聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

14 / 46
タイトルがもはやネタである。
さて、もうすぐハロウィーンイベントも終わり第三章解禁!未だに一章序盤なこの小説も一層頑張らねばー!......な時に申し訳ないですが来年二月までは投稿ペースがガクッと落ちるというかむしろ下手したら投稿しないまであります。理由は受験ですねぇ......判定が絶望的すぎて。理系ムズイよ......

おっと、話が変わってしまった。そんな私事は置いておくとしてこの小説のことを。先日晴れて評価ゲージに色がつきましたー!初めは黄色、次はギリギリオレンジ?やったね。自分頑張ります。
実はこの小説初めは遊戯王の方を投稿しようかfateを投稿しようか悩んでたんです。遊戯王書くのムズ過ぎてやめましたが正解でしたね。遊戯王書いてる人たちはマジですげぇよ。
あと中盤。地の文が少し雰囲気変わってるところありますが本当はそこ地の文無しで行くつもりだったところにあとから差し込んだからです。違和感あったらすいません。では本編どうぞ


晴天の空に、その謝罪は消えていく

世界はどうしようもなく、途方もなく歪んでいる。世界には自分しかいないのだと言うかのように、思いのままに力を振るう“正義”があまりにも多すぎる。

上からものを見て、当人のことなど何も理解していなくせに、理解する気も無いくせにその口で勝手に弱者の声を代弁するのだ。ふざけるな、そんなものは虚言でしかない。価値なんて何もない。穢すな、僕の“正義”を!憧れを!渇望を!!

ただ望んだだけだったんだ、幸せな未来を。それの何が悪い?どこを見て悪だと主張する?お前らのその善はどこから来たものだ?誰を想い、誰のためになす行いだ?全部が全部、自分しか世界にいない自己中心主義の塊だ。他人のことなんか考えちゃいない。考えているのは他人を通して見た自分の未来ばかりだ、それが今の世界の圧倒的な“正義”の形だ。歪んでいる、醜い、吐き気がする、まさに倒錯的な社会善だ。

 

もし世界がそんなものばかりならば僕はそれでも構わない。憧れを捨て、僕も現実を取ろう。“正義”を捨て、悪になろう。自身の欲望のままに他者の正義を食らいつくそうじゃないか。他人には何も望まない、僕はもう────独りで構わない

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

ファントムオブオペラ────バーサークアサシンを打倒し周囲の安全を確認した俺達は一先ず当初の目的通りに休む事にした。

空を見ればもう夜明けが近い、サーヴァントである信長はいいとしても俺は少しでも休んだほうがいいだろう

 

「龍殺しを早く助けなきゃ行けないのもあるけどな」

「助けるも何も結局見つけても治療なぞ出来んのじゃから多少予定が前後しても変わらん変わらん」

 

……まぁそういうことだ。オペラがいうには負傷中の龍殺しは呪詛を受けた為に普通の目術による治療が効かない状態らしい。今回の戦いで初めてつけられた信長の傷程度ならば俺の使う簡単な治癒魔術で治せるのだが、やはり呪いにまともなものなんてないな。

 

「とりあえず休むにしてもこんな死肉と瓦礫に囲まれていてはむしろ疲れるじゃろう。幸い奥のボロっちい城は無事のようじゃし、そっちに移動するぞ(マスター)

「……城って俺達本当に過去に来てるんだなぁって実感させられるよな」

「まぁの。わしらの言う城とは形も違うからのぅ」

 

いや砦の時も思ったのだがこの地獄具合を抜けば観光として凄い楽しめる光景ばかりだ。そんな余裕もないのが残念だが

文字通り死の匂いが充満する道を抜けて古城へとはいる。人の気配は……もちろん無い。

 

「罠でもあるのかなぁなんて思っていたけど特に何かある様子はないな」

「そうやって気を抜いた所に……というのをわし見たことあるぞ。まぁでも今回は正真正銘何もなさそうじゃな────いや、これを見よ主」

 

信長に呼び止められ床の一点を眺める。

赤い絨毯に被る様な色だが既に変色したためか見えないこともない

 

「……血か?」

「うむ、滴り方からして中から外ではなく外から中へ誰かが入っていったようじゃな」

 

オペラの爪に付いていた血にしては続き方が等間隔だ。量の手五本から出ていたのであればこうはならない。これほどの傷を即時修復出来るわけもないからこの血を辿ったところには誰かが朽ち果てているか……あるいは存命しているのか

 

