聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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今回のカルデア旅行ツアーは中世フランス、信長の時代よりも少し前......のはずですね。
さぁさぁ何が起こるんだここで!今回の敵は何なんだ!“邪竜”百年戦争?ダメだ......検討も付かない。



茶番ですね、本編どうぞ


臥龍、目覚めの兆し

そういえばなんで俺は正義に興味を持ったのだったか……あぁ、そういえば英雄だ。あの男の、近衛の蔵書の、たった一つの英雄譚。現代にあるたった一つの神秘と、古の数え切れない無数の逸話。それだけが俺の興味、俺の中身だ。

きっと、俺があの本を読んでいなければ……魔術以外のものすべてを切り捨てていたことだろう。名前も覚えてない英雄の話こそが俺の原点の一つ……だからこそこの正義は崩させない。今ある俺の正義は家族を守ること、ただそれだけのこと

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

機会によるアナウンスと共に身体と世界の境界が曖昧になっていく。

溶けている……とでもいえばいいのだろうか?感覚が広がる、器に収まっていく、表現しようと思えど適した言葉がいまいち見つからない

 

「いつまでも惚けておるな(マスター)

「いてっ……?もうついたのか」

 

そんなふうに余韻に浸っていると信長に後頭部を叩かれてしまった。思わぬ気付けに目を開けばそこは一面の草原地帯、状況が状況でなければ走り回りたいほどに空気も景色も綺麗なものだ

 

「近衛くん、信長さんも!無事ついたんだね!」

「あぁ、シロもマシュも……リス?」

 

声をかけられそちらへと身体を向け一人もかけることなくレイシフトする事ができたことを確認しているとふと、異物が紛れ込んでいることに気がついた。

マシュの肩に乗る不思議な生物はカルデアについたばかりの時に見たあの謎の生物だ

 

「うむ、たしかに珍妙な生物がおるのぅ。それは食用か?」

「いや食べちゃダメだよ!?フォウって言って、カルデアに住んでる生き物なんだ!可愛いでしょ?」

「可愛いけど……いや、何でもない」

 

不思議生物のことは気にならないのか……それにしても何か食べたらステータスが上がりそうな生き物である

 

「……食べたらダメですよマスター凜」

「いやわかってるからそんな野蛮人を見るかのような目で────へ?」

「……?空がどうかなさいましたか────ドクター、緊急事態です、空に穴が!」

 

今まで気が付かなかったが少し視線を上に向けるだけで異変が目に入る

大陸すら丸々飲み干しそうなほど巨大な穴が空に広がり、青空を侵食して広がっているのだ

 

『聖杯の影響か……あるいは何らかの魔術式か?何にせよその時代にこんな現象が起きたなんて記録は存在しない、パラメーターもそんな現象の存在を示していないね』

「えっと、確かここフランス……なんだよね?有名な戦争があった時代の」

「百年戦争……と言ったか。正史の時期と照らし合わせると今は休戦中じゃな。まぁ、何にせよあんな物がぽっかり浮かんでる中で戦争なんぞ気味悪くてできたものではないがの。どうせ穴を空けるなら地面を掘って温泉でも一発当てて欲しいもんじゃわ」

 

もういろいろ話が変わってきてるし……しかし気味が悪いというのは同感だ。どう考えてもあれは特異点の形成と関係がある。そうでないなら前代未聞の超現象、自然の起こした奇跡ということになってしまう。そんなものは光の屈折でできた空に浮かぶ街、砂漠に消える都市とかで十分だ

 

『とにかくあれのことはこちらでも調べておく。君たちは一度龍脈を辿ってそちらでのベースを作ってくれ』

「了解ですドクター、それでは行動を開始します」

 

……あぁ、一度上のあれは忘れろと。絶対無理だけどね……?

