提督に会いたくて   作:大空飛男

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6000文字まで行ってしまった…。


家族会議と、艦娘の声です!

家族会議と言うものをご存知だろうか?

 

名前の通り、家族で話し合うことである。ただの日常会話ではなく、何かの取り決めをする際にはこの名前が合うはずだ。それは旅行先の取り決めであったり、時には一人に対し、説教を片っ端から行うのも、一種の家族会議である。

 

で、まあなんでこんな話をしたのかというと、俺と蒼龍は今その家族会議中であるからだ。おふくろと妹だけならこんなことにはならなかったものの、不幸にも親父がゴルフから帰ってきて、ここまで発展してしまった。

 

ちなみに家でこうして家族会議が開かれたのは、ずいぶんと久しぶりだ。中学生時代の頃にヤンチャしており、その時はよく開かれたけど、高校に上がると同時に俺がおとなしくなると、めっきり行われなくなった。つまりうちで開かれる家族会議は、大体俺の所為。

 

「ふーむ。つまり蒼柳さんは、しばらくうちに居させてほしいということなのかね?」

 

重圧的な態度で、親父―七星賢人は蒼龍へと問う。

 

ちなみに蒼柳とは蒼龍のことだ。彼女には蒼柳龍子と言う偽名を使ってもらっている。安直な名前だが、頭文字を取ることであだ名を『蒼龍』と呼べるのは、割と良い案じゃなかろうか。

 

「はい…。先ほども言いましたけど、私は養女としてとある家族に養って頂いていましたが、そちらの家族問題で家を出ることになってしまって…。あまりにも突然すぎて、一人で住む用意もできず…望さんに声をかけていただきました」

 

養女と言うのも、俺が急きょ考え出した嘘だ。蒼龍は身寄りのない子として育ち、そのまま真面目に育ったという設定にしている。しかし実際艦娘って、人間なのか機械なのかよくわからないよね。今俺の横にいる蒼龍は普通の女の子だけど…。

 

「かあさん。どう思う?」

 

親父は腕を組み、おふくろ―七星朝日へと問う。

 

「私は…あまり良いとは思わないわねぇ。第一、望に彼女が居たことなんて、初めて知ったわ。時代遅れの顔してるのにねぇ」

 

おい、それはどういうことだ。確かに昭和に生まれればイケメンとか言われたことあるけどさ。かつらも似合うとか言われるけどさ。実の息子にそれはひどいんじゃない?

 

 「うーむ。若葉はどうだ?」

 

 「わたしは賛成かなー。だって龍子さんともっと話して見たいしー。にいちゃんの彼女初めて見たし」

 

 よく名前が出てくるが、改めて妹の七星若葉は、どうやら賛成してくれるようだ。割と鬱陶しい妹だけど、こういう時は俺の味方をしてくれる。兄妹の絆は、割と深い。

 

「一応補足しておくけどさ、蒼龍とは…あー龍子とは付き合いが長いんだよ。もう三年は続いているんだよね」

 

艦これが始まったのはちょうどそれくらいだったはずだ。それも初期のころに出会ったし、まったくと言っていいほどの嘘はついていない。

 

「俺はそんなお前の浮いた話は聞いたことない。かあさんにも若葉にも言ってなかっただろう?そういう話を少しでも耳に入れていたのなら、まだ話は変わるが…。今日初めて『俺の彼女を紹介する』と言われても、いまいちピンとこない」

 

くそ。やはりいつもの正論でねじ伏せる行動に出てきたな。この人のいいところでもあるし、悪いところでもある。

 

「俺の性格はわかってるだろ?言いたくなかったんだよ。茶化されるからな。第一こんなことになるなんて、俺も思っていなかったさ。でも、かわいそうとは思わないのか?」

 

「…思わないわけが無いだろう。龍子さんはとても気の毒だ。だがな、まだ何回か面識があったら信用できるものの、今日初めて出会った他人をいきなり家に置くことはできないだろう?常識的に考えろ」

 

でたよ。親父お得意の『常識的に考えろ』。あんたの常識なんてしらねぇよ。って、まあ今回は常識的に考えてぐう正論だけど。

 

「常識的じゃないのは重々承知。だけど急すぎたんだ。そもそも、おいおい紹介しようとは思っていたけどさ」

 

「まったく。だからお前はバカなんだ。いつも物事の先を見据えて生きろと俺は言っていただろう?何のために剣道をやっている?」

 

確かに剣道は二手、三手を見据えて技を繰り出す必要もある。先を見据えれないものは、負けるといっても過言ではない。だけど、それは今と関係がないはずだ。なんでも結び付けれると思うなよ。俺は身を守るために剣を学んでいるんだ。

