水音の乙女   作:RightWorld

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2021/01/04
誤字修正しました。報告感謝です。>皇聖夜さん





第142話「本家規格外参上!」

がら空きとなった船団の上空に、生き残りの気象制御ネウロイ4機が出現した。

 

「しまった!!」

 

気象制御ネウロイが一斉にビームを発射した。

無情なビームの雨が船団に向かって降り注ぐ!

 

「うわああ、やられる!!」

 

船団の艦船の甲板がビームの光で赤く照らされ、誰もが死を確信したそのとき、

 

「はああああ!」

 

ブワアッと船団全体を覆うかのような青白い光が赤い光を遮った。

 

魔法陣!

 

巨大なシールドが華開いたのだ。そのシールドによって気象制御ネウロイが放った全てのビームが弾き返された。

 

「うおおおっ!!」

「で、でっけえ!」

「シールドだ! ウィッチのシールドだ!」

「ビームを全部弾き返した! なんて威力のシールドだ!」

 

スプレイグ少将も目を見張る。

 

「こ、これは……、こんなでかいシールドは見た事がないぞ! いったい誰だ!」

「扶桑の国籍マーク! ストライカーユニットは蒼莱のようです!」

「蒼莱? 秋山曹長か!」

 

だが飛行甲板には秋山が蒼莱と一緒にユニットケージごとあり、発進シーケンスの最中だった。秋山はシールドを張るどころか、真っ青になってストライカーユニットの上で頭を抱えて背中を丸めている。秋山の蒼莱ではない。

 

「ではいったい……」

 

≪こちらは501統合戦闘航空団の宮藤芳佳少尉です! 私が船団を守ってますから、ネウロイを攻撃してください!≫

 

「501?!」

「501だとぉ?!」

 

サンガモンの艦橋がざわめきで包まれた。

 

「なぜ欧州のJFWがここに?!」

「今はネウロイをやるのが先だ! ウィッチ発艦急げ!」

「ホワイト中尉、秋山曹長、気象制御ネウロイを迎撃せよ!」

 

スワニーのカタパルトからウィラのコルセアが射出された。

サンガモンでも甲板作業員がブライドルワイヤーを秋山の蒼莱に引っ掛ける。

 

「3秒で射出します!」

 

カタパルトオフィサーが有無を言わさず宣言する。

 

「ええ?! うわあああ!」

 

大慌てで機関砲を両手で抱えたとたん、シャトルに引っ張られた。パチンコ玉のようにカタパルトから打ち出され空中に飛び出す。

前回は揚力不足で落ちそうになったので秋山は真っ青になったが、今回はサンガモンがちゃんと向かい風に向けて全速で走っていたおかげで秋山も危なげなく発艦できた。

 

≪秋山曹長、最大速度で急上昇だ!≫

 

ホッとする間もなくすぐウィラが声をかけてくる。前方に上昇するコルセアが見えた。

 

「は、はい! 蒼莱フルスロットル!」

 

排気管から勢いよく炎を吹き出し、蒼莱は急加速、あっという間にコルセアに追い付く。

2機のストライカーユニットは垂直に上昇していく。高性能な2機は難なく優勢高度へと駆け上がった。

 

「秋山曹長。高高度ではないが、得意の上からの襲撃だ。左2機任せた!」

「うえええ、に、2機もですか?」

「なんなら3機やってもいいぞ。宮藤少尉、できたら牽制攻撃して敵の目を引きつけてもらえるとありがたい」

 

≪了解。任せて!≫

 

芳佳はシールドを張りながら携行していた13mm機銃を撃ち始めた。それに気象制御ネウロイがむきになって反撃してきたのを確認すると移動を始める。船団からネウロイを少しでも引き離すためだ。艦隊を守るために何度も出撃した経験を重ねて、何も言われずともそんな行動を取れるほどに芳佳も成長しているのだ。

 

