マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ 作:しろっこ
「”三人の魔女”と敵からも恐れられたそうです」
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「艦これ」的「みほ3ん」
EX回:第103話<3人の魔女>(改)
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<<艦娘:心のつながり>>
その”重い告白”を聞いた後、やはり祥高さんの表情が少し、明るくなったような気がした。それが仮に私の思い込みであっても、艦隊司令として当然の責務だろう。
特に相手は艦娘という特殊な戦士だ。いつも私は”アマゾネス”と揶揄(やゆ)してしまうが、わが国を命がけで護る兵士に変わりはない。その一人ひとりに個性があり、事情があり、そして、掛け替えのない実力を備えている。少なくとも、数々の修羅場をくぐり抜けて生き残り、美保と言う地で私と出会っているのだ。
そんな彼女らに対して、私も全力で対し、受け止め、支えられる所は、しっかり支える。協力し合って、わが国だけでなく世界の防壁となるべきだろう。
しばしの間、そう考えていた私を、祥高さんは黙って見つめていた。いつもなら”どうかしましたか?”と、突込みが入るところだろうが、今日の彼女は、黙っていた。だがそれは、いつもの仏頂面ではなく、何か”人間臭さ”を感じさせた。ふと私は、艦娘とは私のような”人間”との交流によって、彼女たち自身の感情の深さもまた、変わっていくのかもしれない。いや、それは我々も同じだろう。艦娘の一挙手一投足を見ていると、ふと、人間らしいのは果たしてどっちなんだろうか?そう思うこともあるのだ。
「しかし、いったん沈んで、よく”再浮上”できたね」
私は聞いてみた。
「はい。そこは単なる艦船と違う、艦娘の特徴かもしれません」
「というと?」
「感情のない艦船は、物理的に沈めば再浮上はあり得ませんが、艦娘が轟沈する理由の多くは、外的な負傷以外に、精神的・感情的なダメージに拠るところが多いです」
「ああ、それは何となく分かるな」
「ですから……」
ここで急に祥高さんは間を置いた。そして少しうつむいて、ポツリと言った。
「司令と艦娘との心のつながり、心の距離の近さが大切だと思うんです」
そう言いながら彼女は、珍しく恥ずかしそうな表情を見せた。ドキッとした。何度も言うが、この艦娘は、すべてがサプライズだよ。まあ、これもこの娘の個性か。
私はふと思った。
「そのとき君は敵とは相容れないという強い想いがあったと思うが、それだけで”海上”に戻れたのか?」
「いえ……」
彼女は何かを思い出すように続けた。
「私だけでは戻ることは出来なかったでしょう。共に戦っていた姉と、妹の強い想いもあったと思います。実際、私が気付いたときは、私の名を呼ぶ妹の腕の中でしたから……」
「はぁ~」
この”はぁ”は、呆れたのではなく、感心しているのだ。ただ軽薄な私には、この程度の相槌しか出てこないのだ。この軽薄さゆえに舞鶴で私は、あの娘を護り切れなかったのではないか?そうも思えた。
<<艦娘:幻の”祥高型”>>
私は聞いた。
「君には、妹もいたのか……いったい何人、姉妹がいるんだ?そもそも君は”何型”なんだい?」
思わず単純な質問が出た。彼女は少し微笑んで言った。
「私たちは……いえ、私が最初に義兄と横須賀で出会いました。自覚はないのですが、私はなぜか戦果だけは出すタイプでした。ある日、司令から同型艦が居ないかと聞かれ、呉にいた姉を紹介。姉は呉から転属して、私以上の戦果を出しました」
「なるほど」
「もともと姉は私以上のセンス、実力の持ち主でしたから、すぐに当時の司令……亡くなった姉の夫に気に入られました。やがて佐世保に居た妹も呼ばれて、3人揃って改修されました。この改修は3度に及び、かなりの予算が使われたそうです」
「3回って、要するに改三か?」
「はい。度重なる改修では革新的な兵器も実装されました。結局、艤装本体や兵器の開発で、戦艦並みの開発費がつぎ込まれたそうです。義兄は計画書の名前を変えたり、いろいろ手を回して、かなり強引に計画を進めたという話を姉から聞きました。あ、これも絶対に内密でお願いします」
「ああ……」
「私たちの性能は恐らく現在でも帝国海軍だけでなく世界最高水準でしょう。自分で言うのも変ですが、現役時代は、あまりの強さに”三人の魔女”と敵からも恐れられたそうです」
「ふむ」
「でも3姉妹が同じ鎮守府に居たのも良くなかったのかも知れません。結果的に、敵は作戦を立ててまで、ある日突然、全面的な集中攻撃をかけてきたわけですから。そして姉は、あの戦い以降、表には出なくなりました。私も”出戻り”みたいな状態でいったん大湊へ、その後に山陰の美保に転任。妹は特に落ち度は無かったのですが、二人の姉が凄まじいですから軍部でも敬遠されがちになってしまい、今では、ほとんど前線からは退いています」
「もったいないね」
「もし今でも義兄が生きていたとしても、状況は変わらなかったでしょう。海軍も改3予算の件では陸軍や野党からの予算の追及を恐れて、公の場では、私たち姉妹のことは意図的に伏せられています。ただ一部では私たち姉妹のことは”祥高型”と呼んでいるようです」
「幻の”祥高型”か、確かどこかでチラッと聞いたことはあるな」
「今では関係者以外は、ほとんど知られていないと思います。あの未来のブルネイで使われたいくつかの兵器の初期型は、私たちにも実装されていました」
「本当に?」
「はい。恐らく大和型にも匹敵するとされた性能に比例して、実戦での運用コストもそれなりに高かったのです。今後、私たちのようなタイプは二度と運用されないとも言われています」
「でも結局、海軍は直ぐに巨大な大和型を2隻も作ったんだよな」
「そこは、上層部の派閥争いがあったようですが、私には分かりません」
「まあね。知らないほうが良いよ」
そう言いながら私は未来の武蔵のことを思い出していた。現代の彼女は呉だったかな?イ401辺りに聞けば知っているんだろうけど。攻撃力の強い艦娘は心の芯も強いんだな。
まあ、現代の武蔵とは面識もないし敢えて聞く必要はないか。
そのとき、私の背後から誰かが声を出した。
「お!ここに居たのか祥高!」
「あ!」
そう応えて祥高さんは立ち上がった。
そして手のひらで私の背後を指しながら彼女は言った。
「司令、妹です」
振り返った私は、そこに立っていた”妹”を見て驚いた。
「え!」
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。