提督に会いたくて   作:大空飛男

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大学の日常風景です!

 

「なるほど。つまり彼女は、艦これの世界から来たと」

 

講義がある教室へ移動する中、相模はうんうんと頷きながら俺の簡潔に纏めた説明を聞き、納得した様子だった。まあくらっちと木村も承認したし、相模も納得できたのだろう。

 

「ああ、申し遅れたね。俺は相模宏文。みんなからみっくんって言われてるよ。相模の『み』からとって、みっくん。まあ呼び方は好きにどうぞ」

「はい。みっくんさん。よろしくです!」

 

蒼龍はニコニコと笑顔を見せ、相模もといみっくんへと言う。その破壊力は凄まじいようで、みっくんは照れ臭そうに、「あはは、これはすさまじいな」と笑いを漏らした。早くも蒼龍の魅力に取り込まれた奴一名。

 

「お、そうそう。みっくんはくまさんって呼ぶと喜ぶぞ。ねえ?くまさんっ…ていてぇ!」

ニヤニヤと相変わらずのテンションで木村が言うと、みっくんに蹴られる。まあみっくんは、森のくまさんそのものを体現したような男。顔つきはそれこそ厳ついが、心は暖かく気さくな性格の持ち主。

 

「ったく。お前何変なことを…」

 

「え、くまさん?くまさんですか?なんだか可愛い響きですね!」

 

蒼龍は木村の冗談を間に受けたようで、くまさんと復唱する。みっくんは普段であれば、反論するだろうけど、なぜか今日は反論をやめてしまった。お前、満更でもなくなったな?

 

「えーっとここだっけ?講義室」

 

俺はそんな三人の会話を聞きながら、講義室番号を見上げる。23番室。二階の3番室という意味だ。他の講義室と比べ、ふた回り程大きいのがこの3番室系のセールスポイントだろう。無駄にだだっ広いと評判でもある。

 

「うん、そうだ。じゃあ入ろうか」

 

くらっちは頷き、ガチャリと扉を開く。中には既に大勢の人物が集まっており、ざわざわと騒がしがしい。基本こういうところは、高校と変わらない。

 

そんな中、後ろの席にいつものメンツが揃っているのがわかった。向こうもこちらに気がついたようで、大きく手を振ってくる。

 

「ヘイ!セブンスター!グッドモーニング!って…その美人は誰だ!?」

 

英語もといルー語を使い俺を呼んだのは、メンツの一人である酒井輝一だ。セブンスター言うなし。恥ずかしいわ。まあ好きな銘柄はそうだけどさぁ。あ、ちなみに彼奴は、英語が苦手らしい。映画の影響を割と受けてる洋画好きの男。

 

しかし、もう説明するのが面倒だな。と、言っても蒼龍の首に名札をかけておくわけにもいかないだろう。まあ蒼龍と書いた名札を首に着けていても、わかるわけない。むしろ変態プレイだわ。だから酒井を含む他の三人にも、面倒さを押し殺し、説明を始める。

 

「嘘だぁ。マジかよ。でも他の三人も認めてるんだし、まあ信じるわ」

 

パイロットサングラスをクイと指で押し、酒井も認める事を承認する。順応力が高いのは、こいつの特技だ。三人がいなかったら信じなかったの?お前?

 

「っと、じゃあ自己紹介だな。俺は酒井輝一ってんだ。よろしく蒼龍!」

 

酒井の陽気な挨拶に続き、他二人も続いてくる。

 

「あー。佐島武彦。みんなからはたっけーって言われてるよ」

 

「沢田慎之介。あだ名はしんちゃんって言われてる。よろしく」

 

それぞれは自己紹介を行い蒼龍も「みなさんよろしくお願いします!」と、頭を下げる。その礼儀正しさに関心したのか、三人は「おぉ」と声を漏らす。

 

「席空いてるか?五人分」

 

「もち。ちょい退くから待ってちょ」

 

たっけーは席を立ち、その間に俺と蒼龍は中央の席へと座る。が、他の三人が座ろうとすると、たっけーはあえて座り直した。

 

「くらっち達は前にどぞ、ほら、酒井退いてあげて」

 

どうやら、たっけーは何かしらの意図があるようだ。くらっち達もそれになんとなくだが賛同して、酒井が座る席へと移動した。

 

「で、どうしたのたっけー。急にそんなこと言い始めて」

 

その意図が気になったらしく、しんちゃんがたっけーへと問う。皆も気になるのか、たっけーへと視線を向けた。ぶっちゃけ、俺も気になる。

 

