水音の乙女   作:RightWorld

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第148話「エネルギーフィールド消失」

「巨大ネウロイ、船団の南3.7マイル! エネルギーフィールドの端から3.1マイル!」

「そろそろ敵が撃ってくるぞ」

「くそう! 止める手だてはないのか!?」

「駆逐艦をブチ当ててみては! エネルギーフィールドに穴が開くかもしれません!」

「砲弾の爆発で開かないのにできるものか! 穴が開くのはこっち(駆逐艦)の方だ」

 

駆逐艦の艦橋で皆が歯ぎしりしていると、エネルギーフィールドの内側の海が急に盛り上がった。それを突き破って勢いよく艦首を空に向けて飛び出したのは潜水艦。蒼き鋼『伊401』だ。艦が水平になるのも待たず、前甲板格納筒の水密扉が開くと作業員が慌ただしく飛び出し、格納塔の中からユニット拘束装置が引き出されてカタパルトに接続された。

 

「圧縮空気充填完了。射出!」

 

26mもの長いカタパルトから打ち出されたのは、イオナが駆る水上攻撃脚『晴嵐』だ。低空を猛スピードで這うように飛ぶイオナは体の3倍はある爆弾を下げていた。25番通常爆弾だ。

 

 

扶桑海軍における通常爆弾(通爆)とは対艦攻撃用爆弾の事であって、陸上攻撃に用いるのは陸用爆弾といって区別されていた。何が違うのかというと、陸用が瞬発信管なのに対し、艦船用は遅働0.2秒の信管を使っている事と、爆弾ケースが艦船用の方が丈夫な事だ。

対艦用通常爆弾というのが扶桑にあるのは、海軍航空隊を束ねる航空本部が、艦政本部が管轄する魚雷に頼ることなく艦船(最終的にはポストジュットランド型戦艦)を沈める事を目指した結果だ。だから装甲を突き破って艦内奥底で爆発する遅働信管であり、途中で壊れない為の丈夫なケースなのだ。そして究極の対戦艦用として徹甲爆弾(5号爆弾)というのが作られる。

ちなみにリベリオンはというと、爆弾で戦艦を沈める事などハナから出来るとは思ってもおらず、陸海軍共用のGP爆弾(汎用爆弾)だけである。爆弾ケースも元々材質がよく、途中で壊れる様な心配もなかった為、扶桑海軍の通常爆弾、陸用爆弾のように使い分ける必要もなかった。

扶桑海軍の爆弾は一見合理的なように聞こえるが、実は材料加工技術の低さと資源不足の為、特注しないと使い物にならなかっただけであって、汎用品で十分な性能を持っていたリベリオンは信管を差し替えるだけで相応の効果を出せたので、どちらが効率的、経済的であったかは言うまでもない。

我々の世界のWW2でも、米軍は瞬発信管の汎用爆弾一本で初戦から戦っている。その恐ろしさは日本正規空母4隻が一挙に沈んだミッドウェー海戦で見た通りだ。瞬発爆弾は甲板上の機銃やその操作員を一瞬で一掃してしまい、艦のバイタルパートは無事でも甚大な被害を出した。

米軍が徹甲爆弾を使い始めたのはフィリピンの戦いからだが、それが戦艦の装甲を貫く事はなかった。戦艦武蔵の主砲塔が爆弾を弾き返したのは有名な話である(瞬発信管なら跳ね返らずに爆発したはずだ)。英国もナチスドイツの強力な戦艦に手を焼いて初めて徹甲爆弾を作り始めている。

日本海軍だけが開戦前から本気で戦艦の装甲を爆弾で貫いて沈めるつもりだったのだ。主砲弾に匹敵する撃速を爆弾に与えるには相当な高度から落とさねばならないが、そうすると命中率は下がる。それを補うため訓練に次ぐ訓練が行われた。

そして日本海軍の本気は、80番5号徹甲爆弾がご存知真珠湾攻撃で戦艦アリゾナの上部装甲を突き破って弾火薬庫で爆発、轟沈してみせたのだ。

 

 

解説が長くなった。

イオナはその対艦用の250kg、魔法力強化で1トン爆弾相当の威力を持つ青白く光る爆弾を抱えてたのだ。ウィッチ単独が扱える最大の爆弾である。リベリオンではジェシカのTBFアヴェンジャーでないと持てない爆弾だ。雷撃も可能な攻撃脚『晴嵐』の本領発揮である。

