提督に会いたくて   作:大空飛男

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今回から、夏休み編!今後コラボなども展開していきたいと思います!


夏休み編
夏休みに突入です!


 時が経つの早いやいものだ。現在は夏真っ盛り。だから俺も絶賛夏休みを謳歌中…と、言うわけではないんだよなぁ。

 

 実は俺が通っている大学の夏休みは、8月に入り始まる。どこの大学もそうかと言われると解らないんだけども、とりあえず大学生の夏休みは少々遅い。小学校から高校までは7月の下旬から入る所が殆どだろうし、必然的に8月までそんな彼らが羨ましく思えてしまう。まあ、俺も変わらずその道は通ってきた訳で、その際大学生だった人達は、バカやっていた俺を見て羨ましがってたんだと思う。

 

まあ、厳密に言うとテストがだいたい7月の最後の週にある事が多くて、必然的に講義をフルにとっていると8月になるだけって話。実際は最後の週に入ってある程度テストを終えると、7月中に休みになるやつもいるけどね。

 

「ああー。やーっとこれで俺も夏休みだぁ」

 

テストが終わり、俺は机に伏せていた状態から、顔を上げる。この講義のテストはえらく簡単なくせに、テスト時間が終了まで帰ってはいけないと教授に釘を刺されてしまった。おかげで爆睡、いい夢見たね。

「そうだな。まあ、おれは後一コマ講義があるけど」

 

隣に座っていたくらっちが、荷物をまとめながら言う。えらく不服そうで、なんか申し訳ないわ。おそらく教職関連なんだろう。

 

「と、いうことは木村もか。一緒にメシ、食いに行けねぇな」

 

このテストが終わり、ちょうど昼を迎える時間になる。俺や後ろにいる大滝、しんちゃん、たっけーなどはこれで終わりだけど、木村とくらっちはここで別れなければならない。

 

「まあ気にすんなよ。むしろお前は早く蒼龍を迎えに行ってやんな。最近テスト三昧で、大学に来る際は殆ど大滝ン家だろ?」

 

あいにく蒼龍は学生証も持っていなければ、第一にこの大学の生徒ではない、つまりテストを受けても意味ないし、なおかつテストの監視員が学生証についている写真と受験者を照らし合わせてくるから、必然的に受けさせれない。まあ、蒼龍が受けた講義でマメに取っていたノートは、結局俺が使わせてもらったんだけど。

 

「そうだ、七さん。夏休みは旅行とか行くのか?」

 

俺もさっさと帰り支度を済まそうと、プリント用紙をバッグに詰め込んでいると、 後ろからたっけーに声をかけられる。

 

「ん?まあ予定はあるけど、どうしてさ?」

 

「おいおい、忘れたとは言わせねぇぞ、夏休みどっかに行こうって言ったじゃないか」

 

後からみっくんが、肩を掴んで俺に言う。しまった、正直あまり覚えていない。多分蒼龍のことで頭がいっぱいだったんだろう。女にうつつを抜かしすぎるのは、良くないか。

 

「スマンスマン。で、どこに行くつもりなんだ?」

 

「一応、予定は島根さ。去年は伊勢神宮だったし、次は出雲しかないだろ!」

 

出雲か、そういえば在学中神社仏閣巡りをしようとか言ってたしな。しかし出雲は縁結びの神様云々だったし、蒼龍と絆を深めるためにはちょうどいいかもしれない。って、また俺は蒼龍第一に考えてしまってるな。いかんいかん。

 

「いいんじゃないか?恋愛成就云々じゃなくて、歴史学を学ぶ俺たちにはもってこいだしな。でも、それなら京都でもよくね?」

 

一応気を利かせて京都を提案したが、みっっくん達は顔を見合わせて、呆れた顔をした。

 

「いや、分かってねぇなぁ。今回は七さんと大滝の為なんだぜ?」

 

大滝は「あ、俺も?」と自らを指差す。お前には鳳翔がいるじゃないか。って、そんなことより俺らのためって…。俺や大滝が蒼龍達とまあイチャコラするであろうに、それを見て不快に思わないのだろうか。

 

「いいの?本当に出雲で。俺、蒼龍とイチャコラしまくるよ?ずっとお前らの前では我慢してきたつもりだけど、解き放っちゃうよ?」

 

「うーん我慢できてなかったと思うんだけどなぁ。ま、それは良いとしてむしろ好都合だわ。ふふふ…どうやっていじってやろうか。くらっち、たっけー、みっくん、しんちゃん、酒井…あ、お前は彼女いるな除外。とりあえず四人はちょっと来て」

 

木村が憎たらしい笑いを浮かべて、俺、酒井、大滝を除く五人で円陣を組み始める。酒井は「お前らヒデェ!ファッキン!」と大声を出すが、まあそんなことよりもオメェら、それが狙いか畜生!

