マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ   作:しろっこ

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司令と選抜された艦娘たちが乗った二式大艇は、南方へ向かう途中で嵐に翻弄されていた。そして……


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EX回:第1話<嵐の向こう側>(改2)

「このまま休暇扱いにしてほしいよな」

 

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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)

 EX回:第1話<嵐の向こう側>(改2)

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 いま私たちは二式大艇で飛行中だ。晴天だったら任務とはいえ楽しい旅になっただろう。

 

日本を飛び立って暫く、途中に立ち寄った台湾までは航路は平和そのものだった。

 

 ところが今から1時間ほど前になると天候が急変した。今も機外ではドーン! ゴロゴロ……という轟音が続いている。

 

「ひえぇ」

当然、これは比叡の叫び。

こいつ鎮守府ではトップクラスの実力を持つくせに肝は細いんだ。

 

 しかし腹の底に来るような雷鳴だ。気候が違うということもあるだろう。

機体は上下に大きく揺さぶられ腹が浮くような気持ち悪い感覚に何度も見舞われた。

 

「OHHH」

そのたびに金剛も訳の分からない雄たけびを上げる。

 

 当初は姉をなだめる元気も残っていた比叡だったが今では、すっかり青ざめ意気消沈だ……他の艦娘たちは落ち着いている。

 

「ぽいーっ!」

いや。落ち着きの無いのがもう一人いた。私はチラッと振り返る。金髪を振り乱した夕立だ。

 

 顔面蒼白な金剛姉妹と夕立……その形相は凄まじくて、まるでお化け屋敷か?

 

「お前ら、そんな状態じゃブルネイに到着する前にバテてしまうぞ」

「ひえぇ」

「Ohh」

「ぽ……」

当然、聴く耳を持たない。私は肩をすくめた。

 

「ブルネイへはどのくらいで到着しますか?」

日向が呟くように言う。

 

「えっと……」

私が時間を頭の中で計算していると同乗している技術参謀が即答する。

 

「あと2時間半と言ったところだな」

「はい」

制服姿の彼女は軽く眼鏡を持ち上げつつ腕を組んだ。

 

「ただ、この荒天で多少の遅れは見込まれるな」

「……」

私は黙って頷いた。

 

 今回は海軍省から来た技術参謀と、本部が手配した操縦士付きの機体でブルネイへと向かっている。

 

龍田さんが思い出したように言う。

「前日から来られて、半日休息しただけで直ぐに出発って……参謀はタフですね」

 

眼鏡を気にしながら参謀は応える。

「フフ、良く言われるよ。だが女性だからと言って甘く見てもらっては困るからな。特に軍隊では、男女平等だ。油断すると足元を見られる」

 

その言葉に龍田さんは少し肩をすくめたようだった。

 

 体力といえば基本、艦娘は人間の比ではない。だがこの技術参謀も、その配下だろう二式大艇の操縦士たちも屈強そうに見える。

 

「へえ、中央に居ても、イロイロあるんだろうね」

何か分かったような素振りを見せる夕張さん。青葉さんもしきりに頷いている。

 

 それから秘書艦の祥高さんと、少し言葉を交わしていた彼女は私の隣の座席に戻ると、改めて声をかけてくる。

「今回は急な話だったが……驚いたか?」

 

「ハァ、さすがに」

私がそう応えると彼女は眼鏡の縁を押さえて微笑んだ。

 

「フフ、無理も無いな。着任して日が浅いお前に、いきなり海外遠征の命令だからな」

「……」

何となく私たちの会話を、周りの元気な艦娘たちも聞いているようだった。

特に秘書艦と日向、それに青葉だ。

 

 激しい雷鳴と雷光の中、彼女は続ける。

「お前は『量産型艦娘』の話は知っているか?」

「はい。先日、呉の監査官から、その件はチラッと」

 

彼女は頷く。

「それなら早い。何となく察していたとは思うが、今回の遠征相手は、まさにその『量産型艦娘』なのだ」

 

 私たちのやり取りに他の艦娘たちは、ざわついた。

 

すると青葉が手を上げる。

「あのぉ、何処かの実験施設では、もう実用段階に入ったとか?」

 