「いや、くらっちとみっくんはでかいだろ?蒼龍は学生じゃないし、バレると流石にまずい。だからさ、お前達が壁になってくれるといいかなって。そうすればバレる可能性も、低くなると思わない?」

確かにこいつらは二人は縦と横に広いから、肉壁にすれば蒼龍と俺は影になる、まあ俺は授業ノートとか取らないといけないけど、蒼龍は生徒じゃないし、黒板が見えなくても支障はないんだよね。流石学科内3位の頭脳を持つ男だ。先を見据えている。だが。

 

「…まあ純粋に蒼龍と隣が良かったんだけどさ。色々聞いてみたいし」

 

どうやらたっけーのその発案は、割と邪な気持ちから来ていたらしい。3位の頭脳を、無駄に使ってるんじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

さて、講義を終えて昼休み。 相変わらずあの教授の話は長い。まあ単位を取るのは割と簡単だったりするけど、とことん気の済むまで話してくる。つまり講義時間いっぱいまで話すのは、言うまでも無いよね。

 

そんなまあ鬱陶しい教授の講義であったが、蒼龍は割と講義を真剣に聞いていたらしい。昼休みであるにも関わらず、未だに講義用に刷られたプリントを興味深そうに眺めている。

 

「勉強熱心だなぁ。そんなに面白かったか?」

 

俺は弁当を食べながら、蒼龍へと問う。あ、この弁当はおふくろが作った奴。若葉の弁当のついでに、俺のも作ってくれるわけ。まあ、割とありがたい。

 

「あ、はい!基本軍事知識とかしか教え込まれませんでしたし、こうしてこの国の歴史を知っていくのは、面白いですね!」

 

まあ、確かに艦娘はまともな教育を受けていなさそうだ。歴史もとい社会とか特にね。だから、こうして知っていくのはいい事なのかもしれない。

 

「お待たせー。学食並ぶのしんどいわぁ」

 

くらっちはそう言いつつ、お盆を机へと置いて、ゆっくりと座る。

 

うちだけではないと思うが、学食は毎日長蛇の列ができる。まず食券を買うこと自体がしんどくて、これもまた長蛇の列ができている。つまり総じて言うと、並ぶのだるい。

 

「まああらかじめ買うことが一番だね。どうしてそれが、わからない奴が多いんだろう」

 

得意げに、くらっちは並んでいる列を見て言う。確かに言われてみれば、そうだよね。

 

「よいしょっと。まああれだよ、コミュ科の奴らは何も考えていないって事。一部は違うと思うけどな」

 

 木村も料理を受け取ることに成功したようで、くらっちの隣へと座る。お前さらっとひどい事言ってるぞ、コミュ科の方。本当に申し訳ありません。この馬鹿に変わって謝罪します。

 

「へぇ。学食ですか。おいしそう~」

 

蒼龍が目を輝かせて、二人の学食を見る。蒼龍はやっぱり食いしん坊なのかなぁ。

 

「やらねぇぞ!たとえ蒼龍だとしてもやらないからな!」

 

木村は学食に覆いかぶさるようにして、蒼龍に言う。子供か。

 

「木村。服のひもが、ラーメンに入ってるぞ」

 

「え!?ああああ!?ヒモ独特の布っぽいダシが取れてしまったぁあ!よくも蒼龍!」

 

相模の突っ込みに、木村は過剰反応を示す。まあ、自業自得と言うか、なんというか。

 

「えぇ、私の所為じゃないですよぉ!そもそも、私には望さんのお母さんが作ってくださったお弁当がありますし」

 

「は?それ、先に言おうよ。僕泣くよ?いいの?きっとすげぇうるさいよ?超迷惑になるよ?いいの?」

 

だんだんとテンションに拍車がかかり始めた木村。うるさいと自覚してはいるらしい。まあ木村は、やかましさの塊のような男だ。

 

「おぃおぃ~。お前ら元気だねぇ?俺なんてカップ麺食ってるのに…。カップ麺食ってると元気がそがれていくんだぜぇ?まじファッキン」

 

輝一は乾いた笑いを浮かべ、カップ麺を啜る。カップ麺食べなきゃいいんじゃないですかねぇ。まあ、順応性が高すぎるせいで、いろいろな趣味に金を使ったお前が悪いな。

 

「はあ、お前らとしゃべると疲れるな。俺はちょっと煙草吸いに行ってくる。蒼龍。ついてこい」

 

そろそろヤニが切れてきて、俺は煙草が無性に吸いたくなってきた。蒼龍も「はーい」と言って、席を立つ。

 

「いやぁ七さん。蒼龍を喫煙所に連れて行くとかないわ…」

 

しんちゃんが顔を引きつらせて言う。まあ言いたいことはわかる。むしろ俺も連れて行きたくはないけど…。

 

