提督に会いたくて   作:大空飛男

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飛龍とキヨ、そしてヘルブラザーズがメインな話です。内容的に、説教じみているかも知れません。
と、言うかコラボ要素が、どんどん薄く…


コラボ5:本心を、ぶちまけますよ?

わたしはキヨさん達に連れられ、茶屋へと向かいました。

 

茶屋なだけあってか、テーブルはありません。代わりに赤色の布がひいてある長椅子がたくさん。私達は向かい合う様に座り、付近に置いてあるお品書きを見始めます。

 

「あの、私最低限のお金しか持っていないんですけど…良かったんです?」

 

実は、私はもし迷った時の事を踏まえて、提督にホテルまで帰ることができるお金を頂いています。まあ迷うわけないじゃんとは言ったけれども、提督はやっぱり過保護なとこがあって、「いや、持っておけ。これは命令ね」と強要をされました。こんな時だけ提督ぶるはんて、ちょっぴりずるいですよね。

 

「あ、そうか。そういえば七星に電車代しか貰ってないんだったか。まあ飛龍、俺が奢るから気にすんな」

 

キヨさんはそう言って、親指をグッと立ててきます。キラリと光る歯を見せてきて、なんかナイスガイ感を漂わせてきました。

 

「いやァ…待てキヨ。ここは俺が奢ろうじゃねェか。バイト戦士を舐めんじゃねぇ」

すると唐突に、浩壱さんがずいっと名乗りを上げます。奢っていただくこと自体ありがたいですし、それが誰にと限定して奢ってほしいなんて、わたしに決定権ないけど…どうして挙手を?それに、名乗りを上げたのは浩壱さんだけではありません。

 

「いやいやいやいや。待て待て兄弟。ここは某に奢らせてほしい」

 

 なんと健次さんまでもが、名乗りを上げてきました。皆さん、顔に似合わず優しいんですね。そういう法則でもあるんでしょうか?顔が怖いと優しい人が多いっていう。

 

「なんでお前らがでしゃばってくるんだよ。俺が払う。OK?」

 

「OKっ!…って、言うわきゃねぇだろぉ!?俺はあいにく大佐じゃねぇんだ」

 

「兄者はどっちかっていうと鬼軍曹やね。貴様らは三等兵以下のクズどもだ!とか言うから。あー口悪いですね。奢るのはいと似つかわぬ事。此処は某、英国紳士並の謙虚且つ礼儀を重んじるこの某めがですな…」

「言わねぇよタコ勝手に決めつけんじゃぁねぇ。そもそも英国紳士は、『それがし』とかいわねぇ。それにお前は何が紳士だァ?どっちかというと筋肉ゴリラじゃねぇか。筋肉モリモリマッチョマンの変態ダロォ?ショッピングモールで大暴れでもするきか?」

 

「もちろんです。紳士ですから」

 

 えぇ…なんでこんな事で張り合ってるのこの人たち。優しさの押し付け合いなの?それとも、お金を無駄に払いたいだけ?私男の人の思考、よくわかんない。と言うかこの人達がよくわからない。

 

 でもなんかこの人たちが、こんなくだらないことで言い合うのを見ると、なんかおかしい気持ちになっちゃう。思わずくすりと、笑っちゃいました。

 

すると、キヨさんがそんなわたしの笑みを見逃さなかったのか、ヘルブラザーズに手のひらを向けると、私を見てにやりと口を開きます。

 

 「ふへへ、笑った笑った。さっきからずっと心ここにあらずって感じだったからな。まあ良かった良かった」

そう言うと、キヨさんと浩壱、健次さんは拳をお互いに叩き合い、何かしらの喜びを現し始めます。ひょっとして、私を笑わせてくれる為にやってたの?ますます良く分からないなぁこのひとたち。でも、純粋にうれしいかも。

「ま、今回は変わらず俺が奢るとして、決まったか?頼みたいやつ」

 

あ、やっぱりキヨさんが奢るみたいですね。さっきのやり取り、本当なんだったの?