「龍殺しか?」

「それはわからん。じゃがこのペースで血を流してもなお生きていたら間違いなく人外じゃ、その可能性は高いのぅ」

「そうか、なら辿ろう。一石二鳥だな、探す手間が省けてよかったよ」

「まだ龍殺しと決まったわけではないがのぅ……まぁよいわ。主、灯りじゃ。燭台があるから火を頼む」

 

頼まれたとおりに信長が壁からもぎ取った燭台に火を灯し、闇に同化していた血の痕跡を辿っていく

 

「龍殺し……どんな人間なのかな?ドラゴンを倒すくらいなんだからすごい壮絶な性格をしていそうで嫌なんだけど」

 

無言の道中というのも何か違和感を感じるので雑談程度に少し思っていた事を話の種に振ってみた。

龍を殺す程の人間……国を制覇しようとした信長を見てもわかるが何かしら大きなことをなす人間はどこか性格が破綻している。

 

「さて、どうかのぅ。実際のところ行いと性格が一致するかどうかなんてわからんぞ?たとえわしが気弱な性格でも、きっと織田信長という人間は何ら変わらぬ行動を取り、何ら変わらぬ朽ち方をしていっただろうよ。じゃからそうさな、わしは名前に反して謙虚がすぎる性格を推そう」

 

対する信長の答えはこれだ。本人が言うのならばそう納得する他ないが本当にそんなことがあるだろうか?

物事を多面的に見る、という事の重要性は今更語るべくもないことだがだとしても一人の語り手から紡がれた物語から多角的に一人の人物を見るのは不可能がある。だとすれば俺達のような現代人、そうでなくとも以降の時代の人間からすればその物語がその個人の全てだ。故に英雄と言われれば豪気で人情深い、欲深い存在か迷い等持たない、天性の王のような人外的な存在が思い浮かぶ。だからこそ信長の口から出た性格は今を生きる俺からすれば俄には考えられない常軌を逸した意見であった

 

「なんだよ謙虚って、口癖は“すまない”とかか?なんか英雄らしからぬ卑屈さだな」

「きっと開口一番飛び出るに違いない。これは期待が高まるな主よ」

「どんな期待だよ……というのは置いておくにしても俺もたしかに最近英雄と会うのが楽しみになってきた」

 

まぁそれに乗ってしまったのは所詮これが雑談であり、そしてそういった英雄というものをまた俺自身見てみたいと思った面もあるからだ。

もしそんな英雄がいたのであればその人物は何を思って生きたのだろう。何が故に龍を殺し、そこから何を感じたのだろう

歴史に思いを馳せるのが楽しくて仕方がなかった。自分の使命とは別に、歴史の偉人とこうして言葉を交わすのが愉快で仕方が無い。

身分不相応と言われても仕方が無いが、ここ最近……特に今はこの奇跡がとても心地よかった

 

「────すまない、少しいいだろうか?」

 

なにか声が聞こえたような気がしたがそれに俺の脳が反応するよりも早く信長が声をかき消してしまった。信長自身も悪気なく、そして他意も無く偶然、知らぬうちに消した言葉だったらしく俺と同じように反応した様子はなかった

 

「何を言うか主よ、わしこそ至高、頂点。上が知れたもの等面白くなかろう。底辺をあらうという面でいえばまぁ話は変わるがの」

 

さて、それではそこまでして出された言葉と言えば相変わらずの自分史上主義、オペラ座の怪人と対して、オペラ座の怪人に対してあれ程の自信を語った通りこの少女は自身の存在に欠片の疑問も抱かない。人間としては正しく、常識的には大きく間違えている。

自身に疑問を抱かないなんてことは不可能に近いからだ。それを成せるが故の先ほどの「性格など関係ない」発言なのだろう。とはいえ、その中身がえげつないことに変わりはない

 

「悪趣味だなぁ、大体底辺の英霊なんて区別のしようがないだろう?行いが酷かったものを言うのか性格を言うのか、あるいは逸話の地味さか実力的な弱さか……性格なら信長はダントツの底辺じゃないか」

「────おっと、主。貴様は今わしのたった108しかない地雷のうちの一つを踏み抜いたぞ」

「煩悩の数だけあるじゃないか、地雷源じゃないか」

 

どうやら何気ない一言が彼女の琴線に触れたらしい。多すぎる。赤外線に例えればくぐり抜けるスペースもない。

 

「大体なぁ、底辺?底辺じゃと?言うにことかいて底辺と来たか!何じゃそれじゃあ主はわしをあのいけ好かない画家風情以下じゃと!そういうのかい!?えぇ!?」

 

