聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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はいどうも、無事に終わりましたねぐだぐだ本能寺。はじめはどうなることかと思いましたが終わってみれば二百万ポイント……ま、まぁ信長のスキルの為にリンゴを使ったと思えば悲しくなんてないです。みなさんはどうでしたかね?無事に希望の交換は負えられましたでしょうか?でしたら次、いずれ来るであろう(多分に希望的観測が混じります)魔神セイバーのために力を貯めておいてくださいな。
さて、ついでに開放されましたスカサハさんのクエストの感想も少し……グランドオーダーってエロOKでしたっけ!?信長のあたりからなんか調子がおかしいぞ運営!というかシナリオ!本気でマシュのオフィシャルではダメです発言はどこに行った!?……そして完全に先輩に落とされているマシュである、シロちゃん何したの?怒らないから正直に言ってごらん?

と、ここから本編の話。今回はカットしようとしたVSアサシン戦……ですがメインはシロちゃん。紛うことなきシロちゃん。前回キャラクターの設定固まったと言ったけどダントツの化物になったシロちゃんです。わー、伏線いっぱいだよって作者が公開していくスタイルですが……これもまた設定とか作った方がいいのか?いや主人公じゃねぇし別に公開しなくていいよねと思うんですけどね……自分の中の常識がたまに常識じゃないので戸惑ってます笑
今回は少しあとがきに補足入れます。なにせ登場するサーヴァントの詳細が殆ど無いので……全員グランドオーダーが初出っておい!
それでは本編どうぞー


死劇の幕間に寄り添う少女

苛烈にして怒涛……俺はこれまでいくつもの言葉を用いて自分のサーヴァントの事を表してきた。

それは欠片も間違えた表現ではないし、むしろ適当過ぎると自画自賛してしまう程のものだった訳だが……やはり俺という人間は何処までも未完成なのだろう。

 

「お疲れ様、信長」

「何じゃその辛気臭い面は。やめんか、それじゃわしも何かの間違いでポックリ逝きそうじゃ」

 

正しく戦地。抉れ、傾き、割れている……大地が文字通りにひっくり返されている。そんな所に、信長は一人縫い付けられていた。

バーサーカーとの戦いはずっと見ていたから、この少女がどれだけ頑張ったのか、死力を尽くしてくれたのかはよくわかってる。

……それ故に、傷ついた少女の姿が痛々しい。何処か超然としていたいつもの姿とかけ離れたその弱々しさが、俺の目にはとても儚く写ってしまった

 

「まぁ、難敵だったよ。じゃがのぅ、あの程度の危機は危機とは言わんのじゃ。主よ、安心せい……お主のサーヴァントは間違いなくここに居る」

「あぁ、知ってるよ─────信長は強いもんな!」

 

────そんな訳はない。無条件の強者なんて居ないし、信長は特に条件の厳しい部類の存在だと思う。

だから、そんな状態でも俺に気を使う理由が……それだけがよくわからなかった。無論、傷ついた彼女なりの意地なのかもしれない。それ故に踏み込む事はしない。俺はただ笑う彼女に、同じように笑って手を差し出した

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「いやぁー!やっぱり便利じゃのぅ、サーヴァントの身体は!」

 

────全快!もう一度言おう。織田信長、全快であるっ!

いやまぁ治したのはマスターである俺なのだけれど、しかしそれにしてもあれだけの傷が簡単に消えていくのだから霊体とは便利である……そしてこの拘束具の様なカルデアの礼装も。一流の魔術師が用意しただけあって凄まじい。量産型の魔術刻印、と言ったところか。回復に加速、強化の力を一工程(シングルアクション)で、距離無関係に使えるとは驚いた。

……まぁ、その分魔力とは別に礼装自体の摩耗が前提のようなので連続して使えないのがネックだが。

 