参謀は頷いた。

「そうだ。今日行くブルネイに、その大規模な実験施設がある」

 

日向が口を開く。

「司令は、ご存知でしたか?」

 

「いや……そもそも、こういうことは機密であるし、弱小な美保鎮守府には縁の無い話だと思って、あまり気にも留めなかった」

 

「そ、そ、ソレ、ホントですか?」

「何だ?」

私が振り返ると青白い顔をしながら金剛が叫ぶように言った。

 

「艦娘は量産化されるんデスか?」

「一応、出発前に説明しただろう?」

 

すると横から比叡が割って入る。

「き、聞いてませン!」

「ぽいっ!」

 

……呆れた。

「お前ら、海外遠征ということだけで、舞い上がって聞いちゃ居なかっただろう?」

 

『……』

全員無言か。図星のようだな。龍田さんと夕張さんが苦笑している。

 

「機長」

参謀は前の操縦士に声をかけた。

 

「この嵐の状況は?」

すると二人並んで座っている操縦士の一人が振り返って言った。

 

「はい、これは気象図には無いゲリラ的なものですが、まぁこの辺りでは珍しくない

一時的なものです」

「……だろうな」

何だ、参謀も分かっているのか。

 

すると赤城さんが窓の外を見ながら不安そうに呟く。

「でも、日本の嵐よりも激しいですね。この機体で大丈夫かしら?」

 

「何だ」

参謀が振り返る。

 

「お前は正規空母のくせに、南方のスコールは未体験か?」

彼女の鋭い眼光に晒された赤城さんだったが、さすが一航戦、まったく動じない。

 

彼女は黒髪を気にしながら答えた。

「いえ……ただ、ここまで激しいのはちょっと……」

 

すると参謀は席に戻って言った。

「まぁ、海上と空中では、また勢いが違うからな」

 

そんなやり取りの隣では、金剛と夕立が憔悴(しょうすい)しきった表情で座席に蹲(うずくま)っていた。いつもの二人からは想像も出来ないな。

 

 そのとき突然、機体が持ち上げられた。

 

……かと思ったら急激に下がる感覚があり激しい振動が機体を襲った。

「ぽいー!」

 

「うるさいな」

技術参謀が不機嫌そうに呟く。

 

その態度に私は少し冷や冷やした。

(頼むから参謀の前では皆、良い子で居てくれよな)

 

「Ohh……」

そんな私の意に反して金剛が怪しい唸り声を上げ始めたときだった。

 

急に周りが静かになり機体の外が青く明るくなった。

不穏だった金剛も、その雰囲気を感じてキョロキョロしている。

 

「お姉さま?」

直ぐに比叡が不安そうに近寄る。

 

「何ネ?」

彼女だけではない。急に別世界に来たような妙な印象を機内の全員が受けた。

窓際に座っていた艦娘たちは、外を覗いている。

 

「雲の外に出たのか?」

私もまた、近くの窓から外を見ようとした次の瞬間だった。

 

 ドーンという激しい衝撃波に続いて再び機体が激しく揺れる。

機外は再び嵐のように暗くなり機長が何かを叫んでいる。機内の全員が慌てて近くのイスや手すりに掴まった。

 

 静電気のような強い感じのビリビリした電流のようなものが機体全体を覆う。続けて機内にある金属類が帯電してバチバチと音を立て始める。

 

「ぎえええ!」

金剛の叫び声(日本語)。

 

「お姉さまぁ!」

比叡の異常な叫び声に私は思わず振り返る。すると、あろうことか金剛姉妹の被り物からも激しく放電が始まっていた。

 

「セント・エルモス・ファイヤー」

明暗を繰り返す機内で、わけの分からない単語を呟いている夕張さん。

 

「えぇ? わぁ本当ね、初めて見るわぁ」

これは龍田さん。

 この二人は、こういった妙な状況でもビクともしないな。

 

「キレイ……」

のん気な赤城さん。ビクともしないのは彼女も同様か。

 

『ギャー』

金剛姉妹は、お互いに指差しあって絶叫している。

被り物から一斉に放電している構図というのは、見方によっては滑稽だ。

 