そして未だに引っ張るのはそこかよ。よほどダヴィンチちゃんの存在が来るものだったらしい。この調子では芸術家のサーヴァントが来たら本当に三千世界を引っ張りだしかねない。

バーサークアサシンの時は肯定的な意見を述べていた気もするが最後の言葉からしてそれも本心かどうか……信長の言を借りれば「女の心は秋の空故に扱い注意」だろうか?女性は注意事項が多すぎる。ぜひとも取扱説明書としてどこかの出版社から出してくれ「すまない、話を聞いてもらえないだろうか?」すれば俺でもちゃんとした扱いができるだろう。

しかし、だ。今は女だとか男だとかは置いておいて、主として窘めねばならない。諦めは肝心だがこういう二人きりの話し合う時間というのも大切だ

 

「信長のそういうところがダメだって言ってるんだよ。人を無意識に下に見てるだろ?もう殿様じゃないんだから落ち着かないと」

「あー、また踏んだもう踏んだ二度踏んだ!連鎖爆発のレベルじゃ!だいたいそんな事を言い出したら主こそ石頭の頑固者ではないか!パスが繋がっとるから言い訳は聞かんぞ、この意固地!お前のかぁちゃんデベソー!」

 

────わかった、女心は秋の空じゃない。戦争地の敵陣だ。誰か工兵を呼んでくれ、女心専門の工兵だ。出来れば男を頼む。「すまない、話を────」いうか信長の口から出た言葉もちゃっかり俺の中の地雷を踏み抜いていった。更には母さんにまで飛び火している。ここまで来たならば徹底抗戦と行こうじゃないか、ここは戦地だ。信長のように銃なんて持っていないがお互いの肉体が持つ限り、お互いの地雷を踏みあってやろう。

 

「石頭で何が悪い!俺は自分の決意をまっすぐ貫いてるだけだ!というか母さんはデベソじゃねぇよ小学生かお前は!」

 

貴様が挑むのは無限の地雷、不毛の大地……さぁ、恐れずしてかかってこい!

 

「……すまない、落ち着いてくれ」

「それを意固地と言うんじゃ戯けの戯け!いや!貴様なんか戯けも勿体ない、戯け以下のタワシじゃ!やーいやーいタワシ!あの剛毛具合が主の石頭にはピッタリじゃ」

「なっ!お前は人の気にしていることを!お前は今言っちゃならないことを言った!」

 

────カッチーン、と来た。よく言った信長、ならば喰らうか?というか最後まで食らっていけ。まだ踏み込むというのなら全力を持って相手してやる。もう引き返すことはないと思えよ

 

「何じゃい!先に言い出したのは主の方じゃ!」

 

信長の方もその構えのようだ。ならばいいだろう、もはや尽くす言葉はない。こんな燭台する必要ない。両手には被詠紙、そして令呪。魔術師を舐めるなよ信長、何を隠そう俺の礼装の本領は結界魔術だ。空間そのものを別世界に還元する大魔術……俺の決死の技を受けるがいい!

 

「すまない……頼むから落ち着いてくれ。落ち着いて話を─────」

「「さっきから五月蝿い!!誰だお前は!!」」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

……少々時が流れ────あぁ、うん。完璧に朝だ、むしろ日が登りきってそろそろ昼にさしかかろうという時……いや、色々あった。思えばサーヴァントを相手に取っ組み合いを始めたあの時の俺は同化していたのだと思う……そう思いたい。些細な事とはいえ一度白熱化するとどうにも止まらない。幸い城が半壊した程度で済んで良かった

 

「すまない、それは“程度”で済むことなのだろうか?」

 

…………。

 

 

 

 

 

…………………。

 

 

 

 

 

 

…………………………。

 

 

 

 

「────やったのは俺じゃない、信長だ!」

「何を言うか!半分位は主のせいじゃ!」

 

何を!?一介の魔術師が城を破壊するほどの魔術を撃つのにどれだけ苦労すると思ってる!?