 

「ところで…龍子ちゃん。あなた歳はいくつなの?」

 

俺と親父のいらだちをなだめるかのように、おふくろが蒼龍へと話を向ける。

 

「一九歳ですね」

 

「あら…まだ成人ではないのね。それは私ちょっと心配かも」

 

 そういって、おふくろは親父へと目線を向ける。さすがの親父も未成年と聞けば、顔を歪めた。

 

「その身なりだが、成人ではないのか…。一人で放り出すのは、確かに危ういといえば危うい」

 

さすがはおふくろ。親父の心が少し揺らいだぞ。

 

「だが…やはり信用ができない。まず、龍子さんはなぜ息子にひかれた?それが一番わからんのだ。そんな美人なら、うちの息子じゃなくてもいいはずだ」

 

またか。あんたもか。どうしてうちの両親は俺にひどいことを言うんだ。確かに自慢できるようなイケメンではないですよ。むしろ厳ついって評判の顔ですよ。時代劇で言う切られ役的な顔ですよ。だけど、それでもひどくね?実の息子ディスりすぎじゃね?あ、切られ役の方は、割とあこがれてます。

 

さて、そんな俺のことはさておき、蒼龍は親父の問いかけにさも当たり前のように言葉を返した。

 

「それは決まっています。優しいところです。私がひどく落ち込んでいた時も、元気を出すように声をかけてくださいました。普段は口使い荒いですけど、時に見せてくれるそんなところに、私は惹かれました。この気持ちに嘘はありません!」

 

「あ、ああ。そうかい。…なあ望、お前騙されてるんじゃないのか?違うか?」

 

蒼龍。お前の天然ジゴロっぷりに親父、ハトが豆鉄砲食らったような顔してるぞ。蒼龍すげぇ。いろいろと。

 

「うーん。騙されてないと思う」

 

「そうか。いや、そうだとしてもな…」

 

親父はさらにうなり始めた。この人もなんだかんだ言って情の熱い人物なんだ。おそらくそんな持ち前の情が、一家の大黒柱を揺らしているのだろう。

 

「そういえば、龍子ちゃんは学生さん?」

 

「あ、はい。奨学金で頑張ってます」

 

「あら、たいへんねぇ。ふふふ…望が早く就職すれば、楽になるわ」

 

おふくろ。ど直球で言すね。それ、要するに結婚認めたってわけだよね?そんなに俺に彼女ができたことがうれしいか!

 

「え、あっ…はいぃ…」

 

まあ、さすがの蒼龍も感づくよね。顔を赤くして、小さくなってしまった。

 

「信用できん。いったい望はどんな魔法を使ったんだ…」

 

親父。俺じゃないけど蒼龍が魔法を使ったんだ。いや、明石か?

 

「…まあ、見たところ悪い子でもなさそうだし。何より愛想もいいな。うーむ」

 

「お父さん。いいじゃありませんか。責任はすべて望が取ると言っているのですよ?」

 

「まだ望も二十一歳だ。とても責任を取れる年齢ではない。だが…」

 

親父は言葉をいったん区切り、再び口を開く。

 

「そうだな。一つ条件を出す。それを飲めば、置くことを許可してやる」

 

「なんだよ。その条件って」

 

切りのいいところで区切ってくる親父に少々苛立ちつつ、俺は催促をした。

 

「まあ待て。いいか龍子さん。ひと月二万…この七星家にお金を納めなさい。いわゆるこの家に住む『家賃』。それが条件だ」

 

なるほど。確かに相応の…いや、むしろとんでもなく良い条件だ。だが、蒼龍はバイトができない。いや、そもそもこの世界の、日本人としての証拠や証を何も持ってはいない。彼女はこの世界で、本来存在しないからね。

 

―まずいな、どうしようか…。

 

「わかりました!」

 

え、蒼龍。今なんと?

