力で防げるかわからないので、もし防げた場合は傷のせいということで。


さて、ドラキュランサーのことについてはもう話せることは話したと思います。それでは今日はこれだけ!メリークリスマス!

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