シールドを張ってビームを躱しつつ、低空飛行のまま一挙に距離を詰める。そして4本足で水面に浮かぶアメンボネウロイの股下を水面ギリギリで通り抜け、後ろに出ると急上昇、体を捻るとエネルギーフィールドの発信源が真正面に現れた。

 

「もう映画の真似すんな、人の事言えないけど」

 

イオナは25番通爆を切り離した。上昇するイオナとは正反対に落ちていく爆弾は、エネルギーフィールド発生器の根本にめり込み、大爆発を起こした。

テーブルのようなエネルギーフィールド発生機は脚部分が折れ、板状のところは粉砕。光の柱も明滅して次第に消えていった。光の柱が消えると、半球状の膜も上の方からガラスが割れていくように剥がれてなくなっていく。

 

「イオナ少尉の攻撃成功! エネルギーフィールド消失しました!」

 

優奈の報告と同時に美緒が叫んだ。

 

「全機突っ込むぞ! コアを探してぶっ壊せ!」

「いっけーっ!」

「うおおおー」

 

ウィッチ隊がネウロイめがけ突入する。

 

「ホワイト中尉、ロケット弾は残っているか?!」

「一発残ってます!」

「ネウロイ上面を吹っ飛ばせ! その後を秋山は30mm機関砲弾で薙ぎ払え!」

「ラジャー!」

「分かりました!」

「水上脚は水上に降りてネウロイの腹側を攻撃しろ! 二式水戦と瑞雲と……零式水偵行けるか?」

 

優奈は嬉しそうに答えた。

 

「勿論です!」

「よし、残りの機は側面だ! かかれえ!!」

 

美緒の攻撃指示でウィッチ達が散らばった。イオナの爆撃で後方のビームパネルが吹っ飛んでいるので、殆どが後ろからアタックする。

 

「ど、どうしよう。わたしマイティラット撃ち尽くしちゃいました! 機銃も持ってません!」

 

突入を躊躇うシィーニー。丸腰では流石に行きたくはない。

 

「シィーニーちゃん、わたし爆雷持ってるよ。これ使って!」

 

天音が横に来ると翼の下に吊るされた100ポンド爆雷を指さした。天音はいつも自らでは攻撃に行かないので、温存されてた感じだ。

 

「アマネさん、いまこのタイミングでそれは宝物です!」

 

美緒も天音の爆雷が残っている事に気付き、すぐ二人に指示を出した。

 

「お前達、それ使ってネウロイの脚を破壊しろ! そうすれば移動できなくなる。もし脚にコアがあればついでに破壊できる」

「わはっ! そしたら巨大ネウロイの棚ぼた撃沈カウントいただきです。ブリタニア空軍の戦果、宗主国様のご希望! アマネさん行きましょう!」

「うん! わたしが機銃で守ってあげるよ!」

 

シィーニーと天音は二人並んで降下していった。

 

「くそ、私らも何とか行けないか?!」

 

卜部が零式水偵のエンジン回転を上げるが、美緒が止めた。

 

「卜部、やめとけ。この場面では私らのようなあがりを迎えたものは足手まといだ」

「魔法力を最前線の戦闘中に失うまで戦ってた奴に言われる筋合いはねぇよ!」

「まあそう言うな。後方で皆の退路を確保しとくのもお前達裏方の仕事だろう? 戦果は抜きで生還率を上げるために残ってくれ」

「ちっ! まともなこと言いやがって」

「もっさん、らしくないねえ」

「そんなことないさ。ウィッチの替えはきくもんじゃない。ここにいる皆は特に逸材だ。私達はこの先を託す若い連中を連れて帰えることも義務だろう?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

後部に大穴を開けられたネウロイはウィラの接近に気付けなかった。ウィラがマイティラットを構え、ランチャーに残っていた一発を至近距離から発射した。ネウロイ上面中央に命中すると火山噴火のように爆炎が上がった。

 

「秋山曹長!」

「はい!」

 

ささくれだった上部一面を秋山が降下しながら機関砲で掃射、機関砲弾のシャワーを浴びせる。炸裂弾が混じっているので小爆発があちこちで起こり、徹甲弾が脆くなったところを深くえぐっていく。コアがあればこれで間違いなく破壊できたろう。だかネウロイは甲高い悲鳴をあげただけだった。

