マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ 作:しろっこ
「完全に燃え尽きたのね・・・」
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「艦これ」的「みほ3ん」
EX回:第88話<静かな別れ>
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<<GR:緊急事態>>
私がドアを開けるとそこには秘書艦の祥高さんが立っていた。まだ夜も明けていないのに何事だろうか?悪夢ではないが今しがた見ていたリアルな夢の余波でまだ少しボーっとしている私。
しかし祥高さんは、ただならぬ気配だ。
「朝早くから申し訳ありません司令。しかし緊急事態です!」
いつもは沈着冷静な祥高さんにしては珍しいな。
「なにごとだ?」
「龍田さん2号が・・・」
祥高さん少し詰まる。
「・・・死にました」
「え?」
いきなりのショッキングな報告に私は完全に眠気が吹っ飛んだ。祥高さんっていつも突然なんだよな。しかし龍田さん2号って昨夜ブルネイ司令と共に見舞いに行った時には割と元気そうだったが・・・。
変な夢に続いて・・・この現実も悪夢の如きだな。こうもショッキングなことが続くとパニックを起こしそうになる。エイッと腹に力を入れ呼吸を整えた私は、まずは事実を冷静に受け止めようとした。
目の前の祥高さんも少々動揺しているらしい。だがさすがは秘書艦だ。彼女なりに必死に感情のブレを抑えようとしている。
祥高さんは続ける。
「ブルネイ司令が病室にいらっしゃいます。このたびの件は私たち美保には直接的には無関係な状況ですし司令にも参加要請は出ていません。しかし事実共有のため任意参加が認められています。いかがなさいますか?」
「参加する。着替えてから直ぐに行くと伝えてくれ」
私は即答した。
「了解。重巡祥高は司令参加の意向伝達のため先に病室へ参ります」
「頼む・・・あと金剛と日向にも事実は伝えてくれ」
私は祥高さんに敬礼をした。彼女も敬礼をしたあと回れ右をして廊下を去っていく。私は直ぐに自室へ戻ると手早く身支度をした。西の空はかなり明るくなっていた。
<<衛生棟:病室>>
制服に着替えた私は直ぐに衛生棟へ向かった。早朝のブルネイは意外に冷える。私は衛生棟の受付を済ませて階段を上がって病室へ向かう。夜の衛生棟というのはなんとも言えない雰囲気があるな。
やがて龍田さん2号の入っている病室へ来た。ノックをして中に入ると既に祥高さんと金剛、日向も着ていた。私が入室するのを見たブルネイ司令は立ち上がる。
「済まないな、朝早くから・・・」
ブルネイ司令は申し訳なさそうに詫びる。その傍には技師が居るがもう何もする事が無いようで工具箱やテスターを脇に置いたまま黙って立っていた。
「いや艦娘のことだからな・・・」
そう言いながらこれはいつもの私らしくない台詞だなぁ~と自分で思った。
「龍田さんが・・・逝ったのか?」
私が聞くとブルネイ司令はうなづいて一枚の便箋を示した。
それは昨夜見舞いをしたときに龍田さん2号が書いていた便箋・・・もしかしてこれは単なるメモではなく"遺書"だったのか?
私は便箋を受け取るとおもむろに開いて中の文面を見た。ついびっしり書いてあるのかと思ったが・・・そこにはわずか数行の文字のみ。本文に当たる部分にはただひとこと"アリガトウ"とだけ書いてあった。
それは龍田さん2号が手書きしたたどたどしい筆跡。それでも何か・・・胸に迫るものを感じた。
私から便箋を受け取った金剛は日向と共にその便箋を覗き込んだ。金剛は頭(かぶり)を振りながら呟く。
「シット・・・」
「・・・・」
日向はただ黙っていた。
<<病室:静かな別れ>>
「最期は・・・比叡2号が一緒に居たらしい。しばらくとり止めの無い会話をしていたらしいが比叡2号が席を外したホンの僅かな時間にその書き置きを残して静かに絶命したようだ」
ブルネイ司令が淡々と報告する。その場に全員が黙って聞いていた。そういえばその比叡2号が居ないな・・・。
ブルネイ司令は続ける。
「技師によると死因はケガのためか寿命なのか正確には分からない。ただ状況から見ると苦しんだ様子は無かったようだ」
それを聞いて私は少しホッとした。誰かを責める類のものではないな。確かに龍田さん2号の顔は微笑んでいるようにも見えた。まるで寝ているような・・・。
「失礼します・・・」
その時病室に美保の龍田さんが入ってきた。彼女も既に2号の死は悟っているようだった。2号の亡骸(なきがら)を見つめながら龍田さんは呟くように語り始めた。
「便箋を渡したのは私なの・・・でも2号チャンも・・・なんとなく自分の死期は悟っていたみたい」
はあぁっ・・・と龍田さん小さなため息をついた。
「私も感じていたわ・・・でもこれは避けられない道。2号チャン誰とか何かを恨むのではなく自分で受け止めて旅立ったのね」
龍田さん2号に近寄ると、そっと頬に手を当てた。
「ホントに私を見ているようで・・・でも貴女は私じゃない、唯一よ。精一杯生きて完全に燃え尽きたのね・・・」
それ以上龍田さんは何も言わなかった。ただ2号の顔を見ながら必死に感情が高ぶるのを押さえているようだった。直ぐに彼女の肩が小刻みに震え始めた。どうしても涙は抑えられないようだ。龍田さんでも・・・耐え切れないことがあるのだな。
そのとき再び病室のドアが開いて寛代が入ってきた。
「居ない・・・」
「なに?」
「比叡2号、居ない?」
「え!」
直ぐに技術参謀が続けて入ってきた。
「おい、比叡2号が、どこにも居ないらしいぞ!」
えっ!一緒に居たんじゃないのか?
嫌な予感がした。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。