 

「馬鹿力のサーヴァントと一緒にするなよ?僕は非力なただの魔術師なんだぞ?」

「自分で言っていることのおかしさに気づけ、魔術師が非力だというならその手についとる赤いの何じゃ?痣か?タンスにでもぶつけたんか?おぉ?」

 

……こいつ

 

「やるか、信長?やっぱり決着をつけずに引き下がれないよなぁ?」

「上等じゃ、馬鹿力でもってその馬鹿を通り越して愚か極まる石頭を解してやるわ」

「馬鹿はどっちだ自分の力を考えて喋れよ?そんな力で触ったら爆散するに決まってるじゃないか」

「こぉーんな華奢で美しい少女に触られて爆散するような頭があるか!さっきから聞いておれば少女に向かって聞く口ではないのぅ!」

「一体いつお前がおとなしく聞いてたってん────ダッ!?」

 

痛い……後頭部が激しく痛い。ほれみろやっぱり俺は石頭じゃない

 

「────いやてかなんで殴られた!?」

 

しかし俺を殴ったのは信長ではない。睨み合ってたのだから信長に後頭部は殴れない。となると答えはひとつ、この場に残るもう一人……いや、わざとではないが結果無視する形になってしまったサーヴァントが犯人に決まっている

 

「……すまない、少し前に見たばかりの光景だったからつい」

「つい、で容赦なく後頭部を殴るあたりアンタもやっぱ英雄だな!?」

 

バイオレンス!?いや手加減はしているだろうけどそれにしても態度に反して肉体言語の使い手だった

 

「いや、まぁそれにしてもまさか主の予想が当たるとはのぅ……本当にすまないしか言っとらんぞコイツ」

「……すまない」

 

……俺達を笑わせようとしているのだろうか?

 

「あぁ、まぁいいや、落ち着いたよありがとう。それでアンタが龍殺しか?」

 

伸ばされるままにされた銀髪に胴体部分だけが晒された鎧から覗く鍛え上げられた肉体、そしてそこに走る紋様と如何にも宝具ですと主張する両手剣─────そして何よりも身体を走るいくつもの大きな生傷

 

「龍殺し……あぁ、それならばおそらく俺だ。名をジークフリートという」

「ジークフリート……原典はニーベルンゲンの歌か?龍殺しの力に不死身の肉体、加えてクラスは最優と名高いセイバーか。その身をしてそこまでされる敵というのもこれまたさぞ高名なヤツらなのじゃろう」

「……すまない、数に囲まれた戦いという事もあって敵の真名までは」

 

……卑っ屈ぅー。冗談で言ってたところが大きかったのだがまさか実在するとは。

自分でここまで自分を下にやる英雄に信長も逆にタジタジだ。しかもそれがあのアーサー王にも負けじ劣らずな強者だけに何とも言えない

 

「……あぁ、それはいい。とりあえず俺達の目的はアンタを襲った奴らの打倒、その為に戦力を求めてここに来た。力を貸して欲しい」

「無論、俺も召喚されたからには役目を果たす。マスターすら居ない身だが、頼まれたとあれば俺に文句は無い……のだがこの傷ではついて行っても役に立てそうにない。すまない……」

「それについてもじゃがそろそろわしらももう一人のマスター達と合流するべきじゃな。弓兵の感知域にこれ以上の反応が無い以上、今はコイツの治療を優先すべきじゃ。幸いな事にその呪いとやらを解除できる宛もあるしの」

 

……まぁそれもあれがジャンヌダルクであるという予想のもとだが。

 

「いい加減ロマ二に通信したらどうだ?向こうの様子もいい加減聞かないと合流も出来ないだろう?」

「……奴は喧しいから嫌いじゃ。それにどうも曲者の匂いがする。クズ具合がどうにもあからさまで怪しいんじゃ」

 

こいつは本当に誰にでも噛み付くな。

まぁあのドクターは確かにクズだが空気を和ませることに置いてあれ以上のものは無い……空気を読まないことについてもだけど

心の中でため息を吐きながらカルデア製通信機のアンテナを合わせる

 

「すまない、面倒をかける」

「いや、いいよ……っと、ロマ二?ドクターロマ二?聞こえる?」

『あぁ!やっと繋がったよ、酷いじゃないか通信機の電源を切るだなんて────ってそんなことを言っている場合じゃない。君たち今どこに────遠いな!?リヨン!?森一つ超えた先じゃないか!あぁ!もう!』

 

通信機の機能を回復させた瞬間に怒涛の勢いでロマ二が喋り出す。あのお調子者にしては珍しく焦っているようだ。それ故に向こうがいかに切迫した状況なのかがよくわかる

どうやら俺達がいない間になにかがあったようだ

 

『凜クン達は今すぐ戻ってこれるかい!?』

「戻ってこれるかいって……いや無理だな。足を信長に頼るとしても流石に遠すぎる」

 