 

「シロ、どうかしたの?難しい顔をしてるけど」

「うーん?……うん、なんかね?何処かで見たことあるような気がするなって」

「見たことあるような気がするって……あの穴を?」

「そう!まぁ、きっと気のせいだよ。だってあんなのが空にあったら普通忘れないもん」

 

……確かにそうだ。それに彼女はカルデアに来るまでは一般人として過ごしていたはずだ、あんなあからさまに魔術的なナニかとの関わりなんてあるはずがない

 

「……そう、じゃあきっとそうなんだろうね。さぁ、俺達もサーヴァントに遅れは取れないよ、急ごう」

「もちろん!マシュ待ってー!」

 

────関係なんてあるはずもない……だけれども魔術の素養を持つものが、確かに何かを感じ取っている。何処で何と関わったかなんて当の本人にはわからない。俺の妹のように、魔術の危険を知らず、存在すら知らない内に関わってしまっていた可能性もある

 

俺達は知らないことが多すぎる。カルデアの研究について、この特異点について、レフ=ライノールについて

 

「……やっぱりカルデアも何かきな臭いモノがあるのか?」

 

だとしてもそれを知る人間はもうおそらく存在しない、ひょっとすれば俺達は特異点なんてものよりもよほど厄介な事に知らない内に巻き込まれている可能性がある────そう、それこそ何よりも厄介な、魔術師の欲という物に

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「────休戦中なんだよね、信長さん?」

「うむ、間違いなく!今戦争は中断されておる。聖杯の知識に間違いはなかろうよ」

「じゃあさ─────」

 

四方から突きつけられる槍、剣、銃。戦車や大砲が見えない分マシだとでも言えばいいのか?何も無い草原のど真ん中で、俺らは完全に包囲されていた

 

「何でこうなってるのーー!?」

「先輩、待ってください。彼らは人間、ならば意志の疎通が可能なはずです!」

「そ、それだ!え、えっとここはフランスだから……あれ?」

「ボンジュール、か?いやでも正直それくらいしかわからないってのが一番不味いような……」

「なんで余裕かましてるのぉぉぉ!?」

 

むしろなんでそんなに余裕が無いんだよ。いや、マシュにも言えることだけども。

 

「あのさ、君ら自分達が何なのか忘れてる?」

 

鎧と武器が周囲で絶え間なく音を立て、警告する様に、言葉よりも如実に彼らの戦意を伝えてくる。意味不明な言語を叫ぶこちらに遂に緊張が振り切れたかその内の一兵が叫び、槍を突き出しながら一歩こちらへと踏み込んできた

早く鋭い突きは正確に俺の胸へと飛んでくる。さすが戦争の時代を生きた兵士だ、魔術無しにこの速度は正直賞賛に値する

……いかにも怪しい風体の俺らに思わず警戒したというのがこの兵士達の実情だろうが……何にしても去らずに襲いかかってくるというなら────

 

「こっちだって反撃するさ」

「かっこいいこと言ってるところ悪いがの主よ、それならば自分でなんとかして見せよ。ポーズまで決めてるからむしろかっこ悪いわ」

 

下手な災害よりもよほど驚異的な暴力を振りまくサーヴァント、そしてそれを使役するマスター。そんな存在が二組手を取り合っている中に旧式の兵器を持って突っ込め等、理不尽極まりない。いや、その理不尽側にいる俺がいうことではないだろうけども

 

「信長さん、峰打ちです!」

「言われずとも手心を加え、それに加えて手加減をし、さらに加えて火加減までしてやるとも。是非とも異国の戦士と遊んでみたかったからの、飽きるまで転がし続けてやるわ」

「加える加える語呂が悪いことこの上ないなぁ、こんがらがってくるよ」

「いやそれよりも後半の方に突っ込もうよ!?ひどい事言ってるよ!?」

 

……?何を言っているのさ、信長があんななのは前からじゃないか。もう充分突っ込んだからいいんだよ、これ以上同じことで突っ込んでたってしょうがないじゃないか

 

「それよりもあの重量のある盾をサーヴァントの力(制御不全)で振り回し人を盛大にはね上げておいて『峰打ち』だと言い張る君のサーヴァントの方がツッコミ所満載な気がするなー」

「────マシュー!?手加減!死んじゃうよ!?死ーんーじゃーうーよ!?」

 

さて、好き放題暴れる少女達に戦闘は任せて少し物思いに耽るとしよう、物思いに耽って物を見るとしよう。そう、具体的にいうならばこの時代のこと、休戦中に完全武装の兵士が集団でこんな何も無いところを彷徨いている理由を。

装備や兵糧を見るに現代でいうスパイなんてわけでもないだろう。近場の拠点から一時的に出張ってきた兵士に違いない……だとすれば目的は警邏か?まぁ無くはない、というか普通に考えればそれが一番ありそうな線だ。