 

まあ、でも素直にそこまで考えてくれたと思えば、純粋に嬉しさと恥ずかしさがあるね。友人って本当に、ありがたい存在だ。

 

 

 

 

 

さて、木村とくらっちと別れ、その後結局飯を食べに行く話はお流れとなり、俺は大滝と共にこいつの家へと向かう事にした。まあ言わずと、蒼龍を迎えに行くってわけ。

 

「ただいま鳳翔」

 

「お邪魔しまーす。蒼龍、待たせたね」

 

俺と大滝はそれぞれ言葉を発し、家の中へと入る。すると、エプロン姿な蒼龍と割烹着姿の鳳翔が出迎えてくれた。あいにく裸エプロンとかじゃないけど、むしろ普通のエプロンの方が、俺は好きだね。

 

「お二人ともおかえりなさい。今ちょうど、蒼龍ちゃんと一緒に昼食を作っていました」

 

おお、まさにグットタイミングだったか、鳳翔さんと蒼龍が作る料理。うむ、自然とよだれが垂れてくる。

 「ん。そうかい。じゃあ頂こうか。七さん、お前はどうする?」

 

 「聞くだけ野暮だぜ?俺もご馳走してほしいに決まってるじゃないか」

 

 「まあそうか。とりあえず立ち話も何だし、上がろうぜ?」

 

大滝と共に短い廊下を伝い、リビングへと入る。相変わらず鳳翔は気を利かせてくれて、俺と大滝に冷たい麦茶を置いてくれる。キンキンに冷えた麦茶は、この時期殺人的に旨いもんだ。

 「あ、そうだ」

 

 「ん?どうした」

 

 「いや、以前明石がコエールくんの修理が進み始めてるって言っただろ?あれ、そろそろ完成しそうらしい」

 

数日前、来るべき夏イベに備えるべく、潜水艦達を説得してクルージングをしていた際、武器を強化しようと明石を旗艦にした時だった。

 

『もう少しで完成しそうです。その、わたし…がんばりました!』と、あからさまに褒めてもらいたそうな声で俺に言っていた。一応労いの言葉をかけてはおいたが、いざ修理が済んだらと考えると様々な不安が湧き上がってくる。

 

そもそも、良く考えてみればそんな装置で本当に蒼龍がこちらに来れたの?と思えるほどだし、今更だけど恐ろしくてたまらない。

 

「へぇ。じゃあお前の鎮守府はこっちとあっちを行き来できるようになるってことか。うちの明石は、あれ以来興味がなくなってるらしいしなぁ。とりあえず鳳翔がこっちに行けた事を確認するだけで、満足出来たらしい」

 

少々残念そうに笑いながら、大滝は言う。そっちも装置は壊れたままってことか。

 

ちなみに、以前明石に問い詰めたが。『三次被害』―要するにうちの鎮守府からではなく、ほかの鎮守府に流れたコエールくんが、再びほかの鎮守府に流れることはないらしい。つまりオリジナルコエールくんには何かしらのギミックがあるらしいけど、そこまで解明はできていないそうな。まだまだ隠されたギミックがあるとは、末恐ろしいな。

「まあさ、うちは鳳翔が来てくれるだけで満足だけどな。お前だって、蒼龍が来てくれただけで満足だろう?」

 

「だね。でも、他の奴だってこっちの世界を見たいだろうし、来れることは良いんじゃないのかな」

 

「それはそうだ。こっちの世界は平和だからな。存分に羽を伸ばせるだろうし」

 

ぜひとも、戦いで疲れた彼女たちの翼を休めてやりたい。以前はゲーム感覚でそんな考えはみじんも湧き上がらなかったけど、いまは提督としてそれくらいの配慮をしなければと思える。彼女たちは、紛れもなく向こうの世界で生きてるのだから。

 

「とりあえず、受け入れる覚悟だけは持っておけよ。最悪、押し寄せてくるかもしれねぇぞ?」

 

うっははと笑いながら、大滝はお茶を飲む。他人事だからって笑い飛ばしやがって…。てか、もしそれだけドカンと来られたら嬉しい反面、心底困っちまうな。明石に贈られたラブコールのメンツが来たら、もう家族に言い訳つかないことになるぞ。

 

と、こんな感じで大滝と話し込んでいるうちに、いつの間にやらちゃぶ台には蒼龍と鳳翔が料理を並べ始めていた。言い方悪いけど相変わらず和食だったけど、俺は和食派だ。特に問題はない。むしろ、うれしいね。

 

「それじゃあみなさん。準備はよろしいですか?」

 

