マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ 作:しろっこ
「それが、もうひとつの君の使命だよ」
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「艦これ」的「みほ3ん」
EX回:第112話<真の護身と君の使命>
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<<埠頭:会場到着>>
埠頭のゲートを通る際、マスコミのカメラや記者が凄かった。いわゆるパパラッチみたいなのも居るんだろうか?いや、ここはブルネイだからな。そういうスキャンダラス系は少ないだろう。ましてや今日は軍事演習だ。政治的な記者やメディアが多いだろう。青葉さんが居れば詳しそうだけど。
記者に混じって、各国の軍関係者、端的に言えばスパイも居るな。アジア系の顔も見える。まあ、ブルネイは東南アジアの要衝だから当然だろう。
そんな喧騒を通過して入ったゲートの中は静かだった。私たちの車はMPの誘導に従って、埠頭内を進んでいく。空を見れば天候は申し分ない。
電や漣、祥高さんは、ときどき無線を傍受するらしく首を傾(かし)げるような仕草をする。埠頭内を移動している際に、電が助手席から私たちを振り返って言う。
「準備の進捗は順調なのです。美保のお二人にも、特に問題がなければ直ぐに会場へご案内するのです」
私は祥高さんを見た。彼女は大きくうなづいて答える。
「了解です。美保やブルネイの艦娘たちもスタンバイOK、そのまま会場まで案内をお願いします」
「了解なのです」
すぐに電と漣は、軽くやり取りをした。
漣はそのまま進行しMPの指示に従って軍用車を所定の位置まで進めた。やがて駐車場が見えてきた。既に何台もの軍用車、公用車が停まっており、私たちは、誘導員の案内に従って、開いた場所に停車させた。漣は、振り返って私たちに確認をする。
「艦隊司令部からの確認事項がございます」
「なんだい?」
「あの~お手数なのですが~」
そう言いながら、申し訳無さそうに漣は続ける。
「お2人は~護身銃は~、お持ちでしょうか?」
私は思わず胸のホルスターに手をやった。南部はまだ入っている。
「私はあるよ。君は?」
祥高さんに確認をする。
「はい、護身用というより戦闘用のものがあります。ちょっと旧式ですけど、作動はOKです」
祥高さんも答えた。
「了解です。では降車したあと、いったん確認してから、会場へご案内します」
漣はいったん敬礼。私たちはそれぞれ、降車した。電が私たちを後部に案内し、漣はそれを確認の後、エンジンを切った。
<<埠頭:護身銃>>
私たちのところへ来た漣は、ちょっと低い声で言う。
「あの~、念のため~、護身銃の作動確認も~、お願いします」
このものの言い方は、漣らしい。私はちょっと美保の漣を連想し懐かしさを感じながら、南部を取り出した。同じく自分の銃を取り出している祥高さんに話しかけた。
「やはり外地での演習ともなると、物々しいんだね」
祥高さんも、銃を取り出ししながら応える。
「そうですね。今日受信している無線やデータから見ると、マスコミに公開したことを含めて司令部もかなり警戒しているようです」
「まあね。シナも来ているし」
私はさっき柵の外に、それらしい人物を何人か確認していた。
「深海棲艦がアジアの某国と関係を持っているという噂も、司令部が警戒している一因のようです」
祥高さんは黙々と自分の銃をチェックする。彼女の銃は確かに旧型だが妙に威圧感がある。例の彼女の”艦娘時代”の擬装そのものなのだろうか?
あれはきっと私には片手で持てないくらい重たいんだろう。私は境港で夕立や日向が振り回していた銃を連想した。あれは最新型だったが、祥高さんの旧型銃だって、それなりのものだろう。そりゃ怖いなんてもんじゃない。直撃されたら人間なんて一撃で消し飛ぶぞ。それを想像した私は、ちょっと冷や汗が出る。
「某国ねえ……ややこしいな。まあ、仕方がないか」
私は自分の南部をしまいながら言った。
「そうですね、大きく公表されましたから」
祥高さんも、その”武装”を脇にしまう。
しかし彼女も国際情勢や安全保障面の話題にもきちんとついてくる。秘書艦は、やはりこうであって欲しい。たまにというか、ほとんどの艦娘は、ちょっとそっち系は弱いよね。やっぱり日本に帰ったら、教育しなきゃ。
そんな私たちの傍では、漣と電も自分たちの”装備”の銃を確認している。やはりこの娘たちが、いざという時には私たちの盾になる。それを彼女たちは当然の任務としか思わないだろう。しかし艦娘たちが身を挺して私たちを護ろうとする姿は、いつ見ても胸が痛む。
しかもこの娘たちは、ごく最近建造され配属されたばかりだ。ただ任務に関する事実情報をインプットされ、それを黙々とこなすだけ。艦娘は普通の人間ではないし、まして軍人だ。私たち指揮官が不要な同情は持つべきではない。
とはいえ、出来ることなら、この埠頭で彼女たちが発砲するような事態にならないことを祈るばかりだ。まあそれ以前に海上にも艦娘をはじめ、ブルネイの艦船や警備艇も待機している。もし深海棲艦が来ても直ぐに彼女たちが動く事態には、ならないだろう。
ああダメだな~私も。つい人情的になってしまう。時には非情にならねば。
「司令」
祥高さんに促されて私はハッとした。そうだよ、この祥高さんの落ち着き払った態度は、すぐボーっとして妄想の世界に行ってしまう私には大切な”お目付け役”みたいなものだ。
「ああ、済まない」
私は応えた。
「では、参りましょうか~」
漣が先導して、私たちは歩き始めた。
<<埠頭:真の護身、君の使命>>
祥高さんと並んで歩いていると、彼女は言った。
「司令、あまり気に病まないでください。私たちは貴方のためなら、自分の命は何でもない。それは他の艦娘たちも同じです」
「……」
私は何も言えない。彼女は続ける。
「特に私は秘書艦ですから美保の中で最後まで生き延びる義務があります。そして私は、あなたを生き延びさせる使命があります。これは、あなた個人のためではありません。司令という公的な位置があるが故なのです」
「ああ、分かっている」
やっとのことで、私は応えた。
「申し訳ありません。分かりきったことですが出しゃばりまして」
彼女は言った。
ふと、私は立ち止まり改めて彼女を見詰めて言った。
「いや、良いんだ祥高さん。ときどき、そうやって私に釘を刺してくれ。それが、もうひとつの君の使命だよ」
あ~!またやってしまった。案の定、彼女は真っ赤になってしまった。
すぐに前を行っていた漣が振り返り、後ろから来ていた電は、固まって困惑している。ごめんね君たち……私は、苦笑するばかりだったが、直ぐに言った。
「行こうか、祥高さん」
その声で、彼女は答えた。
「はい、司令」
ああ、良かった。彼女はニッコリしている。そんな彼女は、以前よりも笑顔が自然になったよな。
私たちは再び歩き始めた。先頭の漣も後ろの電も、私たちを見て何かを感じたかのようにニコニコしていた。
そうだな。お互いに信頼しあうからこそ一蓮托生なんだ。それが本当の護身であり、ひいてはわが国の防衛へとつながる。私たちは帝国海軍、日本の防人だ。
また艦娘たちに教えられたようだな。
そんな埠頭から見える水面(みなも)も、キラキラと輝いていた。今日は演習日和だ。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。