地の文に心理描写入れることで、感情の主体の移り変わりをわかりにくくして行間を読んでもらうスタイル。
矯正したいけどできない。現実は非情である。
「遅く、なりました。咲夜さん……ぐぅッ!」
「無理しちゃ駄目です、美鈴様! まだ傷が塞がってないのに……」
「美鈴! それに、こあ……と、妖精メイド達も!?」
予期せぬ闖入者の正体に、咲夜は思わず声を上げると、しばし目を白黒させた。
彼女の目の前に、彼女を護るように並び立つ美鈴、小悪魔、そして妖精メイドの面々。
「貴女達、一体何を考えてっ……!?」
咲夜は、自身の処理力を超えたその光景と突然の援護による混乱から即座に醒めると、叱りつけるような声色の一言を辺りに響かせた。
「すみません、咲夜さん。こあの指揮の元、皆を避難させようとしたんですが……この有様です」
「無謀よ! こあ、今すぐ美鈴と妖精メイド達を連れて……!」
ばつが悪そうに反応を返す美鈴、そして彼女の体を支える小悪魔に、咲夜は今一度、毅然とした口調で撤退を強いようとする。
「駄目です」
しかし、その言葉を遮り、小悪魔はぼそりと呟くと、咲夜に潤んだ眼差しを向けた。
「え?」
「駄目なんです。私達は、ここで
その言葉を受け、目を丸く見開いた咲夜に、無言で立ち並ぶ妖精メイド達も、小悪魔の背中から決意の視線を送った。
「……呆れた。誰も彼も、
「大丈夫です、メイド長。私達に『死』はありません。また、同じ姿で生まれ変わるだけです」
それは、どの妖精メイドが発した言葉かまでは咲夜にはわからなかったが、彼女の耳に確かに届き、その胸中に広がった。
確かに、咲夜が知る限り、この
先程の言葉の通り、何かの要因で消えることになっても、地獄などへは行かず、
しかし、
それは、数時間後かもしれないし、数年後、或いは限りなく永遠に近いほど先のことになるかもしれない。
つまり、妖精メイド達の消失が意味するところは、結局ほとんど咲夜が言わんとした通り、
「……はぁ。もういいわ。言葉の
お世辞にも賢いとは言えない妖精メイドらしく、咲夜が言葉の裏に隠した、再考を促すという意図を汲みきれず、言葉をそのまま捉えたが故に飛び出した一言を反芻しながら、咲夜は深く溜息をついて俯いた。
「まったく、
彼女は俯いたまま呟くと、
「いいわ、
そして、再びその双眸に、群がる『影』の亡者達を映した。
(もう一度、近付ければ……!)
咲夜は意を決して、懐にした
おそらく、自身に残された時間がそう長くはないであろうことを、彼女はこの戦いの
それでも、許された僅かな生を、敬愛する主人と共に歩むためだけに使うつもりだった。
だが、今の彼女は違う。
自分の命と引き換えにしてでも、ここで目の前の敵を屠る。
今一度、『
そんな想いを、妖精メイド達の決死の勇に抱きながら、咲夜は弾かれるように飛び出した。
妖精メイド達も、その背に続き特攻を開始する。
まるでそれを待っていたかのように、『影』の亡者達も進軍を再開し、両陣営の熾烈な激突の火蓋が切って落とされた。
「……! やはり、そう簡単には援護さえ許して貰えませんか」
「パチュリー様、ご容赦を」
『影』の包囲を掻き分け進むメイド隊を見送り、彼女達の後方から弾幕での支援を試みる美鈴と小悪魔の前に立ちはだかった、『七曜の魔女』。
ーー否、