 

「じゃあ私、お団子セットがいいなぁ。5本付いてますし。って…あ、別に食いしん坊って訳じゃなくてですね!」

 

やっぱり女の子だし、食べ過ぎとか思われるのは嫌。蒼龍にも女子力っていう能力を上げろとか言われるし…。

 

まあでも、そんな事思われるどころか、彼らは私の予想を遥かに超えてきました。

 

「じゃあ俺、お団子10本」

 

「俺も俺も」

 

「某も同じく、其に致す候。あとくずもちとあんみつと…」

 

え、何?要するに私が食いしん坊じゃないって言いたいの?それとも、普通にそれだけ食べるのが当たり前なの?このひとたち、なんか色々と提督と違いすぎるっていうか…。

 

「じゃあ店員呼ぼう。スイマセーン」

 

本当に頼む気みたいですね。うわぁ、夕ご飯とか大丈夫なのかなぁ…?

 

 

 

 

さて、店員に驚きと困惑の表情を植えつけた彼らだけど、なんとかオーダーが通ってお団子が来ました。長椅子の上にはこれでもかって程の、お団子の山。ほんとすごい量、35本もある。おまけにくずもちやら、あんみつも置いてあって、軽くパーティーみたいです。和菓子パーティですね。

 

「じゃあいただくかね。神に感謝して…。滅びゆくものの為に…」

 

キヨさんがそう言うと、浩壱さんと健次さんも同時に「滅びゆくものの為に…」と言います。え、なにこの人たちこわい。

 

後でわかった事ですが、どうやら地元メンバーの皆さんは、お酒や宴会をする際には、最初にこう言うんだそうです。なんとも罰当たりと言うか…ブラックジョークらしいですけどね。これが5年も続いているそうなので、定着してしまったそう。

 

 それからもぐもぐと団子を食べ続けて、数分。あれだけあった団子が、あと三分の一くらいになったときの事でした。

 

「ところで…飛龍さ。声かけた時、七星達を見上げていたよな?」

 

キヨさんが串を咥えながら、何気なく私に問います。うげ、ばれてたのかな?

 

「え、どうしてです?」

 

「そらおめぇ。俺達だって奴を見てたからな。末永く爆発しろってよ。で、歩き始めようとした最中、オメェさんが奴等に射るポーズをしていた所を目に入れたんだよ。方向的に、七星たちだと理解したんでェ」

 

続けて言う浩壱さんの言葉で、私も理解出来ました。つまり、彼らは自分たちが見ていた方向と同じ方向に視線を送っていたと、わたしを見て思ったそうです。でも、普通は清水の舞台を支える柱を、見ていると思わないのかなぁ?

 

「ま、飛龍が七星たちに混ざりたいのは、遠目でもわかった。…やっぱり寂しかったんか?」

 

そう思われるのが、普通かもしれませんね。私はあくまでも、提督の受け持つ鎮守府から来た艦娘ですし。でも、やっぱりどこかそれは否定したい気持ちになって…。

 

「あはは、そんなわけないじゃないですか。だって、私としても二人はお似合いだと思いますし。邪魔しちゃわるいじゃない?」

 

わたしはいつもの調子で言ったつもりでしたが、三人は顔を見合わせました。

 

「嘘は身を滅ぼす。飛龍殿は嘘を付いておられるなァ」

 

「えぇ…。いや健次さん、なんで分かるんですか?」

 

一応図星なんで、ちょっぴり抵抗するように聞き返します。すると、次に浩壱さんが口を開きました。

 

「だってよォ。おめぇが奴等を見上げていた際、なんだから悲しそうと言うか…うむ。寂しそうな表情だったのは、明白だったんだぜぇ?それに、矢を射るポーズを取ったのが物語っている。普通公然の場で、そんなことはしねぇ」

 

確かに、反論できません。私の表情から行動の意図まで読み取っていたとは…鋭い洞察力を持っているみたいです。流石にこれ以上抵抗するのも無意味な気がしてきて、私はため息をつきます。

 

「ふう…。ええ、そうですよ。寂しいというか、悔しい気持ちもあるんです。だって…私だって…どうして私じゃ駄目だったの?」

 

ぎゅっと拳を握って、私はうつむきます。言いたいことは山程ありますけど、それは彼らに言っても意味は無いでしょう。

 

すると彼らは察したように、それぞれ考え込むような仕草で息を吐きます。

 