「いや、私望さんと離れたくないですし…」

 

と、まあこういう事なんだ。するとしんちゃんは

 

「あ、はい。ノロケですか。おかえりくだしあ」

 

と、言ってきた。うん。しんちゃん。なんかごめんな。

 

 

 

 

 さてさて我がパラダイス喫煙所。愛煙家にはたまらない場所。

 

 俺は早速ポケットから、アメスピを取り出す。たまにはセッタじゃあなく、こっちも吸いたくなるんだよね。アメスピは長く吸えるし、相対的に見てお財布にも優しい。煙草を吸わない方がお財布にやさしいとか、言うんじゃない。

 

 オイルライターを着火すると、俺は煙草を吸い、火をつける。息を吸いながら煙草に火をつけると、火が浸透しやすいんだよね。知らない人はやってみるといい。あ、未成年はやってはダメだぞ?

 

「あ、いつもの煙草じゃないんですね。そちらの匂いの方が、好きかも」

風下に立つ蒼龍だったが、どうやらセッタではないことに気が付いたようだ。アメスピの方がいいのか。これを期にアメスピメインにするのも、悪くないかもな。

 

「へぇ。アメスピに変えたのかい?七さん」

 

まさに唐突の声に、俺は前にジャンプし距離を取る。そして振り返ると―

 

「ったく…大滝か。脅かすんじゃねぇよ」

 

ふふふと笑う、大滝がそこにはいた。奴は先ほどの授業。さぼったらしい。

奴が指に挟んでいるのは、おそらく赤マルだろう。とあるアニメのキャラに影響されたというが、吸っている姿は風格宛らだ。

 

「今来たのか?」

 

「ああ、ちょっとした用事でね。それより…」

 

大滝は蒼龍へと、一瞬ギラリと怖い瞳を向ける。蒼龍はそんな目を見て、思わず足を一歩引いてしまった。

 

「航空母艦蒼龍がなぜここに?」

 

一発で蒼龍を見抜いたようだ。やはり、歴戦の古参提督だけはある。

 

「よくわかったな。さすがは横須賀提督」

 

「まあな。伊達に古参張っているわけじゃねぇ。しかしお前も…」

 

と、大滝は何かを言おうとしたが、すぐに言葉を区切ってしまった。いや、もう遅い。

「お前も」と言うことは、やはり、こいつのところにも艦娘がいるのだろう。以前に明石から送られてきたメールの内容が正しければ、こいつの鎮守府にもコエールくんのデータが流出した可能性は、十分に高い。こいつとはよく、某一㍍四方のブロックを積み上げるゲームで、マルチプレイをしている。

 

「逆に聞くが、お前のところにも艦娘がいるのか?」

 

「…ああ、まあな」

 

やはりそうか。これで三人目だ。しかし、だれがこちらに来たのだろう。可能性があるとしては、以前コスモとなんたらの力で結婚カッコカリしたらしい、那智だろうか。すると。

 

「ふふふ。那智だと思ったか?うちに来たのは、鳳翔だ」

 

と、俺の考察を見抜いてきやがった。少し悔しいな。

 

「え!ほ、鳳翔さんが!?」

 

大滝の言葉を聞いた蒼龍は、思わず声を上げる。すると、ほかの喫煙者たちが、不思議そうに蒼龍に視線を向けた。蒼龍はとたんに恥ずかしくなったのか、俺に張り付き縮こまる。

 

「しかし鳳翔がねぇ…いや、まあお前の風格には似合うな。おっさん」

 

「おいおい、お前が言うなよ。おっさん」

 

俺たちは同時に、笑みをこぼす。奴も俺と同じ武術家で合気道を行っている。故にいろいろと、馬があうんだよね。

 

「あ、えーっと大滝さん?が遅れた理由は、鳳翔さん関係ということですか?」

 

そんな俺たちの空気に割って入るように、縮こまっていた蒼龍が飛び出してくる。

 

「ああ、そうだな。っと…自己紹介がまだだったか。俺は大滝尚助。よろしく蒼龍」

大滝は煙草を持っていない左手で、握手を求める。蒼龍もそれに答え、握手を交わしたのだったとさ。

 




どうも、大空飛男です。

今回も主に更新された登場人物の紹介回みたいな感じです。そして最後に鳳翔の存在も明らかになりましたね。さてさて、どう絡んでいくのやら。

では、今回はこのあたりで。あ、コミュニケーション学科に所属している方がもしいるのであれば、もう一度この場で謝りたいと思います。申し訳ございません。木村のモデルになった奴が、そんなことを言っていたのが悪い!

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