……。
…………。
「ぐッ……おおおぉぉおおぉぉおおぉ!?」
圧倒的。
「言ったでしょう?
それは、まさに圧倒的と形容するに相応しい状況だった。
咲夜が飲み干した液体の正体は、
それは、服用した者の『人生』を、即ち『過去』、そして『未来』を、『現在』という
そう、噛み砕いて言えば、服用した者が
ーー本来であれば、いつか来るべき
ともあれ。
「グ……おあぁあああAAAAAA!」
全盛の姿を取り戻した咲夜の攻撃は、もはや白銀の瞬きさえ伴わず、無慈悲かつ正確にアーカードにダメージを蓄積させていく。
それは、咲夜が世界の
もっとも、そのどちらであっても、また、
「不死身の
まるで、深い霧が晴れるかのように、アーカードを取り巻く『影』は不可視の斬撃に散り、その身体には見る間に数多の刃が突き立てられていく。
先程まで咲夜が用いていたナイフよりも一回り大きなそれらは、同時に絶えず彼女の周囲に振り撒かれ、一切の『影』の接近を許さず消し去っていた。
「クッ……!」
反撃はおろか、まともな防御さえできない状況に、アーカードは堪らず『影』とその身を入れ替え、距離を取る。
が、次の瞬間には敵の姿が目の前にあり、そして攻撃を受けている。
それは、咲夜が一瞬でその距離を詰める移動をしたのか、
咲夜は、持てる全てを総動員して、ただアーカードを狩るためだけに刃を振るっていく。
薙ぎ斬り、斬り落とし、斬り払い、斬り捨て、突き立て、突き通し、突き貫く。
「……終わりよ!」
そして、遂に、咲夜の刃がアーカードの心臓を捉えた。
ーーかに見えた次の瞬間。
彼女の眼前、アーカードは影と消え、それと同時に、咲夜の左頬を強烈な衝撃が襲った。
「……ぐッ!?」
咲夜は何とかその場に踏み留まり、顔の傷を修復させながら、衝撃が向かってきた方向を睨み付ける。
「シッイイイィィィィ!」
そこでは、その風貌を幼い少女のものへと変化させたアーカードが、拳を震わせ笑っていた。
瞬間、両者の視線が交わるが早いか、アーカードの額に突き立てられた刃が、咲夜の攻撃の再開を告げた。
「最後の最後で、随分と分の悪い賭けに出たな、
アーカードは、それもお構いなしといった様子で、追撃の刃をその身に受けながら、『ディンゴ』の銃口を真っ直ぐ咲夜へと向ける。
と、同時に、『影』の亡者が突撃指令を下された軍隊のように、一斉に咲夜に襲い掛かった。
しかし、『影』の亡者達は獲物を捕らえることなく掻き消え、『ディンゴ』を構えたアーカードの腕は落ち、噴き出した鮮血が足元の『影』へと溶けていく。