「いやぁ、本当に良かったね信長さん……ところでマリーさんたちの方はいいの?」

「ん、まぁ戦術的には私が加わった方がいいのも確かじゃが……バーサーカーが死んだ今。そこまでの戦力差が出れば敵も引くじゃろうからの。二対一、そしてあの王女に執着しとる限りはわしらが敢えて参戦する意味もあるまい」

 

それでも負けそうなら話は別じゃが、と続けて信長は違和感の残るらしい左肩をグリグリと回している。

……激しさ、というところに関しては信長の方の闘争に勝るべくもないが、ことほの暗さを競わせればフランス組に軍杯が上がる。彼らが戦うのは街道近くの茂みの中。極端な刃を持つ処刑人に、彼女達はそれぞれ齧った魔術で応戦する。だからこそその戦いは、当たり前ながら以下に相手を近寄らせないかが軸に置かれる戦闘だ。

 

「……二対一で漸く拮抗、この時点で参戦する理由はあると思うんだけどなぁ」

 

もちろん、単純な戦闘ならば流石に二騎で掛かれば例え相手が危なさをその瞳に揺らすアサシンであろうと、容赦なく蹴散らす程度の結果に落ち着くだろう。実際にあのアサシンはそこまで強いようには見えない。

ただし先程も言ったように、バーサーカーの戦いに巻き込まれないようにと離れて戦っていた彼女らがいるのは茂みの中……二人の魔術は木々に阻まれ、しかし敵の攻撃はそれらを切断して迫りくる。その上そういった事情が無かったとしても、視覚的に情報を遮断するあそこはアサシンの領域だ。状況を打破しようと思えば、それこそ信長の様な火力が必要なのだが……あの二人にそこまでの高火力は出せない

 

「あの黒い聖女が、あの対面でわしの力を理解したとは思えんがのぅ。しかしこうしていざ相性の良くない輩が出張ってくると、無闇やたらと張り切るわけにもいかん」

 

まぁ、信長のいうことも正しいんだけど……ねぇ?

 

「……信長公に意見する訳では無いが、しかしアレは分が悪いように見える。このまま放置して援軍の到着を待ってしまえば、それこそ厄介なのではないか?」

「えぇ、それにあのアサシン……執拗にマリーの首を狙っているように見えます。やはり助太刀すべきですマスター!」

 

やはりそれでは納まらないものもいる。一人は戦いに参加出来ない引け目故に、もう一人は顕界して新たに出来た友人の為に。

しかし飛び出さないのは、あの状況で一番助けになれるのが信長を置いて他にいないからだ。負傷中のジークフリートは置いておくとしても、マシュもジャンヌも得物が大き過ぎる。長大故に取り回し辛く、敵のように側面に刃がないが故に薙ぎ払うことも出来ない。

対して信長は刀もあるしそういった事に左右されず、辺りを吹き飛ばせる銃まである。敵がライダーのような機動力が無いのであれば、森は確かに狩人たるアーチャーの領域だろう。

せめてマリーの宝具がタラスクの如く薙ぎ払える宝具であればよかったが……

 

「マリー・アントワネットにそんな破壊力を求めてもねぇ……」

 

────ガラスの馬、メリーゴーランドの話から飛び出た一つの硝子細工。聞いた話といえばその程度だが、形状からして踏破力はあれど突撃の力なぞ求めるだけ愚かというもの。逃げの一手としてならば今でも使い道はあるだろうが……その場合はモーツァルトが一人でアサシンと対峙する羽目になる。

 

「やっかましぃ奴らじゃのぅ。過去に囚われる英雄は見苦しいが、過去を捨てた英雄なぞもはや英雄とは言わん。たとえ王女であろうと、作曲家であろうと、自身の因縁程度独力で乗り切らんで何が英雄か」

 

そんな状況であろうと信長の意見は変わらない。激しき時代を生きた彼女は、その涼し気な普段の姿とは対称に根が情熱的である。気合や根性を信奉しているタイプの人間と言ってもいいかもしれない。無論、不可能を可能にするなどとは言わないが、その分逆に“不可能なぞ無い”のだと断言しきれてしまうタイプの熱さを持っている

