提督に会いたくて   作:大空飛男

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書いているうちに多くなってしまった。正直5000文字って、少ないと思うの。


旅行話、掘り下げますよ? 上

昼食を食べ終わった俺たちは、のんびり自由に過ごしていた。俺は艦これ最中で、蒼龍と飛龍は漫画を読んでいる。中でも蒼龍は、昨日本屋で買った深紅の稲妻が帰還したらしいマンガを黙々と読んでいて、どうやらドはまりしたらしい。ガノタトークの幅が、広がりそう。ちなみに飛龍が読んでいるのは、以前も紹介した書道家島流し漫画だ。

 

「それにしても…」

 

実は今更ながら、飛龍が来たことにより、俺は多大なる損害を受けていた。

 

正確に言えば俺ではなく、鎮守府に…と、言った方が正しいだろうか。どうやらコエール君は彼女を飛ばしてくる際に、各資材を大量に消費していたのだ。その数は二万ほど。

 

そのため、現状どれもカツカツ状態になっている。日ごろ資材を貯めないのが裏目に出たんだよね。てか、そんなことで使うとか思わないじゃん。しかもうちの艦隊は、主に空母メインとして運用しているから、ボーキサイトがグロ画像よろしく悲惨な状況に陥ってる。

 

「お、終わったか」

 

そのためにも、のんびりとしたこういう時間は、主に遠征を回す羽目になっている。どうやら朝のうちに出していた遠征が終わったようで、鎮守府窓の右上に、それを伝える文章が出てきた。鎮守府窓ってこれも今更だけど、艦これの画面の事。

 

「おお、大成功。みんな頑張ったなぁ」

 

演習にちょくちょくと組み込んで、人員をキラ付けした甲斐あった。まあ、気まぐれのキラ付けだったけども。普段は面倒だから、やらない。

 

とりあえず艦娘達にねぎらいの言葉をかけるため、先ほど帰ってきたメンバーをそれぞれ、旗艦にすることにした。今回帰ってきたのはボーキ輸送任務だったから、駆逐艦たちばかりだ。

 

『朧。がんばりました。あ、この蟹も頑張りましたよ』

 

まず初めに、朧を旗艦にする。夏グラに変わっているから、バケツの中にいる蟹も一緒だ。余談だけど、朧って結構あったんやな。どことは言わないけど。

 

「そうかー。カニも頑張ったのかー。えらいぞーカニー」

 

『あ、朧もほめてくださいよ…。蟹はただ、ウロウロしていただけなんですよ?』

 

ちょっぴり不服気に、朧が言ってくる。冗談で言ったのに、蟹に嫉妬する朧は、まだ子供だな。しかしウロウロしてただけって、まったく頑張ってないじゃないか。おい、仕事しろよ。ちょこまか動いて、元気付けでもしてたのか?蟹。

 

「冗談冗談。朧も頑張ったな。えらいぞー」

 

まあ当然朧もほめるわけで、朧は「えへへ」と嬉しそうな声を出した。こういうあまり聞いたことのない艦娘の一声は、やっぱり新鮮さを感じる。

 

「じゃあ、また今度ね。他の子も言葉をかけないと」

 

『はい。提督、また今度に』

 

そういって、朧は旗艦から外された。正直な話、旗艦から外す際の艦娘達は、一部を除いてどこか悲しそうにしてくる。ちょっと罪悪感あるけども、こればっかりは仕方ないかな。

 

「さてと、次は…」

 

こうしてほかにも、不知火に文月、綾波と、全員にねぎらいの言葉をかける。不知火は相変わらず不服そうに言葉を返したけど、いざ褒められると喜びを隠しきれていなかった。一方、文月も相変わらずのんびりとした口調で喜びを表して。皐月はボクッ子口調なのは言わずもがな。ともかくこいつらが、総じて愛くるしいのは確かな事。ロリコンではない。

 

「さてと、艦これはいったん終えるかなぁ。どうせ連続遠征は、こいつらに負担もかかるし、ほかの奴に変えるだけ変えときますか」

 

以前の潜水艦勢のようにぎゃーすく言われるのは耳が痛いので、とりあえず控えの駆逐にして、再びボーキ遠征に出しておく。システム的に疲労とかないけど、気持ちの問題だと思うんだ。時にはガマンも、必要だけどね。

 

「あ、職務お疲れさま。どうだった?」

 

