提督に会いたくて   作:大空飛男

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ペットショップに行きます!

「知ってるか七さん」

 

講義中。ノートを取っている俺に、みっくんが唐突に声をかけてきた。

 

「なんだね。私はノートをとるのに忙しいのだよ」

 

この講義の教授は何かとすぐ書いてはすぐ消す、典型的に嫌らしい講師だ。おまけに授業内容はイマイチわからん事で有名で、テストではノート持ち込み可能なのが唯一の救い。だからこそ、見落とす訳にはいかないんだよね。

 

「いや書きながらで良いから」

 

みっくんは苦笑いを漏らしながら言う。まあとりあえず、横耳で聞いておこう。

 

「実は駅の近くに、ペットショップが出来たんだよ。色々と動物もいるみたいだし、今度行ってみたらどうだ?」

そう言えば、以前工事をしていたところがペットショップになったと聞いていた。割とでかいペットショップだし、最近のブームの象徴のような建物なのだろう。ミーハーとも言うべき?

 

「で、それをなんで俺にいう訳?」

 

「おいおい、惚けても無駄だぞ。蒼龍。動物が好きなんだろ?」

 

そのみっくんの言葉に耳を疑い、俺は彼に振り返る。確かそんな事彼に一言も言っていないはずだ。なぜ蒼龍が動物好きなのを知っているのだろう。

 

「何故知ってるんだお前」

 

「え、だって本人から聞いたし」

 

あ、そうか。そう言えばみっくんのメアドも、蒼龍は知っているはずだった。恐らく適当に話している際に、蒼龍が教えたのだろう。ちょっとそのメール内容気になるけど、流石に其処まですると、蒼龍を『管理』しているようになってしまう。だから、蒼龍を信じるしか無いよね。まあみっくんに限って無いとは思うけど。蒼龍も彼は対象外みたいな事を言っていたし。ドンマイみっくん。君のベアーフェイスがいけないのだよ。

 

 しかしペットショップか。まあ今日はこの講義で終わりだし、バイトもない。最近は行っていなかったカフェにでも蒼龍を連れて行こうかと思っていたが、ペットショップの方が安上がりで済みそうだ。おそらく自販機のジュースで、蒼龍も満足するだろうし。

 

「そうだなぁ…まあ行くか。お前も来るの?」

 

「いんや。俺は部活。まあ二人で楽しんできーやー」

 

手首を軽く振って、行かないことを表す。何気に気を使って言ってくれたらしい。まあそういう所あるんだよねこいつ。

 

「ところで…七星。首輪を買うのか?」

 

「は?」

 

にやにやとしながら言うみっくんに、俺は目が点になった。何を言っているのかわからんし、どういう意図で言ったのかもわからん。

 

「え、どういうことだ?うちに犬も猫もいないけど」

 

「あ、いや…ごめん。ちょっと意味わからん事俺も言ったわ」

 

言った本人もどうやら意味が解らなかったらしく。途端に口をふさいだ。無意識のうちに意味の解らない言葉を発するとか、君洗脳でもされてるんじゃないのか?

俺がジト目でみっくんを見ていると、みっくんは急にうつむいて、言葉を発した。

 

「…ごめん。他人に性癖を押し付けるんじゃなかったな」

 

どうやらこいつは、変態だったらしい。

 

 

「わぁ!広いですね!」

 

蒼龍はペットショップを見渡し、大いにはしゃいでいる様子だ。

 

講義が終わり次第、俺たちはペットショップへと向かった。当初はカフェに行くようなことをそこはかとなく蒼龍には言っていたために、行先を変えるといった時は少々不満を漏らしたが、それがここだと解ったとたんにこのありさまである。

 

「ホームセンターと一体化したペットショップだからね。つまり半分が日曜大工系の物」

 

「そっちもちょっと気になるなぁ。後で行ってみましょ?」

 

にこっと首を傾げ、笑顔を振りまきながら蒼龍は俺に言う。久々に破壊力のある笑顔を見たな。もう慣れたと思ったが、やはり威力は絶大。心がドキドキ轟沈しそう。

 

「う、うむ。じゃあ行ってみようか」

 

蒼龍を直視できないので、顔をそらして俺は言う。なんか敗北感。

 