 

────そう、不可能ではない。信長が言った以上、それは無理じゃないのだ。だからこそ傍観している。そうでなければ、この彼女をして待機などという言葉は出てこない。

 

「信長は部外者は関わるなって事を言いたいんだろ?」

「然り、だいたい人様の問題に口を出す様なお人好し────あぁ、聖女様はお人好しじゃったの。まぁあれじゃ。友なら友らしく見守っておれ、という事じゃ」

 

うん、部外者でないなら関わってもいい……というより関わるべきだということですね信長さんや

 

「というわけでシロ、マスターらしく二人を助けて上げて」

「うぇ!?ナンデ私!?支援とか出来ないよ?」

「なんでも何も、サーヴァントとマスターは切っても離せない存在じゃないか。少なくとも、部外者ではないだろう?」

 

そう、無理を言わない信長がどう見ても厳しい状況を可能と見ているのは、その場に無いピースの存在を知っていたから。

 

「シロなら出来るさ。なんかよくわからないけど……今のシロは普通じゃないんだろ?」

 

俺の指摘にわざとらしく目をそらす素人マスター。どう見てもアホの子ではあるが、信長にすら予見できなかった危機を見抜いたその目は確かだ。

 

「別に普通だよぅ……普通だったのになぁ。気がついたら世界滅んでるんだもんなぁ、そりゃ頑張るけどさ!」

「うん、じゃあ頑張っていこうか。アサシンを打倒する作戦を、是非頑張って考えてくれ」

「考えるのは苦手だよ!?」

 

……人間は考える葦である、とは誰の言葉だったか?だったら逆に言えば、人間は考えなかったらただの葦である。同僚が水辺で風に揺られては流される植物だっただなんて、そんな驚愕の真実は求めてない

 

「うぅん……なんか信長さんの変なこだわりのせいで割を食ってる気がするよ」

「フン、強力なサーヴァントを使役する代償のようなもんじゃ。大人しく頑張るほかないの、努力は何にも勝る当人の存在証明じゃ」

 

いや、意味がわからないから。自分を高める最良の方法と言いたいなら、それはそれで言葉をちゃんと選んで欲しい

 

「理解する努力も必要じゃ」

「理解してもらう努力はもっと必要だ」

「わしは身分が高いから構わんのよ。ほれ、苦労せよ若人よ」

 

納得がいかない……が、今回は対象が俺ではなくシロなので気にしない方向で行こう。下手に噛み付いて飛び火されても、俺にあれをどうこうできる考えはない。そもそもマリー・アントワネットの宝具のことしか知らないのだからどうしようもない

 

「うわぁ、いつも他人事のように見ていた会話が、今日は私に牙を剥くんだね……」

 

自業自得……というのは違うかもしれないけれど、その冷たい反応がやはり今返ってきたのだと思って、ぜひとも一人で頑張って欲しい

 

「……わかったよ。そりゃ私もマスターだもん、出来ることはやらなくちゃ!だよね」

「俺は本当にどうしてお前みたいなのがあんな鋭い考察ができたのか不思議でならないんだけど」

 

特にさっきのバーサーカー戦に至っては前情報なし、信長でさえ欠片も考慮していなかった事を的確に予想していた様子まで見られる。ビギナーズラックとか想像力の賜物とか……もはやそんなレベルではない。サーヴァントの持つスキルクラスの一種の技能を持っていると考えて間違いはない。

こうして見ても、間の抜けた表情を晒す少女がどうして……としか思えないのだが

 

「だからそんなんじゃないんだってば!」

 

……本当にそうだったら良かったのにね。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

しかし、やはりシロという少女は何処か不思議である。何が?と問われれば、何もかもがと一言で返せるが……それは理解が及んでいないが故の一言。そもそも前提に“何処か”なんてフレーズが入ってる時点で、自分が無知であることは明白だ。