蒼龍は漫画を本棚に戻したついでか、いつの間にか俺の横に立っていて、結果を聞いてきた。やっぱりなんだかんだ言って自分の所属する鎮守府だし、気になるんだろう。

 

「うん。朧、不知火、文月、皐月が頑張ってくれたよ」

 

「へぇ。あの子たちも、ずいぶんとうちの鎮守府にいますよねー。あ、もしかして私より先輩!?」

 

全員ではないけれど、数人は確かそうだった気がする。特に蒼龍や飛龍が来る前―ともかく始めて間もないころは、ちょくちょく実戦にも出ていたはずで、今思えばかなり懐かしい。

 

「そうだねぇ。朧なんて特に古参だった気がするぞ。ここ一年くらいは実戦に出してすらないけど、不服とか多かった?」

 

 やっぱり初期勢は強い艦娘が来てしまえば、必然的に後方支援となってしまうことが多いだろう。それ故に、不服となるのは間違いないはずだ。

 

 だが、蒼龍は「うーん」とつぶやくと、俺に視線を戻した。

 

「そんなことなかったです。適材適所だから仕方ないと言っていましたね。なんだかんだ言って、大人なのよ、あの子たち」

 

そう思ってくれているのなら、良いんだけどね。やっぱり実戦に出たいとは思うだろうけど、実力的に遠征勢になってしまうのは仕方ないと割り切ってくれるのは、純粋にありがたいもんだ。でもやっぱり申し訳ないし、今度は気分転換目的で、簡単な実戦にでも出してやろうかな。

 

「ん…?あ、提督。スマフォが震えていますよ」

 

そんなこんなで蒼龍と話していると、漫画を読んでいた飛龍が、布団に置いていたスマフォこっちに渡してきた。どうやらマナーモードになっていたようで、バイブレーションだけに終わっていたらしい。彼女がいなかったら、気づかなかった。

 

「はいはい。っと、もしもし、お待たせしました」

 

とりあえず誰からかかってきたかわからないので、敬語を使って通話に出る。飯島さんだったり、平沼さんだったりしたら、失礼だろうし。

 

『おー、七星。出るのおせぇよ』

 

どうやらかけてきたのは、菊石だったようだ。変な気を使っちまったと、心の中でつぶやく。

 

「ごめんごめん。マナーモードになってて気がつかなかったんだわ。で、何の用だ?」

 

電話をかけてくるってことは、何か直接言いたいんだろう。それにしても、後ろで相変わらず工場の機械音がうるさいな。

 

 『ああ、今後の旅行について話し合おうと思ってね。ほら、大人数だろ?いろいろと安くなるプランとか考えないと』

 

 「あー確かになぁ。野郎共だけだったらカプセルホテルとかでもいいんだけども、さすがにこれだけの人数だと大変だわな」

 

 大学メンツの方はさておき、地元メンツだけでもフルに行けるとすれば六人になる。それに蒼龍たち艦娘も加わるわけだから、かなりの大人数になるのは間違いない。

 

『そうそう。だからさ、近々話し合おうってわけ。いつ空いてる?』

 

「今日でも大丈夫だぞ、やることなかったし」

 

『んーわかった。こっちは今日無理だから、また後日連絡するわ』

 

そういうと、統治は電話を切ったようだ。俺も耳からスマフォを離すと、息をついた。

 

「誰からだったんです?」

 

電話が鳴っていることを伝えた故か、飛龍は俺の両肩をつかんで聞いてくる。蒼龍も気になるようで、俺から説明されるのを待っているような感じだ。

 

「ああ、菊石から。旅行の件でね」

 

その答えに蒼龍は「あー」と声を出すが、飛龍は首をかしげてしまった。まあ分かれっていうのが無理な相談。

 

「俺の友人だよ。とりあえず、飛龍を紹介するには良い機会かもしれない。あ、そういえば蒼龍もこんな風に、奴らに紹介したっけか」

 

初対面の時の蒼龍は雲井兄弟にあれだけビビっていたが、果たして飛龍はどうなるだろうか。楽しみだ。

 

 

 

 

 家の地元は夜の11時頃、交通量が極端に減ってくる。家の地元はいわば大都市のベッドタウンで、帰宅ラッシュの時刻はとうに過ぎているからね。それこそ歩道には、酔っているらしいサラリーマンが、帰宅のために歩いている姿が見られるくらいだ。

 

