聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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本当はオペラの戦闘なんか飛ばす予定だったんです。
ゲームでも扱いひどかったし主人公だけ先行させてすまないを助けさせようかななんて思ってました。
でも気がついたらこうなってましたよね。中盤のセリフ自分でもどうなってるのかわからない。文字数は六千位なのに今までで一番長く書いた気がする。後で数見てびっくりしましたからね、短くて。
さてそんなことは置いておいてドリル系宝具とか出ませんかね?ライダーとかで
???「墓穴掘っても掘り抜けて!突き抜けたなら俺の勝ち!」


あ、あと感想欄でゲームの話をしてくれた方がいらっしゃったのですが感想欄に書いちゃいけなかったのか朝見た時に表示されなくなってました。自分も規約に疎くよくわからないのですが皆さん、感想書くときは注意なさってくださいね。まだ見て返信してからだったので僕は良かったのですが変身する前に消えたらもう何を書けばいいやら......いや、消された方はそんなの関係なしに嫌だと思いますけども。とりあえず他の作品でもお気をつけて、では本編です


怪人の奏でる死の歌劇

高校卒業も近い、魔術師としては時計塔といった魔術をより深める施設へ行くべきだろうが……最近余計きな臭くなってきた爺共を放って海外へ飛ぶのは桜が危険だ。母さんはまだ他の家から招いた言わば客人のようなものだが、桜までその加護は回らない。歴史だけはある家の当主としての権力を全力で行使し、自身の要望全てを満たせるナニかを探してはいるものの結果は芳しくない。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「────カハッ!?ァ……オエェッ!」

 

……此処は現実か?それともまた夢でも見ているのだろうか?

体が浮いているかのように不安定だ。手はたしかに地に付いているのに重力がどちらに掛かっているのか、脳が理解していない。

えづいく度に意識がはっきりとしていく様に感じて、苦しいはずのそれを自然と受け入れていた

 

(マスター)……チッ、面倒な輩じゃ。流石はアサシン、搦手に回らせたら右に出る者はいないの?」

「ラララ〜っ♪……失礼な客だ、黙って席について聞き入っていればいいものを。我が歌劇(オペラ)の邪魔をするものはつまみ出すぞ?芸術を鑑賞する時は出しゃばるなと教わらなかったか!?」

「生憎とわしは既存概念の破壊者を自称していてな。教わったものは基本的に破りたくなる、だから答えはyesじゃがだからこそ存分に出しゃばっちゃうもんね」

 

場所はリヨン。四方は死者に、空はワイバーンに、前方はアサシンに抑えられ流石の信長も攻めきれない。剣でもって前に出ればワイバーンや死者が無防備な俺に攻撃し、銃で周りを牽制していればアサシンの宝具が俺の精神を破壊する

 

「────地獄にこそ響け(クリスティーヌ)我が愛の唄(クリスティーヌ)、私が私たる所以。私の愛の証明!無粋な客が聞くには、余りにも高尚すぎたかな?これでもまだ序盤な(加減している)のだがね」

「……クソッタレ、自身の声に乗せた魔力攻撃。しかも御丁寧に精神汚染まで」

 

音に乗せられた攻撃ならばまだ信長でも防げるだろうが、音を聞くだけでアウトな攻撃はもう耳を塞ぐしか方法はない。とはいえ仮にもサーヴァントの攻撃、しかも宝具の一部と来れば並大抵の抵抗では音しか防げない。その核たる魔力がどちらにしろ届くなら一緒だ

 

「ふむ、いやそれにしても確かに歌だけは大したもんじゃ。トカゲや死人の後でこそこそと奏でるしか能がないとはいえ様になっとるの。生前もさぞコソコソとしとったのじゃろう」

「ハハハッ、いくらガキとはいえ仮にも女性だ。忠告しておくが私の過去にはあまり触れるな……私も怒りたくはない」

「わしは大人じゃから紳士にあるまじき狂言にも怒らず居てやる。ほれ、存分にそのみみっちさを披露してみぃ。それとも何じゃ?そんな男らしい手をしているくせに女子の手を取り踊るのは恥ずかしいとでも?」

 