 

「くそっ、上にはないか!」

 

千里の二式水戦と西條の瑞雲、そして優奈の零式水偵脚が水上滑走で接近する。横に振り向いたネウロイが近付いてくる水上ウィッチに気付くと、4本の足で海面を蹴ってジャンプした。200m近い距離を一挙に飛んで逃げる。

 

「わっ! ずるいぞ、でかアメンボ!」

 

水上脚隊の頭上を天音とシィーニーが飛び越える。

 

「わたし達が足を止めます!」

 

二人は前足を目指して低空から接近する。

 

「シィーニーちゃん、はい!」

 

天音が爆雷一発を翼下から外して手渡した。受け取ったシィーニーだが、弾頭に描かれた可愛らしい猫の顔を見て目を丸くした。

 

「な、なんですかこのめちゃくちゃプリティな子猫キャラは! か、可愛い過ぎて投げらんないじゃないですか!!」

「え~? 単なる絵だよ?」

「こういうのはもっと憎らしいのとか、思わず捨てたくなるようなの描いて下さい! どっかの大尉とか!」

「落書きなんだから何だっていいじゃん」

「だ、だけど、これはネウロイなんかに投げたら可哀そ過ぎです!」

「ああーもういいよ。そしたらわたしが投げる。シィーニーちゃんが援護して」

 

と爆雷を返してもらって機銃をシィーニーに渡す。

 

「でも爆弾落として当てる自信ないから、シィーニーちゃんがやったのと同じ方法にするね」

「わたしがやった方法?」

「潜水型ネウロイ初めてやっつけた時のだよ」

 

シィーニーの撃つ機銃とシールドに守られながら二人はネウロイの腹の下に潜り込む。そしてフロートを展開した天音が右前足にあたる方に取り付いた。このアメンボネウロイは前足の方が太くて長く立派だ。天音が爆雷一発を切り離して手に持つ。

 

「遅延信管起爆セットカウントは5秒でいくよ」

「5秒? 遅延信管?!」

 

天音の手にする爆雷が魔法力を帯びて青白く輝いていく。

 

「いくよ、せーの!」

 

爆雷をネウロイの脚にぶつけた。輝く爆雷は脚に半分めり込んだ。

 

「逃げてシィーニーちゃん!」

「わー! わたしが(おか)に寝そべってた潜水型ネウロイをやったときは、無線の起爆スイッチだったですよー!」

 

お尻の方にシールドを張って一目散に逃げる二人。ネウロイが二人の方へ向きを変え、撃ち落とさんとビームパネルが赤く発光したところで爆雷が爆発した。爆風で二人は後ろから押し出された。

 

「わーっ!」

「ひゃー!」

 

爆雷の爆発で右前足が折れて吹っ飛んだ。片足を失ったネウロイは前のめりに崩れた。

 

「ウミネコ、ナイスだ!」

 

水上脚隊が傾いて腹を見せたネウロイに20mm機関砲で攻撃する。白い破片が飛び散る。ネウロイはたまらず奇声を上げながら3本足でぐぐぐっと立ち上がると、弱々しくジャンプした。

 

「棚ぼた撃沈できなかったですね。コアは前脚にはないみたいです」

「シィーニーちゃん、もう一個爆雷あるよ!」

「アマネさん、今度は後ろ脚やりましょう!」

「わかった!」

 

くるっとターンすると、再び海面すれすれに降りてネウロイへ向かう。ジェシカ、ジョデルが側面にバリバリと機銃で攻撃をしている下をくぐり抜け、水上脚隊が周回しながら攻撃している間を縫って左後ろ脚に取り付いた。

自己修復した下面の赤いビームパネルをシィーニーが銃撃して破壊した隙に天音は爆雷に魔法力を込める。爆雷の先っぽに描かれた笑顔の猫がキンキンに輝き、自信に満ちた不敵な顔になる。

 

「ネコちゃん、ネウロイやっつけて!」

 

脚に爆雷をぶつけた。これも半分が脚にめり込み、遅延信管が作動を開始する。

 

「皆逃げて!!」

 

天音とシィーニーだけでなく、下面を攻撃していた千里、西條、優奈も慌てて脱出する。

ドッカーンと炸裂した爆雷で脚がもげて空中に舞い上がった。脚は海へ落下すると溶けるように消えてなくなる。ネウロイはまたも海に倒れ込んだ。

 