鳳翔と蒼龍はそれぞれ席に着くと、鳳翔が俺たちを見渡して、声をかける。

 

「では、いただきます」

 

いただきまーすと、俺たちが声をそろえて言う。小学生の時、こんなことやったっけか。

 

 

 

 

昼食を食べ終わり、一服がてら4人でたわいのない話をした後、自宅へ帰ることにした。

 

とくにやることもないし、だからと言ってどこかに寄り道するのも、今日はなんかいいや。そんな気分だから仕方ない。

 

「見て見て望!ほら、鳳翔さんにいろいろと料理のレシピを教わりました!」

 

運転をする中、助手席でメモ帳を開くと、蒼龍は俺に嬉しさふわふわにじみ出し、俺へとその中身を見せてくる。ワンポイントアドバイスとか可愛らしい絵が描いてあり、何とも蒼龍っぽい感じのノートだ。嫌でも、蒼龍ってこんな絵を描いたっけか。

 

「へえ、その絵もお前が?」

 

「いやいや、実はこれ、鳳翔さんが書いた絵です!かわいいでしょ?」

 

イ級らしい楕円形の生き物に吹き出しをつけ、セリフのようにアドバイスを書く。マジで簡単レシピ本なんかのマスコットキャラクターみたいで、なかなか面白い。鳳翔さんはあれに加えてさらに絵心もあるとは、どんだけ超人なんだよ。てか、イ級って敵だよな?あいつらにとってはドラ○エのスライムみたいなもんなの?

 

「あ、そういえば蒼龍が描く絵を見たことないな。どんな絵を描くんだ?こんな感じのイ級とか描くのか?」

 

「いやー、私絵心ないんですよねぇ。あ、でも猫は得意ですよ!」

 

そういって、蒼龍はすらすらと猫を描いていく。こういう時ってアニメやマンガだと、えらく斬新なネコが出来上がるだろうけど…果たして。

 

「はい、できた!」

 

と、見せてきたのは斬新差とは程遠い、どこかで見たことあるような猫だ。ほら、白くて鼻が黄色いあの猫だよ。そう、こんにちは子猫だよ。

 

「いやー。それは猫だけどさ、キャラクターだよね?」

 

「私これ結構好きなの。ほら、リボンとかかわいいじゃないですか?」

 

まあ若葉もチビガキだったころはめっぽう好きで、誕生日に俗にいうキャラ絵が描かれたケーキを頼んだほどだったしな。女の子には人気があるんだろうよ。女の子には。まあ、食べる際には切られるわけであって、泣き叫んでいたのは今でも覚えている。ちなみにこの話を若葉にすると、蹴られる。男の象徴のあれをね。悶絶不可避。

 

「あ、望。メールが来ましたよ?」

 

俺が若葉の泣きじゃくる様子を思い出しにやにやしていると、サイドブレーキの隣にあるくぼみに入れた俺の携帯を手に取る。最近蒼龍はスマフォの使い方も、慣れてきた。

 

「あ、明石さんからだ。読み上げます?」

 

あいにく信号には一回も引っかからない始末で、スムーズに運転できている。まあドライバーの心得として運転中に携帯をいじるのはいけないし、ここは任せよう。

 

「よろしく」

 

「はい、えーっと『コエールくんがやっと直りました!今から稼働テストを行いますから、いい報告を期待していてくださいね!』ですって」

 

おお、ついに治ったかコエールくん。これでやっと、コエールくん事態の研究もはかどるだろうな。しかし、そもそもどんな形をしているんだろう。案外、最近はにこにこしないあの動画サイトのテレビ的マスコットキャラみたいなかんじかな?んなばかな。

 

「やったぁ!これで行き来できるようになりますねー!私もいろいろこっちに持ってきたいものありますし、早く家に帰りたいなぁー」

 

そ、そうか。まあまた戻ってくるからいいけれど、そう聞くと寂しい気分になっちまうな。って、ん?いや、俺が向こうに行くことって、できるんだろうか。

 

「じゃあ飛ばすか。法定速度ギリギリでな!」

 

俺はそういうと、絶妙なアクセル加減でCX-5を加速させる。これでも道路世紀末県に生まれた男だ。伊達にドライビングテクニックは培ってきてねぇぞ!