だけれどそうだとしてこんなにも突然襲ってくるものか?思い出してみろあの鋭い突きを、新兵のものなんかでは断じてない。それなりに経験を積んだベテランが、それでも緊張のあまり飛び込んでしまうほどの休戦とは何だ?それは断じて休戦じゃない。ならば二つの勢力が争うのをやめた上であれ程ピリピリする原因とは何だろう……物語の定番を語るなればそれは主人公とライバルの間に割り込んだ強大な第三勢力だろう

 

「百年戦争に第三勢力なんてない、だとしたら……考えるまでも無いか、間違いなく聖杯が起こした異常、英霊の類に決まってる」

 

もしそうだとして呼び出されたサーヴァントは何だ?フランス軍の様子を見るに敵は軍事的に恐ろしい存在だ、それはつまりこの戦争そのものを狙って戦略的に暴れているサーヴァントがいるということに違いない……それが冬木のように多数いるのか、あるいは一体だけだがこの世界で勢力を築いてしまったのか。どちらにせよ軍事的行動に明るいサーヴァントだ。ただ暴れるだけでなく、目的のために明確な指針を持って行動し指示できるサーヴァントだ。

 

「百年戦争の、しかも休戦中のフランスに呼び出されてる。異変の中心はフランスか」

 

だがこの時期のフランス軍といえばそれこそ生ける英雄というものが存在するはずだ。後世にも名高い聖人にそれを支えた騎士、ジャンヌ・ダルクにジル・ド・レェ……そのような救国レベルの英雄がいてもここまで怯えるほどの驚異とはなんだ?

 

「一つ教えておくが時期的に、もう聖人の小娘は死んでおる」

「……なんだ、終わったのか?」

「飽きたから盾子に投げて来たのじゃ。あそこまでガチで怯えられると逆に萎えるというものよ。しかも相手おっさんばっかじゃし楽しくない」

 

わがままです。はい、非常にわがままです!

 

「んでジャンヌ・ダルクが死んでるって……そうか、もう処刑されてのか。へぇ、そこまで詳しくは知らなかったな」

「そうじゃの、じゃからこの国フランスが元々浮いていたのもあるのじゃろうが……それにしてもただ負けてるからとあそこまで怯えるような腑抜けではない。百年戦争等と大それた名前のソレを生きた兵士が負け戦如きに、あそこまで怯えているのであれば拍子抜けじゃ」

「……原因はサーヴァントじゃないって言いたいのか?」

 

だがそんなことがあるだろうか?サーヴァント以外にむしろそんなことが誰に出来るという?

 

「……先に言っておくがわしは別に宗教を否定しない。神はいても良いじゃろう、時代によっては、人によってはそれが心の支えとなり、活気をもたらすこともある。ただわしの欲に敗れ、焼かれたように神も万全ではないというだけのことよ」

「……?教会のせいだって言いたいのか?この事態が?」

「────言ったじゃろう。この時代にジャンヌ・ダルクはいない。既に死んでおるからの……そしてそれをこの時代の人間ならば知らぬものはおるまい、この時代に生きるフランスの民は英雄を失い、それを現実と受け止めて生きておる」

 

マジでよくわからない。教会によってジャンヌ・ダルクが死んだ、その後にサーヴァントが攻めてきたから狼狽えてると?違うニュアンスだと思うのだが言葉からは全く理解ができない

 

「回りくどいな、結局何が言いたいんだ?」

「……端的に言えばもし、その聖処女が死より蘇り、国を蹂躙し始めたならば────ちょうど今の様な感じになるかもしれんの、と。わしならそれぐらいの事をして恐怖を広めていくがの」

「いや、突拍子もない内容は置いておいてもお前ほんとぶれないな!?」

 

さて、ともかくそれは置いておいてもそれにしてはおかしい事がある。

 

「確に国は混乱しそうだけどそれだと聖人とまでされた人間が復讐に囚われたってことになるぞ?」

「カッ、じゃから予想じゃよ。わしもそうじゃが女子の癖に英霊なんてやっとるのは物好きよ。聖人なんて人格者がなるべくも無い……ただ運命に翻弄され、周りに担ぎ挙げられた小娘が勝手に死後にその名を押し付けられただけならば世界も(にく)もう、怨みもしよう。奇しくもわしとその小娘は終わり方がよく似とる」