あのどこからどう見てもホラーな手を男らしいと評するか。ジャーマンのセンスは疑いようもないがどうにも信長のセンスは疑わしい、とはいえ俺的にも是非アサシンには接近戦をして欲しいね、きっと一瞬で終わるだろうから。

アサシン自体はそう強くない。近距離に置いても、遠距離に置いてもだ。

確かに音の攻撃は厄介だが全力の解放でないならばサーヴァント、それも対魔力を持つ信長を攻略することは不可能だ。もちろん、宝具の全力解放なんて隙を見せれば信長はその前に奴を打ち抜ける。

結局物理的な攻撃手段があまりにも少ないのだ。アサシンらしく、マスター狙いの攻撃方法しか持たない

 

「だけどいやらしいな。癪だけど有効過ぎるほどに有効だ」

 

これが一流ならばサーヴァントが相手でも味方の邪魔にならない程度にはやるのだろう。だが俺にはそこまでの戦闘のセンスはない。残念なことに典型的な研究者タイプの魔術師だ

 

「役者に舞台を降りろと?どこまでも愚かなのだ極東人よォ、私の!クリスティーヌの立つ舞台を!?この歌を汚す気かァ!!?」

「汚すも何も、初めからドロッドロに汚れとるではないか。愛に善も悪も無いというのは認めるがそれでも綺麗な愛と汚れた愛という区別は存在するもんじゃよ。貴様のは、それを自覚しているからこその汚れた自分への自己嫌悪。真っ当な愛の持ち主への嫉妬の具現じゃ」

「知った口を聞くなぁ!!」

 

飛び出した!

速度がアサシンというだけあって速いが信長に対処出来ないほどではない。

事実突き出された鍵爪のその尽くを信長は逆手で持っただけの片手で捌き、絡め、叩き落としている。

 

「何をしているんだ信長……?」

 

絶叫と共に打ち出される抜き手に熊手、不意打ち気味の蹴りすら薙いで技量で速さと力に圧倒する……が反撃はしない。いくらその手弾いても、本人を吹き飛ばしても……その刃で、弾丸で撃ち抜くことはしない。

死者やワイバーンへ向けられた銃口からは確かに光線がほとばしり、こっちへ向かってくるそれらを吹き飛ばしているというのに。

 

「……勘違いするなよ若造(ガキ)。汚い愛だろうが、醜い感情だろうが、歪なつながりだろうが人と人との繋がりは総じて美しい。貴様らの芸術とはそれを形にして伝える物じゃろう。そうとも!芸術家は清さも穢れも関係なく、真実の美しさを様々な形で観客に魅せる素晴らしい人種じゃ」

「黙れッ!例えそうであろうとも!自身の望んだ(クリスティーヌ)に受け入れられない(もの)に何の価値がある!?美しいだけでは人は寄り付かない!綺麗なだけの綺麗事を語って、私の心が満たされるかァ!!」

 

────渾身の突き。鋭い刃が空間を割いて、今まで以上の速度で少女の顔を引き裂かんと突き進む。

 

「清濁併せ持ってこその大人じゃ。綺麗なだけの綺麗事に満足出来ない子供が、自身の純粋さを疑う賢さを手に入れて駄々を捏ねる。どれだけふざけた世の中か……そう、理不尽は確かに存在する」

 

対して主を守るように圧切長谷部が閃き、食いついて右の爪を砕く

 

「そうだとも!あんなにも愛したのに!あそこまで尽くしたのに!あんなにも美しかったのに!!あそこまで焦がれたのに!!」

「そうして貴様自身が、その女に触れることもせずに、ただ置いて眺めるだけの芸術として鑑賞しかせずにいたから!女は人形ではない、夢を持ち、努力し、綺麗であろうと歌うのだ。そんな姿だから貴様の様な一途な男が惹かれた!何故それを誇れない、何故それに美しさを感じない!?」

 

片手だけの攻撃に、変わったはずなのに仮面の男の攻撃はむしろ速度を上げ、ドンドン加速して激しさを増していく

 