基準となる点すらわからないのに、俺は何を判断しようというのか?何から判断して彼女を異常だと断定したのか?正直お前が言うなと思うところも大きいのだが、しかしそれよりも何よりも、彼女のとった行動が余りにもあんまり過ぎて、そんなことはどうでもよくなってしまった。

これもまた前提の話になるのだが、48人目のマスター・シロは魔術師では無い。厳密にはマスターではあるので魔術師見習いというべき存在だが、此処で問題なのは100のうち1なのか0なのかということでもないので。ここにおいて肝心なのは、少女にはサーヴァントへ指示を出す手段がなかったということである。厳密には、勝利への前提条件を満たした上で、命令を講じる手段が存在しなかったのである。

言うまでもないと思うが、多くの作戦は敵に筒抜けでは意味が無い。これまた前提条件として、作戦とは秘められたものである必要があった。よってこの場において、肉声で持って指示を出すなどという愚行は、そして正しく愚考はすべきでは無い。いくら素人であるとはいえ、シロもそれを知っていた。魔術師ならばそこで念話という手段が出てくるのだが、しかし前述の通り彼女はそれを扱うレベルに至っていない。信長からすれば、その程度の支援は俺がしても良いというつもりだったのだとは思うのだが……しかし少女はそうは考えなかった。

秘めて伝える方法が現段階において無い。ならばその状況を動かすしか、自分に取れる方法は無い……そこで彼女は、俺に魔術による伝達を頼むのではなく……自らの足で、その死地へとかける道を選んだ。選んだというよりは────切り拓いた。サーヴァントの戦いに飛び込むなんて道は端から存在していなかったのだから

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

自分で切り拓く他に道は無い……いい言葉だと思う。少なくとも私はそういった趣向が好みではあった。幼い頃から故あって、頑張るという過程から遠く離れた人生を送ってきた私は、そういったものにある一種の理想を持っている。女子らしくない、むしろ暑苦しいものではあるが、なにかに向かってひたむきに努力する、そんなことが、私は本当にたまらなく好きだったのだ

だから()()()魔術という存在を認識した時は、珍しく自分の中の何かがカチリッとはまったような気がした。未知の存在であり、一目見たからどうにかなる訳でもないその頂き高き新天地に、胸が高鳴った。

実際そういった期待を裏切らず、カルデアに来てからは挑戦というべきものが多い。初めての感覚に戸惑うというのも、なかなか新鮮な感覚だった。何よりも本で学んだ偉人達が、眼前で具現化し、あまつさえそれらと対話するなどという経験は、同い年の違う価値観と違う世界で生きてきた少年と交流するという経験と共に、私の中に確かな興奮を刻んでいったものだ。

私の中の私達が、等しくなく感動し感嘆した。

 

「アマデウスさん!」

「マスター!?ちょ、君なんで来たのさ!」

「……?なんでって、マスターだもん。そりゃ来るよ」

 

そうした方がいいと思ったから来たのだ、そこに理由なんて求めない。求める事がどれだけ危険か、それもまた理由なくなんとなく察しているのだ。

 

「それよりも!ここからは私が指示を出します。アマデ────キャスターはちょっと待っててね!」

「いやいや、君に支持とか出来るのかい!?」

 

文句は聞かない。我ながら浮き足立ったもので、返事のために立ち止まるのも惜しい程にこの戦場というものが楽しくて仕方が無い

 

「何をしてるのアマデウス────あら、マスター!」

「ライダーもこっちだよー!」

「えぇ、それは構わないけど────」

「構わなくないよマリア。この状況、はっきり言って凄くおかしいからね?」

 

そりゃまぁ、アサシンに狙われているのに談笑なんかしていたらおかしいだろうけど

 

「談笑なもんか!いいかいマスター、今は冗談を言っている場合じゃ────」

 

二度でも三度でも言うけれど、いや口にはしないけど文句は聞かない。遮って好奇のままに口に出す

 

「ライダー、背後を防御だよ」

「────あら?」

「────おや?」

 