「うまいぞ、左側に開き海面ができた。秋山曹長、流れ弾が船に当たらない射線ができた。右上から行くぞ、用意はいいか!」

「い、い、行くしかないです!」

「ロックンロールだ! 遠慮なくタマぶちまけろ!!」

 

ひらりとダイブして急降下すると、それぞれの標的に向け突進し攻撃する。

ウィラは1機目に狙いを付けるとマイティラットを4発発射。見届ける事なくすぐ次の目標に向けると、こちらへも4発を撃ち込んだ。秋山は1機に狙いを定め、30mm機関砲弾の雨を降らせる。

芳佳を狙って攻撃していた気象制御ネウロイは、いきなり斜め上からロケット弾と機関砲弾のシャワーを受け、ロケット弾が命中した2機のネウロイは爆散。1機は機関砲弾でみるみる削り取られ、コアが撃ち抜かれるとパアンと破裂した。残った1機は左右に身体を振り、ビームを四方八方へめくら撃ちする。

海面近くまで降下したウィラと秋山はシールドを張りながら上昇に転じた。2機を見つけたネウロイは追いかけてビームを降りそそぐ。

 

「きゃあああ!」

「慌てるな、曹長! 殆ど外れてるぞ!」

「殆どってことは、一部当たってるのもあるって事じゃないですかあ!」

 

≪宮藤、コアはファンが付いている側の中央やや左上だ≫

 

「坂本さん、魔眼復活したんですか?」

 

≪何を言っている。さっきの攻撃でコアが見えたぞ≫

 

「わあ、よく見逃さずにいましたねえ」

 

≪うだうだ言ってると私が撃墜するぞ≫

 

「えへっ、お手間は取らせません」

 

芳佳はシールドの盾を正面に構え直すと、残る1機の気象制御ネウロイへ向け一気に真っ直ぐ突進した。

秋山達を追っていたネウロイが、はっと気付いたように振り向いた時は、もう芳佳が懐に飛び込んでいた。

 

「てやあああ!」

 

13mm機銃が至近距離でネウロイの装甲を削り取る。すぐにコアが剥き出しになり、いとも簡単に撃ち抜かれた。上へすり抜けると、芳佳の足下でネウロイは爆発した。

ネウロイの破片が散る上空に、零式水上観測機が飛んでくる。

 

「まあまあだな」

「もっと褒めてくださいよお、坂本さん」

 

そこにウィラと秋山も合流した。

 

「さすがエース集団501のウィッチだ。鮮やかでした」

「よ、余裕じゃないですか。欧州で戦うウィッチは皆そんな感じ? じ、自信なくなってきた。元々ないけど」

「あれ? それもしかして蒼莱? 震電にそっくり。って、わああ!」

 

急に芳佳の震電がぷすんと煙を一つ吐いて止まった。

 

「坂本さん、最後の部品が逝っちゃいました!」

 

上を向いて自由落下する芳佳が、先ずは冷静に状況を上官に報告する。

 

「ああーっ、やられてもないのに墜ちないでください!」

 

一方の秋山とウィラは大慌てで追いかけて行き、芳佳の腕を取る。零式水上観測機もすぐ追い付いてきた。

 

「あはは、ありがとうございます」

 

芳佳は冷や汗一つかかず笑顔で礼を言った。なんて神経だ。というか場慣れしてるのだ。

 

「すまん、ひとまずこいつを空母に降ろさせてもらっていいか? 私は501統合戦闘航空団の坂本美緒少佐だ」

「あなたがあの伝説の501戦闘隊長の?! 勿論です少佐。秋山曹長、君は巨大ネウロイ攻撃隊を追いかけろ」

「えー? 今からじゃもう遅いんじゃ……」

「蒼莱の速度があればも充分戦闘に間に合うだろう。近くだから航続距離もそれほど心配いらない。蒼莱の火力は必要だ。

サンガモンコントロール、こちらウィラ・ホワイトだ。故障機が1機出た。エスコートして緊急着艦する」

 

≪サンガモンコントロール、了解≫

 

 

 




133話最後に出てきた人達がいよいよ到着しました。


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