「まあ、ンなことだろうとは思ったが…。おのれ七星。罪深き男よォ」

 

若干顔をしかめて言う浩壱さん。それに続いて、キヨさんや健次さんも、うんうんとうなづいています。

 

「ふーむ。しかしながら、それ故とて七星は理解しておらぬ次第。して、奴の性格上、気づくのは相無理な話ですなぁ」

 

「あいつはその、被害妄想なところがあるしな。と、言うかチキンだ。蒼龍だって最初に会った時には、苦労しただろう」

 

健次さんとキヨさんは、提督を冷静に分析します。確かに、二人ともある程度はいっているはずなのに、どうしても奥手というか、遠慮し合っている感じ。もどかしい気分になるのは、それ故なのかもしれません

 

「じゃあ、どうすればいいと思います?どうやったら提督に気づいてもらえると思います?」

 

とは言うもの、なんとなくはわかっているつもりなんですけどね。だって、あの人の性格上、湾曲した考えはかえって理解してもらえないと思いますもん。

 

三人は私の質問を受けると、次第に苦い顔になっていきます。と、言うか困惑した表情…。ひょっとして、的確なアドバイスが思い浮かばないからでしょうか?

 

しばらくの間考え込んでいましたが、三人はちらりとお互いの顔を見ると、浩壱さんが口を開きます。

 

「…まあよォ、俺たちはなんともいえねェなぁ。ただ、これだけは言えるんじゃねぇか?オメェは自分に素直になること…それが一番の近道だろう。ま、一番の険しい道でもあるがな」

 

やはり、浩壱さんもそうする他ないと言いたいそうです。キヨさんも健次さんも、口を揃えて「そうだろうなぁ」と言います。

 

「七星はむしろ、そうじゃないと駄目だな。あんな不真面目そうなやつだが、素直にかつ説得力のある意見を好む性格だ。遠まわしの意見は、遠回し通りの意味で捉えることが多い。猪突猛進な考え方なんだよ。だから、昔は色々と衝突もあったさ」

しみじみと思い返すように、キヨさんは言います。ちょっと気になりますけど、今その話じゃないですね。

 

「…素直ですかぁ。うーん、やっぱりこう、尻込んじゃうなぁ。結果、わかってますし」

 

「なら、諦めつきやすいんじゃねぇのか?今のオメェは、どこか期待しているんだろう。だが、かなわねぇ期待なんざ捨てちまうのが一番だ。長引けば長引くほど、そう言うもんは辛くなる。生きることに希望するのはまだいい。だが、恋愛に希望するのは特にだろうな。淡い期待は、自分を傷つけていくだけだろう。傷だらけの龍にでもなる気か?それは女に似合わねぇ。男が背負うもんだ」

 

説得力ありすぎですよ…浩壱さん。的確な答えは、ある意味強力な凶器ですもん。でも、その方が私らしいのかもしれない。

 

「そうですね…うん。なんか勇気をもらえました。浩壱さんって、顔に似合わず優しいんですね」

 

「ん?俺はいま褒められたのか?けなされたのか?」

 

微妙な顔をして、浩壱さんは首をかしげます。まあ、すこしばかりの照れ隠しでした。ごめんね浩壱さん。

 

「お、そろそろ時間が近いな。さっさと団子、食っちまおうぜ」

 

時計をちらりとみたキヨさんが、話を区切るように催促をしてきます。いいタイミングですね。

 

「えっと、わたしもう少し、お団子頂いてもいいですか?5本は少なかったみたいです」

わたしが照れくさそうにいうと、三人は顔を見合わせて、にやりと笑顔を作ります。

 

「やっぱり飛龍殿。食いしん坊なんですなぁ。正規空母は基本そうらしいと見た!」

 

「もーそんなことないですってばぁ!」

 

健次さんの言葉に、わたしは反論をします。でも、それは笑いが引き起こし、自然と心も暖かくなりました。

 

 

 

 

約束の四時半。拓海と大和ペア、統治と夕張ペアと合流し、清水正面の鳥居であとのメンバーを待つ。キヨとヘルブラザーズは行動を共にしただろうけど、飛龍はどうだったのだろう。一人で行動していたと思うと、かなりの罪悪感がこみ上げてくる。おまけに飛龍は気が強いほうだけど、変な外人とかに絡まれていなければいいが…。