 

「その条件をのませていただきます。それだけですもんね?」

 

そういって、蒼龍は頭を下げる。おいおい勝手に話を進めてはまずい。金のことはどうするんだ。

 

「そうか。飲んでくれるんだな」

親父も待ってくれ。蒼龍と話をさせてくれ。って、この人に事情説明してないし。積みましたわ。

 

まあこうして、何とか蒼龍は七星家の居候になることができた。

 

どうやら本心は、親父もおふくろも信じたかったみたいだ。だが、あえて親としてのメンツで、蒼龍に言い寄ったと見える。いつもなら融通が利かないが、あっさりしすぎて予想外だ。

 

しかし、蒼龍が俺の決定を待たずに口を開いてしまった。なぜそうしたかはわからないが、もしかしたら何か思い当たる節があったのかもしれない。さて、どうしたものかな。

 

 

とりあえず家族会議を終えた俺と蒼龍は、自室へと上がった。

 

若葉とおふくろに質問攻めをされていた蒼龍であったが、割と難なく返せていたようだ。ただ、おふくろに昭和臭いといわれたことは、正直ドキリとした。

 

「ふう。何とかなったね」

 

椅子に座り、俺のベッドに腰かけている蒼龍へと声をかけた。

 

「あはは…思っていたよりやさしいじゃないですか。みなさん」

 

「まあね。なんだかんだ言って、やっぱり家族だし…って、蒼龍にはわからないことか。すまん」

 

艦娘の家族事情はどうなっているのだろう。いや、そもそも彼女たちに家族という概念は何だろうか。しかし結婚の意味は分かっているようだし…。

 

「大丈夫ですよ。私の家族は、鎮守府のみんなと提督ですから」

 

ああ、そういうことなのか。俺も含まれているのかと言う疑問はさておき、鎮守府の皆をも家族と思っているのなら、それはそれで寂しくないのかもしれない。

 

「あ、そうだ。艦これやらなきゃ」

 

今日は蒼龍に付きっ切りだ。艦これを触る時間はほとんどなかった。デイリーだけ終わらせて、とっとと寝てしまおう。今日はすこぶる疲れてしまったぞ。

 

「あっ…私。作戦に参加できないじゃないですか!ど、どうしましょう!」

 

え、今更それに驚くの?遅くない?まあ蒼龍が居なくなったことは痛手だけど、轟沈ではないからダメージはない。むしろプラスに働いている。

 

俺はパソコンを立ち上げると、読み込みが終わりパスワードを打ち込み次第。すぐに艦これを開いた。さすがに二回目は、蒼龍もかーんーこーれとは言わなかった。

 

「さーて、まずは任務だな」

 

俺は任務画面を開き次第、出撃の任務にチェックを入れようとする。すると。

 

『あ、提督。今日は蒼龍さんとお出かけでしたか?』

 

…。は?え、大淀さん何を言っているんですかね?

 

「へぇ。任務を受け付けるとき、こうなっているんですねぇ。なんか新鮮です」

蒼龍が俺の後ろから、画面を見てくる。ちがう。もっとおかしいとこあるでしょ。

とりあえず大淀さんは先ほどの言葉以外何も言わない。まあ仕様上そうなってるから仕方ないね。とりあえず出撃の任務を選択しよう。

 

「蒼龍がいないし。代わりにだれを旗艦にしようか…」

 

「任務に合わせればいいんじゃないですか?またオリョールに出撃するんですよね?」

まあそうだよ。一番それが消化に楽だし…。と、言うわけでゴーヤを旗艦にしてみる。

 

『てーとくぅ!もうオリョール行きたくないでち!』

 

幻聴だ。聞こえないぞゴーヤ。次はイムヤを入れなければ。

 

『うわあああああ!やめて!司令官の鬼いい!』

 

こっちがうわぁだわ。こう聞こえるとすっげぇ罪悪感だわ。てか俺そこまでクルージングやってないだろ!

 

「提督…ちょっと潜水艦の子たちかわいそうじゃないですか?」

 

くそ!聞こえるようになった途端俺に文句を言ってくるようになりやがって!

 

「あーうん。やめよか。そうだレベリングをしよう。3-2-1でレベリングだ」

 

蒼龍が居なくなった枠は加賀を入れればいいはずだ。加賀は手に入れたのが割と後だったし、致し方ないレベルになっている。

 

とりあえず騒がしい潜水艦たちを外すと、育てる候補の如月を旗艦にしてみる。改二まではまだまだレベルが足りない。

 

『蒼龍さんずるいわぁ…。私も司令官のおそばに居たいもの…』

 

お前もかよ。お前もそういうこと言っちゃのか。

 

「ごめんなさいね。私も提督に会いたかったもの」

 

『まあいいわ…。私よりも蒼龍さんの方がお似合いだもの…』

 

ありがとう如月。お前いいやつだな。

 

さて、次は一軍たちだ。飛龍、武蔵、霧島、初霜、叢雲…この5人が最も育っている。武蔵はあいにく燃費が恐ろしいほど悪いの言うまでもないよね。今回は入れないとして…。って、いつもの癖で入れてしまった。変えないと。

 

『提督よ。私を外さないでおくれ。燃費が悪いのは大和型だからな、仕方ないだろう?』

 