それからペットショップエリアまで歩く。途中蒼龍が犬用のぬいぐるみを手に取ってかわいいかわいいと連呼していたが、本体がいるところまで待てないのかと同時に思う。

 

「あ!望さん望さん!ほらほら!かわいいかわいい!ねこちゃん!わんちゃん!うさぎちゃん!」

 

ついにショーケースのようなガラス張りの部屋に入れられた犬猫を見て、蒼龍はぴょんぴょんとはねながら俺の腕を引っ張る。時津風かよ。まあ、どうやら心がピョンピョンしているらしいな。あ、私は緑の着物を見た和風美人なあの子押しです。やかましいわ。

 

「ほーらわんちゃん。かわいいですねー。うふふ」

 

蒼龍は子犬にメロメロ状態で、ショーケースへと走っていく。おお、はやいはやい。

 

「蒼龍。柴犬が好きなのか?」

 

最初に蒼龍が向かったのはザ・日本犬の柴犬。小麦色の毛並みが特徴で、俺も一番好きな犬でもある。義理堅く飼い主に忠実と聞く。

 

「はい!私、柴犬大好きなんです!触り心地がふさふさしてて、こう…あの…飛龍みたいなんですよ!」

 

 …。は?何言ってるのこの子。姉妹艦のことを犬の呼ばわり?わりとエグイこと言ってるような気がするんだが…。

 

「あ!飛龍がわんちゃんというわけではなくて…そう!わんちゃんみたいに可愛いんです!だから飛龍は、可愛いんですよ!」

 

必死にフォローしてるけど、まあ要するに飛龍は犬みたいで可愛いというわけだ。うん。じゃあお前は何だろうな。胴長じゃないけど、ダックスフント?

 

「わかったわかった。お、俺はこいつも好きだぞ。えーっとヨークシャテリアだったか」

 

サラサラな直毛を持つイギリス生まれのわんこヨークシャテリア。どこかお上品な感じで、知的な表情がまた可愛らしい。さすがは紳士の国イギリスだ。関係ないか。ちなみに寒がりだと聞いたことがある。

 

「ああ!その子もかわいい!んふふー。蒼龍ですよー」

 

ヨークシャテリアはかりかりとショーケースをひっかくように前足を動かし、蒼龍の細く美しい指に反応する。ついに自己紹介をし始めたなこいつ。犬に自己紹介の意味はないんじゃなかろうか。

 

俺はヨークシャテリアに夢中となっている蒼龍を置いといて、ほかの動物を見に行く。犬も好きだけど、鳥やハムスターも好きだったりするんだよね。そこ、似合わないとか言わない。どうせおっさん顔ですよ。某FPSのプライ○みたいな顔とか言われたよ。結構うれしかったけど。

 

「あははぁー。ハムスタァかわいいなぁ…お、ひまわりの種を上げれるのか。って…あまりあげちゃいけなかったような…」

 

まあ俺は某めちゃ愛で動物博士みたいに詳しく知らないし、とりあえず我慢ならんので一つ上げてみる。ハムスターは一生懸命口に種を押し込め、数秒うろうろした後、地面に潜っていった。

 

「なごむなぁ…」

 

ハムスターのちまちまとした動きに、俺はもう虜だ。小学生の頃からこの動物が相当好きで、飼いたいと親に泣いてねだったこともある。まあ、とあるアニメの影響だったんだけどもね。

 

「…雪風を思い出すな」

 

だが、今となってはこんな思考しか働かない。雪風がもしこっちに来たら、とりあえずひまわりの種を与えておけば済みそう。歪んだ偏見ですはい。

 

「あ!望さんネズミですか!ネズミを見ると雪風ちゃんを思い出しますよね!」

 

ネズミってなんだよ。て、いうか蒼龍お前もかよ。お前もそういっちゃうのか。ちょっと雪風かわいそうになってきたわ。あいつだって人間なんだぞ!おなじ艦娘なんだぞ!と、先ほどまでの自分に盛大なブーメラン。

 

「ちょこまか動いて可愛いですね。あ、お値段もそんなに高くない…」

 

ハムスターのケージに貼ってある値札を見て、蒼龍は驚きと関心を示す。

 