 

まぁ、別にわしは満足して逝ったがの……とまで続けてようやく信長の話は終わった。

よく考えてみればジャンヌ・ダルクがどんな人間なのか、俺は知らないのだ。召喚してみるまで眼前の少女を男だと思っていたように、史実が英霊の力になるとはいえ本当にその通りなのかはその時代に生きた身近な人間しか知らない。あるいは身近な人間ですら知らない

 

「もし、そうだとしたら俺は少し怖いな」

「フム、何が恐ろしい?女の執念か?歴史の在り方か?あるいはそれに漬け込む聖杯か?人の心か?」

「いや、そうじゃないよ」

 

女の子は怖い、なんて言えるほど親しい友達はいなかった。歴史の在り方に恐怖を覚えるほど何かを信じちゃいなかった。願望器なんて眉唾なものに興味はなかった。人の心に理想なんて抱いてなかった。

 

……ただ、恐ろしくなった

 

信長(キミ)がいつか敵に回るんじゃないかって怖くなったんだ」

 

聖人すら歪めてしまう、そんな末路をなぞる様に炎の中に消えていった少女。

俺はそんな少女の時代に生きたわけでも、身近にいたわけでもない。だから……わからない

 

「フム、やはり主は戯けじゃの。サーヴァントとしても、信長(わし)としても言いたいことは五万とあるがここはそれらを呑んで一つ女子として言わせてもらおうかの」

 

そういって急に魔王化した彼女はその手を俺の頭へ向け、撫でるでもなく、掴むでもなくただそこに置いただけかのようにして力を抜くと

 

「女を通して別の女を見るでない。死んでいようが生きていようがそれは誰にとっても無礼で哀しいことじゃ」

 

まるで息子を愛おしむかのように儚い笑みを受けべて目を伏せた。

 

そこにはいつもの王者としての姿もガキ大将の様な爛漫さも無く……それこそただの人間のような……信長にしては珍しい弱さのみが映されている。なんと答えればいいのかもわからない。

ただ眼前で兵士がはね飛ばされている光景を沈黙を守ったままに眺めてばかりでついぞ俺はそんな少女としての信長に何の言葉をかけるわけでもなく、機会を失ってしまった

 

「……そろそろ行くか主。フランスのことなど悩んでも仕方が無い、わしらは所詮ここにある営みの外の存在じゃ。聖人だとか教会だとかわしらには関係ない。見敵必殺、何も考えられなければそれで良い」

 

子供へと戻り自然とどかされた手があった場所は不思議と暖かい。熱すぎるほどに、暖かかった。やはり俺には彼女が抱えるその熱の正体がわからない。

何の繋がりがあって彼女が俺に呼ばれたのか……全くわからなかった

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「フランス兵が撤退していきます!追いましょう皆さん!」

 

おかしなテンションのまま戦ったのがいけなかったか盾(赤い染み付)でもって峰打ちすることにはまってしまったのか、マシュは合流した時には妙に目を輝かせてそう言ってきた。無論文句などないがこのバイオレンスな見た目で行くとまた戦闘になりそうだ

 

「マシュが変な属性に目覚めたら信長のせいだな」

「いや、本当に置いてきたのは悪かったと思う。でもこんなのわかるわけないじゃろ」

 

眠っていた何かを目覚めさせてしまった……その責任はすごく重いのだ

 

「でも追うしかないよね!情報収集、これ大事なりだよ!」

「スゴイ当たり前のことをさも名言調にして語られてもなぁ。まぁ行くけど」

 

というか行くしかない。どれだけ考えたところで、真実は歩まねば見えてこないのだ。非常にいやらしいことにそういう風にできているのだから選択肢何ぞあってないようなものである

 

 

 

 

 

 

 

 

……さて、とはいえその結果がこれだというのは如何なものだろうか。

兵士の逃げる先といえば砦、あるいは城だろう。無論今回の彼らの進先にもそう呼べるものがあった、あくまでも本来ならばという前提条件付きだが

 

「ボロボロ……だね」

「ボロボロ……だな」

 