 

「心配?飛龍のこと」

 

隣で同じく遺りのメンバーを待つ蒼龍が、俺へと聞いてくる。どうやら顔に出てしまっていたようだ。

 

「んー、そりゃあね。そもそも一人にしてしまったのは俺の所為だし…」

 

「ま、大丈夫だと思うけどね。飛龍は私より、強いから」

 

それは腕っ節の方なのか、それとも精神のほうなのか。まあどちらにせよ、飛龍のほうが実質的に性能面では上だろう。そういう意味で、蒼龍は言ったのかもしれない。もっとも、艤装がなければ意味が無い気もするけど…。

 

と、そんな不安が俺の中で渦巻く中、統治が「おっ」と言葉を漏らす。清水の舞台方面の道を見ると、巨漢二人に甚平の男。そして真ん中には飛龍が見えてきた。どうやら、四人で行動を共にしていた様子。下手な心配は、しなくても良かったかな。

 

「おまたせしました~。いやーお団子美味しかったなぁ」

 

腹を擦りながら、飛龍はにこにこと笑顔を振りまいて言う。その行動は若干変な誤解を生みそうだ。え、思わない?

 

「うーむ。俺たちはもうちっと食いたかったんだがなァ」

 

「せやね。某、食い足りぬ~」

 

巨漢二人は若干不服そうだ。と、言うかこの四人で、茶屋に行っていたのか。飛龍に最低限の金しか持たしていなかったが、もしや奢らせたのか?

 

「あ、心配すんな七星。俺が好き好んでおごってやった。だから後で払うとか言うんじゃねぇぞー」

 

キヨが寄って来るや否や、俺の肩を叩いて言う。まあそういうことならその好意に甘えてしまおう。しかし、いくら食ったんだろうか。

 

「しかし、充実したお話も出来ましたし、後は実践だけですね。皆さん改めてありがとう御座います」

 

飛龍はそう言うと、キヨとヘルブラザーズへと頭を軽く下げる。一体何の話をしていたんだろう。まさか俺にエグいいたずらとか考えていたんじゃ…。何となく、悪寒が走った。

 

「さて、皆さん集まりましたね。これからどうします?自分は土産廻りがええと思うけど」

 

全員が集まったことを確認し次第、拓海が若干大きい声で、会話の舵を切る。もう夕飯まであまり時間が残されていないし、良い采配だ。年下だが、そういうところはしっかりしているんだろう。

 

「おみやげですかぁ…いいですねぇ」

 

目を輝かせ、蒼龍は拓海の提案に乗っかった。まあ、俺もその提案には乗るつもりだったし、ちょうどいいな。

 

「私も賛成ですかねー。あ、統治さんもでしょ?」

 

「異議なしやね。んじゃぁ、まず清水坂の土産物屋でも回ろうか」

 

夕張に話を振られた統治も、賛成の様子。他の面々も、「そういうことなら」と話に乗っかった。

 

「じゃあ行きましょうかね。あ、そんつぎは四条に行きましょう。大体7時くらいに旅館へと着けば、一服したしたあとご飯って感じですし」

 

ちゃんとそういうところまで、計算をしていたようだ。さすがは旅館づとめといったところだろう。

 

こうして、俺達は土産を買いに行くべく、清水を後にしたのだった。

 




どうも毎度お久しぶりです。飛男です

今回は最初おふざけ、中盤からが少し重い話となっております。キヨやヘルブラザーズの本心を此処で述べますと、純粋に修羅場な感じにしたくなかった。って感じですかね。あくまでも一歩引いて物事を見ている輩で、見える視野も広い。そんな感じで書かせていただきました。

で、今回も前回からそれなりに間が空いてしまいましたね。まあ、就活は勿論の事、そろそろ卒論も本格的に手を出さなければならなくなり、じっくりと書いていける時間が少なくなってきました。次回もいつになるかわからないですが、最悪本日から一ヶ月以内には投稿したいと思っております。故にいつもどおり不定期になりますが、どうかよろしくお願い致します。
では、また次回にお会いしましょう!


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