「…俺の心って常に聞こえてるの?蒼龍?」

 

なんで俺の心読んだようなセリフ吐くんですかねぇ。武蔵さん。

 

「あー。その…武蔵さんもかわいそうですね」

 

うん。なんかごめん武蔵。外してしまおう。武蔵の『おーい』と言う声が聞こえた気がするが、空耳だ。聞こえない。

 

「で、加賀を入れてっと…」

 

『蒼龍。あなた戦場を放棄してラブロマンスなんて良いご身分ね』

 

うわぁ…。この人直球だよ。加賀さんは加賀さんだよ。イメージ通りだよ。

 

「す、すいません加賀さん!」

 

蒼龍は画面越しから頭を下げる。加賀こわ。

 

『まあいいけれど。私がしっかり働けばいいもの、あなたの分まで。もう帰ってこなくていいわ』

 

あの…もしかして一軍に入れてなかったこと、割と悔しかったんです?ちなみに赤城は、まったく育てていません。ごめんね、赤城。

 

「さて、次はと…」

 

お次は霧島を入れてみる。こいつらの反応。なんだか楽しくなってきた。

 

『そっちのマイク感度は大丈夫みたいですね』

 

マイクチェックにこだわりすぎじゃないですかねぇ。霧島さん。

 

さて、お次は叢雲…。

 

『ふんだ!そっちに行けなかったこと、別に悔しくないわよ!あんたなんか知らないんだから!』

 

ぐうツンデレ。絵にかいたようなツンデレ。ぶれない叢雲さんに笑いがこぼれるわ。ちなみに俺はロリコンじゃなくてね。君はストライクゾーンから外れているぞ。可愛いけど。

 

『提督…その…私も見てみたかったです。外の世界。どんなところなんでしょう』

 

初霜は控えめだなあ。ロリコンじゃないけれど、初霜はかなり好き。妹みたいじゃん?リアル妹の若葉と比べて、ぐう天使。

 

「さてと…最後は…」

 

蒼龍の次にレベルの高い飛龍。彼女は現在結婚手前レベルで、迷わなかったと言えば嘘になる。実は蒼龍の次に出た空母は、彼女だったのだ。割とマジです。嘘じゃないです。

 

『…蒼龍。私に相談しなかったのはなんで?』

 

艦隊に入れたとたん。冷たく低い声が聞こえてきた。すっげぇ怒ってらっしゃる?

 

「飛龍…ごめんなさい!」

 

『ちょっと悲しいわ。うれしいのはわかるけど…せめて相談してほしかった…』

 

「でも…きっと飛龍は止めてたでしょ?危ないからって!」

 

蒼龍、感情的になっていけない。相談しなかったのは、さすがに悪いと思うぞ。

 

『当り前じゃない!だってもし…もしそのままいなくなっちゃったら…私悲しいもの』

 

「飛龍…」

 

ぎゅっと胸元を抑えて、蒼龍はベッドへ座り込む。これ以上、聞きたくないのか?

 

『でもいいの。いいのよ。あなたは幸せをつかみ取ったもの。命を顧みずにだけど…成功したなら、それでいいと思うな』

 

「あ…飛龍…ありがと!うん。本当にごめんね!」

 

二人とも、なんだかんだ言って仲がいいな。ほほえましい。両者は良い理解者なんだろう。

 

『あ、提督。装置が直り次第私もそちらに向かいますね。いろいろと教えてください!』

 

うん。いいよ。いいですとも。まあ帰れる保証もできたらの話だ。さすがに二名も、家には置いておくことはできないし。

 

「よし、じゃあ出撃しますか。キス島に」

 

その後、キス島の3-2-1を完全勝利で納めると、即座に撤退をした。即時撤退をしたことによる艦娘たちからの非難の声が聞こえてきたのは、もはや言うまでもないよね。

 

 

 

 

 

 




どうも、セブンスターです。
なんとか間に合ったー。一日投稿まだまだできそうです。
さて、今回ちょっとした裏話を。
実はこの話、家族会議をメインにする予定でしたが、あまりにも内容が重くなりそうなので、除きました。私がこの話を書く理由として、第一に『楽しんでもらいたい』ですので、従来よく書いているシリアス系統をできるだけ省かせていただきました。現実的に考えるとどうしても小難しい話になってしまうんですよ。私は…。

さて、この調子で明日も頑張ります。明日じゃなくなったら、あらかじめ謝ります。すいませんでした!

※追記
親父の賢人は煙草のKENTから、母親の朝日はWW2前の口付け煙草のあさひからです。

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