そこにいるのも負傷兵だらけ、もはや砦としての体を成しているのは外見だけか。思わずそう思ってしまうような、そんな砦だった

再び現れた俺達に怯える彼らだがマシュが今度こそフランス語で話しかけると落ち着いたようで会話をしてくれるようだ

 

「こんな事ならさっきも戦わずにちゃんと話し合えばよかったねー」

「……それは無理じゃろうな」

「え、なんでなんで信長さん?だって今はちゃんと話を聞いてくれてるよ?」

「理由はいくつもあるがまず見てくれだけの居城とはいえ戦場とそこでは兵の安心感が違う。自らの領地だからと油断しきるのは愚かじゃが休む時に休めんのはそれとは比べ物にならん愚物じゃ……そしてまぁむしろこっちが一番の理由だがの、奴ら恐らく目的が無い」

 

……目的が無い。指標が無い。終わりのない争いに、先の見えない疲弊の旅。何を守っているのか、何に刃を突きたてているのか、何もかもが不透明でわからない、そういう事だろうか?

 

「これでもわしも戦争というものを経験してきた身での。よく知っておる。自身の柱となっていたものを失った奴らはだいたいあんな感じになっておったよ。生きるためだけにただ戦う。今までが大きな目標と硬い柱に支えられていただけに戦うことは出来ても意欲が沸かんのよ。戦うことと生きる事は紙一重だが同じではない、そこに熱が無ければ人は立ち上がれん」

「……うん、俺達にはわからない感覚だ。でもそうだね、きっと信長の言う通りなんだ。あの人達は生きるために立ち向かうことは出来てもその度に心を削っている。それがこの光景に現れてる」

 

これを見れば誰だって思うことだろう。一人で子を育てるために自分の時間のすべてを犠牲にする親のように、周囲に置いて行かれ追うにも追いかけ方がわからない子供のように、理解してもらうために声高に主張ししかし理解されない人間のように。彼らは行動を起こす度に自身の何かを削らねばならないのだろう。

そうでもしなければきっと手に持つ武器を持ち上げることすらままならないのだ

 

「社会勉強ではないがの、もしお主らが今後その特異点につく度に何かを考えて戦うのならばよく見ておけ。これが戦争じゃ、これからのも戦争じゃ、これからが戦争なのじゃ。ここまでしても止まることはないし止まれもしない。休戦というのは必然のことでもあるが奇跡でもある。お主らはその渦の中に、それよりもより上な次元の苛酷さに自ら身を投じるのじゃ。だから覚悟(ソレ)を忘れてはならん。もし忘れる時が来たならば……その時はお主らがああなる番じゃ」

「……わかってるよ。戦争なんて見るのは初めてだけど、それでも考えるまでもなく信長さんの言うことはよくわかる。でもだからと言って考えるのをやめたらそれこそ私はきっと何のために頑張ってるのか忘れちゃうよ────バカだからね!」

「なるほど、バカはいい。気持ちのいいバカは何をするのにでも重用する。主もぜひ見習え」

 

二人の会話をどこか遠くに聞きながら、俺はそれを心の奥底で無理だと断じた。

要は「戦いの理由を他者にあずけるな」とそう言いたいのだろう。あずけた覚悟が重ければ重いほど、それが折れた時自分の中から失われるものの比重も重くなると……でも俺は自分の中にそれを持つことは出来ない。

シロの答えは優しい、お人好し故の逆に強い答えだ。他人に求めながらも他人の事だから投げ出せないと言った類の普通には考えられない強さだ。

対する俺は自己中だ。きっと家族のことがなければ家を出てでも好きなことをして過ごしていただろう、実際それまがいの事をしてきた過去がある────だから弱いのだ。

 

「俺までバカになったらもうここにはバカしかいなくなるじゃないか。それは重用し過ぎだね、夏場に冷たいアイスを食べすぎてお腹を壊す子供みたいになるよ」

「いや、そのたとえが既にバカ────というかアホらしいぞ主よ」

 

────誠に遺憾である

 

『雑談中悪いけど大きな反応がそっちに高速で接近中だ!』

「わしの説教を雑談呼ばわり────!?バカな、トップクラスの戯けにバカにされることがこれほどまでに答えるとは」

「お前はバカの味方なのか敵なのかもうわかんないな!?」

 

