HELL紅魔郷SING   作:跡瀬 音々

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と、いうことで(どういうことだか)旦那VS398さんクライマックスです。

この話を書くためだけにやってきた感があるので、この話を書き終えたらきっと感無量なのでしょうね。

ちょっとネタバレ的な前書きになりますが、紅魔組に付き纏う『例の問題』について、私なりに出した答えが描かれる予定です。

しかし、398さんには半年以上戦ってもらってるような、もらってないような……うん、まぁ、多分気のせい。

しっかし、追記形式で更新していくと、どうしてもかなり期間が空いてしまっているように見える(あくまで見えるだけ、と言い張る)ナァ……

※この話は長いので、完成次第キリのいいところまでで随時更新していました。
が、長きにわたる戦いの末、無事終了できたので、前編後編に分けた完成版を置いておきます。前書きとかに興味ない人はそちらをお読みください。


Prière

「……ハァッ、ハァッ!」

 

 

咲夜は、疲労が蓄積し重みを増す身体に鞭打ち、霞む眼を必死で凝らして『敵』を探す。

 

しかし、未だ彼女の瞳が映すのは、ただ生を貪らんとする『死の河』のみであった。

 

『影』の壁を突破し、多少なりとも目標の『敵』に近付けたと思った次の瞬間には、またしても新たな『影』の壁による追い討ちが迫り来る。

 

能力のインターバルを埋めるため、僅かに後退しながら()()を捌き、再び能力発動の準備が整い次第、行使すると同時に前進する。

 

その僅かな前進とは不釣り合いに、大きく奪われていく気力と体力。

 

かといって、一度(ひとたび)抵抗を止めてしまえば、待ち受けるのは『死の河』による凌辱と蹂躙ーー即ち『死』である。

 

たとえ、状況が醒めぬ悪夢の如く、前進しては後退を強いられることの繰り返しだとしても。

 

その果てに辿り着く先が、惨憺たる結末でも。

 

今はただ、必死に前へ、前へ。

 

「前へ……前へ!」

 

彼女の思いの丈は心に収まらず、いつしか声となって現れていた。

意図せず口走る、自分に言い聞かせるかのような、力強い独語。

 

「……!」

 

そして、数え切れないほど『影』の壁を抜けた時、突然に訪れた転機。

 

(ようやく、捕まえた……!)

 

『影』の壁を抜けた先、不意に視界に飛び込んで来た()()()()()()()()

 

それは、咲夜の確固たる意志が引き寄せ、そして掴み取った好機だった。

 

「踊り狂いなさい……その命尽きるまで! メイド秘技『操りドール』!」

 

その人影に向かって、無数のナイフを投擲すると同時に、多大な負荷を承知で、強引にインターバルを縮めて行使された()()()()時間停止。

本来ならば発動さえ危うかった能力は、その持続時間をほとんど失った状態ではあったが、辛うじて咲夜の要求する及第点ーー先に投げた無数のナイフを()()()ためのナイフを投げるだけの間隙を作り出す、という意図を満たしていた。

 

だが、それだけでは飽き足らないとばかりに、緻密に配置されたナイフが()()()()に囚われて動き始めるのを待たず、咲夜は駆け出していた。

 

瞬間、檻から解き放たれた獣のように、一斉にアーカード目掛けて襲い掛かる殺意の刃。

しかし、彼の四方八方から不規則に互いを反射させながら迫るそれらは、その目的を達することなく、全て空中で砕け落ちた。

 

「純銀製マケドニウム加工弾殻。マーベルス化学薬筒NNA9。全長42cm、重量17kg。15mm炸裂徹鋼弾……『ディンゴ』。完璧(パーフェクト)だ、麗亜」

 

髭面で騎士様の姿から、それ以前の容貌に戻り、不敵に笑うアーカード。

そんな彼の頭上から、宙を舞う咲夜の追撃が振り下ろされる。

 

「ぜやあああぁぁぁぁッ!」

 

咆哮ひとつ、渾身の力を込めて放たれたナイフでの一撃。

しかし、その攻撃は、間一髪差し出された『ディンゴ』の銃身の背を削り火花を散らすに留まった。

 

咲夜は、これ以上の追撃は不可能だと察すると、すかさず()()()()()、すなわち吸血鬼の肉弾戦の範囲(レンジ)から脱するように、小さく飛び退く。

 

能力の発動には、指を鳴らすという予備動作が必要であると思い込ませるための偽装(しこみ)

加えて、リスクを度外視したインターバルの排除。

それらの積み重ねの果てに放ち、造作もなく打ち破られた自信の弾幕。

そして、それを予期した上で、駄目押しの意味で仕掛けるも、虚しく弾かれた決死の一撃。

 

しかし、そんな絶望的な状況においてもなお、未だ輝きを失わずに『敵』を捉える双眸。

 

「見事だ、我が宿敵」

 

アーカードは、その咲夜の気概に、生き様に、矜持に、()()()()()()()()に、賞賛を惜しまなかった。


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