……それにこっちには怪我人もいる。それでも俺よりは動くだろうが信長について行くには無理がある

 

『敵のサーヴァントに追われてる!マシュ以外に三騎、味方につけられたけど敵は五騎!いつ追いつかれるかわからない!』

「落ち着けモサモサ。狼狽える医者に傷を見せたがる患者は居らんぞ」

『ボクの専門は医療じゃないんだけどね!?というか本当にそんな場合じゃないんだよ、ワイバーンに加えて死者や使い魔の妨害も酷くて』

 

何処もかしこも、ここリヨンと同じく襲撃を受けているのだろう。

それにしたってサーヴァントが五騎で襲いかかってくるとは異常にも程があるわけだが……やはり向こうは戦略的な動きが見られる。俺達のような異端への対応が早すぎる。前回のようにまたレフがいるのか、はたまた軍師のようなサーヴァントでもいるのか……

 

「おそらくジークを襲った奴らだな。今追撃してきてるのはどんな敵だ?」

『わからない!クラスはライダー……なんだろうけど暴れっぷりはバーサーカーのそれだ!騎乗物は竜だよ!それも亀みたいなの!』

「わかったバーサークライダーだそれ!」

 

どうにも敵は問答無用で呼び出すサーヴァントの尽くに狂化をつけていってるようで非常に厄介だ。

狂化は程度によるが英霊の持つ個性、人格を消す。その代わりにそれこそ狂戦士の名にふさわしい獅子奮迅の戦いを見せる。中にはその狂いっぷりが天性のもの故にバーサーカーとして呼ばれ、理性ある反応を見せる者がいるらしいが俺から言わせれば正直そちらの方が面倒だ。

そういったサーヴァントに関する情報の事を思えば、消えてからそう時間が経っていない所長……博愛ではないけれど白愛しているあのオルガマリーから聞きたいことはもっとあった。本当に、失ってしまったのは痛い。

 

「……亀を操るライダー?アーチャーのマスター、それは恐らく俺をここに匿ってくれたサーヴァントだ」

「────ジークフリートを匿った?」

 

……おかしな話だ。敵につきながらも天的であるジークフリートを庇うなど、それも狂化の中で。

 

「……ならば敵が狂化をつけている理由はサーヴァントの強化ではなくそれこそ本当の意味で狂化を望んでのことなのじゃろう、サーヴァントは基本的に自由意志を持つ。縛る方法はマスターと言えど三画の令呪のみ。英雄などと言う平均して善性を持つ輩を呼んでなすことがこのような虐殺とあらば事前に理性を封じる術を用意しておくのが常識じゃろうの」

『自由意思の剥奪……そこまで徹底してやるのならきっと召喚されるサーヴァントにも予め心当たりがあったんだろう。敵の正体はジャンヌ・ダルク────あぁいや聖女様は味方でもあるんだけど!あぁ、説明が難しい!』

「よくわからないから今はいい。追撃してきてるのが現在一騎なら迎え撃ちながらこっちに降りてきてくれ。どちらにせよライダーの踏破力から逃げるのは無理だ、幸い中間は森……敵の行動は制限されるし暴れている様もよく見れるだろう」

 

合流さえ出来ればこっちにいるのは遠距離ならばお任せ、何なら近距離もばっち来いの信長に竜種に対する超耐性、ジークフリートだ。聖女様がいるのなら洗礼詠唱による呪いの解呪も相まって一気に戦力は逆転する

 

「うむ、視界の範囲であれば援護くらいはしよう。盾子ごと巻き込んでいいのであれば爆撃も辞さ────」

『うん、マシュが余裕の無い顔で拒否してるからやめてあげてね』

 

ならば行動開始だ。結局休むどころか無駄に魔力を使ってしまったが移動は信長に頼るからこの際気にしなくてもいいだろう

 

「ジークフリート、とりあえず一度俺と契約してくれ。魔力の消費がある程度抑えられるはずだ」

「……了解した。この剣、そしてこの身をマスターに預ける。迷惑をかける」

 

気にしなくていい。力になってくれるだけど大助かりだ。そもそもこの魔力もカルデアからのアシストがほとんど……そうでなければ信長の維持で手一杯だとも

 

「通信を切る前に一つ。その竜の騎乗者が本当に狂化しながらも半死半生の龍殺しを助けた存在ならばそやつも種別的には聖人の可能性が高い。あれはわしにとっての魔王同様、人格や理性とは別の所にある。ただの善行であるならば騎士道などの線もあるが狂化してなおとなれば十中八九聖人じゃ」