マリーさんの笑顔に釣られて寄ってきた騎士の霊が、ギロチンの如き剣に切断されて森へと二度目の断末魔を響かせる。

凜君がいうにはマリーさんの笑顔を触媒に、それを守らんとする騎士を降霊しているらしい。ただの笑顔で霊を呼び寄せ使役する、過労死どころか死後過労だけど、やはりそんなところが王女様だと思う。

 

「てめぇまたマリアを狙いやがって!」

 

空中で固まったアサシンへ、アマデウスから放たれた光弾が迫り、しかし虚しくも返しの刃で両断される

 

「────やぁ、お嬢さん。今のは偶然かい?確かに僕は暗殺者ではないから、気配遮断のランクは高くないけれど……流石にサーヴァント以外に見抜かれるのはありえないんじゃないかな?」

 

暗殺者ではないと言いつつも、処刑人ならぬ機敏な動きで距離を置いたアサシンに、しかし私は言葉を返さない。

信長さんや凜くんはそれぞれそれなりの余裕を持って対話を楽しむ傾向にはあるけれど、私みたいな素人からすれば合理的に情報を漏らすべきではないと思う。もちろんあの二人のはむしろ敵の正体を探るべく、あるいは挑発の意図があってというのは知っているけど。残念ながら私はそこまで弁が立たない。

 

「ライダーは防御の準備をして待機、キャスターは宝具の準備をして少し待ってて」

「……へぇ、僕は無視かい?気に入らないな、その態度がひどく気に入らない────殺しておこう」

 

アサシンには聞こえぬよう、小声で指示を出しながら、物騒な言葉と共に再び影へと身を溶かす処刑人を見送る。

影と遮蔽物に囲まれた茂みの中では、アサシンを見つけることは困難。特に彼の斬撃には予兆がない……だからこそ先程まで二人がかりでも後手に回るしかなかったわけだけど、しかしそれは見方次第だ。視点さえ変えれば有利にしか働かない、いやむしろこの場合変えるのは見方ではなく……聴き方だ。

 

「静かだよね、アサシンらしく音も無く森に完全に紛れてる……でもキャスター、アナタならあの微かな音ぐらい拾えるんじゃない?」

「────驚いた、まともに戦術になっているじゃないか」

 

……失礼だよね!でもまぁ、褒められているのであれば悪い気はしない。あれほど派手な戦いを繰り広げていたバーサーカーは既にいない、唐突な奇襲に行き着くまもなく翻弄されていた流れは変わった。落ち着き、雑音のないこの森の中の異音を探るくらいならば、神に愛された音楽家にとってはわけないだろう

 

「……右、いやそのまま行ったり来たりをしてる。何のつもりだろう?」

「私を狙ってるんだと思うよ、死角が無いようにライダーの呼んだ霊に合わせて動いてたから、きっとそれで動き回ってるんだね」

 

もちろん私に気配を察するような戦闘向けの力なんて無い。だから満遍なく隙間を消すように動いてるのであるし、先程の奇襲の察知も、ある意味わかり安い彼の行動パターンから何となくで防げたものだ。

 

「場所はわかっても遮蔽物が重なってちゃどちらにせよ攻撃できないわけだけど……どうするんだい?」

「んー?別に、たぶんそのうち飛び出してくるから大丈夫だよ。その時にキャスターは合わせて宝具を開放してくれれば」

 

まぁ、狙う対象がマリーさんから私になるなんて思いもしなかったけど、でもそれはそれでやりやすい。彼は生粋のアサシンでは無いから、装備の関係上どうしても音も漏れるし、殺しに関してはプロでも戦いの機微には疎くなる。

そもそも処刑人とは戦う人間じゃない、殺す人間はただそこにいるだけの、抵抗と言っても身じろぎしかできない程度の存在で、周りには味方だらけの環境でしか殺人をしてこなかった人間だ。

 

「────死んでもらうよ、マリーの為に」

「ほら、だからちょっと対象が仲間から離れたら、チャンスだとばかりに襲いかかる」

 