 

「いやー。うそでもそこは、法定速度とか無視して~みたいに言ってほしかったなぁ」

 

愛想笑いを浮かべ、蒼龍はつぶやくのだったとさ。

 

 

 

 

おそらくおふくろはヨガ教室に行っているようで、若葉は夏期講習中だろう。つまり家には誰もいないわけで、気楽なもんだ。

 

車庫に車を入れると、俺と蒼龍はCX-5から出た。そんな長距離乗っていないけれど、体を伸ばして窮屈さから解放される動作をしてしまった。ちなみに蒼龍も、俺と同じく体を伸ばしている。

 

「到着っと。よし、じゃあ家に入るか」

 

俺と蒼龍は家の敷地内に入る門を開くと、ポストに何か入っていないかを確認して置き、玄関の前へと立ち、扉を開く。

 

ぎぃっと鉄製のきしむ音が聞こえると、俺と蒼龍は玄関へと入り、そのまま家へと上がる。

 

とりあえず、家族がいない今がチャンスだろうか。そんな大人数は呼べないけど、一人二人くらいは大丈夫そうだ。

 

「…ねえ望。いま家にだれもいないよね?」

 

そんなことを考えていると、蒼龍が唐突にきょろきょろし始めた。え、なに?いないけどどうしたんだ?

 

「いや、なんか人の気配しません?」

 

言われてみれば感づくのが人間だろうかね。俺もそんな気がしてきて、警戒心のスイッチが入った。

 

「蒼龍。一回家から出て、車に乗ってろ。俺が見てくる」

 

「え、でも…!」

 

「大丈夫だから。心配すんな」

 

現状安全確認ができているのは、車だけだ。俺は蒼龍に笑いかけると、有無言わさずCX-5のキーを投げ渡す。そしてひっそりとおふくろとおやじの寝室を開けて、庭での鍛錬用においてある木刀を手に取った。

 

蒼龍が心配そうにしつつ、しぶしぶ玄関から出ていくのを確認すると、俺は五感すべてをフルに回転させた。あいにく六感までは、まだ覚醒していない。そもそも現代人では、無理に等しい。

 

リビングには人の気配はしない。と、いう事は二階か?一瞬若葉が夏期講習をさぼって家に居るのだろうかと考察がよぎったけど、自転車がなかったはず。つまり、若葉は家にいない。

 

と、いう事はおふくろが俺の部屋に入って掃除でもしているのだろうか。いや、それはないはずだ。俺と蒼龍が返ってきたことが分かればあの人のことだ。「おかえりー」と大声で叫んでくるだろう。腕時計を見るとヨガ教室に行っている時間なのは間違いないだろうし、それはない。

 

次に思い当たるのは親父だけど、まずありえない。あの人は平日、帰りは確実に遅くなる。それに俺の部屋に入る意味も無い。あの人は、意味のないことをする人ではない。

 

 ゆっくり、ゆっくりと俺は階段を上がっていく。自然と呼吸が荒くなっているのはわかるけど、何のために俺は剣を学んできた?こういう場合に鉢合わせたとき、対応するためだ。基本、銃じゃなければ怖くないし、そもそも本物の刀を、冗談だったけど向けられたこともある。

 

 階段を登り切ると、いよいよ俺の部屋の前だ。いつも何の考えもなく開いているドアだけど、今回ばかりはいつになく、硬く閉ざされているような感覚に陥る。

 

「ふう…よし」

 

深呼吸をして息を整えると、俺は木刀を確認するように握りなおす。

 

―勢いが肝心だ。ここはタイ捨流を思い出せ…。そう、一気に扉を突き破って、制圧する!

 

覚悟を決めた俺は、扉を勢いよく開くと同時に、渾身の飛び込みを見せた。木刀をまるで畑を耕すように大振りに構え、室内にいるであろう人物にとびかかる。

だが、その怒涛の突進は、地面に杭を指すように踏みとどまった。

 

「うわぁ!!び、びっくりしたぁ!」

 

「なっ…えっ…あっ!?」

 

俺は中にいた人物を確認して、改めて理解する。

 

そうか。さっきメールで来たじゃないか。コエールくんは治ったんだと。なら、今更だけど俺がいない間に来る可能性だって、多い考えられるじゃないか。

 

「あの…提督よね?」

 

「…あ、ああ。そうだぞ。あーっと」

 

俺は木刀を力なく下すと、顔を赤くして言葉をつなげる。

 

「よ、よく来たな飛龍。まさかお前が来るとは思わなかった」

 

俺の目の前にいるのは、航空母艦飛龍であった。

 




どうも。卒論構想発表会が終わって解放された飛男です。ああ、世界はなんて素敵なんだ…!

と、まあおふざけさておき。今回から夏休み編です。またふざけたことを、書いていけたらいいなぁと思います。

さて、前書きにも書いた通り、このこの章は三次創作として展開していったほかの方々とのコラボを企画しております。「えぇ…コラボかよぉ」と思う方は申し訳ありません。一応、何かしらの記号をつけて、区別はしたいと思っております。加えて、それらの作品を読んでいない方でも、楽しめるような作品を書いていけたらいいなと思っております。

では、今回はこのあたりで。また次回お会いしましょう!

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