「あ、言い忘れていたけど。うちはペット禁止なんだ。仮に飼おうとしても、家族に相談しないといけないよ」

 

それを聞いた蒼龍は「えぇっ!?」と言葉を漏らした。まあ言ってなかったし、当然だろう。これだけペット好きなのに飼えないのは、生殺しのような物だろうね。

 

「う、うう…そんなぁ…私、お父さんを説得するのできないとおもいます…」

 

俺もそうだったからね。ちょっとひどい言い方だけど、蒼龍じゃあ絶対に無理な気がする。でも一応家族としているわけで、聞いてくれなくもなさそうな気がするんだが。

 

「…わかりました。じゃあしばらく見ています…」

 

少々落ち込んでしまった。うーむ。申し訳ないな。でも言っておかないと、勝手に飼いそうなんだよねぇ。ペットは勢いで買っちゃいけないだろうし。何より命を扱うからね。

 

「ここにいるとつらくなるか?どうせなら一緒に工具でも…」

 

「いや、いいです。ここでこの子たちを見て満足しますので」

 

そういう考えに行きついたか。ま、俺もそうだったし、とりあえず放置しておこう。まあ、女の子が工具を見ても、楽しくはないだろうしね。一部を除いて。

 

 

それから工具をいろいろとみて、必要なものは買いそろえる。六角レンチは数本紛失していて、購入は近々しなければならなかった。主に5ミリと6ミリが消える。なぜだろう。

 

また、アウトドアナイフも切れ味が落ちてるので、研がなければと砥石も買う。研ぎ方は割と練習していて、切れ味を落とさずむしろ向上させるほどの技術は身に着けた。

 

蒼龍はおそらくまだペットを見ているだろうし、俺は先の二点を購入し次第、外に出てヤニを補給しに行く。相変わらず良い香りの煙が俺を包み込み、満足となる。今日の煙草は、ピースだ。

 

「おーい。蒼龍。そろそろ帰るぞー」

 

さて、蒼龍から離れて2時間後、そんなこんなでいろいろと満喫をした俺は、そろそろ夕食の時間も訪れるし、帰らなけれならない。ペットを飼禁止令により落ち込んでいるところの蒼龍には悪いが、ここは何とか穏便に済ましたいものだ。

 

「あっ!望さん!」

 

先ほどの落ち込みが嘘のような声に、俺は思わず「えっ」と顔を上げる。すると、そこには蒼龍が、子犬と戯れていた。

 

「あっ、なめないで。ふふっ。もぅ」

 

どうやら蒼龍は、我慢できずに店員へ触らせてもらっていたようだ。その何とも幸せそうな蒼龍に、俺は思わずスマフォのカメラをオンにする。撮らねば。パシャりと。

 

「で、これはどういうことだ蒼龍」

 

「え、あ。ずっと子犬たちを眺めていたんですけど。店員さんが声をかけてくださいまして。触ってみませんかって」

 

やはり予想は的中したらしい。まあ触るだけならタダ。一種の冷やかし行為だけど、まあ店員から声をかけたみたいだし、大丈夫だ。

 

「望さんもどうですか?ヨークシャテリア」

 

そういうと蒼龍はヨークシャテリアを俺に突き出す。ああ…そんなつぶらな瞳で俺を見ないでくれ。可愛い…抱きしめたい。

 

「うぐぐ…。しかたねぇなぁ…」

 

その後、さらに一時間戯れたのは言うまでもない。そして、家に帰るころには、夕食が片づけられていましたとさ。

 




どうも。飛男です。
今日は投稿できました。まあ水曜日にゼミがありまして、それを超えてしまえば肩の荷が下りた気分です。明日明後日は、まあ何とかかけるかな?約束はできませんが、頑張りたいとは思います。
さて、今回はペットショップ編。ネコ好きの皆さまには申し訳ないですが、ネコの描写が少なかったですね。すいません。
また、艦娘を動物に例えた描写がありますが、完璧に私の独断と偏見で決めてます。「それはちがうよ!」と言いたい方はいるでしょうが、あくまでも望の感性ですので。正しいというわけではないです。

では、今回はこのあたりで。さようなら!

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