しかし本人たちにとっては気持ち悪そうだな。

 

「あぁ、うるさいな……」

鬼のような形相で言った技術参謀のメガネからも見事な稲妻が出始めている。

 

「チッ!」

舌打ちすると彼女は、自分のメガネを外そうとした。

 

「あ痛!」

……そう言った彼女は慌ててメガネから手を離した。予想外に強い電圧のようだ。痺れたのだろうか? しきりに手を振っている。

 

「ぽ……!」

既に後ろに居る夕立の金髪は、すべて空中に拡散していた。いや、もはやこれは爆発と表現すべきか。案の定、恐怖で声が出ていない彼女。まるで恐怖映画だな。

 

「……」

赤城さんの黒髪も夕立同様、四方八方に爆発している。

 

 ところが彼女は、そんなことは一向に気にしないで一心不乱にボリボリと何か食べてる。さすが一航戦、強い。

 

私と目があった彼女は、すまし顔で菓子袋を掲げた。

「食べまふ?」

 

「いや、良い」

私は苦笑した。

 

……その空間が数分続いただろうか? 

 

 機体は突然、何かから解き放たれたようにフワッとした浮遊感に包まれた。

同時に下降する感覚があり、機長が慌てて操縦かんを起こしている。

 

「おええっ」

後ろからの声……夕立だな。

 

 機外は、再び明るくなっていた。今までとは違う場所へ移動したのか?

私は状況を確認しようと機長の問い掛けようとして、止まった。

 

(この機を主管しているのは参謀だよな……)

そう思った私は横の席を見た。

 

「あ?」

思わず声が出た……技術参謀が気絶していた。

 

(可愛そうに白目剥いているよ)

 

「……おまけに、若干のよだれも」

そう言いながら青葉さんが躊躇(ためら)わずに写真を撮る。

 

「おいおい、大丈夫なのか?」

さすがは記者というか、神経が図太いな。

 

「バレたら参謀に半殺しにされるわよ?」

龍田さんもホワホワと言う。

 

「平気、平気」

そのまま青葉さんは写真を数枚、連写している。

 

「どうなっても知らないわよ?」

珍しく秘書艦が口を開いた。その意外さには、機内の艦娘たちも、ちょっと驚いた感じだった。

 

日向が言う。

「秘書艦は参謀をご存知で?」

 

「ええ、私も横須賀に居たことがあるから」

祥高さんは微笑んだ。そうか、彼女はあっちの出身か。

 

「横須賀……ああ、中央ですね」

ファインダーを覗きながら青葉さんが相槌を打つ。

 

「参謀も美人さんですね」

青葉さんの言葉に私は改めて参謀の顔を、まじまじと見詰めた。

 

(……)

今までは怖いので直視出来なかったのだが、その眼鏡の下の素顔は確かに美人系だ。

 

「イイなぁ、美人は絵になるなぁ」

呟きながら撮影を続ける青葉さん。こうなると遠慮が無いな。

 

 やがて機体は、ゆっくりと降下を始めた。

 

「あれ?」

私は改めて窓の外を見た。

 

「あぁ、晴れましたね」

夕張さんも窓から目を凝らしている。いったいどうなってるんだ?

 

「ねえ、見て見て!」

誰かが叫んだ。

 

 よく見ると水平線の遥か向こうに陸地と、その海岸線に立ち並ぶ港湾設備らしき建物が見えた。

 

「あれがブルネイか?」

私の言葉に機内の艦娘たちも、いっせいに窓の外を見た。

 

「ついに来たのね……」

赤城さんが呟く。

 

 機体は徐々に高度を落とし、澄んだ海面が見えるようになった。

 

「わぁ、キレイ」

以外に無邪気な夕張さん。その横から静かな寛代も覗いている。

 

 海面の、ところどころには南国特有のサンゴ礁が散見される。

 

「やれやれ……」

少しホッとした私は改めて座席に深く腰をかけた。

 

 青い海は綺麗だけど、なぜか気が重い。そもそも到着前から疲れた。

 

「このまま休暇扱いにしてほしいよな」

そんなことを呟きながら私は座席で脱力していた。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。

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