今日は珍しく、車で奴の家まで行くことにし。何時もは歩いて雲井の家まで行くんだけども、今日は酒を飲まないこと前提に考えて、車を出したわけだ。

 

まあどうせ、蒼龍と飛龍は飲んじゃうんだろう。だからこそ、俺は平常心を保っていないといけない。言わずと蒼龍とはもう一線を越えてもいるから、酒が入ってしまったら、枷が外れることは間違いない。親しい中にも礼儀ありと言うように、奴らにはそれなりの配慮もしなければならないと思う。

 

 さて、車を奴の家に止めると、玄関のインターホンを鳴らす。しばらくすると、扉が開いて、奴が出てきた。

 

「おーう。待ってたぜぇ?」

 

出てきたのは浩壱だったようだ。どっしょっぱから厳つい面を持つ男が出てきちまったな。おそらく蒼龍はもう慣れた顔だろうけど、飛龍の方は…。

 

「あ、初めまして!私、飛田龍美と申します!」

 

奴が出てくると、飛龍はにこやかに挨拶をした。これは驚いた。てっきりビビるかと思ったが…。ちなみに、たいして蒼龍はまだ慣れないと言わんばかりに、若干恐ろしそうな顔をしている。毎回こいつと会う時、最初こうなんだけども、いい加減慣れたらどうだろう。

 

しかし、飛龍の行動は予想外だ。奴を見てもまるで動じず、『飛田龍美』を演じることができている。まあ、こいつらの場合は演じなくてもいいんだけども、初対面であるにもかかわらず動じないのは、相当肝が据わっているかもしれない。

 

「…ア、ハイ。って、なんで七星と一緒にいるんでぇ?その飛田さんがよぉ。見たところ…あんたも艦娘か?」

 

「え、あ、その、えっと。ていと…じゃないや。七星君どうしよう?」

 

独特のエセ江戸っ子っぽい言葉の浩壱に、むしろ飛龍は自分が艦娘であることを見破られ、驚いてしまっている様子だ。かなりドスが聞いている声なのに、飛龍はマジで怖いもの知らずというか…。もしや出会ってすぐに、浩壱の持つ根のやさしさでも感じているんだろうか。

 

「あー飛龍。こいつは大丈夫だ。こいつはこっちの事情を知っている。平沼さんや、ウチの家族とは違う」

 

「あ、そうなんですか。おかしいと思いましたよ。完璧に一般人を演じていたからさ!」

 

完璧かどうかは知らんけど、一般人を装えていたことは確かだ。飛龍はこう見えて、かなり頭が切れる艦娘だと、再認識をしなければならないな。さすがは、たった一人反撃をした艦だ。

 

「統治は?自転車が無いし、まだ来てない感じ?」

 

「ああ。だが、キヨは来ているぞ。ハートフルタンクストーリーのブルーレイを見た

かったらしいから、早く来たそうだ」

 

ハートフルタンクストーリーってまあお察しの通り、戦車道とか言う武道らしきものをやるあのアニメ。キヨは海から、陸へと鞍替えした男だからね。俺も一歩間違えれば、陸へと鞍替えしていたかもしれない。まあ結果は海が好きだし何より小さいころから蒼龍に限らず、空母と艦載機が好きだった。でもアメリカ戦車…すなわち陸も好き。ただ優先順位が違うだけだ。

 

「ともかくお邪魔するぜっと」

 

そういうと、先に蒼龍と飛龍を雲井の家へと入れると、俺は煙草を取り出す。今日はウインストンの6ミリ。セブンスター、アメリカンスピリットと続いて、三番目に好きな銘柄だ。

 

「二人に行っといてくれ、酒とか飲んでも構わねぇって。俺は一服してから、勝手に入るから」

 

なぜ入らないのかと一瞬不思議に思っていたであろう浩壱は、納得するように声を出すと、「うぃ」と返事をくれる。

 

「ふうー。さてと、全員が来るまでは、とりあえず気長に待つかねぇ」

 

 

 




どうも、年末の大掃除に追われている飛男です。
まあ要するに、投稿ペースが遅いのはこの理由だったりします。いらない小説やマンガを片づけたり、趣味のサバゲー用品を手入れしたり…まあ様々ですね。
今回は上下です。下には、コラボをほのめかす文章があるので、読む際には注意されたし!と、あらかじめ警告をしておきます。

さて、今回はこのあたりで。次回は早ければ明日にでも投稿する予定です。
それでは、また次回!

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