口では信長のそれこそバカなノリに乗りながら、しかしロマ二の言葉通りに感じる強大な存在感に身をすくませる。

サーヴァント……ではないだろう。あるかもしれないがそれにしてはあまりにも凶暴だ、ひょっとすればあったことはないがバーサーカーというクラスがこんな感じなのかもしれない。英霊の様な気高い戦意でもなく、反英雄の様な無色の悪意でもなく、黒化英霊の様な秘められた残虐性でもない。さらけ出されたそれはどこまでも原初的な凶暴性の発露だ

フランス兵たちも怪我を押してまで立ち上がりついに姿を見せたその存在へと立ち向かわんと武器を掲げる

 

「────休戦中に、兵がここまで疲弊しとる理由がよくわかったのぅ。喜べ主、此度の原因は間違い無くコヤツらじゃ」

「何をどう受け取ったら喜べるのさ、これ。顔がひきつって止まらないけどこれって俺の知らない新しい喜びなのか?」

 

緑色の鱗に黄色い眼、細長い体は蛇を思わせるが地を踏みしめるための両足と力強い両翼がそれを否定する……そう、アレは今は消えた幻想種、物語ならばそれこそラスボスと言っていい位置に常に存在する絶対強者─────ドラゴン

 

「ふむ、間違いなく情けない顔じゃがまぁそれが主の歓喜の表情ならば私は何も言うまい。何故なら何を隠そうこのわしが一番喜んどる。あぁ、あのトカゲ風情のおかげでようやくわしはわしの本来の戦い方ができるというものよ」

『ちなみにいうとアレはドラゴンじゃなくて亜種のワイバーンだから、そこよろし────』

「戦いが終わるまでしゃべるな戯け」

 

……締まらないのはもはや伝統芸だな。

 

「あぁ、うん。歓喜じゃ無いけど情けなくはなくなっただろう。呆れた顔ってのは情けなくはないからね」

 

あぁ本当に─────頼もしい限りだとも

 




今回は男主人公のことを軽く。
容姿は青い瞳にツンツンの黒髪を持った少年です。イメージは凛ちゃんの男バージョン。
ぐた男とか調べたら出てくるんじゃないかな?公式のマンガが黒い意味でインパクトが強すぎて男よりも女主人公のがイメージ強いですね。サーヴァントもなんか百合行けるヤツ多い感じあるし......印象ですけどね。

事前に準備をしてことに望むので突発的なことや知らない道のことには弱く、深く考えすぎるタイプ。魔術の研鑽は好きだが父の死が早かったこと、母親が魔術師魔術師した人間でなかったことから本人も自分の好みでやっている。だからか父の系譜、近衛の魔術よりも母親の魔術の方に集中しすぎて分家の偉い方に疎まれている。魔術への向き合い方や家族構成は遠坂凛イメージ。性格は多分似てない。
家族を守ろうとするのは義務感によるところが強く、ここはどちらかというと士郎のそれと似ているがこっちのは綺麗なというよりも本人の性格や環境からドロドロしがち
妹の名前は桜、年齢は......まぁご想像におまかせします。イメージの問題で特に理由もなく紫の髪に瞳を持ってたりする子ですけど魔術のことは知りません。
自身の魔術特性は『還元』。便利をイメージしてつけたけど特に理由は無い。礼装は折り紙だが特別性という事もあって在庫が不安。でもまぁ時間をかければカルデアでも作れる。この年で紙職人とは日本も安泰だ。
サーヴァントに対する向き合い方は一歩引いている。というか信長がいい男......というか女なので意固地な心を解されないように本能的に引きたがっている。無論大人でありながらガキ大将な信長は逃がさない
シロに関しては現状特に何も思っていない。素人の同僚マスター程度の印象。

まぁとりあえずこんな感じでいいのかな?今度はシロちゃんか信長のことかきますね。信長のはステータスとかではなくこの作品での性格ですね。なにせ本編だと召喚直後にマスター切り殺してたり軍を乗っ取ったり聖杯改造して爆弾作ってたりしてるので過激具合がね......。
一応あの作品では「時代がわしを必要としている」感から頑張った結果みたいですけどこの世界では呼ばれたから協力してやるスタンスで基本的には「お茶の見たい、出来ればらんまると」なおじいちゃんですか────あぁいやおばあちゃんですから

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