『聖人で竜の乗り手?……逸話的に言えば聖女マルタか?たしか彼女は祈りで一匹の竜を屈服させていたはずだからね』

「何にせよ夜まで逃げ切ればその頃には合流できる。なに、盾子の取り柄は無駄な頑丈さ故にその程度わけなかろう」

 

非常にわかりにくい言い方ではあるがマシュ一人でも夜まで持たせることは出来るという確信の意味だ。マシュに強く当たる理由はいまいちわからないが……思考の域が俺達とは異なる信長だ。全く理由がないわけではないのだろう。それにどちらにせよ言葉の表面の割に中身はそう悪くない

 

『無茶苦茶をいう英霊ならボクも知ってるけども無茶苦茶しか言わない英霊は今のところ知らないなぁ!ダヴィンチちゃんよりも質が悪い!伝えておくよ!並べく早く来てくれ、それじゃ!』

 

向こうの状況がそんなにも極限的なのか最後はほぼ一方的に切られてしまった。そんなに忙しいならいっそダヴィンチちゃんの名前なんかださないで欲しかったな!

その名を聞いた瞬間急に殺気立った己のサーヴァントに手を焼かされながら俺は二騎の大英雄を連れて行動を開始する

 

「さぁ、盛大に新しい御伽噺を紡いでやろうじゃないか」

 

竜?好きにすればいい。この二騎を前に、まだ飛ぶ事が叶う竜がいたのであればそんなものは聖杯なんかの手に負える物か。

今からは始まるのは中世、フランスを舞台に英雄達の協奏曲、ならぬ狂想曲を背景に広げられる一つの物語だ

ならばそれの語り手くらいはしてやるさ。竜の前だろうと、この口を止める事はしない。神に────否、聖女様の御旗にそう誓ってやるさ

 

 

 

 

 




今回はみんな大好き「すまないさん」ことジークフリート!有名な英雄ですね。特にその不死身性は並み居る英雄の中でもずば抜けているそうです。
一応王様らしい彼ですがその願いは正義の味方、お前どこの主人公だよと言いたくなりますがまぁそれも仕方ないです。黒と赤に分かれて戦う運動会のような聖杯戦争では一番早くに脱落したくせに主人公の様な感じでしたからね。割と。気になる人は読んでください。僕は読んでません
サーヴァントととして、特筆すべきは先程も言った不死性に龍に対する絶対的な力ですね。伝承の......というよりは型月のジークフリートは悪龍を討伐しその血を浴びたことにより浴びた部分が異様な硬度を帯びた......しかしその際背中の一部分だけは菩提樹の葉がついていたためにそこだけは血を浴びることが出来なかった。それはもはや呪いのようになりその背中を防具で守る、隠すことが出来なくなったんですね。故にサーヴァント最強クラスのランサー、カルナと正面から打ち合える力に耐久性を持っていても背中を刺されたら負けるというアキレスの様な弱点を持っています。決して彼は露出狂ではないので悪しからず。個人的にはなぜ男にした型月という怒りに手が震えますがまぁあのカッコよさは仕方が無いか────というのはゲーム以外の話。というかゲームが始まるまでの話。
ゲームでのジークフリートは現在執筆中の一章、フランスはリヨンに現れる味方サーヴァントです。物語の上ではイケメンにも程がある活躍ぶりに惚れてしまいそうですが操作キャラとしては......微妙の一言。現在のゲームは如何に火力を出すかが肝心で耐久性に関しても体力の量よりも「回復」「回避」「無敵」「相性による半減」が幅を利かせているせいでどうにも役不足感が拭えません。肝心の龍殺しとしての性能も倍率がクラス相性により出る倍率に負けるせいでアサシン......それも星一の佐々木小次郎に負ける始末。謙虚な性格が災いし......いや幸いしネタキャラとして再デビューを果たしました。そしてこのネタが公式に使われるというもうなんと言うかな......
とまぁこき下ろしましたが実際それはオルレアンのドラゴンに意味がなさ過ぎてついたイメージで実際はその安定感と星四のステータス、やろうと思えば普通に火力は出る宝具を持つ安定感の鬼とも言えるサーヴァントです。見た目もいいし、今後も使い場所が出てくる可能性はあるのでぜひ引いた方は使ってみてください。
具体的な使い場所はエリザベートちゃんとかセプテムの言なんちゃらっていう龍ですね。
そういえば信長とかの説明結局してねぇ......

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。