「理不尽があるからっ!醜い私が、私が私である以上!あれ以上、どうしようもなかった!努力はした!貢献もした!でもそれから先を、踏み込む事は私からは出来ない!私は醜い!歩み寄ってもらわねば信じることすら出来ない!」

 

突き出された爪が遂に信長の右頬を掠め、対する信長の白刃も男の仮面を傷つける

 

「何が貴様をそこまで傷つけたのか、私にはわからん。あいにくとわしは姫ではなくとも殿として育ってきた。自分に自信がないなんて経験は一度とて経験が無い!じゃからこそ世界で一番自信を持つわしが太鼓判を押してやる」

「貴様の言葉などに何の価値がある!?大事な人に見てもらえぬこの俺に?今更何の価値がある!?」

 

激突が続く中、男は仮面のヒビを広げながらも叫びを止めず、突如突き出された右腕が信長の肩へくい込んだ。砕かれてもなお鋭さを持つ断面が信長へと噛み付く

思わず刀を落とした信長にしかし左手の猛攻は止まらない

突き進むその腕を今度は自身の腕で抑える。

筋力値で負ける信長に徐々に凶刃は柔肌を食い破らんと迫る

 

「貴様のような美しきものには分からない。自身が近づくことで、他者を傷つける恐怖が!何が無い動作の一つが他人に与える嫌悪感を!こんなにも醜い手で女一人抱くことも出来ないのがその証明だ」

「手は別に生まれ持ってじゃないじゃろ……というか口説き文句にしてはずいぶんとバイオレンスじゃの。もし貴様の言葉通りならその刃は他人を恐怖に陥れる怪人のものではなく、辺りをあまりの微笑ましさで殺す初心な少年のものになるのではないか?」

 

なんという暴論。思春期男子に失礼がすぎる。

そんな突然冗談のようになった掛け合いの中でもその初心な少年の刃は変わらず少女を貫くために突き進む。否、最早それは貫く為ではなく少女の言葉を止めるために変わっていた

 

「つまらない冗談だ、この刃は紛れもない恐怖の象徴。いや、そもそも私と言うサーヴァントがいることそのものが私へ向けられた恐怖を示している」

「……わかった、貴様はどうあっても納得しないらしい。慣れないことはするものではないの」

「ならばどうする、諦めて死ぬか?その手を緩めればすぐにでも────」

 

ズガンッ、と轟音と共に放たれた光線は接触状態の二人の間を正確に通り抜け、今まさに少女へ突き立とうとしていた刃を砕いで地面を抉った

 

「────なぁっ!?」

「紳士の仮面が剥がれたか小僧?凄い声じゃの。いや、美しいには美しいがな……さて、ここからはわしらしく既存概念の破壊に努めるとするかの?」

 

怪人を蹴飛ばし、後ろに流れていた姿勢を起こした姿は紛れもなく魔王。髪が徐々に赤く染まり、同時に大人へと成長した身体は彼女が魔王として君臨したことの証明

だとすれば怪人などに勝ち目はない。総じて怪人等というのは魔王に使われて主人公に倒され一話で退場する端役なのだから

 

「よかろう、貴様が卑下する分だけわしが貴様を壊してやる。今の爪が恐怖の象徴だったか?じゃあ次は何だ?その醜さの象徴たる仮面か?既に壊れかけたそれを壊せば納得するんか?」

「……貴様とてその姿、周りの人間の印象に振り回された姿ではないのか?そんな風に周りに勝手な想像を押し付けられて、恐怖の象徴になってもなお貴様は私にそんなことを言うのか!?」

 

あ、それは信長には多分意味の無い言葉だ。他のサーヴァントならばともかくとして、彼女の場合の変身は少し意味が異なる。確かに第六天魔王というのは他称でもあるのだがかの織田信長に限っては────

 

「ん?勘違いしておるな貴様────わしは自ら魔王を名乗ってこの姿になっている。言ったじゃろう?自信の塊じゃと!砕いてみるか?ならば出してみよ、貴様の一番の宝具(トラウマ)を!」

「────狂人ガァァァァッ!!地獄にこそ響け(クリスティーヌ)我が愛の唄(クリスティーヌ)ゥゥッ!!!」

 