「ジェシカ、取れた脚の付け根!」

 

深い亀裂の奥が赤く光っているのにジョデルが気付いた。

 

「分かった!」

 

ジェシカが機銃を連射した。7.7mm弾が亀裂を広げる。しかし数発当たったところで銃撃が止まった。

 

「やだ、弾切れ?!」

「私がやります!」

 

秋山がジェシカと入れ替わった。腹に響く衝撃と共に30mm弾が放たれ、徹甲弾と炸裂弾が亀裂を大きくえぐった。しかしこれも数発で弾切れになった。

 

「ええー?!」

 

それだけでなく蒼莱が急に元気をなくして落下を始めた。

 

「ああ、魔法力が!」

 

美緒がすかさず声を掛ける。

 

≪秋山、下がれ! 零式水偵のところまで退却しろ!≫

 

「皆さんご免なさい!」

 

ふらふら戻る蒼莱に入れ代わって瑞雲と二式水戦がやってきた。

 

「どこどこ? あれか! 千里ちゃん!」

「見えた」

 

西條と千里も回り込んできて銃撃に加わる。秋山の削った周りを命中弾が炸裂し、装甲が削ぎ取られ、とうとう赤い光を放つ宝石のような塊が顔を覗かせた。

 

「出た、コア!!」

 

だが西條と千里の機関砲もそこで虚しい軽い音に変わった。

 

「……撃ち尽くした」

「ここで弾切れする?!」

 

≪誰か弾残ってるのはいないか?!≫

 

美緒が皆を見回して叫ぶが、皆固まるだけだ。

 

「殴る!」

 

イオナが13mm機銃を逆さに持ち、バットを構える様にして突進した。豪快にスウィングして叩き付けるとガキーンっという金属音と共に火花が飛んだ。機銃の銃身がグキッと折れ曲がる。

ネウロイも必死だ。他を捨てて自己修復に全力を注ぎ、銃身が入らないギリギリまで装甲を回復させた。そしてそれが間に合った。

 

「往生際悪い!」

 

イオナはガリガリと隙間に機銃をねじ込もうとするが、次第に隙間が埋まっていき、コアがだんだん見えなくなっていく。

 

「くそ、ここまで来て!」

 

「優奈、爆雷持ってたよね! どうしたの?」

 

天音が聞くと優奈は気まずそうな顔になった。

 

「卜部さんの真似して反跳爆撃やってみたの」

「……それで?」

「1回も弾まないで沈んじゃった」

「練習したこともないのにやる?!」

「石でやる水切りと同じかと思ったのよ!」

「なら手で投げなよ! もう頭の中筋肉なんだから!」

「ひどっ!!」

 

そうしている間にも自己修復は進み、とうとう亀裂は塞がってしまった。

 

「くそっ!」

 

ガツンとイオナが悔しそうに機銃の銃床をコアがあったところにぶつけた。

 

≪卜部、誰か攻撃系の固有魔法を持ってるものはいないのか?≫

≪私らはあんたんとこみたいに固有魔法をホイホイ持ってるエリート集団じゃねえんだ!≫

 

その時、シィーニーが叫んだ。

 

「まだ攻撃手段あります!」

 

シィーニーは腰の後ろに手をやると、革の鞘から大ナタを引き抜いた。

 

「やだ、なにそれ!」

 

横にいたジェシカが非近代的武器にびっくりする。美緒も驚いていた。その刃は魔法力を纏って青白いゆげのような妖気を放っていたからだ。少し離れた零式水観からもその魔力の焔が見えた。

 

≪刃に魔法力が宿ってるじゃないか! お前、念動系の固有魔法があるのか?≫

 

「ウラベ少尉とカツタ准尉に鍛え方を教わりました。3ヶ月かけて魔法力ため込んだんです」

 

≪あれからずっとやってたのか。軍曹なかなか努力家だな≫

≪3ヶ月かけてか。はっはっは! そうか! 卜部、さすが私と同年代の扶桑ウィッチだ。古来の魔女の技を伝授したわけだ≫

 

「固有魔法いらないんですか?!」

 

ジョデルが驚きを以って聞く。

 

≪銃なんか無かった時代のウィッチはこうやって時間をかけて戦いに備え準備したんだ。面倒だから固有魔法を持ってない限り今の若い扶桑のウィッチもすっかり刀を持たなくなった。いいものを教わったな! よし行け、シィーニー! だが破壊したらすぐ逃げるんだぞ!≫