タイミングは私の自由、落ち着かない子の様に霊一緒にクルクルと、そして一歩でもそこから離れてしまえば……状況は完成する。

 

「────死神のための葬送曲(レクイエムフォーデス)

「……あれ?なんでっ────身体が!?」

 

……今は静かな森も、ほんの数日前までは戦場だった。この茂みは、沢山の死を吸って育ったのだ。ならばこの稀代の天才が奏でる死の歌は、今も漂う霊体へと送られる最後の贈り物(ラストギフト)。音色を聞いたものは、その身を旋律に縛られ、死の重圧を一身に受けることになる

 

「……これだ、この死を軽くするこの音楽が!僕は気に入らない────僕はおまえが嫌いだ作曲家ァァァッ!!」

「そうかい?僕も君が嫌いだよ、死なんかに囚われて静かに狂うなら、端からそんな仕事なんてするもんじゃないってことさ─────マリア!」

 

先程までとは違い、王女と処刑人の間に隔たりは無い。彼は既に姿を晒し、頭を垂れるようにただ地に跪いている。しかし場を支配する悲哀のBGMが、処刑人に面を上げる事を許さない。

 

「処刑人さん、ごめんなさいね。そのギロチンは私が断ち切るわ」

「待ってくれマリー!僕は────」

 

皮肉にも、死の刃を待つように差し出された項へと放たれたのは硝子の蹄────王女が乗りし、尊き輝きの白馬。

 

「オグェッ────────!?!?」

「────“百合の王冠に栄光あれ(ギロチン・ブレイカー)”、終わらせましょう」

 

咄嗟に間に差し込まれた刃を踏み砕き、馬はただただ直進する。煌めく軌跡に鬣を翻して、王女(マリー)ではなく騎乗兵(ライダー)としての力で踏破し、蹂躙する。

木々を薙ぎ、大地を踏みしめ、影を照らして────遂には処刑人を白日の元へと轢き飛ばした。

怒涛の進撃に、しかし処刑人は耐え切った。満身創痍ながらも、しかし(まくひき)だけは逃れて見せた

宝具が切れた訳では無い。得物を折れながらも冷血の意志で弾きあげたその幅広の破片が、白馬に跨る王女の首を狙い、進路を逸らしたのだ。

 

「随分と手ひどくやられたわねぇ、アサシン」

「……黙れ、お互い真っ当な暗殺者でも無いだろう」

 

私とアマデウスさんが何とか追いついた時には、追手であったもう一騎のサーヴァントに引き上げられて、処刑人────シャルル・アンリ・サンソンは空へと逃げていた。

それをどういう顔でマリーさんが見送ったのかはわからない。

……でもあえてその光景を凜君のように表現すればそれはきっと、“ギロチンはまだ降りきらない、処刑人が一幕の快楽あれと作り出したそれは、しかし幕を下ろす前に止まってしまった”という感じではないだろうか?

ともあれ、これで完全に追手との戦いは終了した。

私はそうして、いつものように理由なく、決まった事実を上からさらに断定するのだ

 




さて、今回はマリーのことを話しますがそれよりも先に幾つか補足です。
まず最初にアマデウスの宝具ですが「無差別に打ってでも動き止めときゃ良かったんじゃね?」と思われるかもしれません。ただあれ「聞いたもの全部」が重圧を受けるのではなく、「聞いた敵」との説明であるしそうじゃないと不便がすぎるので、独自設定で「奏者が認識している」ことが前提になるとしておきました。だからシロちゃんが合流するまでは使えなかった感じですね。それに宝具は隙もあるからアサシンを前に使えば使う直前に首チョンパなんてこともあるかもってことでした。
マリーが宝具を使わなかったのも同じ理由です。特にお互いのフォローが出来なくなるくらい動くというのと、障害物くらい吹き飛ばせるけれどしかし吹き飛ばしている間に避けられるので障害物がないところに誘導して使う形になりました。
シャルルの気配遮断が弱くいというのは公式設定ですから大丈夫ですね、えぇ。