ボロボロの両手を掲げ呼び出したのは肉と骨の塔。広がる管は骨と血管、聳え立つ本体は脈動する肉と内蔵、接続するのは恐怖のまま固まる人皮────その正体は人間の体で作られた巨大な楽器、死の音を届ける醜き彼の罪の象徴

 

「────せっかくの美声をそんなもので台無しにするな」

 

しかしその鍵盤は彼が叩く前に弾丸に撃たれ弾け飛ぶ。

見上げた彼が見るのは既にワイバーンが消え、その代わりと言わんばかりに並ぶ三千丁の火縄銃

 

「見た目から察するに貴様の犠牲者から成り立つ宝具────罪の証か?よかろう砕いてやる。王が許すぞ、貴様はもう救われろ」

 

まさに豪雨、降り注ぎし光線はそれこそ何時ぞやの剣群を超えてたった一つの楽器へと降り注ぎ木っ端微塵に砕いて行く。

アーチャー故の精密性で持って担い手を一切傷つけること無く、その罪の意識を葬っていく

 

「ん?何じゃ今ので仮面も割れたか────フン、貴様の仮面の下の事をとやかく言ったのはどこの誰じゃ?センスが無いフランス人もいたものじゃ。見よ、主よ。辛気臭いことは変わらんが大した美形じゃろ?わしの言ったとおりじゃ」

 

おーい、君ドブ臭いとかさんざん言って置いて随分誇らしいじゃないかー。でもまぁ……

 

「確かに男として嫉妬する位カッコイイね」

「やはり主もなかなかのセンスじゃ。誇れ、貴様もなかなかの美男子じゃ!」

 

喧しい。非常に喧しい。目の前の怪人の後だとフォローされた感が褒められた感を大きく超えてむしろ虚しくなる

 

「……何故だ?私は、オペラ座の怪人……ファントムオブオペラ。醜き、恐怖の怪人」

「……狂化して忘れたのか、あるいはほんとに覚えてないのか?わしの記録にあるオペラ座の怪人は最後に報われて逝ったはずじゃがな」

「……?」

 

────ファントムオブオペラ。そうか、激しい戦いに思考が働かなかったがそうだ。一人の歌姫に恋焦がれた悲愛の怪人。確か名前はエリック。その最後は……

 

「貴様の最愛の歌姫は、貴様の顔を見て醜いだなんて言わんかったはずじゃ。もちろん……思ってもな」

「────ア……ァァ、アアアァァァァ……そうだとも。私は……クリスティーヌ。最後に君に────見られていた」

「……もう道に迷うな色男。その声は叫ぶためにあるのでも、嘆くためにあるのでもない、歌うためにあるのじゃ」

 

信長の手には火縄銃。返事を聞くこともなく、彼女はその引き金を引いた

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「それにしてもまたずいぶんと優しかったな。お前なら容赦なく切り捨てるもんだとばかり」

「主が私のことをどう思っているのか、よくわかったわい……まぁ、わしらしくなかったといえば確かにそうじゃがそれも仕方あるまい。わしとて女じゃ」

「……?」

「相変わらず鈍いのぅ、あんな美しい声に惚れぬ女なぞいるか。件の女とてひょっとすれば真意は怪人に向けられたいたかもしれぬ……ともあれわしはガキらしいからの。憧れた男があんな卑屈なまま消えていくのが我慢ならんかったのよ。いうなればあの男の自業自得じゃな。覚えておけ主よ、女を子供扱いすると痛い目を見ると」

 

……肝に免じておきます

 

 

 

 

 

 

「────という嘘じゃ。本当はただの嫌がらせ、わしは芸術系サーヴァントが大嫌いじゃからの!」

 

 




まぁここまで書いといてなんですけど自分オペラ座の怪人とか知らないんですけどね。きょーみねー


でもまぁ悲哀と憎悪に見ちたイケメンなファントムオブオペラさんは好きですよ。絵がグロいけどイケメンですし。鉤爪ってかっこいいですし。
というわけで時間が無いから今回は短めで閉じちゃいます。
短いなんてもんじゃねーぞ!?ってなりますがまぁ所詮あとがきですからね。信長とかオペラの説明はまた次回、ではまた!

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