 

「はーい! おりゃああ!」

 

シィーニーは大ナタを振りかぶってコアがあったところ目がけて突進した。

 

「くらえ、ココナッツクラッーシュ!」

 

振り下ろした大ナタはガーンと装甲に当たって一瞬止まるが、ぐぐぐっと押し込むとバチバチ火花を散らして装甲にヒビが入っていく。そしてついに装甲が砕けた。赤いコアの光が亀裂から再び現れる。

 

「ぬあーーっ!」

 

そのまま振り抜き、奥にあった光もろともズバーッと、大ナタとその延長線上に伸びる魔法力の焔が周辺ごとザックリネウロイを切り開いた。奥の方で光が強くなり、続いてネウロイ全体も光り出すと膨れ始めた。

 

「爆発するぞ、全員退避! シィーニー軍曹逃げろ! シールド防御!」

 

ウィラが皆を避難させる。

コアが破壊されると、ネウロイはコアから全体へと爆発が伝播し、固い破片と衝撃波がコアを中心に四方へと飛び散っていく。つまりコアは爆心地(グランドゼロ)なのだ。爆心地からの距離に比例して威力は急速に衰えるが、例え小型であってもすぐ近くでは致命傷になるほど危険で、コア爆発によるウィッチの怪我は後を絶たない。それ程に近くでは避けがたく、シールドでも防ぐのが難しいものなのだ。刀など旧来の武器でコアを直接叩くような攻撃方法は特にそのリスクを持っていることになる。先程イオナが銃で殴りつけようとした行動は相当に危険な行為であり、管野直枝の拳で叩く『剣一閃』など普通のウィッチから見れば正気の沙汰ではないのである。直ちゃん流石だ。

 

ネウロイを切ったシィーニーは大急ぎて脱出する。ウィラが近くでシールドを張って待っているところに飛び込んだ。

ブワァーっと膨れ上がったネウロイが、コアのあった辺りからパアンと破裂した。

 

「やったー!」

「ネウロイやっつけた!」

 

ブワーッとネウロイの破片が物凄い勢いで飛んでくる。ネウロイが大きかっただけに破片の量も半端でない。シールドを張ってシィーニーと離脱するウィラのコルセアにも、防ぎ切れなかった破片が幾つか突き刺さった。厚い装甲で足は無事だったが、油圧パイプを傷付けた。逃げるのが遅れたジョデルのアヴェンジャーにも突き刺さり、爆弾倉の開閉装置が壊れた。西條の瑞雲のフロートにも破片が貫通して穴が開く。

 

「各機無事か?!」

 

美緒のところまで逃げてきたウィッチ達を見回し、戦果よりも先に状態を確認した。

 

「ホワイト、破片被弾。油圧系統に異常」

「デラニー、爆撃系に赤ランプ(レッドアラーム)!」

「ジョディ、やだあ、爆弾倉が開きっぱなしになってるわよ」

「え?!」

「西條中尉。フロートに大きな穴が開いてる。着水できないかも」

 

千里に指差されフロートを覗いた西條がびっくりする。

 

「ホントだ! 千里ちゃんは大丈夫?」

「平気」

 

ストライカーユニットに被害が出た者はいるが、怪我人はいないようで美緒もホッとする。

 

「皆無事のようだな。シィーニー軍曹よくやった!」

 

卜部がゆっくり零式水偵を近づける。

 

「損傷機は零式水偵のところに来い。艦隊まで引っ張ってやる」

「皆お疲れー」

 

皆がお互いの無事を確認できると、一斉に歓声を上げた。天音と優奈がシィーニーに抱きついた。

 

「シィーニーちゃん凄ぉい!」

「シィーニーさん大手柄じゃない!」

「えへへ!」

 

空中に飛び散ったネウロイの白い破片が放物線を描いて散乱する。海に落ちれば溶けて消えてなくなるだろう。

船団からもネウロイの爆発が見え、どの艦船も歓喜の声で沸き返っていた。

 

 

 

 

だが吹き飛び、落下し、降ってくるネウロイの破片は急に空中で止まり、また集まりだした。

 

 

 





年内で戦い終わらせるため、ここ最近にしては字数の多い回になってます。てか、今までがとろすぎだ。続きはクリスマスに!

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