さて、ここからはマリーアントワネット……ですがわたしはあまり知らないので史実のことはあまり言えません。フランスの王女であり、最後にはギロチンで処刑された人物ということしか知りません。そのギロチンを下ろしたのがシャルルアンリサンソンらしいですね。ちなみに当時は圧政?なのか豪遊の象徴だったから処刑されたらしい感じですが今では名誉回復が行われてますね。実際かつての行いも民を思ってのことが多かったらしいです。
ここからがFateの話、簡単に言えばアイドル、ただひたすらに輝くアイドルです。そのせいでシャルルは変態になりました。バーサーカー化してる今はほの暗い変態ですが本編以外の彼はもはやただのストーカーです。それもほの暗いのでは?って?自分で見ろ、子犬系というか天然系というか……明るい変態だ。
さて、ゲームのマリーで特筆すべき事はまずその素晴らしい精神性と美貌ですね。アイドルなだけあって可愛く、自身の死に関しては誰も売らんでないらしいです。息子のことは別とも聞きましたがそれにしてもびっくりの清らかさ。清い姫を名乗るやつはもう少しこの綺麗な感じを見習え、怖いから。
それ以外の話であればそうですね────みんなのトラウマ、キラキラマリーちゃんですかね。
今回の話でも防御のスキルとして出てきましたが、マリーのスキルには3回まで攻撃に対して無敵化する上にしばらく自身のHPを回復することが出来るスキルがあります。グランドオーダーは同キャラによる攻撃を利用しなければ一ターンに三回しか攻撃できません。ヒット数とか関係ないです、どう頑張っても、宝具を使おうがブレイブチェインができなければ3回までなんです。そして敵にはスキルのクールタイムという概念がありません。毎ターン同じスキルを使うなんてザラにあり、ひどい時には自分の行動三回分がすべて同じスキルなんてこともあります……えぇ、わかりますか?毎ターンキラキラ微笑まれたら、プレイヤーはもう何も出来ないんですよ!若奥様のバフ解除も、打てて二ターン連続、三回目からも一ターン毎に回すことは出来ないでもないですが……まずクラス相性が最悪です。打つ手なし、デッドエンド。ドレイク?てめぇ星5の確率知ってて言ってんのかコノヤロー……まぁフレンドの使ってください。

とまぁまたそのスキルの話ですが……これ詳しい説明がないです。だからなんで微笑んだら無敵になるのか、一切不明です。謎の壁ができるのか、可愛過ぎて攻撃の手が止まるのか、はたまたスパさんの様にどんな攻撃を受けても自前のマッスルで耐え抜き笑みを浮かべるタフネスガールだったのか……謎です。一応きずなを貯めたら出る説明欄には「笑顔で周囲の自身を守れる騎士を呼び寄せる」的な説明があったので今回はそれを採用していますが……どうでしょうね。解釈がこれであっているのかどうか……グランドオーダーが初出のサーヴァントは説明が少ないので自己解釈が増えそうです。みなさんも是非、暇な時にでも想像して楽しんでみてはどうでしょうか?
それとは別にですが「ランサーに追い詰められて士郎が英霊を召喚しようとしたら概念礼装が出てきたから自力で戦う」なんて設定思いつきました。え?別にグランドオーダーをディスってるわけじゃないですよ?えぇ、なんで英霊を召喚しようとしたらアゾット剣が出てくるんだよとか切れてません。決して、そういうわけじゃないですとも。まぁ概念礼装はサーヴァントしか装備できない決まりとかないし?ゲームで装備欄がないだけだし?実際にはアゾット剣とか普通に魔術師が使うものなので士郎が自力で頑張ることも出来ると思うんですよね!という訳でカレイドスコープ引いて自力でアンリミテッドブレイドワークス展開できるようになった士郎とか、リミットオーバーゼロ状態になった士郎とか、どなたか書いてくださいな

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